やっと書き終わりました。ロッジでのお泊まり編どうするか迷った結果こうなりました。それでは!
蒼焔のリリィ、始まります。
二水を先頭に移動している梨璃たち。向かっているのは二水が町会長から聞いた山の中にあるロッジだ。
「二水さん。この先にあるんですの?」
二水の後ろを歩いている楓が二水に尋ねる。楓がそう思ってしまうのは無理な話で、現在二水たちが歩いているのは崖と崖に挟まれた細い道なのだ。
「はい。この先にあるはずです。町会長さんから聞いた道のりですし」
「それにしてはだいぶ歩きましたわよ?」
「こんなに歩く距離とは聞いていませんが……」
二水と楓の会話を聞きながら歩いている夢結は隣を歩いている梨璃がなにか考え事をしているような顔に気づいた。
「梨璃、どうしたの?歩くのに集中しないと転んでしまうわよ」
「あ、はい。すみません」
「なにか考え事?梨璃」
結梨も梨璃の顔が気になっていたのか夢結が聞こうとしていたことを聞いたので夢結は静かに梨璃を見る。
「ちょっと、気になってたんです。エレンスゲがなぜ一葉さんにあんな命令をしたのかって」
「そうね。そこは気になるわね。でもね梨璃、少し間違っているわ」
「え?」
「焔の言葉を思い出しなさい」
夢結の言葉に静かに聞いていたみんなが焔の言葉を思い出す。
『学園を通してゲヘナから何を言われた?』
この言葉を。
「ゲヘナ……」
「そう。エレンスゲの命令ではなく、ゲヘナの命令なのよ。そしてゲヘナがなぜそのような命令をしたのか。それはーーー」
-同時刻-
場所は百合ヶ丘の理事長室。そこに焔はいた。伯父である咬月と生徒会の三人も。
「ゲヘナがそんな事をしてくるなんて……」
「エレンスゲを通して接触……理由はやはり……」
「えぇ。あそこはまだ俺を諦めていないってことでしょうね」
「焔は……大丈夫なの?」
史房、眞悠理が驚いていながら祀は夢結を通して焔と仲良くなったので夢結と同じぐらい焔と仲良しだと思っている。そんな祀は焔を心配そうな目で見る。
「俺は大丈夫だ。だが、仲間の心情に気づくのにだいぶ遅れた……もっと早く気づいていれば一葉はあんなに苦しまなくてすんだはずって考えると……自分が許せないよ……」
「焔さん……」
「お前は、そんな事をしたエレンスゲにケンカを売ろうっていうのか?」
「正確にはあんな命令をしたゲヘナの役員どもだ」
「その役員が全員だったらどうするのよ!」
「そんなに数はいないはずだ」
「根拠は?」
「以前あった俺の捕獲命令。その時に嘘の証言をした奴らはおじ……失礼、理事長代行がやってくれたからそいつらはむやみやたらに手を出してこないはず。なら、出世するためのような欲に目が眩んだバカしかいないだろうって考えました」
「なるほど。じゃがな、焔。そこにお主が行ったところでどう変わる?」
「重々承知しています。俺が行ったところでどうなるのか。変わるか変わらないかを気にしていたら仲間を助けるどころの話じゃなくなるし、それこそなにもしないでただじっとしていろと言われてもできないって話です」
「ふむ……。焔」
「はい」
「毎度言っていることだが、わしは百合ヶ丘の理事長代行であると同時にお主の伯父なのだ。学院内でも行儀は不要だ。わしはお主にはただ元気に育ってほしい。でなければ咬夜(こうや)からお主を託された意味がない」
「(咬夜?)」
咬月の口から出た知らない名前。祀はそれが気になったが今は家族間の話だからなにも言わない。
「父さんが伯父さんに俺を託した理由はわかってる。けど、こればっかりはたとえ伯父さんや父さんに止められても、俺は行く」
「……はぁ。誰が行くなと言った」
「いや、まあ、言ってないけどそんな雰囲気だから……」
「その雰囲気が今の言葉でぶち壊しよ?焔」
すかさずツッコミをする祀。焔と夢結と一緒にいる時はだいたい祀がツッコミキャラになっているが彼女は気にしていない。
「とにかく、エレンスゲに行くのは許可する。ただし、必ず百合ヶ丘に帰ってこい。ここはお主の家であり、家族がいる場所なのだから」
「わかってるよ、伯父さん」
「ならばよし。欲に目が眩んだ愚か者どもを粛清してこい」
「了解!」
「さて、話は決まったな。お主もそろそろ出なければ行けないじゃろう?早く出なければ向こうに着くのが夕方になってしまうしな」
「わかってる。じゃあ、ありがとう。俺のわがままを聞いてくれて」
「何を言う。伯父であるがここでのわしはお主の親としていようと思っておるのだからな。甥っ子の、息子のわがままを聞くのがわしの務めじゃ。ほら、早く行きなさい」
「ありがとう。いってきます」
そして焔は理事長室を出ていき、中には咬月と生徒会の三人が残った。
