オーバーウォーズ   作:Eitoku Inobe

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第二話です!!


終わらぬ戦い

 

プロローグ

 

ボルス艦隊の大敗により連邦領侵攻作戦大失敗に終わった。

損害もただなぬものであった。

2000万隻以上を失った多くの上優秀な将校を冥府へと手渡してしまった。

当然イリメリスは黙って見ているほど優しくは無くすぐさま大規模な侵攻作戦を実行に移そうとしていた…

 

サヴィゼル艦隊集結

 

連邦軍上層部から名誉上級中将に昇進を言い渡されたファキャル・サヴィゼルは首都惑星デセップスの軍本部の廊下で一人ため息を吐いていた。

「まさか名誉中将とは…彼らの命を踏み台にした結果がこれか…」

「名誉将官などそうなれるものではありません、もっと自信を持ってください」

そう参謀ラワル准将は相変わらずの仏頂面で言った。

インティガリアンは知性が高く豊かで優れたユーモアの持ち主が多いのだが例外もいるようでラワルがまさにその一人であった。

「まあ…どうやらすぐに戦場に駆り出されるようだがな」

「その件についてですが作戦立案の進捗は」

「私の方で大まかな内容は考えた、細部は君に任せるとして分艦隊指揮官達を呼んでくれ話はそれからだ」

 

「お久しぶりです提督!!」

「アステッセルこないだは本当に助かったよ」

彼は[アステッセル・ニューペル]。サヴィゼル艦隊の分艦隊指揮官の一人で前回の戦いでは哨戒艦や小艦隊を率いた寄せ集めの艦隊でボルス艦隊1700万隻相手に見事な連携で侵攻を阻んだのだ。

実質サヴィゼル艦隊のナンバー2である。

「それで今回はどんな無理難題をふっかけられたので?」

「あぁその件についてだが…」

ゲッター准将やダックフォルト准将、グロント准将達もこちらを見た。

全員次に命を賭ける場がどんな所か、どんな作戦で打って出るか彼らは聞く理由が山ほどあった。

「我々はヒィーゼル中将、チェルス中将を含めた3個艦隊が今回の作戦に投入される総数およそ1億2000万隻」

指揮官達は声を上げて驚いた。

1億2000万隻という大部隊が投入される作戦はあまり類を見なかったからだ。

そしてさらに驚くべき要素があった。

「そして敵艦隊は総数3億隻」

普通の将校であれば戦慄しそこからピクリとも動けなくなっただろう。

今まで神聖国軍は幾度と無く中小規模の侵攻作戦を繰り返して来たが3億隻という大艦隊による作戦はそれこそ類を見なかった。

防衛する味方の3倍弱という戦力の差も十分彼らの恐怖心を刺激した。

「まあいつもの事ながら戦力の差は如何ともし難いが、ここで連中の鼻を折ってやれば当分デセップスの街を眺めながら優雅に茶が飲めるぞ」

冗談まじりに部下の緊張をほぐした。

「では貴方の戦術お聞かせ願いましょうか?“名誉中将”」

艦隊一の怪力男ダックフォルト准将は露骨にサヴィゼルをからかった。その微笑ましい光景に老練なゲッター准将ですら笑みを零した。

まあラワルは相変わらず無表情だったが。

「まあ鼻を折るってよりは鼻をつまむって戦術なんだが…」

 

「サヴィゼル提督お聞かせ願おう、君の戦術案を」

「はい、ですがこの戦術ではあなた方に一番負担を強いる事になります」

サヴィゼルは一応の確認を提督達に取った。

皆苦悶の表情を浮かべていた。

「かまわん市民を守り神聖国打倒の一歩のためならこの命いくらだって捧げよう」

第十五艦隊のチェルス中将は皆の覚悟を口に出した。

「ではまず敵艦隊は以前と同様に艦隊を分散し作戦に移るでしょう、そこで各艦隊はこちらで予測できる3つのルートを死守してもらいます」

「待て敵艦隊は分散してくるとは限らんぞ、特に前回の戦いを踏まえれば尚更だ」

艦隊指揮官の一人デッサール中将が忠告した。

「ですが敵は大軍、一箇所に集中的に攻撃した所で大軍の利点を活かせません。それに敵は我々の寝首をかきたいのか小惑星帯付近に陣取っています、ここを通るのに大軍では無理でしょう…そして何より重要なのは敵の大将がイリメリスの本国で悠々自適に過ごしていたという事です。そんな坊ちゃんが敗北を活かそうとするでしょうか?私はしないと考えます」

「なるほど、続けてくれ」

「先ほども言った通り敵艦隊は小惑星帯に入ってくるでしょうが本隊は通信状況や指揮系統から見ても安全なポイントから動かないでしょう、そこで各艦隊は分散した艦隊を引きつけつつ我が艦隊で本隊を殲滅し指揮系統を混乱させます」

