プロローグ
ある日銀河は“融合”し一つとなった。
かつてバラバラであった3つの銀河系の三種族は運が良かったのかそれとも神の思し召しかそれぞれのテリトリーの距離が恐ろしいほど近くなったのだ。
三種族の名は[マーハトリアン]、[インティガリアン]そして[ヒューマン(人間)]。
三種族とも突然の事態で激しく動揺しあくまで和平を持ちかける者、軍事力でねじ伏せようとする者、静観を決め込む者などバラバラに分かれた。
最初は話し合いによる解決を進めたがそれを許さぬ者たちがヒューマンの中から現れた。
[イリメリス]と呼ばれる自らが人類の始祖であり優れた神の子であると自負する星の人々だ。
その者たちは会談を邪魔しついには三種族の全面戦争となってしまった。
戦争は長引きいつしか40年近くの時が過ぎていた。
そんな中ついに戦争を止めようと立ち上がる者達が三種族の中から現れた。彼らの地道な努力の末戦争は終結し新たな三種族の国家が生まれ平和を謳歌していた。
しかしそうそううまくいく訳ではなかった。戦争はその後も続いた。三種族が開拓を進めるにつれ多くの種族との戦争があった。
その度その度に国家は疲弊し遂に最悪の事態が起こった。
あの[イリメリス]の者達が国家を乗っ取り新たな
[イリメリス神聖国]を設立他種族やイリメリス以外のヒューマンに迫害を始めた。
だがそんな悪魔のような時代に変革を吹き込む者達が現れた。かつてイリメリス神聖国の全身[銀河連合国]の政治家や軍人、民間人までもが自由を取り戻す為命を捧げついに銀河の半分以上が参加した[大銀河連邦国]が誕生した。
当然神聖国軍と連邦軍は戦争状態となった。
初期は圧倒的な軍事力を誇る神聖国軍が優勢であったが連邦もただやられている訳ではなかった…
航宙戦の天才
衛星の軌道上に大銀河連邦軍の艦隊が隊列をなし暗く寂しい宇宙を進んでいた。
そんな姿を一人の将校がどこか悲しそうな表情で見つめていた。
将校は艦隊を見てはため息を吐きまた悲しい表情で艦隊を見つめ返していた。その時ドアから一人のインティガリアンが入ってきた。
「上級少将、サヴィゼル上級少将そろそろお時間です」
その将校[ファキャル・サヴィゼル]上級少将は振り向き疲れてるような声で言った。
「ラワル参謀…すまないね今行くよ」
「また星を眺めておいでですか?」
そうラワル参謀は問いを投げかけた。サヴィゼル上級少将は少し苦笑いをこぼしてから問いに応えた。
「いやこれだけの船が全て戦争の為に造られたと思うとどうも滑稽でそして悲しくてね…まあ気にしないでくれ」
その軍人らしからぬ言葉にラワル参謀は思わずため息を吐いた。
「艦隊の司令官がそんなんでどうするんですか」
「そうだね、さて行くとしますか」
艦隊の旗艦[レイド級大型戦艦]の[デヴァステトス]で作戦会議が行われていた。
すでにある程度の話し合いが行われている中ラワル参謀はサヴィゼル上級少将を連れ込んだ。
「えぇ先ほども申しました様に我が艦隊は3900万隻、一方的の侵攻艦隊は5100万隻我が方が不利であります」
そう第四小艦隊のグロント准将は説明を始めた。
今回の戦いは連邦領内に我が物顔で進行してくる神聖国艦隊からの防衛戦だ。しかし各地で防衛戦が繰り広げられ連邦軍も各地に欲しいぶんだけの艦隊を送り込めなかった。
それに対し神聖国艦隊は圧倒的な数で進行の歩みを止めなかった。
「今回の戦いに対し小官は撤退を進言いたします、数の上でも圧倒的に不利尚且つ敵指揮官はあの[ボルス・サーヴィン]高級提督です
統計学の面から言っても敗北は必至」
「だからと言って撤退など言語道断!!市民の為にも命尽き果てるまで戦うべきです!!」
そう勇敢なマーハトリアンの第五小艦隊指揮官ダッグフォルト准将は声を大きくし言った。
「だからと言って部下に死ねと言うおつもりですか」
第三小艦隊のゲッター准将は落ち着いた口調で言った。
そんな状況をサヴィゼル上級少将は頭をかきながら眺めていた。するとラワル参謀が仏頂面で言った。
「如何やら上級少将にいい考えがお有りの様ですよ」