「さて……あの報告は確かかね?祀君」
「はい、確かです。百由が何度確認してもその結果が出たと」
「ふむ……」
そう言う咬月の手元には一つの焔の顔写真が掲載されている資料があった。
内容は……。
ーーー蒼月焔のマギ保有量が増加傾向にありーーー
場所は変わり、焔は義眼のレーダーを使って二水が言っていた施設に向かって山道を歩いていた。
歩いていると焔の耳にある音が聞こえた。
「この音は……」
音がする方向に行くと、そこには綺麗な小川があった。水は綺麗で魚が泳いでいる姿がはっきりとわかるぐらいの透明度である。
(こんな場所があるとは。場所は義眼に登録したから今度みんなで来るか)
そんな事を考えていた焔はふと思いつく。
「夕飯の材料でも捕っていくか」
そう言って焔は靴を脱いで川に入っていったのだった。
時刻は夕刻。先に到着していた夢結たちは夕飯の準備ができたため、外にあるテーブルを使って食べ始めていた。
晩御飯はカレーであり、なぜかいた百由が全員のデータを見て調理班などを手分けしてみんなで作ったのだった。
各々、話ながらカレーを食べていた時……。
ガサガサ……
『っ!』
突如聞こえた草を掻き分ける音。山の中というのもあってもしかしたら匂いにつられて野生の動物が来たのか、と全員が思って静かに立って身構えていると結梨が草むらの中に飛び込んでいった。
「結梨ちゃん!?」
梨璃が驚いていると草むらの中から一つの影が出てくる。それを見た梨璃が……。
「お兄様!?」
また驚いたのだった。出てきたのは左腕で結梨を抱っこしている焔だった。結梨は焔に抱っこされながら顔をスリスリとしている。
「なんてところから出てきてるのよ」
「いや~迷ってな。予定より遅くなってしまった」
「義眼があるのに迷ったのか?」
「迷って義眼でショートカットしてたらこうなった」
「ショートカットって言えるのか?それ」
「ショートカットはショートカットだ」
「物は言いようね。まあ、いいわ。それで、遅れた理由はその担いでいる物なの?」
夢結が焔が義手で縄を持っていて肩にかけるように担いでいる物に視線を送る。
「その通り。夕飯の足しにと思ったんだが、ちょっと遅かったな」
焔はそう言って縄の先をみんなに見せるように前に出す。縄の先には六匹の魚が吊るされていた。
「魚?」
「わぁ~!ヤマメにイワナじゃないですか!」
「さすが梨璃。詳しいな」
甲州の生まれで本人曰く、田舎者の梨璃が魚の種類をすぐに言い当てた。
「はい!小さい頃はよく父と一緒に釣りに行ってましたから!久しぶりに見ました!」
「そうだったのか」
「そんなに捕まえてこなかったのね」
「さすがに全員分は捕りすぎかなって思ってな。食べたい人が食っていいぞ」
「お父さんは食べないの?」
「俺はいいからみんなで相談して決めてくれ」
「それなら……」
焔が捕ってきたヤマメとイワナは塩焼きにして三グループで二匹に分けたのだった。
「ヤマメって初めて食べたけど、美味しいわね」
「イワナも美味しいです」
叶星がヤマメを。一葉がイワナを一口食べてから叶星は高嶺に。一葉は藍に渡して、食べたら次の人にとリレー形式のようなことになっているのを焔は千香瑠が用意してくれたカレーを食べながら微笑んで見ていた。
「はい、お父さん。あーん」
突然隣に結梨が座ってきたと思ったら塩焼きにしたヤマメを焔の前に出す。所々食べた跡があるので何人かが食べたことは確定している。
「いや、俺はいいよ。みんなで食べてくれ」
「ダメ。お父さんも食べる。あーん」
「いや……」
「あーん」
「あの……」
「あーん」
「わ、わかったから……」
結梨の勢いに負けてヤマメを一口かじる焔。
「ん、美味いな」
「でしょ」
「焔君」
「なんだ?叶星」
結梨の反対側に座ってきた叶星。焔がそちらを向いた瞬間、顔の前にスモアが出される。
「あ、あーん」///
「…………いや、叶星?」
「わ、私が作ったの。食べて?」///
「食べるけどあとでいいか?まだカレーが残ってるから」
「な、なら」///
そう言うと叶星はスモアをおいてスプーンで焔が食べてるカレーをよそって焔に出す。
「あーん」///
「待て待て待て待て。なぜそうなる?」
「い、いいじゃない。私だって……やってみたいし。それに………………結梨さんばっかりズルいし」///
「最後なんて?」
「な、なんでもない!ほら!食べて!」
「強引だな、おい!」
叶星がスプーンを出しながらズイッと迫ってくるのを焔は背を反らして逃げながら夢結をチラッと見ると夢結はイワナを食べながら梨璃と話している。
(なにも見ていないってか、夢結!)
