あなたが落としたのはきれいな無惨ですか?   作:三柱 努

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とある隊士見習いの近況報告【後編】

藤襲山はもう鬼の里じゃなくなった。人しかいない普通の村だ。

といっても名前は鬼の里のままだし。村の景色だって・・・

今まで通りじゃいかないよな、今日から。

 

ということで俺たちは今、せっせと祭の準備中。宴だよ宴。

みんなが人に戻れたんだから、せっかくなら豪華にお祝いしようって話に自然となったんだ。

で、そこに出しゃばるのが派手の神。

「祭りの神が仕切ってやるんだ。ド派手に祝うぞ」

この人も柱。柱って変な奴ばっかりだよな。伊之助の山の神宣言とどっこいどっこいだ。

しかも嫁が3人もいんだよ。ざっけんなよ。

ちなみに準備は祭のことだけじゃない。村の大改造も同時進行。

今まで日光から鬼を守るために、山には日陰を作るために木がたくさん並んでいた。

それが生活するには不便なんだよ。道も作れないし、家も大きなものが作れないし、で。

景観を損ねない程度に伐採することになった。

「やっぱ力が落ちたなぁ」

鬼はみんな怪力だったけど、人に戻ったら非力になったって実感してた。

累の父さんは筋肉ムキムキの姿のまま薬を打ってたから、ムキムキ人間になってた。

ならさ、母さんもたわわに・・・

 

殴られた。覚えているのは父さんの手があったことくらいかな。タンコブが3つくらいある気がするんだけど。

まぁそんなこんなで今までみたいな力仕事ができなくなったから、皆で力を合わせないとって連帯感が強くなった気がする。

無惨様も力が弱いままだから器用に杖ついて俺たちのことを見回りに来てくれるから、やる気もどんどん湧いてくるんだよ。

「あれ? 無惨様、どうされたんですかその頭の傷」

「これですか? ・・・・・さっき、少し転んでしまって」

無惨様の額に大きな傷ができていた。気を付けてほしいよな。無惨様の御身体は俺たちの何倍も大事なんだから。いや十倍。いや百倍。

あと気のせいかな? 無惨様から何か変な音がした気がする。

何かこうヤギの鳴き声みたいな、小さい穴から空気が漏れるような。

間があったのも少し気になるけど。嫌っていう予感じゃないけど。う~ん、考えすぎ?

 

まぁ無駄口叩いたりすると叩かれるからやめとこ。

あ、その叩いてくる奴がサボって遊んでる。

そうです。伊之助です。禰豆子ちゃんところの小さい妹や弟たちと。

あ、そういうことか。家族に取り入るためには小さい子供たちの心を掴めばいいのか。

よしじゃあ俺も、宴の時に魅せてやるぞ! 禰豆子ちゃんが見惚れてくれるような俺の美技を!

 

 

そんなこんなで楽しくて忙しくて疲れる宴の準備が3日間も続き・・・

「今日この日をもちまして、鬼の里の開村を宣言します! では皆の者、乾杯!」

夜のたき火を皆で囲んで、大広場の宴会場は歓声に包まれた。いいなぁ、こういう雰囲気。

鬼殺隊の本部からもたくさんの人たちが食事やら宴会芸やらひっさげて来てくれた。

御馳走だって田舎料理やら酒やら、食べたことも見たこともない不思議な料理が揃っていた。

美味いのなんのって。禰豆子ちゃんが作ってくれた煮物が一番だけどさ。伊之助には食わさん。

あとは皆が色んな形で宴を盛り上げた。一芸の披露会みたいな感じで。踊りやら歌やら。

そう。俺の出番だ。俺の三味線を聴け!

三味線は鬼の女の子たちから教わった。鬼の中でも特に強い十二鬼月で、梅って鬼の女の人から習ったんだって。遊郭で花魁もしていて、その芸を教えてくれていたらしいんだけど、みんなを庇って亡くなったらしい。その技を鬼の里でずっと受け継いでいきたいんだって。

うん、俺の下心が邪すぎて辛い。

 

ちなみに一番盛り上がってたのは、累の一家が糸で操る人形劇だった。

 

別の意味で盛り上がったのが、元鬼と元隊士で結婚を約束していたっていう報告だった。

人に戻れたら結婚しようって。お熱いお熱い。酒の席でそういうのって、反則技じゃない?

もう事実上、みんなが立会人だし。祝わないわけにいかないじゃん。

!?

「無惨様。そうだ俺も、是非未来のお婿さんとして禰豆子ちゃんに紹介してください!」

無惨様・・・無惨様? 俺の方見ていない? 沈黙も長い気がするんだけど。

「そうだ、炭治郎には心に決めた人はいるのかい?」

「え? 俺ですか?」

何で炭治郎? 俺は?

「俺は家族がいれば幸せなので。将来のお嫁さんだとかそういう話は考えたことがありません」

「ならカナヲはどうだい?」

無惨様の言葉に色んな衝撃が走った。

俺無視? 炭治郎に、あの無口なカナヲを?

あと無惨様。言いにくいんですけど・・・・

「あの鬼舞辻さん。私、アオイです」

無惨様、隣に座っている女の子の背中を押してたけど、盛大に人違いしてた。

炭治郎も動揺していたし、カナヲもカナエ様もしのぶ様も。

でもすぐにカナエ様は「まぁ! むーさんが言ってくださるなら!」って喜び全開でカナヲを炭治郎の隣の席に連れていってた。

しのぶ様もニッコリ笑ってたし。蝶屋敷の女の子たちもみんなが炭治郎のところに集まってた。

 

ズルい。

なんで炭治郎だけ? 俺のさっきの一世一代のお願い事、無視されたのに?

 

ああああああああああああああ

グレてやるぅうううううううううううううううう!

 

 

俺は藤襲山の闇の中に向かって走った。

闇雲に走るって文字通りだな。

ただやっぱり華やかなところから一人で離れるのって辛い。怖い。

 

山を一周して戻ることにした。戻ってきた時にはもう無惨様がいなかった。

「飲みすぎたようだって言って、先にお部屋に戻られたぞ」

そうなの? てっきり俺、無惨様に嫌われたかと思った。

あぁびっくりした。

「いやお前はさすがにしつこい」

ところでアンタこそ誰? 村田? 誰? 気安くない?

え? 何度も一緒に仕事した? ごめん俺、男に興味ないから。

 

あと無惨様の瓶、ぜんぜん減ってない気がするんだけど。

どんだけ下戸なのあの人?

 

 

あと少し気になったのが、カナエ様の音が少し悲し気な気がしたことかな。

それと最後に聞いた無惨様の音が、いつもより小さくて乱れていた気がした。

もちろんそれは周りの騒がしさのせいかもしれないけど。

 

 

 

 

 

気のせいだよな。

 

 

 




【平安コソコソ噂話】

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