ダンジョンに遺志と石を求めるのは至極当たり前の事だろう   作:古狩人

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猜疑と疑念

嘘と裏切り

そんなものがそこかしこに存在した街ヤーナム

そしてそれは世界のどこにでもありふれたものだ

迷宮都市もそれは例外ではない・・・・


第二夜:帰路

大規模な戦闘の後、私は損傷した狩装具を一部変えていた。といっても同じ狩装具のマントを取り外した換装品に替えただけだ。

 

装備をインベントリから取り出し変えたとき、なぜか周りの者がひどく驚いていた気がするが、街の初期で手に入る装具を好んで装備する私が珍しかったのだろうか?

 

そして質疑応答が始まる前に私は義憤に駆られ彼らに説教をした。

 

何故このような危険地帯に子供を連れてくるのか?貴公らは正気を失った獣に見えないがなぜそのような暴挙に走るのだ?と。

 

しかし私の義憤は件の子供自身により粉砕されることになる。

 

「えーと・・・・初めまして僕は『ロキ・ファミリア団長』の『フィン・ディムナ』君が言う一団の長をやっている。」

 

驚きである。かなりの規模の集団をこの子供が率いているとは・・・・彼もたぐいまれなる才能があるのだろう。しかしそれはそれこれはこれである。

 

子供が矢面に立つようなことなど緊急事態意外には考えられ・・・・

 

「いや・・・・まぁ僕は小人族だからね・・・・・・見た目は小柄だけどこれでももう40を超えてるんだよ?」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーでもあの反応は笑っちゃったよね狩人くんの顔さぁ!」

 

「呆けるとはああいうのをいうんじゃろうな!」

 

今現在私はアマゾネス出身のティオナという大型の両刃剣を使っていた女の子と、ドワーフの戦士ガレスと談笑しながら地上に向けて帰還している最中である。

 

きっかけは彼女。ティオナがお礼に言いに来たことだ。ヤーナムでは素直に感謝されることこそ少なかった、むしろ罵声と投石がとんでくる事もあったのだが。

 

彼女のように素直に真摯に礼を言われればこちらも嬉しくなってしまう。

 

そこからは私はあまり口数は多い方ではないが、彼女がかなりおしゃべりが好きなようでそれなりに会話は弾んだ。

 

落葉と彼女の使う武器『ウルガ』というらしいが、ともに両刃剣であることもあり武器の話では大いに盛り上がった。

 

その際に仕掛け武器の機構などにも話が波及し、ドワーフの彼ガレスも話に加わってきた。

 

聞くところによればドワーフは鍛冶が得意で手先の器用なものが多いらしい。

 

彼、ガレスも戦士として一流の覇気を纏っているがそれはドワーフの性なのか仕掛け武器のつくりや機構について熱心に質問してきた。

 

余りにも真剣だし話も弾んだお礼に私は自分には必要もない手持ちの強化素材と血晶石を彼に譲渡した。

 

彼曰くこんな素材は見たことがない!とひどく驚いていた。

 

それなりにありふれたものだったはずなのだが・・・・・おそらく彼らは街での獣狩りを主とする一団なのだろう。

 

そして今回はあまり活動を行っていなかったダンジョンに挑んできたのだろう。

 

ならばこれは先達からの餞別だ。『鴉羽』の彼女も助言と共に自分に餞別をくれた。

 

情けは人の為ならずという言葉もあるくらいだ。彼女が自分にしてくれたように私も誰かの助けになるように動くのもいいだろう。

 

悪意と病と獣が蔓延する中でほんのわずかな善意と慈悲。私はそれが何よりも尊いものだと信じているから・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっき協力してくれた人だよね!ありがとう!仲間もみんな助かったよ!」

 

トラブルに巻き込まれた際突然現れた見慣れない装備をつけた冒険者。

 

何故か彼は怒気を発している。周りにいるのは自分の仲間たち同じように修羅場をくぐった者たちだけあって当然ながら彼が放つ気に気付いている。

 

何故彼がこんな気を発しているかはわからない。でも自分と仲間を助けてくれたのは事実だ。ならばお礼を言うのは当然でしょ。

 

一瞬彼は驚いたようにこちらをみつめ、いぶかしんだ様子でこちら対して口を開いた。

 

「貴公らの狩りの動き拝見した、一目見て一流の狩人だとわかる動きだ。

しかし何故貴公らの様な一流の狩人がこのような危険な鉄火場に子供を連れてくるのか?