するとその場の将校全員がサヴィゼル上級少将の方へ顔を向けた。
サヴィゼル上級少将は困り驚いた表情をしていたがラワル参謀の目は「こうでもしないと言い出さないでしょう」と言うメッセージが込められていた。
「えっと…敵艦隊はその数を利用して包囲戦を敷いてくるだろうその時必ず敵の司令旗艦の守りは手薄になる、その時は我々は艦隊を二手に分け敵の頭上と船底の二方向から攻撃を仕掛けこれを撃破する」
その驚きの戦法にまず異議を申し立てたのはダッグフォルト准将だ。
「ちょっと待ってください!?そんな戦法聞いたことありませんよ!?」
「私も初めて言った」
「しかし相手はあのボルス高級提督、そう簡単に敵艦隊へ近づけましょうか?」
ゲッター准将は顎髭に手を当て考え込んだ。
「大丈夫、確か近くに恒星がある恒星から発せられる熱量に合わせて艦隊を動かせばきっと探知できないさ。すでに哨戒艦に命じて敵艦隊の正確な位置と妨害電波の放出は完了済みさ」
「いつの間に…」
そうグロント准将は絶句した。
「私がただ会議をサボって星を眺めているだけだと思ったかい」
その皮肉を込めた笑みは各将校の緊張をほぐすいい材料となった。
その頃神聖国軍艦隊の司令官ボルス高級提督は依然として艦隊を密集させたまま警戒を怠らず進軍を続けてた。
「依然敵艦隊の動き見られません」
「敵領内まであと4500Kmもう間も無く敵センサー圏内です」
「哨戒艦からの報告、この宙域に以上なし」
ブリッジの士官から定期報告を受けたボルス高級提督は妙な違和感を感じつつも作戦を実行した。
「よし作戦開始、各艦第一種戦闘配置のまま艦隊を包囲陣形へ!!」
艦隊は3つに分かれ[ガルザー級主力戦艦]が中央に集結し[ブントル級護衛艦]が艦隊を守る為前方へ後方に[バルトコール級空母]が
そして間の火力を補う為[ヴォホール級重巡洋艦]が配置された。
三段構えの形となった艦隊は敵領への進行作戦を開始した。
「しかしこれほどの数にこの戦術なら敵は恐れをなして逃げ出して行くでしょうね!!」
そうボルス高級提督の副官はどこか興奮した面持ちで言い出した。
「あぁ…だが何かが妙だ…気を抜くなよ」
「ハッ」
恐らくこの違和感に気付いていれば運命は変わっていたのだろう。
どうして敵の艦隊が発見できなかったのか。
なぜこうも易々と領内に進行できたのか。
この違和感が数時間後彼らに降りかかる悲劇となる…
観客のいない戦い
最初に異変を検知したのは旗艦艦隊のセンサーからであった。
「ん?恒星からのフレアがいつもより広範囲に広がっているなぁ」
「どうせ新型のセンサーが課題に感知しているだけじゃないのか?」
「今が作戦行動中と言うことを忘れるなよ」
そう若手のブリッジ士官を諫めた艦長は観測班に周辺の肉眼での探査を命じた。
だが肉眼での確認は少々時間がかかり発券が遅れた為気づいた頃には悲劇が差し迫っていた。
後方に二手に分かれた敵艦隊がこちらを補足していたのである。
最初に敵艦隊を砲撃したのはダッグフォルト准将率いる第五小艦隊であった。
「よしこのまま前進しつつ砲撃を続行!!敵の背後を狙うは些か心苦しいが仕方ない…手加減は無用!!撃ち尽くせ!!」
その命令と共に高火力を誇る[レイド級大型戦艦]や[ファイング級戦艦]、[ジレス級重巡洋艦]が砲火を強め敵艦を次々と沈めていった。
しかしそれで心が折れるほど敵の艦隊は弱くはなかった。すぐさま体制を立て直し反撃を試みたが事前に張られたシールドにより全て水泡とかした。
また後方艦隊の実弾や魚雷での支援により上下から挟撃された艦隊は次々と爆煙を上げ大破した。
また機動力のある[アポロノーム級軽巡洋艦]や[キュープ級駆逐艦]が物凄い速さで砲撃を躱しビーム砲や魚雷を近距離で叩きつけた。
依然として駆逐艦や軽巡洋艦が存在する利点はこう言う所にあるのだろう。
「よし全機発艦」
そして後方の支援に位置するゲッター准将の[パルサス級空母]機動部隊から発進した[宇宙地上兼用歩行戦闘機=STWF]は次々と
