俺のネギま!   作:ばうえもん

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wikiのネギの年齢を見てアリサの年齢を8歳から9歳へ訂正しました。
wikiとかだとネギの来日時点で満9歳って話ですから5月生まれのネギの場合は数え年だと11歳になると思ったんですが、数えで10歳ってどういう事だろうか?
日本の数え年と計算違うのだろうか?



お嬢様と俺


 

時は遡り秋になったばかりの頃の話だ、治療も済んで11歳位に成長した妹ちゃんと護衛の小太郎は麻帆良の小学校へ通う事になった。

一応は麻帆良に俺を含め3人で住める広さのマンションを購入しているが、養娘(むすめ)を手放したくない近衛夫妻の我儘で俺が縮地で送り迎えをして京都から通っているのが現状だ。その流れで俺と小太郎も京都の俺のセーフハウスに住んでいる。実は妹ちゃんも縮地を使えるんだが、いざという時の逃走の切り札になるので周囲には内緒にしてある。

 

まあその辺りで色々とあった、主に実の娘に何も説明していなかった近衛夫妻のせいなんだが、何故か俺に苦情がくるんだよな。

 

「信じられへんわぁ、まさか先輩を堕とす為に養子を迎えるなんて」

 

「おいコラ、んなわけあるか!!

 そーいや近衛後輩が奥様に有る事無い事吹き込んだから幼女&少女巫女軍団に迫られるハメになったじゃないか!!」

 

嬉しい癖に怒っちゃやぁ~んと全然悪びれないお嬢様、そのうちコマしてくれようか!! ホントにコマしたら婿入り一直線だからやらんが

 

「ひょっとして先輩が夕映を振ったのってアリサちゃんと婚約するからなん? やっぱり和ロリよりエヴァちゃんみたいな洋ロリが良かったん?」

 

「アホ、一年ズレてるってーの。綾瀬後輩の事は麻帆良を出る可能性高くなったからだっつーの」

 

実際現状京都に住んでいるも同然だしな、去年の夏に妹ちゃんを助けると決め、その為に関西呪術協会所属になった俺は綾瀬後輩へのアプローチを止めた。

「振った」と言われても別に付き合っていたわけではないが、散々アプローチを掛けていたのでケジメをつけるべくきちんと話をした。

それ以来彼女達からは距離を置かれていたんだが、近衛後輩だけは奥様に言い含められいたのか何かと接触していたのだ。

 

しかしアレだ、近衛後輩は妹ちゃんの件を上手く消化出来ないようで結構絡まれていたんだが、実はそれ以上の厄介ネタが控えているんだよなぁ

未だ話していないようだが本当の妹か弟が出来た話をされてまた俺に絡んでくる未来が!! しかも今度はお妾さんと同時だからな、年末に帰郷したら荒れそうだな。いっそ冬休みは京都から離れようかな

 

そんな思惑で年末年始は魔法世界訪問と相成ったわけである。

 


 

お嬢様と俺

若しくはチョロインと俺


 

「これが闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)闇の魔法(マギア・エレベア)の巻物ですか。普通の呪文の巻物とは違いますね。

 ではこのような危険物は処分するという「まてコラ!!」なんですか?」

 

態々魔法世界まで来た理由は闇の魔法(マギア・エレベア)の入手が目的じゃなくて処分しに来たのか? 麻帆良に先輩居る時点で巻物を処分する意味があるのかわからんが、いや情報の流出を防ぐという意味はあるかもしれんが

 

「てっきり欲しくて来たのかと思えば処分しにきたのか? だいたい人の物を勝手に処分していいんかよ?」

 

「いえ、別に闇の魔法(マギア・エレベア)はどうでもいいんですがコレに封じられている人工精霊が問題でして。闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)はいったい何を考えて自身の人格コピーなど残したのか…」

 

えっ、つまりなんだ、その巻物を手に入れれば先輩(のコピー)が俺の物に!?

 

「…お前ら人の所有物で勝手な事してんじゃねーよ」

 

「はっ!? つまりこの筋肉達磨に先輩が所有されているってことか!! このロリコン!!

