アサルトリリィ―蒼焔のリリィ―   作:レリ

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大変長らくお待たせしました。

4ヶ月……この作品にここまで期間が空いたのは初めてです。

メインストーリー編最新話です。それでは


蒼焔のリリィ、はじまります


ラスバレ編第二十八話

「それじゃあ、いってらっしゃい。焔」

 

 

そう言って背中を押して送り出してくれた姉。夢の中とはいえ自分を鍛えてくれたことに感謝を述べながら進む焔。まあ、心身共にボッコボコにされたが……。

 

 

「いってらっしゃいとは言ったけどまた無茶してこっちに来ないでよ。もし来たら今回以上に鍛え直すからね」

 

 

最後に姉が言った言葉に顔を青くしながら全力で首を横に振りながら絶対に無茶はしないようにしようと思った焔だった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

天へと昇る二つの光の柱。一つは蒼、もう一つは紫である。突然出現した二つの光の柱が新宿を照らし、その事で他のリリィたちも呆然と見上げる。

 

やがて、蒼い光の柱がどんどんと細くなっていき、消滅した。が、光の柱があった場所に一つの蒼い光。その光の正体は……

 

 

六枚三対の翼をはばたかせ、滞空する者。禍々しい右腕を携え、その右腕にマギが循環され始めたのか、蒼い光の筋が入り、異様な光景を出している者。白い髪を揺らし、赤い目を光らせ、蒼い目からは蒼い焔を出している者。

 

 

瓦礫に埋もれていた、焔である。

 

 

「久しぶり、とは言わないが、俺からはそう言わさせてもらおうか。特型HUGE」

 

 

◇◆◇

 

 

「怪我もそんなに酷くなさそうね、良かった」

 

 

滞空する焔を見て頬を赤く染めながらも安堵の息を漏らす夢結。生きていると美鈴に言われていても怪我はどうなのかとかの心配をしていたために、怪我一つしてなさそうな姿を見て、心配事は無くなった。

 

 

「ふふ、そうね。あなたも早く主であるあの人の所に行きたいわよね」

 

 

右手に握る焔の専用CHARM《クレセント・ローズ・リオ》がマギクリスタルコアを輝かせ、カタカタと震えているのを感じた夢結は微笑みながら抱きしめるように抱える。

 

 

「ありがとう《リオ》。あなたが私に力を貸してくれたおかげで私は戦うことができた。本当にありがとう」

 

 

抱きしめながら囁く夢結。その時

 

 

ーーーどういたしましてーーー

 

 

女性の凛とした声が聞こえたような気がした。夢結は驚きで目を見開く。が、すぐに微笑みながら先ほどよりも少し強く抱きしめる。

 

 

「それじゃあ、あなたの主人の所に行って。ちゃんと私の夫の所に行くのよ」

 

 

そう言って《リオ》を回して構え、投げる体勢になる夢結。そして、左足を掲げてから力強く地面に振り下ろす。力強く踏み込んだ左足からマギの波紋が現れ、地面に亀裂が走る。そしてーーー

 

槍投げの要領で《リオ》を思いっきりぶん投げた。その時にマギを存分に使って力を底上げしたため、収束したマギを一気に解放した影響で地面が地割れを起こし、陥没する。投擲された《リオ》は高速で回転しながら飛翔し、焔の所へと向かっていく。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

特型HUGE『エヴォルヴ』は困惑していた。突如として現れた二つの強大な気配。一つは離れた場所。そしてもう一つは真後ろ。離れた位置の気配も強大だが、問題は真後ろに現れた気配。つい先ほどまで戦っていた人間たちは二人が厄介だと思っていたがそれすらも温い相手かもしれないと思った。

 

だから、攻撃して遠ざけようと思って自身の鰭を使って突撃させた。

 

 

直後、突撃させた鰭が全て斬られた。下から高速回転しながら飛んできたモノによって。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

主との感動的な再会なのにそれを邪魔しようとする不敬な化物の部位を狙って全て斬り伏せた《リオ》。そのまま主である焔の所へと向かっていく《リオ》を焔は左手で容易くキャッチし、刃部分の根元に額を軽くつける。

 

 

「ただいま、《リオ》。待たせてしまってすまない。それと、夢結に力を貸してくれてありがとう。にしても驚いたよ。お前が俺以外のリリィに力を貸すなんてさ」

 