敵のSTWFを撃破し爆撃機タイプのSTWFがついに敵中央に爆撃を開始した。
ボルス高級提督の旗艦も爆撃の被害に遭ったが何とか耐え対空戦闘を開始した。
一機のSTWFがフライトモードからスタンドモードにチェンジし2機のSTWFを両腕の固定ビーム砲で撃墜、腰のビーム砲で一隻の
ヴォホール級重巡洋艦のエンジンに直撃させ両腕をサーベルモードに固定し艦橋を真っ二つに切り裂いた。
その頃攻撃を受けず無傷な前方艦隊は反転し艦隊の“上”に位置する敵艦隊に砲火を集中した。
しかし第四小艦隊の[ディフェイト級護衛艦]が前方に展開し砲撃を完全に無効化した。
護衛艦とは主に艦隊や要塞を通常の船よりより強力なシールドを展開し艦隊を守ると言う船だ。小型な為武装は少ないが防御力で言えばこの船を超える能力を持つ艦船はそうはいないだろう。
そして真後ろに待機していた、ジレス級重巡洋艦とファイング級戦艦が一斉に砲撃を開始し反転した艦隊は壊滅した。
すでに敗北を悟ったボルス高級提督はせめて味方に危機を伝えようと連絡を図っていたが妨害電波が強く通信できなかった。
「味方損害率81%!!」
「エドレケン撃沈!!フグラシュトもです!!」
負けたな。そうボルス高級提督は心の中で思った。そしてせめて相手の指揮官と顔を合わせて見たかったなと。
味方の損害率が93%を超えた時突如敵旗艦から通信が入った。
『こちらは第十三防衛艦隊司令官、ファキャル・サヴィゼル上級少将です。あなた方の勇敢な戦いぶり感服致しました、ここで殺したくはない是非とも降伏を」
そう敵司令官のサヴィゼル上級少将は降伏を迫った。
まだ若いな…
彼はどこか驚きと晴れやかな気持ちを持ってその問いに答えた。
「サヴィゼル少将、貴官らの好意感謝する。しかし我々は軍人だせめて貴官らの手で葬って欲しい…」
ふと隣にいる副官や周りの士官の顔を見た。
皆覚悟を決め笑みを浮かべながらボルス高級提督を見ていた。
すまない…私が不甲斐ないばかりにとボルス高級提督心の中で謝罪した。
するとサヴィゼル上級少将もどこか悲しい表情で命令を下した。
『了解した…貴方たちの勇敢な戦いぶりは必ず後世に引き継ぐ。!!全艦最大火力で砲撃一発も外すな!!』
どうやら彼はせめて苦しまず一撃で葬ってくれるらしい。
「ありがとう少将、貴官の紳士な対応あの世への手見上げとして語らせてもらおう」
「こちらもできれば敵同士でお会いしたくはありませんでした…」
ボルス高級提督は小さな声で笑い真っ直ぐモニターを見た。
直後残った全ての艦艇に一発も外さずビーム砲が直撃し全ての船がこの広大な宇宙の藻屑と消えた。
「敵旗艦撃沈!!残存艦艇なし」
直後ブリッジは戦闘態勢から常時のモードに切り替わり皆肩の力を落とし声には出さないが喜んだ。
しかしこの男は違った。
「サヴィゼル上級少将?」
「何でもないよラワル参謀…本当に惜しい方を亡くした…」
その重い言葉にラワル参謀も同調した。
「あのような将校、連邦軍内にもそうそういません」
「あぁ…これが戦争…容赦無く人の命を奪う人が作りし悪き物だ」
そう言ったはいい物のサヴィゼル上級少将は実際悩んでいた。その戦争で儲け暮らしている者の一人は自分だからだ。
そんな自分がたまらなく嫌だった。
「上級少将、キャッツ提督の麾下艦隊が別働艦隊の一隊を撃滅したと報告があります、もう一隊も撤退を開始したと」
「わかった、全艦に打電撤退しようとする艦船に一切の砲撃は許さないと」
「了解しました」
ラワル参謀は心中を察し何も言わなかった。そしてそのままブリッジを飛び出したサヴィゼル提督は再び星と艦隊を眺めていた。
彼は窓越しの宇宙が全て今のような戦場になったらどうなるのだろうと考えていた。
一体何名のボルス高級提督のような方を犠牲にすればいいのだろうか…
そしてこの果てしなき戦いに終わりはくるのだろうかと。
しかしいくら考えても答えは出なかった。それでも考え続けた。そして考える事は彼の最も得意とする事だったので何の苦にもならなかった。
つづく
いかがでしたでしょうか?