 

「お前らもう帰れよ……」

 

「やれやれ、我が弟子の病気(ロリコン)は悪化したようですね。ところでキティを所有して普段ナニをしているのですか?」

 

「この野郎、そいつは紛れもなくテメーの弟子だ! 納得したよ!!」

 

戦友同士が心温まるやり取りをする横で手の中の巻物を一瞬ブレさせた妹ちゃんはソレを返却した。あの一瞬でストレージで取り込んだようだな。

おっと、メールで記述内容が送られてきたのだが、残念ながら人工精霊の部分は省かれていた。チッ

 

「しょうがないので処分は諦めます。貴方には不要な物でしょうがお返ししますね」

 

「だから俺の物を勝手に処分すんじゃねぇよ。確かに既に最強の俺様には不要な物だが」

 

「しかしこの闇の魔法(マギア・エレベア)ですが予想はしていましたが欠陥術式ですね。使用者の安全を全く考えられていません」

 

「アン? なんで使用もしていないのにそんな事がわかるんだ?」

 

「色々と不穏な運命に翻弄される身の上ですので、おじ様でも手の内は内緒です❤」

 

「おっ、おう。どこまで聞いたのか知らんが…子供に後始末をさせる不甲斐ない大人で済まんな」

 

この筋肉達磨め、戦友の娘におじ様呼びされて照れているんか?

 

「ホント、両親には育てて貰ってもいないのに負債だけ押し付けられていい迷惑です」

 

「いやホント悪かったからそれくらいにしてくれ。俺の事ではないがダチとしてはいたたまれない」

 

「次世代に負債を押し付ける気満々な不甲斐ない大人達の事は取りあえず置いておいてだな、その闇の魔法(マギア・エレベア)の巻物ってなんの意味があるんだろう?」

 

「……お前ら俺の事嫌いだろ」

 

今更何を言うかと思えば、血縁組ならまだしも元は完全に部外者だった俺としてはいい迷惑に決まっとろうが。妹ちゃんに関わるのは自分で決めた事だから軽い嫌味で済ますが、正直俺を巻き込んだ横島忠夫については一発殴ってもいいよな!!

 

「そうですね、安全性を無視した余りにも不完全な呪文ですね」

 

「いや、リスクに付いては先輩が使う分には無視出来る範囲なんだろう。つまり実質専用呪文になるのだから態々残す意味が無いわけだな」

 

「ああなるほど。そもそも自身が不老不死であるのならば後継者とか必要ありませんし残す意味が無いわけですね」

 

「そういうこった。なのにご丁寧に自身の人格コピーのナビゲート付で残すとかなんの意味があるんだ?」

 

まさか万が一自分が討たれた時の為に自分が存在した痕跡を残したのか?

正直俺の先輩のイメージだとそんなセンチメンタルは似合わないんだが、闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)としての顔は違うという事だろうか?

かといって本人に聞こうにも話を聞いてくれるかどうかってレベルだしなぁ。いや別に未練とかじゃないんで妹ちゃんはそのジト目は止めてくれんかな?

 

 


【ネギま】2人マルチで闘技場 後編


 

14文字、原作で10年後の未来横島が時間移動を成し遂げた時の驚異のコントロールは下手なYOKOSHIMAを凌駕する。実は公式こそが最もチートなのかもしれない(なお文珠一個のエネルギーで時間移動出来る美神母娘の方がチートではないかと言ってはいけない)

世界を渡り歩いて来たD横島ならその領域に至っていると思われるのだが、精々その半分が関の山の俺には現実とは思えない数字である。

 

昨晩メニューシステムに届いた俺から(・・・)のメールに附加されていた照射成形機(ビームエクイッパー)から出力された時計とは名ばかりのオーパーツを弄りつつ思い出すのは妹ちゃんに聞いた原作知識、原作未読故にその辺りの事情を全く覚えていない弊害から今までノータッチだった件の少女、麻帆良に帰ったら彼女の事も調べないといけない。

 

「にいちゃん! そろそろ俺らの出番やで!」

 

「おう、行こうか」

 

まっ、面倒事は未来の俺に任せるか。持て余して死蔵していた『Jadeジュエリー(アーティファクト)』の扱いもわかってきた事だしな。つーかこれ絶対結晶(・・)の加工品だろ!!

