なんとか一週間後に出せました。次も一週間後に出せるように頑張ります。
蒼焔のリリィ、始まります。
電子音が鳴り響く百合ヶ丘の治療室。そこに夢結はいた。眠り続けている焔を見ながら。
「…………帰って来たと思ったらこれ。あなたはどれだけ私に迷惑をかければ気がすむのよ」
あの時、焔は安心したのかわからないがまた眠ってしまったのだ。そこからはもう誰もが迅速だった。すぐに治療室に運びこみ、結梨がやったのであろう焔の傷の応急措置を完璧に措置した。あとは焔が目覚めるのを待つしかない。
叔父である咬月が夢結に講義や演習は気にせずに焔のそばにいてくれと頼み、夢結はお言葉に甘えて焔が目覚めるまで治療室で待ち続けるのだった。
コンコン……
『お姉様、梨璃です。結梨ちゃんも一緒です』
「入ってらっしゃい」
扉がノックされてすぐに梨璃の声が聞こえ、夢結は入ってくるように言うと静かに扉を開けて入ってくる梨璃と結梨。
「失礼します。お姉様、お兄様はまだ……?」
「えぇ、よく眠ってるわ」
「お父さん……」
「心配しないで結梨。焔は絶対に目を覚ますから。ゆっくり待ちましょう」
「……うん」
焔を見て今にも泣きそうな結梨を優しく撫でる夢結。その姿はまるで母親のようだ。梨璃もなんとか我慢して涙を流さないようにしている。
「……お姉様、前から聞きたかったのですがお兄様がリリィになったきっかけなど、昔のお兄様のことを教えていただけませんか?」
「それだと昔の私のことも話すことになるわね」
「ぜひお願いします!」
尊敬している夢結の昔のことを聞けるとわかった途端に声をあげる梨璃。夢結は人差し指を口にやって、しーっとやる。それを見た梨璃はあわわ、と慌てて口を塞ぐ。
「治療室では静かに。もともと話すことは禁止なんだけど特別に許可を貰ってるんだからできるだけ静かにね?」
「は、はい。すみません……」
「それで夢結、昔のお父さんってどんな感じだったの?」
「そうね……。昔の焔は今と全然変わらないわ。優しくて昔は私以外の女の子とよく話していたわね…………」
「あれ?お姉様……?」
「夢結、なんか黒いのが見えるよ?」
「そんな事はないわ。その優しい性格とかでいろんな子から人気だったわ、焔は」
「お兄様は、その頃からお兄様だったのですね……」
「えぇ。本当に頼れるお兄さんって感じだったわ。身長もその頃から大きかったし」
「お姉様、もっとお兄様のことを教えてください!」
「結梨もお父さんのこともっと知りたい!」
「わかったわ。でも、結構長くなるわよ?」
その後もずっと焔の昔話で盛り上がった。時間など気にせずに話に夢中になる三人。昔話をしていれば起きるかもしれないと心の中でそう思った夢結だった。
一方その頃、梨璃と夢結と結梨以外の一柳隊のメンバーはレギオンルームにいつものように集まっていた。
「あれからもう三日ですね」
「焔様はいつ起きるんだろうね」
「焔様は寝坊助だったのですね。以外ですわ」
「そんな事言ってる場合か?」
「ミリミリ、焔のCHARMはどうだ?」
「百由様が言っておったが〈クレセント・ローズ・リオ〉はなんとかできても〈ソウルハーベスト〉は難しいそうじゃ」
「〈ソウルハーベスト〉が一番損傷が激しかったしな」
「でも、百由様なら直せるのでは?」
神琳の問いかけに梅は首を横に振る。焔のCHARMを一番よく知っているのはこの場では梅だけだ。
「焔のCHARMは百由でも直すことはできない」
「なぜですか?」
「あの二本のCHARMは焔が自分で作った物だからだ」
「え、自分で!?」
「そういえば自作っておっしゃってましたわね。ですが自作ってだけでパーツとかは一緒なのでは?」
「いや、百由様が言っておったが焔様のCHARMはどこのパーツを使っているのかわからないそうじゃ。だから直したくても直せないって感じじゃな」
「グランギニョルなら直せると思いますわ。送ってみるのはいかがです?あ、いや、やめた方がいいですわね。お父様はしないでしょうが他の社員などが焔様のCHARMを奪いかねませんし」
「奪ったところで焔様の逆鱗に触れるだけだと思うけどね」
「そんな事になったりでもしたらグランギニョルが瞬く間に蒼い焔に包まれてしまいますわ!」
