剣盾でもメッソンでした。
10ページまでの構築記事を読み漁って、強い基本選出と補完を考えてそれがスタートライン。
1シーズン2ヵ月、その間数百戦はあたりまえ。
環境を読みながら合理的に型を考えて、でもピンチの時には直感も信じて戦った。
時には同じレベルの人と通話して強いポケモンについて話し合う。
そんなふうに毎日毎日ポケモンのことだけ考えつくして、僕はようやく頂点を掴んだんだ。
僕は今、ホップのお母さんと一緒にバーベキューの準備をしてる。トントントンと野菜を切る音が台所からきこえてくるから、僕は外に器材を運んでる。
材料は玉ねぎに、にんじんに、お肉みたい。ちょっと食べるのが楽しみになってきちゃったかも。ちゃんと準備したらダンデさんも喜んでくれるかな。
「おーい!マサル!アニキが帰ってきたぞー!」
ホップが大きく手を振りながら走ってきて、その後を王冠を被った大人の人がリザードンを連れて苦笑いしながら歩いてる!チャンピオンのダンデさんだ!
ちょっと浮かれてた僕は慌てちゃったけど、なんとかコンロをゆっくり下ろすことができた。ドスンって音したけど大丈夫だよね……?それより自己紹介っ!
「初めまして、マサルって言います!」
「こちらこそ初めまして、オレがチャンピオンのダンデだ。君の話はホップからよく聞いてるぜ。お客さんなのに歓迎の準備をさせてしまったみたいで悪かったな」
「いえ、僕からお手伝い頼んだので全然大丈夫です!」
「マサルすげえキンチョーしてるな、ガチガチだぞ」
「ホップは余計な事いわないの!」
僕とホップのやり取りを見て、ダンデさん微笑ましそうにしてる。
いきなり恥ずかしい所見られちゃったな。
それにしてもダンデさんはチャンピオンだから、凄いオーラみたいなのを纏ってるのかなあとか思ってたけど、ずっと自然体って感じにチャンピオンって言うんだなあ。
これが何年も守り抜いてきたっていう自信なのかな。
でもむしろ風格があるのは、ダンデさんが連れているポケモンの方かもしれない。
大きな羽、後ろの尻尾の炎を燃え上がらせてのっしのっしと歩く堂々とした姿、目線を軽く合わせるだけでビリビリとした気迫が伝わってくる……。
本当に歴戦の猛者って感じがするね。
「そのポケモンは、ダンデさんの相棒の」
「ああ、俺の相棒にしてエース。リザードンだ!」
「かっこいいですね」
「そうだろう!」
軽く武者震いがする。テレビでもよく見た、憧れたこのポケモンが、将来僕が乗り越える壁なんだ―――。
それは置いといて、僕のポケモンをもらわなきゃいけないね。
「バーベキューより先に、君とホップにポケモンを渡さないといけないな」
「ありがたい話ですけど、今手伝い中なんです……」
「ポケモンと一緒にバーベキューするのも目的のひとつだと思うぞ。先に選ぼうぜマサル!」
「じゃあそう断りいれてくる……あ」
ダンデさんの視線の先を見たら、ホップのお母さんが家から出て手を振ってウインクしてた。ホップやダンデさんのお母さんらしくノリが凄くいいけど、もしかしてリザードンポーズこのお母さんもやってるのかな?
とりあえず心配はいらないみたい。
「大丈夫そうだね。じゃあホップの言う通りにしちゃおっか!」
「おう!」
ホップとダンデさんが頷いたから、僕たちは庭にあるバトルコートの近くに向かったんだ。
小さな池と木があって、ポケモンが遊べるようになってるね!
ダンデさんはワクワクしてる僕とホップを横目にマントから、3つのモンスターボールを取り出した。やっぱり3匹なんだ……!
「それじゃあマサルとホップが選ぶポケモンを紹介するぜ!最強のポケモントレーナーからのプレゼント、ポケモンの最高のアピールタイムだ!どんなポケモンかよくみろよ!」
ダンデさんが投げた3つのボールから緑色の子猿と、赤いうさぎと、青いカメレオンみたいなポケモンが出てきた。どのポケモンも見たことないよ!?
ヒトカゲ、フシギダネ、ゼニガメじゃないみたい……?
最後にはどう進化するんだろう。とにかくえらばなきゃ!
「くさのポケモンサルノリ、ほのおのポケモンヒバニー。みずのポケモンメッソンだ!」
サルノリがすぐに木に登って木の実を食べ始め、メッソンが池に潜って口からみずでっぽうを放ち始めた。2匹とも元気いっぱいだね!
だけどヒバニーは僕を少し見つめると、怖がるように木の陰に隠れちゃったんだ。木の幹から体半分だけ出して、ブルブル震えながら僕を見てる。
そっか、僕が怖いんだ。そうだろうね、その理由は僕にも分かるよ。性格が『おくびょう』ってだけではここまで怖がらないだろうし。
きっとキミは賢い子なんだ。僕と言う人間の本質をちゃんと分かってる。
でもポケモンは僕に従うだけの道具じゃないって、ちゃんとした生き物なんだって、僕もこの世界でたくさんウールーと接してるうちに分かった。だから……。
「ホップ、ごめん!先に選んでいいかな?」
「オレにはウールーもいるから、マサルが先に選んでいいぞ」
「ありがとう」
僕はホップに断りをいれて、ヒバニーの方に歩いていくことにしたんだ。
「大丈夫だよ。僕はキミに悪いことはしないから。まだ信じてとは言えないけど、僕と一緒に戦ってくれないかな。ヒバニー」
僕はヒバニーに向けて心から、ちゃんとそう言うことができたんだ。
「ヒバ……」
ヒバニーはまだ怖がっていたけど、木から離れてちょっとずつ僕の方に近寄ってくる。
「ありがとう。これからよろしくね、ヒバニー」
ポケモンのことを種族値とか、個体値とか、性能とか。僕がそういう目で見ちゃうのはまだ治らないし、それも僕の一部ではある。
それでもこのヒバニーが将来僕の相棒のポケモンだと、そう胸を張って言えるように育ててあげたい。
僕は怯えるヒバニーを安心させるように撫でながら強く、そう決心したんだ。