 

そう。実は《リオ》は気難しい機体なのだ。主である焔以外が扱うのを極度に嫌っており、焔以外が扱おうとしてマギを流すと《リオ》が拒否するので焔以外のリリィは扱えないのだ。そんな《リオ》が夢結に力を貸したのだ。夢の中で美鈴から聞かされた時は驚いたものだ。

 

 

 

ーーーご主人に会うまでの間の約束だったからーーー

 

 

 

声が響く。焔は驚かない。長年一緒に戦ってきた相棒だとわかっているから。

 

 

「それでもだよ、ありがとう《リオ》。それじゃあ、行こうか。相棒!」

 

 

額から離し、『エヴォルヴ』に刃を向けるように構える焔。焔の声に応えるように《リオ》からは蒼い焔を、《ソウルハーベスト》は義手形態から一瞬で銃形態に変形させて蒼い焔を纏った。

 

そして焔は六枚三対の翼を羽ばたかせ、『エヴォルヴ』に今までにない速度で突撃した。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「さて、私はどうしようかしら」

 

 

焔に《リオ》を返したことでCHARMが無くなった夢結。手持ち無沙汰になってしまったことで戦う術がないのでどうしようかと悩んでいると…………

 

 

ーーー夢結はこれを使いなーーー

 

 

懐かしい姉の声が聞こえたことで夢結は驚いてしまい、周囲を見ようとした瞬間、夢結の足元から蒼い焔が円を描くように出現。蒼い焔の勢いは止まらず、まるで夢の中で暴走した時のような勢いのため、夢結は制御しようとするがそもそもどうやるのかがいまいち理解していないのでどうすることもできずにいると、今度は右手から蒼い焔が出現。度重なる現象に驚いていると右手から出現した蒼い焔がだんだんと形を成していることに気づいた夢結。

 

 

「これは…………」

 

 

蒼い焔で完成された形。それはかつての夢結の愛機。姉が最期に持っていた機体。

 

 

蒼い焔で形成された《ダインスレイフ》だった。

 

 

「なぜ、こんなことが……?」

 

 

突然の蒼い焔で形成されたかつての愛機を見ながら困惑する夢結。自分で操作して形成したわけじゃないので本当に困惑している。

 

 

ーーー得物、無いんでしょ?なら僕からこれを渡すね。焔と一緒に戦って、勝って。僕の大切で愛しいシルトと弟なら、出来るでしょ?ーーー

 

 

再び聞こえる姉の声。姉の言葉的にこの蒼い焔の《ダインスレイフ》は姉からの贈り物らしい。

 

 

「お姉様…………ありがとうございます。私と焔の二人なら、いえ、一柳隊のみんなとなら、絶対に勝ちます」

 

 

ーーー頑張ってーーー

 

 

「さてと…………」

 

 

姉の声が聞こえなくなり、寂しさが込み上げてくるがそれを振り払い、夢結はエヴォルヴを見る。高速で動く焔に翻弄されて鰭の攻撃が出来ずにいる。

 

 

「焔の隣で戦うにはやっぱり私も空中戦が出来るようにならないと…………でも私は叶星さんみたいに風で翔ぶ事は出来ないし……」

 

 

翔ぶ焔を見続ける夢結は《ダインスレイフ》に視線を移す。蒼い焔によって形成された《ダインスレイフ》はメラメラと燃えるようになっている。が、それは熱くなく、むしろ暖かいもの。所有者を暖かく守り、敵には容赦なく燃やす蒼い焔。

 

その《ダインスレイフ》を見る夢結はある考えが浮かんだ。自分に発現した蒼い焔で姉が形成したのなら自分でも形成出来るのでは?と。

 

 

「…………だとしても、賭けね。これは」

 

 

自分が形成しようとしてるものは簡単に出来るとはとても思っていない。そもそも出来るのかすらもわからない。

 

それでも。たとえそれでも。

 

大切な人の、一番愛してる人の隣でずっと戦っていきたい。

 

その想いを胸に。夢結は強く願った。

 

 

「(お願い……私にもっと力を。あの人と同じように翔べる力を、私に!)」

 

 

夢結の強い想いに、夢結に発現した蒼い焔は、応えてくれた。

 

 

夢結の背中から蒼い焔が出現した。蒼い焔はどんどん伸びていき細長い状態となっていき、止まると今度は広がっていく。

 

