俺とリーナと司波兄妹は一緒に帰り目的地に着いた。そこには……スイーツショップがあった。
「…スイーツショップ?」
「…お前の用事ってここか?」
だがなぜスイーツショップで22時までいなければならないのかが二人には分からなかったがすぐにその疑問は解けた。
「あっ!和樹さんにリーナ!っと達也さんと深雪?」
ほのかが店から出てきたのだ。それも明らかに店員と思われる作業服と名刺を下げて。
「ほのか?あなたこんなところで何をやっているの?」
深雪はほのかに聞いてきた。
「私、ここでアルバイトしてるの」
「もしかして和樹とリーナもここでバイトしているのか?」
達也が今度は俺とリーナに聞いてきた。
「そうよ。私はね」
「私は?」
深雪がその言葉の意味がわからず首を傾げる。
「ここは俺の店だ」
「「…………は?」」
俺の言葉に二人は一瞬意味が分からないといった顔をしている。
「あ!二人とも遅いよ。もうすぐカフェオープンの時間だよ。」
そこにほのかと同じカッコをした雫が現れた。
「悪い。今から準備するから」
「待ってて」
そう言い俺とリーナは裏口から入った。
達也と深雪は店から出てきた雫に気づき…
「雫、もしかしてあなたも?」
「うん。ここでバイトしている。ところで何で二人がここに?」
「和樹に来ないかと誘われたんだ」
「そう。もうすぐカフェもオープンするからよかったらどうぞ」
「そうするか?」
「はい、お兄様」
さっきも喫茶店でケーキ食べてたはずの二人だが友人の店と聞いて興味をもち店の中で待った。
10分ほど経ち店がオープンになった。俺とリーナも作業服に着替え早速仕事に入った。リーナは接客、俺はスイーツ作り。店は17時にオープンだが、カフェは19時からだ。17時~19時までは俺の都合上カフェはオープン出来ず持ち帰りしか出来ない。ケーキは朝4時に起きて、学校に行く前に作っておく。17時~19時までは他の店員と雫とほのかに頼んである。19時~21時までカフェがオープンし、作るケーキすべて俺が作る。他にはいない。
何故俺が出来るかだが、俺がこの世界に来る前まで俺は製菓学校である、聖(せんと)マリー学園の学生だった。しかも世界ケーキグランプリという大会で優勝した経歴もあり、パリにある本校へ留学もしている。一年間ショップの経験もあるため経営者としても問題ない。
そんな経験があるとは知るはずもない達也達のところへリーナがやって来た。
「お待たせ二人とも!ゴメンね、オープン前に注文を受けるわけにいかなかったから」
「いや気にしてない。それより何で和樹は店を出しているんだ?」
「だって和樹の夢は魔法師になることじゃなくパティシエになることだもん」
その言葉を聞いて達也と深雪は意味が分からなかった。
「では何故一高に来たのですか?」
当然の疑問を深雪はリーナに聞いてきた。
「本人曰く実戦経験を積みたいからだそうだよ」
二人はますます分からなくなった。パティシエを目指すのに実戦経験?魔法師を目指してもいないのに?何かと戦うことを想定しているのか…?いくら考えても答えが出てこない。
「それで注文は?二人は今日が初めてよね。初めてのお客様にはケーキ一品無料って決まってるから好きなの選んでもいいわよ」
「えっ?」
「…………」
深雪は思わず声を出したが達也はあくまで平静を保っている。
「いいのですか?」
「それがこの店の決まりなの。和樹曰く『損して得しろ』らしいわよ」
「なるほど、では遠慮なく頂こう」
「ええ、それでご注文は?」
「そうだな、何かおすすめはあるか?」
「なら、これとこれなんかどう?」
リーナが勧めたのはハート型の赤と白のスイーツとケーキの上に丸い何かが乗っかっているスイーツだ。
「じゃあこの二つを頼む。それでいいか、深雪?」
「はい、お兄様」
「飲み物はどうする?」
「俺はコーヒー」
「私は紅茶を」
「かしこまりました」
それを最後にリーナは去っていった。
注文を終えた達也達は周りを見ていると既に店は満員となり店の外まで列が出来ていた。
「お兄様、すごい混んでますね」
「ああ、まさかここまで混むとは、人気のある店だったんだな」
それから5分ほど経ちリーナが来た。
「お待たせしました。春限定のスイーツ、苺ハートケーキとシュクル・シトロン・ノエルです」
深雪の前に紅茶とハート型のスイーツ二つ、達也の前にコーヒーと飴細工の乗っかっているタルトを出した。
「見た目はいい感じだな」
「二つもセットなのね」
「達也、上に乗っている飴細工を割ってから食べてね」
そう言いリーナは去っていった。
「リーナ達忙しそうですね」
「無理もない。あれだけ列が並んでいれば休む暇もないのだろう。俺達も食べたら出た方がいいかもしれないな」
「はい、お兄様」
早速まずは深雪が赤いハート型のケーキを食べた。
「…美味しい。中はアイスとチョコレートが入ってるのね。」
「そっちの白いのはどうだ?」
達也に言われた深雪は白いハート型のケーキを食べようと一口サイズに切ると中から温かいイチゴソースが出てきた。
「!?これも美味しいです、お兄様!」
