ダンジョンに遺志と石を求めるのは至極当たり前の事だろう   作:古狩人

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失ったものは取り戻せる

金も物も誇りもたとえ失ったとしても取り戻せるもの

たった一つ命以外は・・・・


第四夜:誤解

ダンジョンから地上への帰還を果たした私と『ロキ・ファミリア』の一行。

 

今回迷惑をかけた件、パーティの危機を救ってくれたことについて改めて感謝と自分たちの主神『ロキ』に面通しをしてくれないかとフィンに頼まれた。

 

了承するがそれ以上にここは本当にヤーナムとは全く違う場所のようだ。

 

陰気で陰鬱。街全体が昏い帳が落ちたような静寂と不気味な雰囲気だったヤーナムとは真逆。

 

活気にあふれ人の生活の営みがそこかしこに感じられる明るい街____私にとってのまったくの未知『迷宮都市オラリオ』。

 

地上の街の様子に面食らって惚けてしまったようだが要は今回の件のけじめとして直接彼らの代表と会食をしてほしいとのことだ。

 

特に拒否することもない。むしろ今の私には全く持って情報が足りていない。彼らの様な大規模な組織の代表と既知を得られるというのなら此方にとっては願ったり叶ったりだ。

 

時間もかかるとの事で彼らの本拠地『黄昏の館』への招待もされたのだが流石にそれは辞退した。

 

情報が全くないので街の構造の理解のためにしばらく散策をしたい。情報があるとないでは自分の生存に直結するといっても過言ではない。

 

ずれた夢の住人たちが残した『手記』や『遺影』には探索の上で何度も助けられたものだ。

 

時間もたっぷりあることだし明日の夜まで街の構造把握に散策してみよう。場所がわかったらティオナから聞いていた上位者が運営している鍛冶工房を覗いてみるのもいいだろう。

 

名残惜しいのか最後まで自分達の拠点へ誘ってくれたティオナには悪いが優先するべきことは自分の生存のためにする事だ。

 

宴を楽しみにしているとフィンに告げ彼らと別れた。報酬は明日の夜支払うがそれまでの費用として金銭まで頂いてしまった。

 

なんとも律儀な事だ。会食に謝礼金までくれるとはこの街の冒険者というのは狩人とちがってまともな者しかいないのだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがにこちらの拠点に招待するのは露骨すぎたかな。」

 

「当たり前だろう?いくら彼の能力が優れているとはいえ相手の本拠地に誘われて正直に来るなど考えられん。」

 

リヴェリアの意見ももっともだ。だが明日の夜彼を食事に招待することには成功したそれもこちらの主神『ロキとの会食』を約束したのだ。

 

「時間を相手に与えるというのは対策を講じられるということだけど神との会話なら虚偽は不可能だ。これで彼の目的をハッキリさせておきたい。」

 

彼『狩人』に時間を与えてしまうのはこちらの意図に対して何らかの手段を講じることも考えられるがロキと会わせることができれば会話によって彼の真意・目的を明らかにすることができる。

 

言動も行動も善良な冒険者に見えないこともないが彼の持つ常軌を逸した能力の数々がそれを否定する。

 

「まぁ正直言えば純粋に彼には感謝だけしたいよ?でも団長として団員を守るためにはこういう後ろめたいこともしなきゃならない。彼には申し訳ないと思うけどよく知らない誰かに対する気持ちよりも僕は大切な家族を優先する」

 

「もっともだな。それにこっちはまだ彼の名前さえしらないのだからな。」

 

「え?狩人くん?名前無いらしいよ。」

 

「「は?」」

 

僕とリヴェリアの二人は声の方向に向き直りティオナに続きを促す。

 

「彼に名前が無いっていうのはどういうことなんだ?」

 

「なんかすっごい病気にかかって病気を治してくれるお医者さんに治療してもらったらしいんだけどその副作用で昔の事とかほとんど忘れちゃってるらしいよ狩人くん。」

 

そんな重要な情報をさらっと言わないでくれ。

 

「おぉ!そういえば言っておったな。難儀なことだと同情したが本人はそれなりに楽しくやっていると言っておった。その街で人に害を与える獣を狩る『狩人』をしておったそうじゃ。そういったものが沢山居たので自分も周りから『狩人』と呼ばれていたので名前もないし『狩人』と名乗っているといっていたな」

 

「そういう重要なことはさっさと言いなさいよアンタは!!団長がいらん心労重ねちゃうでしょ!!このバカ!!」

 

「バカじゃないよ!!」「うるせぇぞ!!凸凹姉妹!!」「んだとコラァ!!」「誰の胸がえぐれてるって!!」「言ってねぇだろうがぁ!!」

 

「まぁ・・・・物事は取り越し苦労ですめば実際に危険があるよりはいいではないか。」

 

そうだねリヴェリア全く持ってその通りだと思うよ。

 

でももう少し労ってくれてもいいんじゃないか?しかも未知の力をもった冒険者との会食だなんて。絶対になにかちょっかいかけたりいらん事するにきまってる。

 

ロキは策謀や暗闘なんかにはめっぽう強い。だけど地上に降りた神のほとんどが面白い事に。娯楽に飢えている

 

そんな前に謎の冒険者。それも未知の力を持った者との会食なんて・・・・・。

 

はぁ・・・・・なんとか無事に会食が終われるように努力しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキ・ファミリアの一団と別れて私は今様々な場所を散策している。

 