 

そしてーーー

 

 

夢結の背中に蒼い焔の翼が顕現した。

 

 

「…………」

 

 

顕現された翼を見る夢結。翼はゆっくりと動き、羽ばたきをすると微かな風を感じた。

 

 

「待ってて焔。私もすぐに行くわ!」

 

 

前傾姿勢になり、翼を大きく広げ、大空へと飛び立った。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「焔様の復活…………戦力が大幅に上昇したけど、空中戦が出来るのが焔様以外に叶星様だけ……。私たちは下から銃撃するしかない、か」

 

 

飛翔する焔を見ながら呟くのは鶴紗。マギで跳躍してエヴォルヴに接近しても一撃入れるだけで精一杯ではないかと考えているため、もどかしさに悩んでいた。

 

 

「大丈夫ですよ、鶴紗さん」

 

 

ふと、鶴紗にかけられる声。その声に鶴紗は振り向くと紫の光の柱が消え、そこには薄紫色をした髪と右目から紫の焔(ほのお)を出している梨璃がいた。

 

光の柱の中に梨璃がいることは鶴紗は知っていたのだが、梨璃の姿、というか髪色と右目の状態の変化に呆然としてしまう鶴紗。

 

 

「?鶴紗さん?」

 

 

ポカンと自分と見られているために首を傾げて鶴紗を呼ぶ梨璃。自分の変化に全然気づいていないのである。

 

 

「梨璃?その髪の色と右目は……」

 

「髪?右目?」

 

 

鶴紗に指摘されても理解できない梨璃。

 

 

「あ、うん。ちょっと待ってて」

 

 

全然気づかないのなら口で言うより見せたほうが早い。そう思った鶴紗は制服のポケットに入っている手鏡を梨璃の顔の前に出して、梨璃の顔が写るようにした。

 

 

「え……?」

 

 

自分の変化に固まる梨璃。直後、嬉しそうな顔になり、顔がほんのりと赤くなる。

 

 

「梨璃?」

 

「いえ。この右目、お兄様と同じだなと思って」

 

 

確かに梨璃の言う通り、焔の右目と同じである。鶴紗も見た瞬間、焔を連想した。

 

 

「梨璃、右目はどう?」

 

「別段変化はないです。視界が変な風になっているとかも。でも、先ほどまでと違って感覚が研ぎ澄まされたような感じがします」

 

「目に能力がない……のか?いやでも焔様の右目は義眼だから……」

 

「まあ、そこはあとでわかりますよ。きっと。それよりも……」

 

「あ、うん。先にやることがあるね。でも、梨璃。ちょっと聞きたいんだけど、さっきの大丈夫って?」

 

「それはですね、空中戦はお兄様と叶星様だけではないということです」

 

「え?でも……」

 

「大丈夫です。百合ヶ丘が誇る最強の夫婦が空中にいますから」

 

「えーーー」

 

 

梨璃の言葉に鶴紗が声を出した瞬間、エヴォルヴから蒼い光が照らされた直後、爆発した。

 

突然の爆発、そして爆風。それに驚き、鶴紗が急いで見上げると、焔の前に蒼い焔の翼を羽ばたかせた夢結がいた。

 

 

「夢結様!?」

 

 

驚きの声を上げる鶴紗だが、鶴紗だけでなく、その場にいる梨璃と結梨を除く者が驚いていた。

 

 

「梨璃、わかってたの?」

 

「はい。お姉様がお兄様のところに行くというのを感覚で」

 

 

梨璃の言葉に鶴紗は絶句した。何しろ、姉の行動を感覚で気づいたというのだ。今までの梨璃に感覚でわかることなどなかった。ならば、先ほど梨璃が言った通り、研ぎ澄まされた感覚で感知したのかもしれない。

 

 

「それが、梨璃の覚醒した力?」

 

「どうでしょうかね?お兄様、お姉様、そして叶星様、結梨ちゃんみたいに発現した力は今のところわかりませんし。では、私たちは私たちでやるべきことをやりますよ」

 

 

梨璃はそう言って特殊弾、ノインヴェルト戦術弾を取り出した。それを見た鶴紗は静かに頷き、梨璃から弾を受け取る。

 

 

「皆さん、聞こえますか?エヴォルヴは叶星様、そしてお兄様とお姉様が注意を惹き付けています。今のうちに私たち一柳隊はノインヴェルト戦術を行おうと思います。初手は鶴紗さんからです」

