サヴィゼル達多くの将兵を戦場へ送り出した。
しかし今回の戦いは泥沼の白兵戦だった…
プロローグ
「さて諸君、我々は再び防衛戦に勝利した訳だ…だがそれでも神聖国軍は侵攻作戦をやめないであろう」
大銀河連邦軍の最高司令官[ビュール・バイカルス]大元帥は各元帥達に判断を仰いだ。
「ではよろしいいでしょうか?」
「あぁかまわん、ローグ元帥どうぞ」
彼[アータルセス・ローグ]元帥は席を立ち少し声を大きくし進言した。
「我々は今まで防戦一方でした…だからこそ神聖国軍の要[エッテンベルク]要塞を攻略すべきです!!」
元帥達は騒めきとともに素早く思考を巡らせた。
当然その判断が最適なのは分かっている、しかしどこかでブレーキが掛かっていたのだ。
「しかしだねローグ元帥、あの堅牢な要塞陥せる艦隊は…」
「私自ら行きます」
「だがそれでは君が危険に…」
元帥の一人[ゲーテ・ヴォーグランフ]は彼の身を心配した。
エッテンベルク要塞はイリメリスが連邦領侵攻の為に配備した要塞で全方位を常にシールドで覆われあちこちにビーム砲台が設置されまさに難攻不落の要塞であった。
かつて連邦軍以前の反乱軍が幾度となくこの要塞を攻撃したが全て失敗、どの作戦も多大な犠牲を出して失敗に終わった。
そんな要塞攻略出来るとは到底思えなかった。
「しかしやらねば戦いは終わりません、この要塞を攻略すれば神聖国に対して圧をかけることができ交渉へ持ち込めるかもしれません」
元帥達は頭を抱えていた。
そしてついに決断が下された。
「ローグ元帥貴官は第二主力艦隊を率いエッテンベルク要塞を攻略せよ」
鉄の男
「えぇ要塞攻略に付き合え?」
「はいローグ元帥の麾下艦隊として作戦に参加せよと」
デセップスの軍事基地のカフェテリアでコーヒーを嗜んでいたサヴィゼルは今までになく嫌そうな表情でその布告を聞いた。
コーヒーや紅茶というのはヒューマン、つまり人類が3万年より昔から受け継がれていたものであり残りの二種族の力も加わり品種改良が進みこの時代まで受け継がれてきた。
その為この時代のコーヒーは殆どの種族の口に合い味もより良いものになっている。
しかしそんなことよりサヴィゼルはラワルからの報告の方が重要だった。
「作戦としては我々が敵駐留艦隊と交戦してる間に突撃隊が司令室を占拠すると言う作戦です」
「はぁでその突撃隊は?誰が指揮を取るんだ?そんな無茶苦茶な作戦命が100個あるか命知らずしか務まらんぞ?」
「突撃隊の隊長は…」
「私が努めさせていただきます」
2人はその屈強な男に顔を向けた。
そのマーハトリアンの男の名前は[フレッサール・レーゼリフ]名誉上級大将。
大銀河連邦軍の地上軍総監で彼自身も[鉄血軍人]や[人肉料理人]など聞くだけで恐ろしい異名を持っていた。
その名前通り彼の分隊だけで100人近くの歩兵を殲滅したと言う逸話があり彼だけでも今まで倒してきたAI歩兵を1000体以上破壊してきたと言う記録を持つ生粋の軍人であった。
「なぜ貴方が…」
さすがのサヴィゼルも彼を前にして些か動揺を禁じ得なかった。
「小官はローグ元帥と少し馴染みがありまして、それに要塞攻略は将官の最も得意たる戦法是非ともと進言したまでです」
「それは心強いですな、それで我々に何か?」
サヴィゼルは彼に問いかけた。
わざわざ話に割って入ってくると言うことは何かあるのだろう。
「はい貴官の部下のダックフォルト准将を少しお借りしたい」
惑星フォアガデン、対神聖国軍の最前線基地では多くの兵士が今日も防衛戦、制圧戦、包囲戦、電撃戦といった様々な戦術に適した訓練を口一つこぼさず行っていた。
「最前線のクローンともなれば表情がガラッと変わるね」
そうこの場で訓練している殆どの兵士はある人物から取った遺伝子から生産したクローンなのだ。
しかもかつてのクローンとは違い誕生以前に遺伝子を組み替えより戦闘に特化した戦闘マシンに仕立て上げていた。
また旧タイプのクローンで問題視されていた寿命の問題も体内にある期間ごと注入される成長抑制剤により解決され神聖国軍が使用するAI 搭載型の歩兵よりも優秀だった。