楓は競技会で焔が怒った際、蒼い焔で容赦なく叩き潰したのを思い出して震えていた。よく見ると何人か震えている。どうやら少なからずトラウマを植え付けてしまったようだ。
「ところで、焔様のお見舞いどうしますか?」
「手ぶらって訳にもいかないしね。なにかいいものないかな?」
二水と雨嘉がう~んと考えるがパッと思いつくものがなかなか出てこない。
「千羽鶴」
鶴紗が呟くと全員が鶴紗を見て呆然とする。鶴紗はそんなのお構い無しにケーキを食べているが。
「千羽鶴か。確かにお見舞いと言ったら千羽鶴だな!よし!善は急げだ!鶴紗、行くゾ!」
「ん」
梅が鶴紗を連れて折り紙を探しにレギオンルームを出ていった。
「こ、行動が速い……」
「私、折り紙の鶴の折り方知らないんだけど……」
「わたくしが教えますわ、雨嘉さん」
「うん。ありがとう、神琳」
「それじゃあ、梅様たちが戻ってくるまでにテーブルの上を片付けてしまいましょうか」
ケーキなどが乗っているテーブルの上を残りのメンバーが片付けに入り、ちょうど終わった頃に梅と鶴紗が戻ってきた。大量の折り紙と大勢の人を連れて。
治療室。そこでは夢結の昔話が終わっていたのだった。そして今は焔のレアスキルについて話していた。
「お父さんだけのレアスキル?」
「えぇ」
「確か前に言っていたオリジナルのレアスキルですよね?お兄様だけのオリジナルのレアスキル……ってまさかあの蒼い焔ですか?」
「その通りよ、梨璃。けど、あれにはまだ名前はないの」
「だからみなさんは蒼い焔って言ったりオリジナルって言ったりしていたんですね」
「えぇ。そのレアスキルの名前は焔が考えなくちゃいけないのだけどネーミングセンスが壊滅的だから私に頼んできたのよ」
「壊滅的って……意外ですね。お兄様のCHARMの名前だってお兄様自身が名付けたものなのに」
「奇跡的によかっただけよ」
「えぇ……」
「それで名前は決まったの?」
「えぇ、やっと良いのが浮かんだの。と言っても安直だけど。名前は『蒼き焔(リオ・グレイズ)』よ」
「リオ……グレイズ……ですか?」
「漢字で蒼き焔と書いてリオ・グレイズと読むの。ね?安直でしょ?」
「た、確かに……」
「でも、いいと思う!」
「そうだね。私も結梨ちゃんと同じでお兄様に合ってると思います!」
「ありがとう」
焔のオリジナルレアスキルの名前が『蒼き焔(リオ・グレイズ)』と決まったが本人は未だ眠ったまま。早く伝えたいと三人は焔を見ているが目覚める気配が全く無い。
「あ、梨璃、結梨。申し訳ないのだけど私ちょっと部屋に戻らなくちゃならないの」
「ふえ?そうなんですか?」
「梨璃、私たちも一度レギオンルームに戻らないと」
「あ!そうだった!」
「そうなのね。焔、少しの間一人になっちゃうけど我慢してね。すぐに戻ってくるから」
「行ってきます、お兄様」
「お父さん行ってきます」
三人が治療室を出て各々向かう場所に行く。そして夢結は自室に戻ってある物を取ると。
『彼は本当に目覚めるのかな?』
「っ!」
不意に後ろから聞こえてきた声。聞き間違えることはない人の声。もうこの世にはいない人の声。夢結は後ろを向かずに応えるように呟く。
「…………どういうことですか。お姉様」
『だって彼はずっと眠っている。本当に目覚めるのかわからない。このまま眠り続けて最後には……』
「お姉様は焔のことをそんな風に言いません」
『ごめん。けどそうなる可能性がある。夢結はそれを受け入れられるの?』
「…………焔は絶対に目覚めます。そして私の、私たちのところに帰ってきます」
夢結が言いきると美鈴の声は聞こえなくなる。だがーーー
ゴゴゴゴゴゴゴ…………
音と共に地震が起き始める。夢結が部屋の窓から外を見るとHUGEネストから空に上がる光を三つ確認したのだった。
ネストから飛び上がった物体、特異のHUGEは高度を上げて地球を一周して百合ヶ丘の近くに着陸する軌道をとっていた。それを知った咬月は百合ヶ丘の生徒全員に避難勧告を出し、安全な場所まで避難したのだった。
避難する前に夢結は焔が眠っている治療室へと走っていた。治療室の前に到着する。
「お姉様!!」
「夢結!!」
「梨璃、結梨」
夢結の他に梨璃と結梨も来たのだった。夢結は何も聞かずに二人の目を見てから頷き、治療室のドアに近づいてドアが開いて中に入るとそこには誰もいなかった。
ズドォォォォォォン!!