 

 

 

 

『対する東方はヘカテスのベテラン自由拳闘士

 アルギュレの虎獣人、ラオ・バイロン! ケルベラスの森妖精、ラン・ファオ!』

 

「噂の新人ね 揉んでやるかラン」

 

「ウホッ❤ いやっホーイ♪」

 

 

「何や? 俺よりちっこい拳闘士がいたんかい?」

 

「いやいや、そういう種族だからサイズはかんけーねーって」

 

しかし困った。実は今までの試合相手は基本的に前衛タイプだったんだが、今回のような前衛、後衛ときっちりと役割分担されたコンビとの対戦は初めてだ。ちょっと勝手が違ってくるから油断は出来ないな。

 

『ルールは皆様ご存じの通り!! ギブアップ戦闘不能で決着!! 武器・魔法に使用制限無し!!』

 

開始(インキピテ)!!』

 

「ほないくでぇって うおっ!?」

 

ちっ、開始と同時に飛び出した小太郎の瞬動の到達地点に先回りしやがった。流石はベテラン

だが足止めに一発当てただけでバックステップだと…ちっ、何かを撒いていやがった!?

 

『ピピルナ・パピルナ・パリアンナ 萌え出ずる若芽よ(プルランテース・プリィ) 縛鎖となりて(ウィンクルム・ファクティ) 敵を捕らえよ(イニミクム・カプテント)!!』

 

「クソっ、詠唱が速いっ!! 間に合えっ!!」

 

気弾を撃って妨害を試みるが、体格を活かして上手く相方の背後に隠れて詠唱をする妖精、俺が知っている麻帆良の魔法使いと比べてかなりの手練れだ。

ならば俺も近接に切り替え接近するが、

 

「なっ!? そういう事か!!」

 

呪文の完成によって先ほど撒かれた…いや、蒔かれたのは触媒の種なのか魔法によって一瞬で生まれた蔦が小太郎の身体を拘束する。

 

「蔦あ!? こんなんまでありなんか!?」

 

コタきゅんの緊縛ぅ❤

うっひゃぁぁぁあああ❤

「「「「「「「キャァアアアア♡♡♡」」」」」」」

 

おいコラそこの実況!! なんで妖精と一緒に並んで鑑賞してやがんだ!!

馬鹿二人のお陰で気勢をそがれた獣人の前衛は追撃を躊躇っている。とにかく小太郎を救出せねば!

 

レーティング違反禁止ぃいいい!!

 

『あああああ、小太郎選手の緊、失礼、拘束をタダオ選手が気の刃らしきもので切り裂き救出してしまいました!!』

 

此方に来てからその危険性から封印していた霊波刀だが、咄嗟の事だったのでつい使用してしまった。とにかく小太郎を抱えて距離を取る

そして救出してしまいましたってなんだよ!! 私情っていうか煩悩!!

 

「たっ、助かったわ、にいちゃん」

 

「こいつは俺が思っていたのと別の意味で危険な相手だ、今度こそお前は下がれ」

 

「うううう、さっきの攻撃ダメージ少ない割りになんやえらい寒気がしたからそうするわ」

 

尻尾を股の間に挟んで震える小太郎にまたもや客席からの視線が集中する。つーか中継カメラも自重しろ!!