 

『私たちヘルヴォルは一柳隊の援護を』

 

『グラン・エプレも援護するわ』

 

「お願いします。それでは皆さん、配置についてください。つき次第、開始します」

 

『了解!』

 

 

インカムで全員に指示を出す梨璃。テキパキと指示を出すところ、ずいぶんと隊長らしくなったものである。

 

 

「では鶴紗さん。お願いしますね」

 

「任せて、梨璃」

 

 

その場に鶴紗を残し、梨璃も配置につく為に跳んだのだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「少しでもお二人の近くに……!」

 

 

ノインヴェルト戦術が始まり、マギスフィアは現在雨嘉が所持している。そのマギスフィアを空中戦をしている焔と夢結に繋げる為、雨嘉は戦闘域を離脱してすぐにキャッチできるように跳躍していた。

 

だが………………

 

 

「っ!まずい!!避けろ!!雨嘉!!」

 

「えっ!?」

 

 

接近していたことでマギスフィアの脅威を感じ取ったエヴォルヴが焔たちの攻撃の一瞬の隙をつき、鰭の一部を雨嘉に狙いを定め、突撃。

 

いち早く気づいた焔が叫び、雨嘉は驚きながらも咄嗟に進行先をずらし、直撃は免れた。

 

だが、地面に突き刺さった鰭の威力の余波により雨嘉のCHARMからマギスフィアが離れてしまい、そのまま空へと飛んでいってしまった。

 

 

「しまっ!?」

 

 

気づき、飛んでいってしまった方向に顔を向けるがマギスフィアはかなり高い上空へと飛んでいってしまっていた。

 

取り戻しに行こうとするために雨嘉はマギを収束して跳躍しようとしたがーーー

 

 

「はっ!」

 

 

マギスフィアを風で飛翔していた叶星がキャッチした。風を使ってマギスフィアを自身へと寄せ、そしてキャッチしたようだ。

 

 

「高嶺ちゃん!!」

 

 

叶星のマギの影響か、風を纏ったマギスフィアを最も信頼する同レギオンのメンバー高嶺にマギスフィアをおもいっきり投げた。

 

 

「叶星にしては珍しく無茶をするわね。焔との関わりで彼の無茶苦茶に感化されたのかしらね」

 

 

そう言いながら叶星からパスされたマギスフィアを容易くキャッチする高嶺。確かに一柳隊のメンバーも焔の無茶苦茶に感化されて割かし無茶苦茶なことをしでかすことがある。焔本人が聞けば理不尽だと語るだろう。

 

 

「まぁ、その無茶に乗る私たちも私たちね。続けるわよ、姫歌さん!」

 

「はい!」

 

 

微笑しながら高嶺はマギスフィアを姫歌へとパスする。

 

 

「ちゃんと受け取るのよ、紅巴!」

 

「は、はいぃ!えっと、灯莉ちゃん!」

 

 

姫歌から紅巴へ。紅巴から灯莉へ。

 

マギスフィアが繋がれていく。

 

 

「は~い☆それじゃあ、千香瑠先輩!」

 

「へ!?」

 

 

受け取った灯莉がちょうど近くにいた千香瑠に気づき、マギスフィアを投げた。こっちに来るとは思っていなかった千香瑠は驚きながらもマギスフィアをキャッチ。そして千香瑠は気づいた。一柳隊7人分とグラン・エプレ全員分のマギを溜めたマギスフィアの凄さに。

 

 

「こんなマギスフィア……今まで見たことがないとんでもないマギスフィアですね……」

 

「千香瑠!次は私に!」

 

 

風を纏い、煌々と輝くマギスフィアを見て呟く千香瑠に今度は瑤が次は自分だと言ってきた。

 

 

「わかりました!では瑤さん!」

 

 

マギスフィアが千香瑠から瑤へと渡る。

 

 

「これは……確かになかなか凄いマギスフィアだね。じゃあ藍!」

 

「は~い!」

 

 

瑤から藍へ。

 

 

「恋花~!」

 

「はいよ!一葉!ちゃんと一柳隊の人に繋げるんだよ!」

 

「わかっています恋花様!このマギスフィアは、ノインヴェルト戦術は絶対に失敗させる訳にはいきませんから!!」

 

 

