夜天、月に想ふ   作:鈴燈 透矢

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2話連続投稿です。最後まで見ていただけたら幸いです


第一話 邂逅の記憶、少年達の幕間

第1話: 邂逅の記憶

 

 

5月某日。白髪の少年は、ある男と向かい合って食事をしていた。

 

 

「……で、器はどうだったの。真人」

 

 

「それがねー……大分天敵だったよ。魂に触れようとしたら宿儺にボコボコにされちゃってさ」

 

 

ハンバーガーを頬張りながら楽しげに語る男の名は、真人。人が人を恐れ、憎む感情から生まれた呪霊だ。彼は先日、宿儺の器、虎杖悠二(いたどりゆうじ)と戦い、払われる寸前のところで逃げ仰せたという。負けたのに楽しそうなのは、彼が強敵との戦いにより、己が成長していく実感を心底楽しんでいるからだろう。

 

 

「でも、領域展開ができるようになったし、結果的にピンピンしてるしね。━━次は勝つよ」

 

 

そう言って笑う男の瞳は、まだどこかあどけない雰囲気があった。

 

 

 

「ところで、君もあの、"夜叉(やしゃ)"と戦ったんだろう。負けた?」

 

 

 

男の質問に、少年は少しだけ考えるフリをして、コーラでパンを胃に流し込むと、諦めたように口を開いた。

 

 

「負けたよ。暴走なんて聞いてないっての」

 

 

 

 

少し不貞腐れた様子で答えると、少年は、再び食事に集中し始めた。

 

 

 

"夜叉"とは、呪術高専に入学したもう1人のスーパールーキーで、平安最凶と謳われた"夜天人魔(やてんじんま)"と呼ばれる安倍晴明のライバル的な陰陽師の術式を持つ少年のことだ。彼は、真人が宿儺の器と戦っている時、ソレと相対していた。

 

 

「まぁ、夜叉は君の天敵みたいなものだし、仕方ないんじゃない?」

 

 

全く慰める気のないフォローを入れる真人を睨みつけて、バンズを噛みちぎる。

 

 

夜天人魔は、安倍晴明の一番弟子であり、その力への貪欲さから晴明に破門され、復讐を誓った堕ち人(オチビト)で、呪霊をその身に宿らせることを鬼神のごとき力を得る憑依という術式を使っていた。

 

 

それは、主に呪霊を生み出し式神として使役する晴明の術式には効果絶大であり、苦戦を強いられたという。

 

 

結局、彼は晴明によって封印され、後の時代に呪いとなって現れたというわけである。

 

 

「…………晴明の術式には僕の知らない秘奥が沢山ある。次は勝つよ。どんな手を使っても」

 

 

 

陰陽道の祖である晴明の術式は、ありとあらゆる術式の元になったものだ。全ての術式のオリジナル……つまり、全ての術式の上位互換。予想外の事態が起こったとはいえ、有利を取っていたのは少年の方なのだ。

 

 

つまり、敗因は純粋に少年の力量不足ということになる。それを何よりも自覚していた彼は瞳の奥に強い光を滾らせて、真人にそう告げるのだ。

 

 

「うんうん。いい目をしてるよ。やっぱり僕らはこうでないと」

 

 

人間らしく、呪いらしく、狡猾にいこう。真人の口癖をすっかり覚えてしまった少年は、黙って席を立つと、プレートをゴミ箱に突っ込んで"僕はそういうの、柄じゃないよ"といい笑顔を見せた。

 

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【少年達の幕間】

 

5月某日。呪術高専にて

 

 

「センセー。バカ2人組は?」

 

 

授業中、たった4つしかない席の、空席を見つめて、茶髪の女生徒が言った。先生、と呼ばれた男は、何故か目を黒い布で覆っており、どこか軽薄そうな雰囲気が漂っていた。

 

 

「大事をとって休ませてる。悠二はともかく、朱羅(しゅら)は結構やばかったからね」

 

 

さも当たり前のように言い放って、男は板書を続ける。女生徒はつまらなそうにふーん、と言って、2個隣の男子生徒に視線をやった。

 

 

「伏黒はどうなのよ。そこんとこ」

 

 

伏黒 恵(ふしぐろめぐみ)は、話を振られて心底嫌そうな顔をしながらも、"どうでもいい"と吐き捨てた。あの2人が突っ走るのはいつもの事だ。なんだかんだで特級呪霊と呪詛師を退けているので、悔しいという想いもあるだろう。

 

 

「はぁ……ほんと男ってバカばっかよねぇ……」

 

 

ため息を着く女生徒は釘崎野薔薇(くぎざきのばら)。4人しかいない、呪術高専の1年生であり、紅一点。そんな彼女は今日も、思春期男子特有のめんどくさい青臭さに当てられて、1人、窓の外の景色を眺めるのだった。

 

 

 

「あーあ、スカウトとかされないかな」

 

 

 

「野薔薇、授業中だぞー」

 

 

 

呪術高専の日常は、緩やかに流れて行った

 

 

 

 

 

 

 




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