「ジー」
「あ。ゆ、結梨?」
結梨がじっと自分を見ていることに気づいた焔はゆっくりと結梨に目を向ける。
「お父さん。食べないの?」
「えっと……」
「あら、焔。叶星のお願いが聞けないのかしら?」
「ひっ!?」
珍しく焔の口から恐怖の声が出る。それも仕方がない。なんせ、いつの間にか後ろにいた高嶺が焔のうなじにどこにあったのかフォークの先端を当てているのだから。
金属特有の冷たさが三つ、焔のうなじに当てられている。焔は断ったりでもしたらやられると同時に逃げてもすぐに捕まるというのを理解した。
「わ、わかった……」
「っ!じゃあ、はい!」
「……あむ。美味いよ、叶星」
「良かった!」///パァ!
叶星は顔を赤くしながら輝く笑顔を焔に向けた。それを見た焔は先ほどのアレが目の前で起こっていたというのになんと綺麗な笑顔なのかと思っていた。それと同時にこういうのも悪くないなと思ったのだった。
夕食を食べ終え、焔は女子全員の後に風呂に入って自分の部屋にした場所に向かって扉を開けるとそこに思わぬ人物が待っていた。
「ずいぶんと長湯なのね」
「夢結」
部屋に用意されていたベッドに座って過去に美鈴から誕生日でプレゼントされたペンダントを握っている夢結がいた。
「どうしたんだ?夢結」
「昼間に甘えることができなかったから夜に甘えようって思って」
「めっちゃ素直だな」
焔はそのまま夢結の右側に座ると夢結が焔の左肩に頭を乗せる。
「理事長代行との話しはどうなったの」
「許可してくれたよ。欲に目が眩んだバカ共を粛清してこいって」
「そう……」
「夢結?」
「……ちゃんと」
そっと焔の左手に手を添える夢結。
「ちゃんと帰ってくるのよ。私たち、家族のところに」
「わかってる。ちゃんと帰ってくるよ」
焔はそう言って義手で夢結の頭を撫でる。夢結は目を閉じてじっとする。
「それで、夢結はここで寝るのか?」
焔はベッドにある枕が一つだったのが二つに増えているのを見ながら夢結に聞く。
「当然よ」
「梨璃と結梨は?」
「二人で一緒に寝るって」
「わかった。それじゃあ、寝るか」
「えぇ」
そして二人は向かい合いながら布団に入った。夢結が自分から焔に近づいて焔の胸に顔を埋める。
「……わかった」
なにも言わない夢結に焔はただ一言を呟いて夢結を抱きしめる。
夢結のこの行動は抱きしめてほしい時によくやる行動なのでなにも言わずともわかる焔。
焔に抱きしめられた夢結は嬉しそうな顔をして目を瞑る。
「おやすみ、夢結」
そう言って焔も目を閉じて眠りに入ったのだった。
お読みいただきありがとうございました!
さて、これで焔がエレンスゲに行くことが決まりましたね。ゲヘナをボコボコにしましょうか。………………どうやって書こうかな。
名前だけですが焔の父親が出ましたね。兄である理事長代行の名前が咬月なので弟は夜でいいかなって思って安直に咬夜にしました。そのうち出てくるかもしれないです。
そして結梨に嫉妬する叶星。その叶星に嫉妬して夜に突撃する夢結。書いてて思った……ヤバい状況だな~って。まあ、あの夢結が自分の理想の形なので、許してください。
ラスバレ、ついに結梨が出てきますね!知った瞬間にテンションが爆上がりしました。チアの結梨を絶対に当てなくては!(雨嘉のメモリアを一発で当てちゃったから不安しかないとは言わない)
それでは以上、レリでした!