藍から恋花へ。恋花から一葉へ。二レギオンがマギスフィアを繋げていく。

 

 

「一葉さん!今度は私に!」

 

「わかりました!お願いします、梨璃さん!」

 

 

そして、マギスフィアは一葉から梨璃へと渡された。

 

 

「このマギスフィアは、絶対に繋げます!!」

 

 

梨璃がそう叫んだ瞬間、梨璃の愛機《グングニル》から紫の焔(ほのお)が出現。そして、焔は《グングニル》だけじゃなく、梨璃を覆う程に勢いを増していく。その焔はマギスフィアにも流れ、風を纏い、自分たちを除く他のリリィたちを貯めたマギスフィアが紫の焔をも纏った。

 

 

「よし、行くよ!!」

 

 

そして梨璃はマギスフィアを投げた。誰もいない所に向かって。

 

 

『えっ!?』

 

 

梨璃の行動にほぼ全員が驚きの声を上げる。それもそのはずだ。なんせ、失敗しないように繋げてきたマギスフィアを梨璃自身が失敗するような行動をしたのだから。

 

 

「取った!!」

 

 

だが、それは杞憂に終わる。梨璃が投げたマギスフィアはビルの壁を『縮地』でかけ登り、限界までマギを収束して跳躍した結梨が難なくキャッチしたのだから。

 

梨璃は、結梨がかけ登っていることに気づいていたので、結梨の移動速度と跳躍時の到達点を即座に計算、そして導き出した場所に向かってマギスフィアを投げたのだ。梨璃と結梨の心が通じ合うからこそできる業である。

 

 

「お母さん!!」

 

 

そして結梨は自分が尊敬し、そして父と同じぐらい大好きな母、夢結に向かってマギスフィアを投げた。

 

 

夢結は来るマギスフィアに気づきながらエヴォルヴの鰭に蒼き焔の刃を飛ばして攻撃。直後の爆発により発生した爆煙を目眩ましとして利用してすぐにマギスフィアをキャッチする。

 

 

「っ!」

 

 

だが、爆煙の中から鰭が飛び出してきたことに若干驚きながらもマギスフィアを落とさないようにガードの体勢になる夢結。

 

 

「させないっ!!」

 

 

夢結に迫る鰭は声とともに放たれた風刃によって切り裂かれ、夢結に当たることはなかった。

 

 

「ありがとう、叶星さん!焔…………みんなの想いとマギを貯めたこのマギスフィア、貴方に託すわ。最後は、お願い!!」

 

 

夢結のマギを込めたことでマギスフィアから激しい勢いで蒼い焔が出現し、そのマギスフィアを最愛の夫がいる上空に向かって投げた。そしてすぐにに蒼き焔の刃を飛ばしてエヴォルヴの注意を引く。

 

その間に焔は六枚の翼を羽ばたかせて一気に上昇、銃形態の義手《ソウルハーベスト》の銃口にマギスフィアを押し当て、そのまま《クレセント・ローズ・リオ》を銃形態に変形させて《ソウルハーベスト》と平行するように連結、六枚の翼を広げて滞空しながらマギスフィアが輝いている銃口を下にいるエヴォルヴに向ける。

 

 

「みんなの想いとマギを乗せたこのマギスフィアを…………!」

 

 

『焔(様/君/さん)/お兄様/お父さん…………!』

 

 

今この場にいる全員の想いとマギを貯めたマギスフィアに焔もマギを注ぎ込み、マギスフィアからはより一層激しい蒼い焔が出現、そして虹色に輝き、新宿を照らす。

 

 

『いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』

 

 

 

 

 

「こいつを、喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

引き金を力強く引き、虹色のマギスフィアが極太のビームとなり、発射した。

 

 

迫り来るビームに対し、エヴォルヴは赤黒いマギのビームを発射。

 

 

そして二つのビームは激突。凄まじい衝撃波を発生させる。

 

 

「くぅ…………!」

 

 

威力は互角、だがエヴォルヴが赤黒いマギのビームを威力を上げたことで焔が放った虹色のビームが押されはじめてしまう。

 

 

「う…………おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

焔が叫びを上げた瞬間、六枚のマギ翼からマギと思われる光の線が銃口に伸び、虹色の光から蒼い焔が出現してビームがさらに太くなり、威力が底上げされる。

 

 

 