無論各種族の歩兵もそんなクローンに負けじと訓練を続けていた。
「皆小官直属の部下です、各惑星を転々とし多くの戦場を共にしてきました」
すると反対側から彼らよく知るマーハトリアンが歩いてきた。
「ダックフォルト准将であります!!お久しぶりです教官殿」
「教官だって!?」
「えぇ彼は小官の教え子です、何度か戦場を共にしたこともありましてね」
サヴィゼルは結構驚いていた。ラワルはいつも通りであったが内心驚いているに違いない。
「それに私に宇宙艦隊に転属して見ないかと言ってくれたのもレーゼリフ大将のおかげなんです」
「よせあれはお前に才能があったらでなぁ」
「えっと昔話の最中申し訳ないですが本題に移りましょうか?」
「では行ってまいります」
敬礼し白い軍服に身を包んだ10名の将校は目の前のバイカルス大元帥に敬礼した。
「では再度確認です、本作戦には最前線の三個宇宙艦隊と第二主力艦隊合わせて九個宇宙艦隊が投入されます。最高司令官としてローグ元帥、そしてラスタール・サルキス中将に
ルドードス・サルキス中将、サヴィゼル大将、ベルリンフ中将、アウェール中将、
シュルメイ中将、ゲデーレ中将、ヴィサン大将、突撃隊指揮官はレーゼリフ大将、
そして突撃隊120万名が参加します」
九個宇宙艦隊に120万名の大軍。
そして大軍ゆえ負けるわけにはいかなかった。
「イリメリスの独裁から解き放たれる為民主主義復活の為諸君らの奮闘に期待する」
デセップス星系の各惑星上空には3億6000万隻の大艦隊が宇宙という名の大海原に出航しようとしていた。
ブリッジでは士官達が忙しくキーボードをタップし予備の操縦桿を握り不測の事態に備えてていた。
そして遂に全艦が配置についた。
「座標位置エンケリスの門、転送後の座標はエッテンベルク2-9」
「各システム異常なし、思考固定完了転送システムを起動する」
艦隊は粒子の粒となり戦場へと消えた。
血の道
エッテンベルク要塞には一人の勇猛果敢な指揮官がいた。
フェルリック・フォン・ゼネイン高級大将だ。
しかし彼は少々性格に難があり勇猛で知れていたが部下の進言を聞かない節があり
陰では[害虫大将]と貶されていた。
この日もそうであった。
「大将エンケリスの門で巨大なエネルギーを観測しました」
「ほう、反乱軍め一体何を…」
「大将!!ワープ航路より敵艦隊の艦影あり!!数は…3億隻以上!!」
「なんだとぉ!?」
すると何もない宇宙空間から無数の軍艦が姿を現しその殆どの船が熱線を浴びせてきた。
当然常に全方位をシールドで守られているエッテンベルク要塞には無意味だったが防戦一方というのはゼイネン大将の望む所ではなかった。
「全艦隊出撃!!私の旗艦も出せ!!」
「お待ちください、この状況で要塞から司令官が不在なのは危険です!代わりに私が行きます」
副官や周りの将校達は彼を止めたが好戦的な彼を止めることはできなかった。
「この要塞がそう簡単に突破されるか、渡すが直々に反乱軍に引導を渡してやる」
不穏な空気を司令室に残したままゼイネン大将は戦場へと急行した。
「各艦敵を引きつけつつ微速後退!!駐留艦隊を引き離すんだ」
各艦隊はそれぞれローグ元帥麾下の元忠実に任務をこなしていた。
その中でも特に戦果を上げていたのはラスタール、ルドードス、サルキス兄弟であった。
サルキス兄弟は両方とも見事な艦隊運用の手腕を持ち兄弟ということもあってか両者の連携力は凄まじいものであった。
「よし前面にレイド級、ジレス級を展開火力を埋めつつ他の艦隊の援護をする」
「なるほどさすが弟だ、我々は奴の艦隊の後ろに突き実体弾で援護する」
両艦隊は互いを支えつつ全艦隊の後退を援護した。
互いに入れ替わりつつ損害を分散し火力に薄みを出さないよう入れ替わる時に補給を怠らなかった。
彼らの息の合ったコンビネーションにより神聖国艦隊は付け入る隙がなく次の手を決めかねていた。
また敵に損害を与えられない事にゼイネン大将の怒りを募らせていた。
「敵駐留艦隊引き離しに成功しました!!」
「よし、全艦隊包囲陣を展開して敵を包み込め!」