空に上がった特異HUGEの一体が着陸、いや着弾と言っていいのかわからないが音が轟き、地震が起こる。
ズドォォォォォォン!!
ズドォォォォォォン!!
残りの二体も着弾して音が轟く。三体のHUGEは上空からの運動エネルギーを使って地中深くに突き刺さると中から黒く禍々しいマギの球体を放出して結界を生成しながら新たなHUGEを構築していった。
このHUGEが張った結界によってCHARMが動作不能となったのだった。夢結たち三人は手分けして消えた焔を探していると夢結に異変が起き始める。
夢結が突然頭を抑えて苦しみ出すと黒髪が徐々に白くなっていく。夢結はなにが起き始めているのかわからないがこの感覚は何度も経験した感覚だった。それは『ルナティックトランサー』を発動する際にあるものだった。
梨璃と結梨が夢結を見つけて合流すると異変に気づく。
「お姉様!?大丈夫ですか!?お姉様!!」
「逃げ……なさい……」
梨璃が夢結を支えると夢結は頭を抑えながら小さな声で言い出す。
「逃げるって……それならお姉様も一緒に!」
「無理よ……私はあのHUGEを……倒さなくちゃ。だから……あなたたち二人は逃げなさい……」
「その状態でどうやって戦うんですか!?早くお兄様を見つけて逃げましょう!」
「……もう……焔は戻ってこないわよ……」
「え…………」
「……だって……こんなに……探しているのに……見つからないのだから……」
「お父さんは絶対に夢結たちのところに戻ってくる!!」
今まで黙っていた結梨が始めて怒りの声をあげた。それに驚いて固まる夢結と梨璃。だがそんなものお構い無しの結梨である。
「お父さんは私を守ってくれたあと言ってた!!二人一緒に絶対に夢結たちのみんなのところに帰ろうって!!お父さんが約束を破ったことなんてあった!?きっとお父さんはみんなのところに、夢結の元に帰るために頑張ってるんだよ!!それなのに夢結が諦めてどうするの!?」
「結梨ちゃん……」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
叫びながら目に涙を溜めている結梨を見て梨璃はある決断をする。
「お姉様。私はあのHUGEを倒してきます。お姉様は結梨ちゃんと一緒に避難してください」
「梨璃……無理よ!あなたがお姉様に勝てるはずがない!」
「美鈴様じゃありません!あれはHUGEです!!」
梨璃が夢結から離れてCHARMを取りに行こうと走り出す。
「待ちなさい!待って……梨璃……」
夢結の声を聞いて立ち止まる梨璃はゆっくりと振り返る。微笑みながら静かに呟く。
「行ってきます、お姉様。結梨ちゃん、お姉様をお願いね」
「うん……気をつけてね、梨璃」
梨璃は結梨に頷いてマギの光を放ちながら走っていった。
何も出来ず、ただ見ていることしかできなかった夢結は悔しさに拳を握りしめていると結梨が支えてゆっくりと梨璃が走っていった反対方向に向かって歩き出す。
「夢結、お父さんが言ってたんだけどね。夢結のところに帰ったら伝えたいことがあるって」
「伝えたい……こと……」
「うん。私には教えてくれなかったけど大切なことだってことはわかったよ。だから、夢結もお父さんが戻ってくるって信じて」
結梨の言葉に夢結は吹っ切れたのか結梨に自身の部屋に連れて行ってほしいと頼む。が、結梨は夢結がなにをしたいのかわかっているので先ほど梨璃の元にきた連絡内容を言う。
「CHARMなら動かないよ」
「なん……で……」
「わからない。みんなのCHARMが使えなくなったって連絡があったの」
「それじゃあ、梨璃も……」
「……それもわからない」
梨璃の性格上、CHARMが使えなくても一人でどうにかしようとしてもおかしくない。そう思った夢結はどうすればいいか考えるとあることに考えつく。
「結梨、別のところに連れて行ってほしいの」
結梨は夢結が言った場所に夢結を連れて行ったのだった。
そして夢結が頼んだ場所に着いた。そこはある人の部屋だ。プレートに書かれている名は『真島百由』。
二人は百由の部屋に入るとそこに置かれているCHARMを見つける。夢結はそのCHARMを見ながら百由の部屋を見渡すがおかしいことに気づく。その理由はあるはずの物が無いのだ。それは彼の、焔のCHARMである。焔が眠ってしまってから彼のCHARMは百由が預かったのだ。それならこの部屋にあるはずなのに無い。
そして、百由がなにかを作っていたのか道具類があちこちに転がっている。だが夢結は百由が後片付けをしないなんてことは絶対にないとわかっている。ならばこれは一体誰がやったのか。眠ったままの焔がどこにもおらず、百由の部屋にあるはずの焔のCHARMが無くて道具類が散乱している……考えられるとしたら。