そして、威力が底上げされた蒼い焔を放つ虹色のビームがエヴォルヴが放つ赤黒いマギのビームを上回ったことで、赤黒いマギのビームが拡散される。虹色のビームは赤黒いマギを拡散させながら真っ直ぐにエヴォルヴに向かい、そしてーーー

 

 

ーーー新宿だけでなく、東京圏全てを虹色の光の柱が包み込んだのだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「くぅっ!?傷が染みるぅ……!」

 

「確かに、これは染みますね。くぅ……」

 

「あはは……まあ、こればっかりは慣れませんよね。く……うぅ……」

 

 

場所は変わり、百合ヶ丘の入浴場。そこに一柳隊、ヘルヴォル、グラン・エプレのメンバーが揃って入浴していた。ほぼ全員が傷が染みる痛みに悶絶している。その中でも特に叶星が一番悶絶しているのを見て一葉も染みる痛みに我慢しながら湯に浸かる。梨璃も苦笑しながら痛みを我慢するように顔をしかめながら入浴。まあ、入ってさえしまえば大丈夫なのだが、入る瞬間が地獄なのだ。

 

 

「それにしても、これが百合ヶ丘が誇る温泉か~。傷に染みるけど癒される~」

 

「喜んでもらえてよかったです」

 

 

では、なぜ全員が百合ヶ丘の入浴場に揃っているのかの説明をしよう。

 

簡潔にいうと、エヴォルヴは無事に殲滅出来たのである。最後に放った虹色のマギスフィアのビームによって。

 

東京圏全てを包み込んだ虹色の光の柱が残っていたHUGEも全て消滅させたようで、一連の戦闘、後に『新宿エリアディフェンス崩壊事変』と、一部ではそう呼称されるようになり、ソレは終戦を迎えたのだ。終戦したことで全員各々のガーデンに戻ろうとしたのだが、梨璃がヘルヴォルとグラン・エプレのメンバーを百合ヶ丘に招待したのだ。それで今は戦闘の疲れと傷を癒すために入浴中ということなのである。

 

 

「温泉を掘り起こすなんて凄いのね、百合ヶ丘は」

 

「いや~あはは…………」

 

 

高嶺の呟きに聞いていた二水が乾いた笑みを上げる。別に狙って掘り起こした訳じゃなく、特異のHUGEを討伐した時の爆発によってたまたま湧き出ただけなのだから。

 

 

その時、入浴場の壁の向こうから戸を開けるような音がした。その音に気づいた一柳隊以外のメンバーがそちらを向く。

 

 

「ねぇ、梨璃さん。壁の向こうから音がしたけど、向こうってどうなってるの?」

 

「え?あぁ」

 

 

一瞬ポカンとした顔をする梨璃だがすぐに理解して微笑む。そしてーーー

 

 

「お兄様~!」

 

『えっ!?』

 

「なんだ~?梨璃~?」

 

『えぁっ!?』

 

 

梨璃が呼んだ瞬間、全員が驚き、直後の返事に声を荒げる一柳隊以外のメンバーたち。

 

 

「いえ!なんでもないです!ただ呼んだだけです!」

 

「そうか?わかった」

 

 

そして壁の向こうからシャワーを使う音が聞こえ始める。

 

 

「り、りりりり、梨璃さん!?壁の向こうに焔君がいるの!?」

 

 

顔を赤くしながら慌てながら梨璃に問い詰める叶星。なかなかカオスである。

 

 

「落ち着いてください叶星様。壁の向こう側は男湯となっているんです。まあ、男湯と言っても利用するのが理事長代行とお兄様の二人なんですけどね。温泉が出たとき、ある事情で入浴場が壊れちゃったんですけど、修復する時に男湯も作ろうとなって作ったんです」

 

「な、なるほど……」

 

 

説明してる間に焔も浴槽に浸かったのか入浴する音が聞こえる。が、その直後、また戸が開く音がする。

 

その音に関しては一柳隊もおや?となる。

 

 

「あれ、夢結に結梨?」

 

「はあっ!?」

 

 

一柳隊と言ったが、夢結と結梨以外の一柳隊のメンバーは揃っていた。

 

壁の向こうから聞こえた焔の言葉に過剰反応したのは叶星である。

 

梨璃も流石に予測してなかったのか顔を赤くしている。そして梨璃は思った。入浴場に向かうのに姉と結梨がいないと思ったことを。そのうち来るだろうと思っていたがまさか兄がいる男湯に二人揃って突撃するとは一切考えなかった。