後退をやめ前進を始めた連邦艦隊は砲撃と共に開戦の火蓋を切った。
駐留艦隊1億隻に対して連邦艦隊は3億6000万隻以上数の上では明らかに有利であり尚且つ各艦隊の見事な動きによりすぐさま神聖国艦隊は手詰まりになってしまった。
しかし本当の戦いはこれからだった。
「さてと…全艦最大出力でシールドを展開強襲揚陸艇を突入させろ」
サヴィゼルの艦隊は砲撃をやめシールドを展開しながら敵の側面を通り過ぎていった。
当然突破させまいと駐留艦隊は抵抗したがサヴィゼル艦隊のシールドに阻まれ取りこぼしてしまった。
とは言えまだ要塞の砲台があった為さほど深くは追わなかった。
だがこの判断が仇となった。
なんと揚陸艇は全て駆逐艦並みのシールドを展開し全て防いだのだ。
その小型さから主砲などは存在せず反撃はなかったが十分感嘆に値する物であった。
そしてさらに目を疑うものがあった。
本来要塞は通常の艦船と同じく防御シールドが展開され突破は不可能であった。
特にエッテンベルク要塞はさらに磁場シールド、物理的なシールドの三重高層になっている、だがこれが最も簡単に破られたのだ。
「揚陸隊は成功したか…レーゼリフ頼んだぞ…」
そう古き友人に託すと彼は彼にできることをした。
揚陸艇からすぐさまアーマーを着込んだ突撃兵たちが現れた。
要塞内は警報が鳴り響いいていた。神聖国兵達はアーマーを着る暇もなくただブラスターを構え各ルートを死守していた。
だが彼ら突撃達を倒すことはできなかった。
アーマーは頑丈で数発の弾丸では致命傷を与えることができず侵入を許してしまった。
特に素早く侵入してきたのがレーゼリフ名誉上級大将の部隊だった。
まさに鬼神とも言うべきその隊は止まる事なく歩兵を撃ち倒し通路を血で塗装して行った。
「全隊このまま前進!!怯むな[ヒューズリック]の神は我らとともにあるぞ!!」
そう武神の名前を挙げ士気を高めるレーゼリフの前についにアーマー付きの歩兵が現れた。
『貴様は…レーゼリフだな?貴様のような赤虫が我が同胞をすり潰し肉体を弄んでいると考えると虫唾が走る!!ここで死んでもらおう!!』
先頭の兵が銃剣の剣先を思いっきり突き立ててきた。
それは無意味に終わった。
ひょろりと交わすとレーゼリフは己の銃剣を思いっきり敵の脳天に叩きつけた。
先ほどまで彼に差別的な口調で突進してきた愚か者は何も言わず崩れ落ちた。
どうやら残りの歩兵は皆怖じけずいたらしい。
後退りを始めた。
だが逆にその敵兵の死体を掴んだレーゼリフを目に前にし覚悟を決めたのか彼らは皆突撃を始めた。
しかし容赦無く胴や首、脳天に剣を叩きつけられその鮮血を撒き散らし倒れた。
彼の部下達も迫り来る敵兵を迎え撃ち返り討ちにしてやった。
中でも特に凄まじかったのがダックフォルト准将だ。
彼は近接戦においても類稀な才能を発揮しレーゼリフと同等の戦果を上げていた。
だが戦果というのは些か綺麗すぎるかもしれない。
当然相手は生命体だ。
どこかを斬れば流血が飛び散る。
それは当たり前のことだ。
その当たり前は戦いが終わった戦場を無慈悲に流血の道に変えてしまう。
こうしてる間にも自由のため戦う連邦軍の突撃兵達は己の血を敵兵の血を壁に叩きつけていた。
先頭が圧倒的連邦軍の勝利で終わる頃には司令室まで繋がる通路は全て様々な鮮血に彩られていた。
「第五要塞砲網応答途絶!!」
「第三通路が突破されました少将!!」
兵達の悲鳴に似た声が司令室中に響き渡る。
代理の司令官として残された副官の少将は後退りしていた。
強すぎる。
あまりにも敵が強すぎる。
敵の突入隊が侵入して戦闘が開始されてからすでに2時間と少し経っていたがすでに要塞内の3割近くが機能を失っていた。
「どうする…このままでは増援到着前に要塞は陥落するぞ…!」
「分かっているだが…第二区画、第八区画の兵を第一区画周辺に展開するんだ!!」
少将は緊急策として命令を出した。
「どの道間に合わんぞ…!?」
「分かっている…だがこのままでは」
「少将!!第一通路が突歯されました!!」
2人は振り返った。
第一通路はこの要塞司令室に最も近い通路だ。
