ダンジョンに遺志と石を求めるのは至極当たり前の事だろう   作:古狩人

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どんな過去も隠すことはできる・・・・

しかしたった一人だけどんなことも隠すことのできないものがいる

それは神でも賢者でもない・・・

どんな嘘も誤魔化しをしても

己自身は己自身の過去を誰よりも知っているのだから

その傷を覆い隠すことができても己の弱さは己自身には隠せない

真実の言葉であってもそれが人傷つけることは有ろうとも

人を癒すことはない・・・・・世界とは悲劇なのだから・・・



第三夜:秘儀

私は今とてつもない絶望の淵にいる。ガレスとティオナ二人と話に花を咲かせていたのだ。

 

そこまではいい。しかし、話の中であまりにも自分の知るダンジョンとの違いに気づいてしまった。

 

『ここは未知の聖杯ダンジョンではない』という事実に。

 

二人に虫を倒した際に抜き取った石について聞くとどうやらこの石は『魔石』と呼ばれギルドという組織に売ることで冒険者は日々の糧を得ているようだ。

 

しかし私には絶望が大きい。聞けば聞くほどに私がいた場所との乖離が激しい。これでは『夢』への帰還はどうすればいいのだろうか?

 

そして何よりここが『聖杯ダンジョン』ではないということが私にとって途轍もなく暗い影を自分の未来に墜としていた。

 

これでは血晶石の厳選が出来ないではないか!?

 

私の悲哀を感じ取ったのだろうか、彼女ティオナはとある提案をしてくる。

 

「もしかして防具を痛めたの気にしてるの?だったら私たちがお世話になってる鍛冶屋さん!ゴブニュ・ファミリアの店に一緒に行って修理してもらおうよ!」

 

そうやって笑顔で提案してくれる。『ゴブニュ・ファミリア』・・・・彼らは『ロキ・ファミリア』前半の部分がおそらく名詞だろう。

 

彼らの掲げる何かの象徴か代表者の名前だろう。

 

「ゴブニュ・・・・ファミリアとはどういうところなのだ?」

 

「えっと?ゴブニュ・ファミリアも知らないの狩人くんは?しょうがない!この美少女ティオナが教えてあげよう!」

 

「なにねぇ胸誇らしげにそらして大声出してやがんだバカゾn・・・ゴッハァァァ!!?」

 

一瞬、彼女の姿がブレ煙のように消えた。速い・・・・まるで秘儀を使った『千景の狩人』や『時計塔の彼女』を思い起こさせる速さだ。

 

失礼な言葉をはいた彼、『ベート・ローガ』に対して強烈な肝臓打ちを放つ。

 

貴公よ・・・・事実というのはただ列挙すればいいのではない・・・・真実が人をキレさせることはあっても人を救ったことはないのだ・・・。

 

「何考えてるのかな?狩人くんは?」

 

視線と彼女自身が持つ武威による重圧・・・ベテランの狩人や強力な獣に優るとも劣らない。

 

「なに・・・貴公の様な可憐な少女が目にもとまらぬ速さで一瞬で距離を詰めて見事な当身を彼に食らわせたのを見てね。

天は二物を与えずという言葉があるが・・・・どうやら貴公には当てはまらなかったようだ」

 

「えぇ?・・・えーーーもうやだなぁ!!狩人くんは口が上手いなぁ!!」

 

バシバシと彼女が背中を叩きながら・・・・正直痛い・・・だが乗り切った。嘘と裏切り欺瞞が満ちたあの街で生き抜くにはこの程度の誤魔化したやすくできなければやってはいけないのである。

 

彼女の話によればゴブニュ・ファミリアとは鍛冶のファミリアで神ゴブニュの元で鍛冶を行っているそうだ。

 

私は希望を見出した!神=上位者!そんな者がつくる装備など興味がわかないわけがない。

 

邪悪な上位者だったり敵対するならば狩るだけだがそれだって遺志や血晶石が手に入る可能性があるのだ!