 

 

「ちょ、夢結さん!?なんで男湯に入るの!?」

 

「なんでって。夫が入っている所に妻の私が行くのは不思議じゃないと思うのだけど」

 

「全然不思議だし結梨さんまで一緒なの!?」

 

「お父さんとお母さんとの三人で入りたかったから」

 

「ええっ!?」

 

「あぁ、確かに普段はお兄様と入らないから……」

 

「梨璃さん……流石に普段も一緒に入ってたらまずいわよ……」

 

 

もうツッコミが疲れたのかゲンナリする叶星。癒すために温泉に浸かっているのにゲンナリしていたらどうしようもない。

 

 

「焔ってば入浴する時は黙って行くから一緒に入れないのよね」

 

「そりゃ二人して来るのわかってるから黙って入ってるんだぞ」

 

「普段もそうしているなら今回はなんでそうなったの!?」

 

「二人して気配消してて全く気づかなかったし、既に入ってるもんかと」

 

「あんたの義眼は超高性能でしょ!?なんで気づかないのよ!!」

 

「義眼のレーダーに反応しねぇんだぞ。どう気づけと」

 

「あ、そりゃ気づかないわ」

 

 

途中からツッコミが恋花に変わるが義眼のレーダーに反応しないと言われれば気づかないのも納得するしかない。どんだけ隠密能力が高いんだと二人にツッコミたいが疲れるだけなのでしない恋花である。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「すぃ~」

 

「結梨、浴槽で泳がないの」

 

「まあ、いいじゃないか。俺らしかいないんだし」

 

「もう、貴方は甘やかしすぎよ」

 

「そうか?」

 

「あの娘、梨璃の話だとだいたい泳いでるって」

 

「え、そうなのか?結梨」

 

「……………………うん」

 

「普段もそうだと話が違ってくるぞ、結梨。でもまあ、今日だけだぞ」

 

「は~い」

 

「そこが甘いのよ、貴方は」

 

「…………」

 

「貴方も普段やってるから、かしら?」

 

「…………………………してないぞ?」

 

「ダウトよ」

 

「いや、泳いでるわけじゃないぞ。プカプカ浮いてるぐらいだ」

 

「同じよ。誰もいないからってそんな事しないの」

 

「と言われてもしちゃうんだな、これが」

 

「ふざけないの」

 

 

風呂場で和む会話に満足したのか、夢結はそっと焔の肩に頭を乗せ、目を閉じた。それを焔は気にすることなく、波を起こさないように静かに泳ぐ娘を見つめる。

 

 

「ねぇ、焔。例の事件、貴方はどう思う?」

 

 

不意に夢結が聞いてきた。例の事件、『新宿エリアディフェンス崩壊事変』の事である。

 

 

「エリアディフェンスの崩壊……。正直、自然に崩壊したとは思えない。それに…………」

 

「……今回の事件で、覚醒と言う名で数人のリリィに異能の力が目覚めた」

 

「覚醒した数人のうち、二名が覚醒の先、超覚醒と名付けたものへと至った……」

 

「…………超覚醒に至った者は『蒼焔の隻眼』と『蒼焔のリリィ』の二人、そして覚醒者が……」

 

「『風舞(ふうぶ)のリリィ』と『紫焔(しえん)のリリィ』、そして『百合華(ゆりか)のリリィ』の三人……今回の事件とは関係なく、日々の特訓の最中に目覚めたリリィもいるが、アレはマギを上手く使えるようになった結果だしな」

 

「『神速のリリィ』のことね?」

 

「あぁ。あの娘もいずれ、いや、近いうちに覚醒するのかもしれない。それと『紫焔のリリィ』の力……それがどうしても気になってしまう」

 

「そうね。あの娘、梨璃が発動させたレアスキル『ラプラス』が発動した形跡、というよりそのデータが一切見つからなかった。でも、その後の特訓とかで『ラプラス』の発動はないけど、右目から紫の焔を出すようにはなったわね。特定の条件下でだけど」

 

「感覚も本人が言ってた通り、研ぎ澄まされてた。更なる進化があるだろうな」

 

「結局、『ラプラス』ってなんなのかしら」

 