「なるほど、ならこっちも期待できそうだな」
達也が自分の前にあるケーキをまずリーナに言われた通り飴細工を割るとソースが出てきた。
「!?美味い」
「本当ですか、お兄様!」
「ああ、レモンシャーベットと温かいソースが混ざっていい味が出ている」
「お兄様、私にも味見させてもらえませんか?」
「いいよ」
二人はお互いのものを交換し食べてみたところ
「!?美味しいです」
「ああ、本当だ。人気店になるのも頷けるな」
二人はその後お互いのケーキを食べさせ合いながらケーキを食べた。
「美味しかったですね、お兄様」
「ああ」
「気に入ってもらえてなによりだわ」
そこで達也達の前にリーナがやって来た。
「ああ、人気店になるのも頷ける。それにしてもどこでこれだけの腕を?」
「和樹はフランスの製菓学校に行ってたときがあるそうよ。」
「フランスの製菓学校?なるほどだから店の名前やケーキ名にフランス語が混ざってるんだな」
そう、この店の名前は『Le reve couleur(ル・レーブ・クルール)』。フランス語で書かれていて日本語で夢色という意味だ。メニューにも一部フランス語のケーキも混ざっている。
「リーナ、これのレシピを教えて」
「深雪、さすがにそれは失礼だろ。和樹だって商売なんだから」
「そうね。悪いけどそれはできないわ」
「…そうですよね。申し訳ありません」
「いいのよ。それだけ気に入ってくれたってことよね」
「ああ、じゃあ俺達はこの辺で」
「もう帰るの?」
「これだけ店が混んでいたら長居するのは迷惑だろ?」
「そうね、ゴメンなさい」
「リーナが謝ることじゃない」
それを最後に達也達は会計をして店を出た。
それから約二時間後、21時になり店は閉店した。それまでお客さんが途絶えることはなかった。
「皆、今日もおつかれさま」
『『『おつかれさま!!!』』』
「あー今日も疲れた~」
「お疲れ様」
「っていうか客が多すぎ。店の外まで溢れるってどういうこと!」
「それだけ人気があるってことだよ」
「でも和樹の作るケーキは絶品」
「それはわかるけどさ…」
リーナが休みなく動き続けたことで疲れて愚痴っていた。そこにほのかが励ますもたいした効果はなく、雫は俺のケーキを誉めてくれた。
「皆お疲れ。これでも食べて元気を出してくれ」
俺が用意したのは試作品のケーキだ。
「 試作品として作ってみたんだ。 とりあえず食べてみてくれ」
俺がそういうと3人は食べてくれた。
「何これ!?バターがいっぱい入ってるのにあっさりしてる!」
「生地もサクサクしていて美味いよ!」
「…………」
「ナッツ入りのアパレール。中にチョコとチーズを入れてあるんだ。」
リーナとほのかが俺の作ったケーキを絶賛してくれている。雫は何も言ってこないがクールな雫が笑顔でケーキを食べてくれていることから美味いと解釈した。
「うん。これならいけるわ!」
「流石和樹」
「スゴいです、和樹さん!」
「サンキュー」
その後俺達は一時間程明日の準備をしてから家に帰った。
その頃司波邸では
「…………」
「お兄様」
「深雪…」
「何を考えているのですか?」
「ああ、和樹のことでな」
「真田さんですか?」
「リーナは『実戦経験を積みたいから』と言っていた。パティシエを目指すやつが何故そんなことをするのか、まるで何者かに狙われているかのように感じる」
「何者かにって…」
「深雪を越える成績で入学しているんだ。十師族が目をつけていても不思議じゃないがアイツはリーナと婚約している、既に九島家の後ろ楯がある以上気にすることじゃないはずだ」
「…確かに…」
「つまり和樹は十師族以外の何者かに狙われている可能性がある」
「それはいったい……」
「恐らく大亜連合だろう」
「!?」
「俺の見立てでは和樹は『焔の抜刀斎』だ」
「!?……真田さんが……焔の…抜刀…斎……?」
焔の抜刀斎
三年前沖縄で起きた大亜連合が攻めてきた時たった一人で100人近い人間を斬り殺した男の異名だ。ライフルの暴発で死んだ人間、斬られた人間の切り口に焼け跡が残っていたことから付けられた。
「まだわからんが一瞬で剣術部員を倒した和樹の剣術、あれは自己流で覚えられるモノではない。誰かに教えてもらえなければ覚えられないほど精密だ。それも形骸化する前の人を斬るための剣術、まさに殺人剣ともいうべき古流剣術だ」
「まさか!?」
「エリカの家、『千葉家』も実戦剣術と言われているが所詮剣道の領域内での話だ。だが、和樹の剣術は一対一ではなく一対多を念頭においた剣術だ」
「では…」
「おそらく和樹は実戦経験は豊富なのは勿論、何者かと、いや違うな、組織と戦っていて身に付けたものだとおもっている。」
「……」
「明日辺り師匠に調べてもらった方がいいだろう…」
「…………和樹さん…………」ボソッ
それを最後に和樹の話は終わったが、何故か深雪は頬を赤らめて和樹の名を呼んだことに達也は気づかなかった。
来週はもしかしたら投稿出来ないかもしれませんのでよろしくお願いします。
今回出てきたケーキはアニメ夢色パティシエールの33、43、50話に出てきたケーキです。