人の営みが感じられる明るい街。活気にあふれた商店とそこに居る商人と客。香ばしい匂いのする料理を売る屋台。

 

そして・・・・・薄汚く不潔で薄暗くじめじめとした路地裏。

 

表の煌びやかな雰囲気などどこに行ったものかゴミや廃材が道の脇につまれ建物の間にあるため陽の光に遮られた薄暗い雰囲気の裏通り。

 

陰鬱で普通の者ならば忌避感を抱くような場所だ。だがそうではないものにとってはこういう場所は身を隠し後ろ暗い企みをするならうってつけの場所だろう。

 

そんなことを考えながら歩き続け裏通りと表通りの境目のあたり開けた場所にて声をかけられた。

 

「もしもし冒険者さん。魔石を落としませんでしたか?」

 

振り向くとそこには薄鈍色の髪をまとめた女給服を着た可憐な少女が手に持った魔石をこちらに差し出して問うている様子だ。

 

何者だろうかこの女給は。

 

彼女がそう言って差し出した手には確かに魔石が乗っている。

 

しかし私が『インベントリにしまっているものを落とす』等ありえない。そして彼女がこちらに向かって差し出している魔石は間違いなく私が所持しているもののどれにも似ても似つかない。

 

無言の私に戸惑っている様子の女給仕に私は一歩踏み出し距離を詰めて問いただす。威圧をこめて『一体何が目的だ?』と。

 

空気がざわめく。それなりの修羅場をくぐっている自分の威圧にたいして怯える様子もなくいたずらが失敗した子供の様な様子の女給に不信感が募る。

 

「ごめんなさい私の勘違いでした実は・・・」

 

謝罪し頭を垂れる彼女と私の間に突如として鋼の銀閃と薄緑色の影が降り立った。

 

「彼女に一体何をしている。」

 

その激情を抑えた口調とは裏腹に抑えきれない殺気と怒気を宿した空色の視線が私を貫いた。

 

心地いい殺気だ。背筋がざわつく。こちらが状況を推移しているのを後ろ暗い事の現れと取ったのか薄緑の襲撃者はこちらに襲い掛かってきた。

 

明らか怒り狂った様だがその太刀筋の速さも正確さも冷静な戦士のものだ。紙一重で彼女の振るう刃を避ける。

 

しかしよく観察するまでもなく一つの事実に直面する。この襲撃者、先ほどの謎の女給と同じ給仕服を着ている。

 

そして可憐な少女を路地裏で威圧する全身黒づくめの狩人である私。

 

・・・・・・・どうみても強盗かもしくは婦女暴行を企てようとする悪漢である。

 

おそらく自分の友人である彼女によからぬことをしようとしていた私から彼女を守るために彼女は戦いを仕掛けてきたのだろう。

 

急激に闘志が萎えてしぼんでいく。完全に誤解だがこのまま戦闘を続けるわけにもいくまい。

 

戦闘を止めるため私は彼女が突き出した刃に向けて掌を差し出した。掌を貫通し血が噴出し路地の石畳に血の花が咲く。

 

私が自ら自分の刃に掌を突っ込ませたことに困惑し硬直した襲撃者の女給の得物を貫通したまま彼女の手ごと抑えて冷静に告げる。

 

「おそらく貴公の勘違いだ。我々の間には誤解が生じている」と、そこからは早かった。

 

早口で事情を襲撃者に説明しそれについて理解していくうちに彼女の顔が赤くなったり青くなったりと落ち込んで黒くなったりとまるで私の使う秘薬のような色にとめどなく変わっていった。

 

そして深い深い沈黙と沈痛な表情をこちらにむけ、

 

「申し訳ありませんでした。」二人そろって深く頭を下げて謝罪した。ふむ、謝罪があるのならば私は許そう善良な者が大切な者を守るために刃を振るった。

 

尊い人の営みのなかで許し生きていくのならば寛容さも必要であろう。

 

最初に私に声をかけてきた彼女『シル・フローヴァ』に謝罪と弁済をするので憲兵への通報を辞めてほしいと懇願された。

 

逆に私を襲撃してきた彼女『リュー・リオン』はたとえ自分がどうなったとしても罪なき私に刃を向けた自分は裁かれても仕方ないと固持した。

 

お互いが相手の事をかばい合い大切なものを守ろうとしている。

 

私は敵対者には容赦はしない。だが善良な者が誤解の果てに自分に刃をむけたとしてもこの身に何事もなければ大したことではない。

 

誤解が解けたのならば自分に罪はないのでとその場を去ろうとすれば何とか謝罪をと引き留められた。

 

ならば明日の夜に待ち合わせがあるのでそれまでの食事と寝床を用意してくれと要求した。

 

彼女らの恰好からして女給のようだしおそらく食事処に勤めているのだろう。これ幸いと明日までの寝床やらいろいろと確保できた。

 

この街に来ての初めての食事どんなものになるだろうか楽しみである。

 

 




疾風の護身用短剣

『疾風』の二つ名を持つ冒険者リュー・リオンがもつ護身用の短剣。

鋭くよく手入れのされた短剣ではあるもののそれは一般的に市販されている武具と相違ない。

だがそこに込められた想いは果てしなく深く重いもの。

私はいつもやりすぎてしまう・・・・・そして私はいつも間に合わない。

しかし次は絶対に間に合わせるそんな想いをもって今日も彼女は刃を身に着ける。

その想いは決意なのか後悔なのか・・・・
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