 

楽しみができたぞ。

 

それにしてもまだ地上への帰還まで時間はある・・・先ほどからティオナの照れ隠しなのか背中への打擲が止まらない・・私の背骨は耐えられるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トラブル・イレギュラーはあったものの地上の帰還までもう少しという時、それは起こった複数体のミノタウロスの同時出現と戦闘。

 

我々の戦力ならば接敵しても問題なく対応できるが今回の遠征予想外というのはとことん起きる。

 

「な!?てめぇらモンスターだろうが!!」

 

ベートの怒号が響く。そう、ミノタウロスが上層に向かい遁走を始めたのだ。

 

マズい。上層には新米やレベルの低い冒険者が狩りをしているはずだ。そんな者が推奨レベル2相当ミノタウロスと戦闘になればどうなるかなんて火を見るより明らかだ。

 

「速やかに掃討しろ!上層にいる駆け出しの冒険者が巻き込まれる前に!」

 

「わかったフィン」「クソがぁ!」「遠征がえりなのにぃ!」「団長に文句あんのかコラァ!!さっさと行くわよ!!」

 

素早く飛び出す幹部達彼らに任せておけば問題ない。今回の遠征は本当にいろいろありすぎる。

 

特に一番の悩みの種は彼『狩人』の事だ。今の件も彼が悪意を持ってギルドや街の住人に風潮すればファミリアの醜聞になりかねない。

 

まったく頭が痛い話だ。まぁ戦闘に巻き込んだうえに此方の危機を救ってくれたのが怪しい人物であるのは間違いないがある程度は信用してもいいだろう。

 

僕はまたも巻き込んでしまったことに対して彼に謝罪しようと見まわすが彼の姿は見えない。

 

・・・・・嫌な予感がする。

 

「ラウル・・・・彼は・・・・『狩人』くんはどこにいる?」

 

「あの・・・えっと団長・・・あの『狩人』さんなんですけど・・・・『新人がいるような戦闘区域であいつらが暴れるのは問題なのだろう?微力ながら助力しよう』

って言った一瞬で消えて・・・・あの!止めようとしたんですけど!!あの人滅茶苦茶動き速くって、っていうか姿煙みたいに消えて一瞬で移動して!

アイズさんとかベートさんと同じくらいの速さだったんです!!止める暇なかったんです!すみません!」

 

 

 

全く頭が痛い話だよ・・・・・本気で胃薬と同時に頭痛薬を処方してもらおうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クソが・・・・・自分とアイズと並走しながらモンスターを掃討する男『狩人』。

 

遠征中のイレギュラー時にこちらに協力を申し出てきた怪しい男。見たこともない装備品に身を包み自分が有する能力を隠しもしない。

 

覇気のねぇ声もツラも気に食わねぇ・・・・

 

だがそれ以上に気に食わない事がある・・・・自分でも忌々しいことこの上ない。

 

だが認めたくないが認めざるを得ない。戦闘者であるがゆえに解る。解ってしまう。

 

この男『狩人』が自分よりも戦闘者として優れているという事実に。それは隣を並走するアイズも気付いているようだ。

 

まるで第三者の視点で見ているかのような戦闘の立ち回り、自分やアイズに匹敵する力と速さ。

 

クソが!気に入らねぇ!奴がファミリアの危機を救った時、聞きたくもねぇ声が聞こえた気がした。

 

『所詮お前は誰も救えない弱者だ』と、気に入らねぇ!

 

そんなくだらねぇことが頭をよぎったその前に、身なりも身に纏う空気も雑魚の兎みてぇな雑魚が身をすくませて牛野郎の餌食になろうとしていた。

 

二つの風が自分の脇を駆け抜ける。

 

一つは自分が見知った煌めく金、もう一つは見知らぬ不吉さを想起させる黒く昏い風。

 

負けねぇ・・・・・俺は・・・・負けねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィンの言葉に従い私はミノタウロスを追っている。

 

ベートさんと『狩人』さんも一緒だ。残り少ないミノタウロスおそらく最後の一体だろう。

 

そんなモンスターの前に白い兎の様な男の子が固まっているのが見えた。

 

速度を一気に上げて地面を蹴って距離を詰める。その横を私よりも速く『狩人』さんが駆け抜けていく。

 

「動きは止める・・・・止めは任せる」短く告げられた言葉の後更に彼は加速して男の子とモンスターの間に割り込んだ。

 

ミノタウロスが斧を振りかぶりその力を解放するために振り下ろそうとしたその時、空気を振るわす轟音が鳴り響き、モンスターが崩れ落ち膝立ちになる。

 

剣を振りぬきモンスターを切り裂く。よしこれで大丈夫だ。振り向くと二人は体中真っ赤だ。さっきまで白と黒だったはずなのに。

 

「大丈夫ですか?」

 

男の子に声をかけるが反応がない。

 

「だぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

声をかければ男の子は一目散に駆け出した。

 

一体どうしたの?ベートさんはお腹を抱えて大笑いしてるし、狩人さんも笑ってる。

 

ムッとするけど其れよりも気になることがある。さっきの狩人さんの速さ何か秘密があるのかな?聞いたら教えてくれるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獣どもの掃討のために私は二人の者と駆けている。しかしこちらに向ける視線は正反対だ。

 