ここが突破されるということはすでに敵がすぐそこまで迫って来ることを示していた。
そしてきた。
「どけぇい!!」
「何!?」
「グハッうゔ…」
扉を警備していた2人の兵が斬り殺された。
アーマーを着た大男はまっすぐ少将達の方へ向かっていた。
「あっああ…あぁヒィィ!!」
少将はあまりの恐怖により顔を引きつらせ叫び声を上げて逃げ出したが一足遅かった。
軍服の襟元を掴まれ首筋に銃剣の剣先を付けられた。
「貴様が要塞指揮官だな?悪いが来てもらうぞ」
「ちっちがう!!私は要塞指揮官ではない!!本当の指揮官は今駐留艦隊にいる!!信じてくれ!!」
必死に弁解する少将の顔を見てレーゼリフがこう言い放った。
「ならば貴様でもかまわん今すぐ言え要塞は降伏すると」
「そっそんなこと言えるわけ!」
怯えながら反論する少将にレーゼリフは剣を近づけた。
「別に貴様でなくともかまわんそこにもそこにも代わり居るしなハッハッハ」
「分かった…降伏する…」
その瞬間司令室内に後から続いてきた突撃兵達が一斉に飛び出した。
「遅かったなダックフォルト」
ヘルメット越しからニヤつく彼に思わずレーゼリフ大将もニヤついてしまった。
「すでに閣下には連絡を入れておきました」
「仕事が早い」
2人は思わず大声で笑った。
それは神聖国軍の兵から見れば気味の悪く恐ろしい姿だったのかもしれない。
未だ駐留艦隊と連邦艦隊の交戦は続いていた。
ゼネイン大将のおかげか数の少ない駐留艦隊もだいぶ反撃していた。
だが士気の高さと事前に組まれた作戦の綿密さには敵わずまた一隻、また数百隻と見方の数が少なくなっていた。
すでに1億隻存在した駐留艦隊は7000万隻にまで減っていた。
「提督ダックフォルト准将より要塞司令室の占拠および降伏に成功したそうです!!」
思わずサヴィゼルの顔も緩んだ。
「よし敵艦隊に降伏を呼びかけろ」
「わかりました閣下」
その1分後的の全艦艇に幸福の呼び掛けが広まった。
当然艦隊を指揮するゼネイン大将のもとにも繋がっていた。
「降伏だと…要塞が陥落しただと…」
彼は思わず唖然とし椅子にも垂れ込んだ。
そこから何か独り言のようなものを呟いていた。
「閣下どうなさるおつもりですか…?」
「死ぬのだ」
「はっ?」
「全員神帝陛下の恩顧に報い斬れない罰を受けるため全艦突撃し死ぬのだ」
「何を言い出すのですか…」
艦長は震えた声で言い出した。
「敗北の恥辱に塗れ本国へ戻ることなどできぬ!!我らはここで名誉の死を受けれるのだ!!させれば戦いの神[オーテルト]の」
「味方艦が数千隻離脱していいきます!!」
「何!?」
モニターに映し出された映像はゼネイン対象の精神を逆撫した。
砲撃もしない敵に情けなく降伏しているのだ。
気がつけば逃げ出す艦は数万隻近くに届いていた。
「撃て…裏切り者を抹殺し我らも死ぬのだ!!」
命令通りゼネイン大将と近くの艦が一成に無防備な味方艦に発砲した。
シールドも展開していない艦は爆発を起こし残骸だけとなった。
「敵艦隊逃亡する間に発砲している模様です」
「護衛艦に逃亡艦を防衛させ全艦で攻撃する敵艦隊に最後の一撃を加える」
レイド級の大型砲塔がゼネイン大将の艦に一斉発射した。
全方位からの攻撃には耐え斬れず最後まで戦うことを選んだ数万隻の艦隊は一瞬で全滅した。
この戦いにおける連邦軍の損害は艦艇数千隻と歩兵数万名のみだった。
戦術的にも戦略的にも大勝を収めたこの戦いは侵攻作戦失敗で動揺する神聖国内に多大なダメージを与え今後の侵攻を一切取りやめることになった。
だがこのひとつの戦いで神聖国と連邦の今後の戦争を完全に終結させるわけではなかった。
エピローグ
「おぉ生まれたか!!」
これが僕の最初に聞いた声だった。
まだ完全に機能してない視覚機能を使って僕は声の主を見つめた。
「うむよく生まれてきたよ…いやわしも嬉しい…」
その初老の老人は自分の子でもないのに僕を抱き抱えて喜んだ。
だが僕が“このタイプ”に生まれてきたのは間違いかもしれない。
だって僕に与えられたものは権威だけなのだから…
つづく
如何でしたでしょうか?