「(だとしたら……一体なにを考えているのかしら。けど、それはきっとわかることでしょうし今は目の前のことに集中ね)」
夢結はもしかしたらのことを考えるがすぐに切り換える。そして夢結が求めていたマギクリスタルが青く輝いているCHARM、〈ダインスレイフ〉の前に立つ。
「結梨、あなたはみんなのところに避難しなさい。私は梨璃のところに行くから」
「わかった。夢結、気をつけてね」
「えぇ」
結梨が部屋を出て走っていくのを見送って夢結は〈ダインスレイフ〉を掴む。すると青く輝いていたマギクリスタルがオレンジ色に光り出してマギクリスタルに夢結の固有ルーンが浮かび上がる。
「あなた、私のことを忘れないでいてくれたのね」
そう言うと夢結の髪が真っ白に染まり、赤い瞳に変化したのだった。
避難していた場所に一柳隊のメンバーが集結していた。
「三人ともまだ焔様を見つけられていないのでしょうか」
現状を梨璃に伝えた際に梨璃が自分たちがやっていることを聞いていたメンバーは三人が来るのを待っていた。するとそこに。
「みんなー!」
「結梨さん!って結梨さんお一人なんですの?お二人は?」
結梨が走ってくるとすぐに楓が反応するが梨璃と夢結の姿がないのに気づき結梨に聞くと結梨が二人はHUGEを倒しに行ったことを伝える。
「CHARMが動かないのにどうやって!?」
「たぶん梨璃のCHARMは動いたんだと思う。夢結も違うCHARMを持って行った」
「違うCHARMって……」
「もしかして〈ダインスレイフ〉か?」
「名前はわからないけど金色のCHARMだったよ」
「〈ダインスレイフ〉で間違いないな。にしても夢結も梨璃に影響されたのかな」
「お二人が戦っているのでしたらわたくしたちも戦うべきなんでしょうけど、CHARMが動かなくては……」
神琳が呟いた瞬間、一柳隊が集まっている場所に突然強風が吹く。あまりの強さに全員が驚きながら体制を保つために踏ん張る。風がやみ、辺りを見ていると全員の中心点になにかが落ちる。いち早く気づいた楓が落ちてきた物を拾うと見慣れた物だった。
「これ……」
「それ、ノインヴェルト戦術用の弾です!」
「なんでこんなもんが?」
楓を中心に集まっているが雨嘉と鶴紗だけがHUGEがいる方向をずっと見ている。それに気づいた梅と神琳が二人に寄るが雨嘉と鶴紗は見向きもしない。
「鶴紗。今の見えた?」
「なにかが通ったのはわかったけど速すぎてなにが通ったのかわからない」
雨嘉と鶴紗は強風が吹く直前に自分たちの上空を猛スピードでなにかが通ったのを見たのだ。けど、その正体はわからない。
「あんな速く動けるんだ」
雨嘉と鶴紗を他所に結梨が呟く。まるで通ったなにかの正体がわかっているかのように。
「結梨、さっきのって……」
「見えたの?」
雨嘉と鶴紗が結梨に聞くと結梨は頷く。
「さっきのは………………お父さんだったよ」
結梨の言葉に全員が驚いたのだった。
三体の特異HUGEが構築した新たなHUGEを相手していた梨璃のところに夢結が参戦した。だが、このHUGEは今までのやつと違い、防御力や攻撃力が高い。そのせいで最初はよかったのだが今は劣勢となっていた。
「くっ!?」
「お姉様!?わっ!!」
夢結がHUGEの攻撃で吹き飛ばされ、それに気を取られた梨璃も二撃目を喰らって夢結のところに吹き飛ばされて夢結と同じように倒れる。なんとか立ち上がろうとする二人に追撃するためにHUGEが三本の先端が鋭く尖った腕を胴体から切り離して二人に向かって突きを放った。
動けない二人は咄嗟に目を瞑る。だが、いつまでたっても攻撃がこない。恐る恐る目を開けると目の前にはーーー
「ほむ……ら……」
「お兄……様……」
HUGEの三本の腕を無いはずの『右腕』で受け止めていた焔だった。
お読みいただきありがとうございました。
失った右腕がある……だと……?しかもそれでHUGEの攻撃を防ぐ?一体、どうして……?次回わかります。それと焔のオリジナルのレアスキルの名前の『蒼き焔(リオ・グレイズ)』なんですけど夢結を演じている夏吉ゆうこさんが出てる『魔王学院の不適合者』に出てくる火属性の最上級魔法『獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)』の名前から取りました。関係性が夏吉ゆうこさんが演じたサーシャが使った魔法ってだけなんですよね。
それでは以上、レリでした!