「大ッ嫌いな歌もッ! 大ッ嫌いなシンフォギアもッ!
あたしが全部全部まとめて消し飛ばしてやるッ!!」
クリスは腕部ユニットをガトリングガンへと変え、銃口を響へと向けた。三角に配置された三つの銃身が回転を始め、けたたましい音と共に無数の弾丸がバラまれていく。
射線上にいる響はその脚力で回避。木を盾にしながら、クリスへと呼び掛けていく。
「クリスちゃん!」
「お前があたしの名前を呼ぶなッ!
名前を呼んで良いのはあの人とフィーネだけだッ!」
「あの人って奏さんのことだよねッ! 私もクリスちゃんの名前をいっぱい呼びたいッ!」
「馴れ馴れしいんだよッ!」
(クソ、当たらねぇッ! ちょこまかとぉッ!)
機動力に長ける響に翻弄されるクリスは、額に汗を滴しながら奥歯を噛み締める。
体力、肺活量共に貧弱であるクリスは遠距離援護型、長時間戦闘に不利がある。比べて響は近距離パワー型。体力面でもかなりの差をつけられている。
となれば取れる手段は一つ。近付かれる前に高火力で決着をつけるしかない。
「まとめて吹っ飛びやがれェッ!!」
腰部ユニットが展開。
内蔵されていた多数の誘導ミサイルが響へと狙いを定めて一斉発射。響は回避運動を取り逃げ回るも、着地に出来た隙にミサイルが距離を詰めやがて着弾した。
発生する爆炎。
爆風が周囲を襲い、クリスは腕で衝撃を防ぐ。
「やったッ!?」
響の倒れた姿を目に納めるために、アームドギアをガトリングガンのまま構え続ける。一歩、また一歩とゆっくり近づいて、晴れていく煙の向こうに見えたのは白銀の壁だった。
青い線のようなものが入っていて、盾のようにも見える。
「盾ッ!?」
「剣だ」
頭上から聞こえる凛々しく力強い声。
それに釣られて目線を上げれば、地面に突き刺さった柄頭に立つ、以前見た青髪のシンフォギア装者が居た。
「翼さんッ!」
「すまない立花、少し遅れてしまった」
「いえ、大丈夫ですッ! それよりも彼女が──」
「分かっている」
翼は巨大化させたアームドギアといつものサイズに戻すと、地面に降り立ち、構える。その目は鋭く、ぶれることのない信念の炎が宿されていた。
「奏に少女を、クリスとやらを頼まれてきたからな」
「……あの人が?」
(どうしてお前があの人から言葉を託されてきてんだ)
「ああ。だから、素直に投降してくれれば助かる」
「……今更退けねぇんだよ。あの人があたしを裏切ったってんなら、一人でだってやってや──」
言い終わる前に、クリスに異変が襲いかかる。
空を飛行していたノイズが体を槍へと変え突撃。両手のガトリングガンに衝突からの拘束によって身動きが取れなくなると、止めをささんばかりに最後の一匹がクリスめがけて突撃。
「なッ!?」
「クリスちゃん、危ないッ!」
心臓へと牙を立てる寸前、飛び込んだ響によってクリスは何とか一命を取り留める。クリスは怪我無く済んだものの、響はノイズによって背中に傷を作りクリスへともたれ掛かっていた。
「お前、何してんだよッ!?」
「だって……クリスちゃんが危なかったから……」
「はぁッ!? お前とあたしは敵同士なんだぞッ!?
意味分かんねぇこといってんじゃねぇッ!」
「随分、敵とお友だちなのね、クリス」
侮蔑するような冷たい声が、公園に響いた。その正体は公園の展望台で欄干にもたれ掛かりながら、黒の女優帽とサングラスで目元を隠していた。
クリスの背筋が凍る。聞き間違えることのない女性の声。いつもの物腰が柔らかい話し方ながらも、人を殺せそうな鋭さがそこにある。
「フィーネッ!!」
胸の中にいる響を突き飛ばし、フィーネの方へと向いた。
響はというと、翼に抱き抱えられていた。
「こんな奴が居なくたって戦争の火種はあたしだけで消すッ! そうすればっ人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に…っ!」
「私はあなたに力を与えたわ。完全聖遺物、ネフシュタンの鎧を使わせたというのに、どうしてシンフォギア程度に負けているのかしら?」
「それは、あたしが弱いからで……」
「ねえクリス。私は、役に立たない道具は捨てる主義なの
使えないものは、早めに処分するに限ると思わない?」
「なんだよ、それ……何なんだよぉッ!!」
吠えるクリスに興味が無さそうに溜め息を吐くフィーネ。
右手をかざすと発光し始め、四散したネフシュタンの鎧の欠片を集めると、背を向け歩き出す。
「さようなら」
「待てよフィーネッ! 待ってくれよぉ……ッ!!」
去るフィーネの後を追いかけて、クリスは駆け出す。
「クリスちゃん!!」
背後から聞こえてくる響の声に聞く耳持たず、クリスはその場を後にした。