とにかく今回に限っては小太郎の腕試しは中止してマジでいかねば。

 

「おいこら!! 何が森妖精だ! 闇の教義に染まった邪妖精じゃねーか!!」

 

「ひっどぉーいい、でも今のコタきゅんの姫抱っこが萌えたから許す❤」

 

「……ラオさんだっけ? そんな相方で大丈夫か?」

 

「言うな、俺も最近知ったんだ……」

 

「ふぅ、変態の巻き添えですまんがこれ以上は小太郎の教育に悪いから取りあえずタヒってくれ。右手に気、左手に魔力、融合…」

 

「ちっ、魔法と気の同時使用とか頭おかしいマネしてんだから当然使えるよな!!」

 

使えるけど今回は増幅した気で身体強化ではなく、そのままブッパする

 

咸卦(ぼっち)合気法・太極波!!』

 

「ちっぃ! 虎咆(ガオッ)!!!」『オマケっ! 風楯(デフレクシオ)!』

 

割とヤバイ威力の気功波を虎獣人の咆哮と妖精の魔法で防がれた

 

「とんでもねぇ威力の気弾だな、究極技法(アルテマ・アート)は伊達じゃないってか」

 

「そっちこそ気功波と衝撃波が一瞬拮抗した隙に相方が障壁を張ったか、腐っていてもベテランだな」

 

「腐ってんのはランだけだよ!!」「ひっどぉい、趣味と実力は別なんだよぉ!!」

 

「うっせ、害悪ベテランは浄化だっ!! 邪悪の使徒よ湖底へ沈め、 黄色魔術(聖)(水)(渦)(カスタリア) !!」

 

小太郎を邪な目で見る邪悪な存在共を浄化の水流で押し流す!!

 

「うぉっ!! て外れた!? あっ…」

 

「「キャァァアアアアア!!」」

 

「おいおい、実況の嬢ちゃんまで攻撃したらマズイだろう…」

 

不愉快な実況のねーちゃんごと攻撃した結果没収試合となりました。後悔はしてない(`・ω・´)キリッ

 

 

 

『対する東方は女性拳闘士団グラニキス・ワルキューレの獣人と魔族のコンビ

 虎獣人、寅子・T・ティガー! 魔族、ユキノ・ダテ!』

 

そんな事があったにもかかわらず翌日にまた女性相手に試合が組まれた。

ガタイがいい獣人のねーちゃんと小柄な魔族少女のコンビ ふ~ん(察し)

こりゃ小太郎には厳しいかもしれんな。注意しとくか

 

「小太郎、多分小柄な魔族の方はお前と噛み合うハズだからそっちに行ってくれ。それと注意しとくがお前の女性に手を挙げたくないって考えは立派だが、相手は拳闘士なんだから試合の場では侮辱になるぞ。そもそも相手はそんな心配が要らないような格上だから思い切って胸を借りてこいや」

 

「胸を借りる!? 私の胸はそんなに安くはないぞ!!」

 

「いやなんでそうなるんだよ、ゆっきー」

 

「ゆっきー!? かっ、勝手に愛称とか付けるんじゃない!」

 

「なんだか満更でもなさそうですのぉ、これだから喪女は」

 

「誰が満更でもないって!! お前も俺が欲しければ先ず俺に勝ってからだ!! 俺に勝ったらお前の女になるから胸でもなんでも好きにしろ!!」

 

「なんで俺が告白した流れになってんの!?」

 

「すんませんですけぇ、ユキノさんは女ばかりの施設で育ったうえに、拳闘士になってからも周りはデリカシーの無い漢ばかりですんけん横嶋さんみたいな同年代の紳士に免疫ないんですじゃぁ」

 

「今の流れで俺が紳士とかコッチの男ってそんなに酷いのか!?」

 

「横嶋さんはコタ君の優しいお兄ちゃんですけぇ(腐女子のイメージ)」

 

「うっせー!! おいこら横嶋!! テメェ子供の後ろに隠れていないで俺と拳で語れ!!」

 

「あー、なんか変な誤解があって嫌だけど逃げられそうにないから小太郎はあっちのデカいねーちゃんに相手して貰ってくれや。一見パワーファイターに見えるけど一癖も二癖もありそうだから無理に勝たなくてもいいぞ」

 

 

『ちっ、闘技場でナンパとか死ねばいいんデス』

 

「こら実況!! 心の声洩れてるよ! あとナンパなんぞしてな開始(インキピテ)!!』

 

「オラッ ヨコシマっ、行くぞ!!」

 

「ええい、近接苦手なのにっ 第三門解放っ」

 

とにかくチャクラを廻して気の総量を引き上げる。そこまでやって漸く互角とかコイツ強すぎいいいいい!?