貴公らは正気を失って血に酔った狩人か?それとも獣の類か?」

 

「誰が獣だコラァ!!ぶっ殺すぞ雑魚がぁ!!!!」

 

後ろでベートが叫んでるけど、それよりも子供!?こんな下層に子供がいるの?どこに?彼は指をさして言った。

 

「そこに居る金髪の子供だ。警告には感謝する。

的確な警句であった、襲われてから左程時間もたっていないだろうに敵の特徴を見抜くとは才覚をかんじる。

しかし如何に才能があれどこんな危険な場所に年端も行かぬ幼子を連れてくるのは看過できん。

それもこれだけの規模の集団ださぞや名のある組織なのだろう?ならば衆目の評判も気にしなければならないのではないか?」

 

彼が指をさす先には・・・・・・団長が、フィンが居た。

 

「えーと・・・・初めまして僕は『ロキ・ファミリア団長』の『フィン・ディムナ』君が言う一団の長をやっている。」

 

滅茶苦茶驚いた顔してる彼。えっと?もしかしてうちのファミリアも団長の事も知らないの!?

 

そっちの方がこっちは逆に驚くんだけど!?

 

驚いてはいるようだけど彼はさらに続ける。

 

「君がこの一団を率いているとすれば見事な手腕だ。素晴らしい才能だ。先ほどのこちらに告げた警句も的確だった。良い眼をもっているのだろう

なればこそ年若い君が今無理をせずとも地道に力を伸ばすべきではないのか?」

 

うん、彼凄くいい人っぽい。言葉の節々から自分より若い人を気遣う感じが零れちゃってる。

 

ただ残念なのは・・・・・。

 

「いや・・・・まぁ僕は小人族だからね・・・・・・見た目は小柄だけどこれでももう40を超えてるんだよ?」

 

そうなんだよねぇ・・・・・・。

 

そのあとの彼の反応というか顔は・・・・目だけしか見えないけど全身がこう言っていた『そんなバカな?』ってね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「インベントリ?・・・・・・そっからその新しい服だしたんだ?」

「落葉っていうその武器私のウルガとちょっと似てるね!!」

「リゲイン?なにそれ狩人くんのスキル?すっごいねでもあんまり人に自分のスキルの事とか話しちゃだめだよ」

 

アホ妹が共闘者「狩人」と話をしている。言いたいことはめちゃくちゃある。怪しいことこの上ないけど、一応は仲間の危機を救った人間にちょっとなれなれしすぎないかと!?

 

しかし情報を得るうえでは妹の二心のない質疑応答と雑談はこの上なく有用なものだ。

 

隣で団長も彼に対する態度をどうすればいいかちょっと難しい顔をしている。団長!そういう悩んだ顔も素敵です!

 

それにしても伝わってくる内容がすさまじい。特に最初に彼が何気なく答えた「インベントリ」というものだ。

 

装備や武器、道具類を、見えずにしかもあれだけ大きな装備を運べるなんて信じられない。

 

しかも彼の動きからそんなら重さのある物を身に着けてるとは思えない。

 

それは戦闘時に見せたあの動きからも明らかだ。うちのファミリアでも敏捷性の高い二人、アイズ、ベート。その二人とも優るとも劣らない動き。

 

それだけの動きが防具一式分を別に身に着けた上でできるとは到底思えない。

 

つまり彼がもつ「インベントリ」とやらはかなりの重量と量を身に着けた本人に感じさせずに運ぶことができるということだ。

 

隣で団長が同じように事実に気づき難しい顔をしている。あぁ!苦悩する団長かっこいい!