サヴィゼルの無茶苦茶ではあるが筋の通った戦術はその場の将校達を唸らせた。

さらに彼は雄弁を続けた。

「そこで逃げてくれるもよし、そのまま膠着状態に持ち込むもよし我々に取ってはいいこと尽くめです」

「わかった…貴官の戦術に合わせて艦隊編成を行うだがいいのか?囮の我々より君の方がよほど重役だぞ」

サヴィゼルは少し困った顔をしていたがすぐに表情を変えその憂いを払拭した。

「そんなこと作戦を立てた時から覚悟の上ですよ」

 

連邦艦隊は艦艇の編成を完了し戦場へと赴こうとしていた。

各艦隊指揮官も歴戦の猛者も一兵卒までもが心臓の鼓動を早めながら持ち場についた。

「各艦位置につきました、いつでも行けます」

「よし座標をエンケリスの門へ!!」

連邦軍の軍艦は全て粒子の粒になりその場から消えた。

サヴィゼルを含めた戦士達が戦いの場へ駆けていったのだ。

 

死闘

 

ガス帯紅く彩られた宇宙空間に橙色と黄色を混ぜた色をした光が宇宙というキャンバスを彩った。

彩られた光は戦いの光、人が最も醜いと蔑む殺し合いの光だ。

しかしその光は止むことはなく何十、何百もの光が紅の宇宙に消えていった。

小惑星に隠れた連邦艦隊は次々とて神聖国軍を狙い撃った。

神聖国軍も負けじとシールドを展開し反撃に出た。

あっという間に両者は膠着状態となってしまった。

このルートだけでなく各ルートでも連邦軍はそれぞれ己の職務を全うしようとしていた。

「護衛艦を全面に展開しつつ主力艦は中央に火力を集中、後方艦隊は実体弾で支援攻撃!いいか我々は時間を稼ぐだけでいいんだ…焦るなよ」

中央のルートを死守するフィーゼル中将は冷静に命令を出した。

しかし内心この状況に焦りを感じていた。

(だが敵は我々の3倍…地の利や防衛上の優位があるとはいえいつまで保つか…)

 

「敵艦隊のシールドが強力で十分な損害を与えられていません」

「分かっておるSTWF隊全機発艦!雷撃によるシールド突破を図る!!」

「お待ち下さい、敵は密集しており辿り着く前に対空砲網で損害が…」

「それでもかまわん!!多少の犠牲はやむなし…全機発艦し突撃!!」

後方の[バルトコール]級空母から発進した神聖国軍のSTWF[MF-12/Aバスターファイター]が解き放たれた獣のように広大な戦場を駆け回った。

「敵宙戦闘機発艦を確認!!」

「駆逐艦、軽巡を前方に展開し対空砲網を確立!空母はフリーディフェントを発艦させ後方に退避、各艦は前方シールドから全方位シールドに変更!!」

艦隊は素早く陣形を変えせめり来る敵機から身を守った。

素早い陣形の転換は功を奏し次々と敵のSTWFを粉砕した。後方から戦場に急行してきた連邦軍のSTWF[GG-3フリーディフェント]は素早さとは裏腹の火力でバスターファイターの編隊を次々と崩していった。

優秀なAIとそれを上回る連邦のパイロット達はあっという間に敵を追い返し艦隊を守った。

「提督サヴィゼル艦隊より緊急暗号通信!!『我作戦ヲ完遂ス』…間も無く攻撃開始です!!」

ブリッジの士官達は皆その報告に釘付けにされた。

「何!?ついに…よし敵艦隊を引きつけるぞ全艦凸陣形のまま進軍!!砲火の手を緩めず奴らの鼻っ面をもぎ取ってやれ!」

各艦隊は攻勢に転じた。

もうすぐ勝利が近づいていた、博打のような作戦だが勝てればそれで十分であった。

彼ら軍人は市民と国益、理想の為に命だって賭けるのだ。

 

得たもの

 

「敵本隊まで残り3万km…」

「ついに敵のセンサー範囲内か…我々のカモフラージュがうまく働いてるといいが…」

「察知されていれば敵は呑気に増援を出したりしませんよ」

「各分艦隊、準備完了いたしました」

サヴィゼルはエネルギー消費による熱源の発生を少しでも抑える為電源をカットされたブリッジで士官から報告を聞いていた。

「全艦最大速度で進撃敵の意表を突く」

 

「各艦隊と通信途絶、増援要請からの報告がありません」

通信士官からの報告を受けた全艦隊の指揮を取る[ドルース・シェデルストック]高級大将は顎に手を当てながらため息を吐いた。

「全くこれだから一般階級の成り上がりは…増援をくれてやれ」

彼はものすごい不機嫌な顔でそう命令を下した。

心の中では今口にした言葉以上に分散した艦隊指揮官を罵っていた。

その程度の知恵も回らんのか一般平民はと。

イリメリスは古来から専制政治が行われており上流階級である[神族]と一般階級である[平民]、現在は“一応の所”銀河の全域を支配している為イリメリス出身者ならば[上級平民]と扱われているが神族の者にとっては奴隷同然でありそんな彼らが同じ土俵にいることさえ悍しい事だった。