ええい、反動考えるとこれ以上解放は拙いんだが技術では完全に負けているし…溜めの時間が取れればやりようもあるんだが

ちなみにラカンのオッサンはナチュラルにチャクラが全部稼働しているコウ・カルナギと同類のバグキャラだった

 

「ああ、男の子の汗の香りが… あちきは…あちきはもう!!」

 

とにかく今はチャンスを……んぁ!?

 

「うへ…うへへ…

 うえへへへ…!!

 男の子!! やんちゃなショタ…!!」

 

ふと小太郎の方を見れば暴走する虎獣人が居た、ゆっきーも手を止めて額を抑えている。そっか、常習犯なんか……狩るカ

 

全く、闘技場の女はこんなんばかりか?

 

「おっ、オイ、ヨコシマ!! 穏便になっ!!」

 

俺の顔を見てなにやら青褪めるゆっきー、魔族の黒い肌でも青褪めるんだな。どうでもいい事を考えながら(東)(風)(トンプウ)で吹き飛ばしてやろうと文珠を取り出すが、どうやら必要はなかったようだ。

 

アリサ直伝・男女平等パゥァンチッツツ!!!

 

この日、小太郎は殻を破ってまた一つ成長した

 

 

 

 

「と、いうわけで小太郎の教育に悪いので引き上げてきました(なお妹ちゃんは手遅れ) 唯一の収穫といえば小太郎も身の危険を感じれば女性が相手でも戦えるようになりましたが」

 

大晦日の夕方、俺達は関西の屋敷で長に報告をしていた

 

「忠雄さんはカワイイ要素テンコ盛りの魔族の女性にモテて良かったですね」

 

宇宙意思あたりの介入があったんじゃないかと疑わしい女性拳闘士コンビの魔族の少女、ユキノ嬢は褐色ポニテロリ巨乳と萌え要素盛り過ぎな生き物であった。これでダンピール枠が揃えば役満だな

 

「いや、ちゃんと誤解は解けたから……」

 

解けたよな、なんかあったら呼び出せって悪魔召喚契約結んじゃったけど大丈夫だよな?

 

「帰る時に見送りに来ていましたよね。なんだかんだで気に入られたんじゃないですか?」

 

 

 

さて、長に報告も済ませた俺は現在お嬢様に絡まれている。誰だよCHU学生に飲ませたのは

まあ予想通り長からお目出度の話を聞いたまでは良かった、年の離れた妹弟とか多少は微妙な気持ちになっただろうがその事は素直に喜べただろう。

だが自分もお世話になった巫女、母親の親友と聞いていた女性が実は父親の妾で母と同時に妊娠していたと聞いた彼女は荒れた、そりゃそうだ。

 

魔法世界から帰ってきた妹ちゃんに構うのが忙しい奥様を尻目に飲酒して俺にウザ絡みしてくるのだ。いや奥様はお嬢様を俺に嗾ける為にワザとやっているだろ。お嬢様に絡まれる俺を見て抜刀した長はフミさんに羽交い絞めにされているのだが、それがまた奥さんと娘の前でイチャイチャしているように見えてお嬢様を不機嫌にする。

普段は面白がって場を掻き乱す師匠はお嬢様への魔法バレを警戒して俺のセーフハウスで大人しくしているし、小太郎も勘が働いたのか挨拶そこそこでセーフハウスへ逃げ出しやがった。弟分が薄情でにーちゃんは寂しいです。

 

「せんぷわぁいい、ウチとせっちゃんのことも貰うてぇ~」

 

「えー、俺どっちも結婚相手としては嫌なんだけど」

 

妹ちゃん情報だと人気ヒロインらしいのだが、通り魔と腹黒はノーセンキューである

つーか父親が妻とその親友を孕ませたのが原因で荒れてるのに俺に自分と友達を二人纏めて娶れとは…、自分も同じ事して父親への当て付けのつもりだろうか?