一つはこちらを敵視するような圧と敵意の様なものを向けられている。もう一つはこっちを興味津々と言った好奇心の様な視線だ。

 

どっちも厄介なことこの上ない。彼らも一流の狩人らしくそんな視線を送ってきつつも戦闘の動きは全く持って淀みない。

 

うーんそれにしても彼『ベート・ローガ』狼人というヤーナムでもいなかった人種らしく最初にあったときは一瞬獣かと思い身構えてしまった。

 

きっとそのせいだろう彼からはあった時から敵意を向けられている。しかたない誰だって初対面の人間に獣扱いされればよい印象は受けないだろう。

 

 

むしろ視線だけ放ってくる彼は随分と常識と良識が備わっている彼は一流の戦士というだけでなく人格面でも一流なのだろう。

 

これがあの街だったなら罵詈雑言に汚物に石を放ってくるだろう。相手も狩人だったら毒メスや水銀弾でも飛んできそうなものである。

 

『ガラシャの拳』とは全く違う体術を用いて使う彼の武装はとっても気になるのでできれば親交を深めてどんな思想の狩人工房で作られた武器なのかどんな仕掛けを有しているのか気になるのだが・・・・・。

 

 

 

順調に獣を狩っていけばおそらく最後の一体であろう獣と相対している一人の狩人が目に入る。

 

年若く小さな兎の様な少年がその身を石のように固めて獣と相対している。普通ならば間に合わない距離だろう。

 

鐘で共闘に応じてみれば既に助力を乞うものが襲われているなどよくあった事だ。

 

『普通』ならば間に合わない。ならば『普通』でない方法。下層でティオナ、彼女の事を見て自分も使ってみた。

 

古い狩人の遺骨『加速』の『秘儀』意志から古い業を引き出す。夢に依って遺志を引き継ぐ、狩人に相応しい。

 

金髪の彼女『アイズ・ヴァレンシュタイン』に止めを刺すよう告げ加速し少年と獣の間に割り込む。

 

獣はその手にもった武器を振り上げこちらに振り下ろそうとしている。だがその鈍重な動き。カモでしかない。

 

懐から取り出した愛銃『エヴェリン』意匠にも凝った逸品である。その見た目こそ装飾品めいて華々しいが恐ろしい威力を秘めている。

 

獣が武器を振り下ろそうとする動きを見切り獣の頭部眼球に狙いを定め水銀弾を放つ。

 

号砲と共に飛来していく弾丸が獣の眼球に突き刺さる。それだけにとどまらず奥にある神経、血管、脳、頭蓋を蹂躙していく。

 

痛みと衝撃により獣が膝をつき崩れ落ちる。既に虫の息しかしこの獣水銀弾一発で殺せるほど貧弱ではないらしい。

 

全く忌々しいことこの上ないなこの獣は。最も貴様は既に終わりだがな。

 

獣の身体に銀の剣閃が閃く。一瞬でこれだけの斬撃を放つとは彼女は『技量・神秘特化』の狩人なのだろうか。

 

しかしそれにしても頭から血を被って血にまみれた獣のような有様になってしまった。

 

となりにいる少年も真っ白だったというのに今はまるで瓶に入った『匂いたつ血の酒』のようだ。

 

「大丈夫ですか?」彼女の声に少年は呆けたようにアイズ・ヴァレンシュタインを認識した。

 

次の瞬間、

 

「だぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

死んだ友人を思い出させるような『叫び』を発しながら一目散に逃げだした。

 

彼は『輝き』の誓約でもしているのだろうか?彼女アイズはきょとんとしている。

 

その様がおかしかったのだろうベート・ローガは腹を抱えて大笑いしている。ついでに間抜けにも頭から血を被った私の事も指をさして笑っている。

 

まぁ血まみれの間抜けな私に自身に頓着のない彼女と助けたもの逃げられたその様。なかなかツボに入る状況だな。

 

苦笑を浮かべ相槌をうつ。さてロキ・ファミリアの面々とも合流し、さっさと地上に帰還だな。

 

 

 

 

 

 

 

 




フロスヴィルト

特殊金属「ミスリル」を加工したミスリルブーツ。第二等級特殊武器。

武器の性能とベートの蹴り技だけでも十分な威力を発揮するが、魔法効果を吸
収し特性攻撃に変換する能力を持つ。

ただしこの装備はベートのもつ魔法の劣化版に過ぎない。

その魔法は己の過去・己の弱さの証。

この武器は己の過去と弱さを隠すための物なのか、それとも敵を屠る牙なのか。

それは誰にもわからない・・・・

そう強さに飢えた餓狼のような戦士である彼自身にさえも今はまだ・・・・
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