……この男、は、何を言っているんだ? ナツキ・スバル? 聞くからに日本の名前だが…… 王選?? 選挙みたいなものか? 騎士??
「……頭が痛くなってきた……」
「んで、あんたは、何で此処に? まさか一人であの砂漠を越えてきたって感じじゃねぇしな?」
「砂漠……? オレはずっと、歩いてここにたどり着いただけだが……?」
「は? ……いやいや、ありえないだろ。 こんな所、歩いて来れるやつなんて、あのクソ野郎だけで十分だろうが……」
……なんか、訳ありの様だな。この俺みたいに。
「……自己紹介が遅れた。俺の名前は岡部倫太郎。 東京電機大学の学生だ。」
「とう……!? って事は、かなり年上か?」
この反応。 東京電機大学が何処にあるのか知っている態度だな。 全く知らない奴ならこんな反応しないしな。
「お前が何歳かによるがな。 ナツキ・スバルは何歳なのだ?」
「スバルでいいですよ。 オレは高校生だ。……もっとも、此処に来るまで、不登校をしていたけどな。」
「不登校。……聞こえはあまり良くないな。」
不登校。それは、この少年が高校で上手くいかなくなったのだろうと、俺は察した。 どこかの未来。ありえたかもしれない可能性で、俺もこうなる可能性もあった。
そういう可能性もあったのだ。 俺が、まゆりを元気づける為に生み出した『設定』鳳凰院凶真は、どこに行っても浮いていた。 当然だと、改めて思い返してそう思った。 誰も掛けてきてないのに、携帯を取るフリをして、会話したり、 右手には《何か》が宿っているとか……
「……聞かないのか?」
「ん?」
「あんた。見るからに日本人だろ? 俺も元はここの人間じゃないんだ。異世界転移って知ってるか?」
最近よく話題になるジャンルだ。 トラックに轢かれたとか、電車から落とされたとか、不審者に狙われた相手を庇って死ぬとか……
「……転移は何か違うんだ?」
「転移はそのままの意味だよ。 転移。 つまり、 俺は生きたままここに来たわけ。おけ?」
話して数分だというのに、馴れ馴れしい男だな。 ……人のことは言えないが。
「意味は理解した。さっきの質問の答えだな? ……俺は特に聞かないよ。理由があるんだろうからな。 これは俺が首を突っ込む問題じゃないってことぐらい分かるよ。 」
「流石大学生。大人の対応だな。」
「よく老け顔だって言われるよ。」
スバルがそういう意味じゃねぇよとツッコミを入れられた。 何故だ。
**
「スバル、お前はどうして此処に居るのだ?」
「俺は今、此処の世界と繋がっている世界で、奪われた物を全て取り戻す為に、ある塔に向かったんだよ。 その塔の名前はプレアデス監視塔。」
……本当に異世界かはともかく。 凄く日本人っぽい人がつけた奴だな…
「アンタの思ってること。当ててやろうか? 凄く、日本人が付けた名前っぽい。ってな。」
「んな!? 貴様、エスパーか!?」
「やっぱりか。
安心しろよ、岡部さん。俺は心を読める訳でも、風を読むだけで嘘を見抜けるなんて事はねぇからよ。」
「エスパーじゃないなら、何故、俺の思っている事を!?」
こういう時の返し文句は同じことを思ったから。だが……果たして。
岡部が身構えるが、帰ってきた答えは想像通りの物だった。それは、この少年、ナツキ・スバルも同じ事を思ったからだそうだ。
「……奪われたもの。と言っていたな。 スバルよ。 一体、何を奪われたのだ?」
「……大切な人を奪われた。」
さっきまで陽気に話していたスバルの目が更に鋭くなった。 その目で話した言葉が。
「大切な人を奪われた」
だった。
***
「……奪われたという事は、生きているのか? どこぞの桃のお姫様よろしく、連れ去られたって訳じゃないのだな?」
「……あれを生きている。なんて、俺は思いたくねぇけどな……」
「?」
「俺の大切な人、二人居てさ、一人の名前は、さっきの自己紹介で言っていた子なんだ。 名前はエミリア。 王選候補の一人で、 ……要は王様になりたいって事なんだ。 俺はその子の夢の応援をしてやりたいと思ったんだ。 」
「……そいつの事が好きなのだな」
「あぁ、大好きだ。 つか、大好きじゃなかったら騎士になりたいとか、守りたいとか、応援しねぇだろうが。」
「……確かにな。 ……大好きじゃなければ、 身体を張る意味もないからな。……ん? 少し待て。 二人といったよな? スバル。 もう一人は?」
今、俺の中でとんでもない理論が考えつつあるのだが……!?
「もう一人はレムって言うんだ。 俺がお世話になってる貴族の所のメイドさんでな。 会った頃は凄く俺に冷たかったんだ。 」
「冷たかった?」
「その子に姉にラムって言う姉貴が居てな、 その二人はさ、鬼なんだよ。 鬼族。 男ならこの言葉で
「俺はそうでもないな。 俺はそういう、イセカイモノ? はあまり読まないんだ。 」
「へぇ、意外だな。 岡部さん。そう言うの好きだと思うんだけどな。」
そう言われると確かに前まで好きで読み物として好んで読んでいたかもしれんが……
「ある事件があって、そういう世界が移動する話があまり好きじゃなくなったんだ。 読むなら世界観がずっと同じままの話が今の俺好みだ。」
「……話を続けてもいいか?」
「すまんな、話の腰を折ってしまって。それで、そのレム?という子とどういう関係なんだ? スバルは。」
「あぁ、そうだな。レムとは————」
スバルは懐かしそうにその子、レムの話をした。 話を聞くだけで、性格が思い浮かぶ。 かなり優しい子なのだと。 スバルの事を心から信頼している事。 あぁ、まるで……
「まゆりみたいだな……」
「え?」
……どうやら声に出てたみたいだ。