 

「うわぁあああん、先輩もお母様も新しい養娘(むすめ)ばっかり可愛がってぇ~ どうせ麻帆良に追いやられたウチは要らない娘なんやぁ~~」

 

「いや、ほら、アリサちゃんはちょっと治安の悪い外国に行っていたから心配だっただけだからさ」

 

 

 


अवतार


 

「……此処まで侵入出来ているとはこりゃ時間の問題だったな。神族時代と違ってえらい優秀だがひょっとして属性が逆転した影響か?」

 

廃都オスティア中心部、墓守り人の宮殿の奥深く、位相空間で封鎖された通路を正常化しながら進む小柄な人影があった。気が遠くなるような時間をかけてここまで進んできた彼女は感じる手応えから目的地が近い事を確信していた。

だがそんな彼女の認識外から声を掛ける一人の男が現れたのだ。

 

「ヨコシマだと…馬鹿なっ!! 闘技場に居たのを確認して…今も試合中ぅ!? どういうことなのねぇ~!! まさか来訪者の方なの!?」

 

「どっちも俺だよ、時間軸がズレているがな」

 

「時間移動っ!? どこまで反則なのね~」

 

「確かに反則だな、未来人が所持していた航時機(カシオペア)の残骸から得たデータを元に作り上げた時空座標演算鬼(カストゥラ)、こいつの補助があってこそだな」

「まあなんだ、俺自身はアンタに恨みは無いがここで死んでくれ。神造結界の要である火星処理装置(マーズ・プロセッサ)を乗っ取られると流石に困るからな」

 

「ようやく、ここまで来たのにっ! 貴方達ヨコシマタダオさえ居なければ!!」

 

憎い裏切り者と同じ顔をした男、自身の苦境はあくまでも旧世界での出来事に起因する。故にこの男はなんの関係も無い存在だと頭ではわかっていても奴を思い起こされる姿と魂の色が心を掻き乱す。落ち着け、あの男の同位体ならばこちらを滅ぼすだけの力を持ってはいるのだから

 

「だいたいアンタらが横島忠夫の事を雑に扱ったからアシュタロス一味のヘッドハンティングに応じたんじゃねーの?」

 

「それは美神母娘のせいであって私達は関係ないのねぇ~」

 

「そうは言うがアンタこの世界で人間を煽動してライフメーカーを追い詰めたんだろ。結果ライフメーカーは再び人間に絶望して滅ぼそうとして英雄に封印された。後は組織を引き継いだ魔族の幹部に接触して火星の秘密に手を掛ける寸前だ。たいした手並みだよ」

「だけどアンタの企みはここまでだ、恐らく火星処理装置(マーズ・プロセッサ)を利用して神造結界を魔界と繋いで属性を反転させて魔族から神族への属性変化と地球侵攻用の通路に利用するつもりなんだろうが…」

 

どうやら魔法使いどもを煽動してライフメーカーが守っていた魔法世界をボロボロにしてやった自身の些細な復讐に気付いたらしい。

だがこちらの全てを知っているわけではないようだ。なにしろ私は自分の為だけに……

 

「そんな気は更々ないのねぇ~。自分達は何も出来なかった癖に最後まで抵抗した私達に文句を言う、そんな連中なんて知らないのねぇ~」

 

私は別に世界をひっくり返そうだなんて大それた事は考えていない。無能共など知った事か、奴が私達を裏切って得た物を台無しにしたかっただけなのだ。先の事など考えてはいない、精々残った物が有れば慰謝料代わりに戴いてやろうかという程度だ。

 

「ああ、アンタも色々とあるんだな。でもだからといって魔族を手引きしてアリサを害したアンタを許す気はない。アンタの企みで傷ついたアリサを治療したせいで俺は真正のロリコンになってしまったのだから! お前はここで死ねぇええ!!」

 

「ロリコンは私には関係ないのねぇ~!!!!!!!」

 

不意に確信してしまった。てっきりこの世界の横島忠夫だと思ったコイツは全くの別人なのだと。

 

 


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