 

更に聞いたこともないような機構の武器や素材も持っているようだ。もしや彼は私たちが知らない領域に踏み込んでいるのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼・・・・自分の持っている力や能力を隠す素振りほとんど見せないね名前こそ明らかに偽名だけど

どう思う?リヴェリア君の意見が聞きたい。」

 

彼、『狩人』は最初の剣呑な雰囲気はこちら側を誤解したとわかったあとすぐに消え今ではティオナとガレスと仲良さげに雑談に興じている。

 

「おそらくだが・・・・示威行動ではないか?でなければあれだけあからさまに自身の持つ能力や武器をひけらかしたり説明はしないだろうな。

もちろんそれ以上の隠している切り札の様なものもあると考えられるがな。」

 

たしかにそれ以外は考えられない。彼の持つ武器はどれも耳に聞こえるだけで強力で凶悪な代物だとわかる。

 

鋭さをもった変形する剣に斧槍のように扱える斧。さらには遠距離攻撃の手段も持っている。

 

これが対ロキ・ファミリア用の武器だというならばかなりの脅威だろう。

 

「だがまぁ警戒は必要だが必要以上の警戒はいらぬ誤解を招きかねないだろう。どんな思惑があれ彼が仲間の危機を救ってくれたのは事実なのだからな。」

 

確かにそうだ。この事それ事体が僕らを陥れるために引き起こしたマッチポンプだということも考えられるが最初の会話からそういう印象はどうも感じられない。

 

「あぁ・・・・なんというかここには珍しく善良な感じはしたな。

むしろ完全なる無関係なもので事実をまったく知らずに彼自身もはめられた可能性もあるのではないか?」

 

それも可能性の一つとしては充分考えられる事だ。だが一つだけ大きな謎がある。

 

「ねぇ・・・フィン、リヴェリア。あの人『一人』でここまで来たのかな?」

 

傍らで事の成り行きを見ていたアイズが尋ねてくる疑問。そうそれだ。それこそが最大の謎だ。彼は言った『こんな危険な場所』と、

 

それはつまりダンジョンの下層それも僕たちが一団を率いているような危険地帯に行き慣れていなければ出てこない言葉だ。

 

だからこその疑念『なぜそんな危険地帯であるダンジョンの下層部に彼は一人でいたのか』

 

その疑念が晴れれば僕としても両手を挙げて彼を賞賛できるのだけれどね・・・・。

 

「ここまで・・・・一人で来れるなんてすごいんだ・・・・ちょっと私も話してくる」

 

は?止める間もなく彼に話をしようと話の輪に入り込んでいくアイズ。

 

頼むから自重してくれ!ベートはベートで彼に対して殺気立ってるいるしどうしてウチの幹部は皆が皆揃いも揃って癖が強いのが多いんだ?

 

「はぁ・・・・・全く仕方ないなあの娘は・・・・・ところでフィン・・・・癖の強い幹部というのは私も入っているのか?」

 

口に出してはいない。けど全部顔に出ていたのか出すような下手な真似はしてないが付き合いの長いハイエルフの副団長は全部お見通しのようだ。

 

 

王族のハイエルフでロキ・ファミリア副団長の九魔姫のリヴェリア・リヨス・アールヴが癖が強くないわけないだろう!?

 

 

あぁもう胃が痛い・・・・地上に帰還したら胃薬を注文したい気分だよまったく・・・・。

 




ディアンケヒト・ファミリア製の胃薬

ディアンケヒト・ファミリアで市販され、一般にも流通しているごく一般的な胃薬。

人の疲労疲弊の負担は内臓に顕著に表れる。

特に胃は食事を消化し明日への活動のため栄養を吸収する重要な器官だ。

しかし疲れた人にも内臓にも休養と薬は必要である。

それは普通の人も勇者と呼ばれるような英雄でも同じである。
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