「さぁな。今は不確定要素が多すぎる。だが、あの時のノインヴェルト戦術、あれは梨璃のレアスキル『ラプラス』が作用したことで百合ヶ丘全生徒でやったノインヴェルト戦術のように普通では考えられないことができた。もしかしたら『ラプラス』というのは、リリィの想い、それを完全に一つにするためのレアスキルなんじゃないか?『カリスマ』とは違う、支配するのではなく、全員の想いを一つにして束ね、未来に進むための……」

 

「『カリスマ』が支援と支配のレアスキルなら『ラプラス』は想いを一つに束ねて未来に進むレアスキル、か……」

 

「あぁ。ただまぁ、今は謎が多すぎるから憶測になるし、必死に考えたところで完全な答えにたどり着けはしない。今は、この温泉に癒され、いつも通りの日常を過ごそう」

 

「そうね、考えても仕方ないし。結梨、いらっしゃい。今日は特別に許すから焔とお湯の掛け合いっこでもしていいわよ」

 

「ほんと!?お父さん!やろ!」

 

「特別に、か。なら全力で相手をしよう。かかってこい、結梨」

 

「よ~し、いっくよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通りの日常。それを大切にしながら焔たちは過ごしていく。時には過激な戦闘があるが、平和な日々もある。だがそれは仮初めの平和かもしれない。そうであろうと、その平和を、人類が穏やかに暮らせるようにリリィたちは戦う。戦いがない時はそれぞれの癒しを受けて過ごす。そうして、戦場で美しくも儚い花であるリリィの日常は過ぎ去っていく。辛い時もたくさんある。だが、それぞれの想いがあれば、支えたり、支え合う仲間がいればどんなに辛くても乗り越えられる。そうやって、美しく咲き誇る笑顔をしながら日常を過ごしていく。それが、リリィというものだと胸に刻みながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、新たな魔の手は刻一刻と、確実に焔たち一柳隊やグラン・エプレ、ヘルヴォルなどに迫ってきているのだった。

 

 

 

 




エヴォルヴ戦、完。

久々の1万文字を突破。ノインヴェルト戦術のシーンってパスするキャラぐらいしか書くのなくてめっちゃ簡単になってます。ぶっちゃけ他に何を書けばいいのかわからないし。

ノインヴェルトのフィニッシュショット時の焔なんですが、わかる人はわかったんじゃないですかね?
翼……二つの銃……大出力のビーム…………ゼロカスタムのシェルターシールドにツインバスターライフルを発射するシーンのポーズです。やっぱCHARMとはいえ銃を2丁持ってるならこのポーズはやらなきゃでしょ。翼があるなら尚更。

そして新たに増えた二つ名。二つ名はそれぞれの能力をベースに考えました。安直なんですがね。ではではどの二つ名が誰なのか皆さんはわかってると思いますがご紹介を。

『蒼焔の隻眼』蒼月焔。『蒼焔のリリィ』蒼月夢結。『紫焔のリリィ』一柳梨璃。『百合華のリリィ』蒼月(一柳)結梨。『風舞のリリィ』今叶星

です。詳しいことはまた後程。覚醒者は強化リリィに発現する異能とは全然違う力ということでやっています。なのでそこのご理解、お願いします。

そして『ラプラス』。原作でも謎のレアスキルなもんでよくわかってないですが、私の中では支援と支配のレアスキル『カリスマ』の上位存在なら支配ではなく、仲間の想いを束ねて一つにし、未来に進むために奇跡を起こすレアスキルだと考えました。
いや、そういうレアスキルだよというツッコミは無しで。


さて、ラスバレですが……最近のガチャ結果が悪すぎるというね……。課金してもすり抜けばっかりとか。ピックアップって知ってる?って言いたいぐらい。そして夢結のウエディングドレスと美鈴姉様が実装された時、叫びましたよ。二つの意味で。え?どんなのかって?

<告知!>夢結のウエディングドレス実装!
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(歓喜)

<告知!>川添美鈴、実装!
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!(狂喜乱舞)

『二つとも』アドバンス衣装で登場!
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???(絶望)

こんなです(笑)
まあ、ウエディングドレスの夢結と制服の美鈴姉、水着の美鈴姉全て完凸しましたがね。あの時は金が飛びましたね~。課金は節度を持って、やりすぎないようにしましょう。


それでは、長くなってしまいましたが以上です。レリでした!


次は早く出せるように頑張ります
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