その例に反さずドルースも多くの平民を馬鹿にし前回戦死されたボルス提督も

「愚かな成り上がり者が無能だっただけ」と言い全く反省を活かそうとしなかった。

その為付け入る隙を与えてしまった。

「センサーに反応…識別信号がない?妙だな…これは…これは連邦艦隊です!!」

「なんだとぉ!?詳しく報告を…」

艦の大きな揺れと共にドルースの声はかき消されてしまった。

そして彼はモニターに目を奪われた。何万隻もの敵艦がこちらに砲撃してくる様を。

 

「全艦砲撃開始、出し惜しむな。第三群は後方から支援を第四群、第五群は作戦通り敵を分断せよ。第六群は包囲網の足掛かりを」

命令と共に勇敢な第四群のキュープ級やアポロノーム級が敵艦隊を分け入るように突撃した。

魚雷やビーム砲で次々と無防備な艦艇を沈め着々と目標を達成していった。

第五群も負けじとレイド級やファング級、ジレス級が持ち前の大火力で大きな穴を開けていった。

第三群の指揮官ゲッター准将は状況を判断し命令を下した。

「全艦に通達、STWF第一、第二中隊を発艦させ敵残存艦艇を叩かせろ」

その直後ヴェサル級とパルサス級から発進したフリーディフェントが次々と孤立した敵艦を一方的に蹂躙した。

このよう社内攻撃により遂に艦隊は分断され包囲陣を取られてしまった。

すると敵の一部が突撃陣形を取ろうとしていた。

「脱出だと?行かせるか!そうだろうグロント?」

『あぁ無論だ、敵の前衛に集中砲火!!一隻も通すな』

ダックフォルト、グロントの分艦隊は脱出を図る敵艦隊に十字砲火を浴びせ次々と宇宙の藻屑に変えていった。

「全く、皆様方だけにいい思いをさせるモンですか!敵艦の中で一番デカくで豪勢なやつを叩け!」

アステッセルはメインディッシュ=機関に狙いを定めていた。

癖の強い分艦隊指揮官達は手柄を上げる為戦果を競い合っていた。

「各司令官に通達してくれ、無茶はし過ぎるなと」

「はっ」

サヴィゼルは困った顔でモニターを凝視していた。

「敵艦隊おそらく損耗率は45%行動不能艦はまもなく半数を超えます」

「そうかならこのまま各個撃破に集中、余計なものは全て流せ」

 

神聖国艦隊は報告にあった通り熾烈な砲火の影響により半数が行動不能または撃破されしかも旗艦[デットウェスⅡ]も被害を受けた。

そのことによりドルースの怒りは頂点に達しており爆音よりも彼の怒声の方が鳴り止まなかった。

「艦隊を再編し突撃!!退路を作り出すのだ!!」

「行動不能艦が7割に到達!!もはや組織的な行動は…」

「だからなんだというのだ!!我々だけでも生き残らねば他の2億4000万隻に乗っている将兵が…」

「超高エネルギー砲きます!!」

「シールドを展開!!」

「間に合いません!!」

ドルースの最期は呆気ないものだった。

目を見開きブリッジに直立不動のままビームの光と共に跡形もなくこの世から消え去ったのだ。

旗艦デットウェスⅡ世もあちこちで煙を立てながら大爆発を起こした。

これが神聖国軍の敗北を決定的なものにした。

狼狽し我先にと逃げ出そうとする残存艦艇は隊列すら組まずに突撃し尽く各個撃破され“全滅”した。

容赦ない砲火により多くの神聖国軍兵士が命を落とした。

それでも連邦側にとっては“当然の報い”であり代わりに領土と市民が守られたことを喜んだ。

ただ一人サヴィゼルを除いて…

 

エピローグ

 

大銀河連邦軍は再び勝利した。

本隊を失い指揮系統が崩れた侵攻軍は神聖国領内に大急ぎで逃げ込んだ。

この戦いではイリメリス側は役9300万隻という多くの艦艇を失い再び痛手と面目が丸潰れになった。

一方連邦国内では勝利による祝賀パーティーが盛大に執り行われていた。

市民、軍、政府全員が勝利の美酒に酔いしれ今回の勝利の立役者であるサヴィゼルを称え英雄と呼んだ。

彼は昇進して名誉上級大将となった。

だがこの一戦だけで戦争は終わらなかった。

神聖国、連邦、お互いにさらなる進行作戦を考えていた。

銀河は3万年たった今でも争いをやめられずにいた。

 

つづく




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