討論会当日、生徒会・ 学内の差別撤廃を目的とした有志同盟による公開討論会が講堂で行われようとしている。 行動には全校生徒の半数くらいが集まった。 会場は一科生と二科生がほぼ半々。 同盟メンバーと判明している生徒が10名前後参加していたが、 その中に放送室占拠メンバーはいない。
「壬生先輩がいない。 実力行使の舞台が別に控えているのかもしれない」
「そうね」
俺の言葉にリーナが同意した。
そのことを話しているうちに 討論会は始まった。だが、 具体的な案を考えていない感情論で話している同盟側が七草会長に勝てるわけがなかった。 言うなれば同盟側は無謀な夢を語る子供と、 現実を認識してそのうえで夢を掲げる大人ともいえる討論会になってしまっている。
おはよう討論会は会長の演説となってしまっているような結果になってしまい七草会長の満場一致の拍手で終了した。
その時轟音が響き渡り校舎が震え上がった。
それと共に同盟メンバーと判明していた生徒が動きだし、警戒していた風紀委員は全員即座に捕縛した。その直後
「いけない! みんな窓から離れて! 外から何かが…」
七草会長が言ってきた。すると、窓からガス弾が落ちてきた。
「 煙を吸い込まないように!」
服部副会長が魔法でガス弾の煙を一ヶ所に集め、割れた窓ガラスからガス弾ごと外に出した。
そして、ガスマスクとマシンガンを持ったテロリストが講堂へ入ってきた。
「好きにさせるか!」
渡辺先輩の魔法、MIDフィールド。 ガスマスク内部の狭い空間を窒素で満たし敵を無力化した。
「委員長、先ほどの爆発があったと思われる実技棟の様子を見てきます」
「 お兄様、お供します」
達也と深雪がそう言ってきた。
「 俺とリーナは図書館を見てきます」
「 4人とも気をつけろよ!」
渡辺先輩にそう言われ、俺とリーナは図書館、達也と深雪は実技棟へ向かった。
少し時が遡り、討論会が始まった同時刻。バイアスロン部に入ったほのかと雫は演習林で練習していた。
「 討論会どうなったかな」
「気になる?」
「うん… 私達行かなくて良かったかな」
「 他人の愚痴になって付き合うだけ無駄だよ」
ほのかは討論会のことをきにしているが、雫は毒舌を吐いて切り捨てた。
そんな会話をしていると爆発音が聞こえた。
「えっ!?」
「何の音!?」
「何あれ!実技棟から煙が上がってる!?」
「 皆むやみに動いちゃダメ! 今端末で情報を調べるから待機!」
『はい!』
部長がそう言い調べると
「……!?…おおおお落ち着いて聞いてね?当校は今武装テロリストに襲われているわ!」
『!』
「… まじですか部長!?」
「 こんなこと冗談で言わないわよ! 護身のために一時的に部活用CADの使用が許可されています。 でもあくまで身を守るためだからね」
その時…ナイフを持ったテロリストが襲ってきた。
『キャアアア!!』
部員がそれを見て悲鳴を上げるが…ナイフが突然爆発した。
「ぐああああぁぁぁぁ!!」
『『『!?』』』
テロリストはナイフが突然爆発したことで両手が血塗れになり指すらまともに動かせない状況になった。
部員達が何が起きたのか分からず辺りを見ると、雫がテロリストに向けて手を上げているすがたがあった。どうやら雫が何かをしたらしいが何をしたのかは誰にも分からなかった。魔法を使ったのは何となく分かるのだが、魔法式が展開されなかったのだ。
「…北山さん…今のは…」
「部長、今はこれからのことです。どうしますか?」
部長は今の雫の魔法について聞きたかったが今はそれどころではなかった。
「十文字先輩はどうしてますか?」
ほのかが部長に聞いてきた。
「あっ…えっと…」
「幸いここから事務室が近いのでそこに行くのもいいかもしれません。自分のCADも取りに行った方がいいと思いますし」
「…そうね。とりあえず事務室に行くことにしましょう」
俺とリーナが図書館に着くと既にテロリストと生徒達で乱戦状態になっていた。
「リーナ、 おそらく奴らの狙いは 魔法大学が所蔵する秘密文献を盗み出そうとしているんだ」
「 じゃあ特別閲覧式ね。じゃあ急がなくちゃ!」
そうして俺とリーナは外にいる連中を無視して中に入っていった。俺とリーナの動きは縮地で動いているため誰も俺たちを捉えることが出来ず気づいた時には図書館内に入っていた。
図書館内に入り特別閲覧室に向かっていると 階段の登り口に二人 待ち伏せしていた人がいた。
『!?』
俺達は縮地で瞬時に近づき相手が反撃する前に、俺は相手の鳩尾に膝蹴りをし、リーナは相手の顎に掌底を撃ち込み鎮圧。 そのまま階段を登っていった。すると今度は階段を登りきった所に二人いた。
「!誰だ!!」
一人が階段から下りようとしてきたがリーナの魔法で階段から滑り落とした。もう一人は魔法を放とうとしてきたが、俺のグラム・デモリッションで魔法を無効化し、さっきの男から奪っておいた木刀で相手の胴を叩き鎮圧。
ここまで俺とリーナは足を止めず敵を鎮圧。 特別閲覧室に向かっている。
俺たちの特別閲覧室に侵入するとそこには壬生先輩とテロリストと思われる三人の男がいた。 俺たちが来るのがあまりにも早かったため 最先端資料をアクセスしている時間がなかったようだ。
「 お前たちの企みもここまでだ」
俺はCADを向け相手に宣告した。
「 生かしてはおけん!」
テロリストの一人が銃を向け引き金を引いた。すると銃が暴発した。
「ぐああああぁぁぁぁ!!」
『!?』
「 無駄だ。お前達の持っている銃はもう使い物にならない」
「……」
「壬生先輩、これが現実です」
「え…?」
「 誰もが等しく優遇される平等な世界など存在しません。 あるとすれば等しく冷遇される世界、 耳障りの良い嘘の中にしか存在しません。 あなたは利用されただけです」
「どうして……なんでこうなるの!? 差別をなくそうと…平等を目指したのが間違いだったというの!? 差別は確かにあるじゃない! それともあなたも本当は二科生をウィードだとバカにしてるんじゃないの!?才能がない人を見下しているんでしょう!?」
「……和樹が才能だけでここまできたと思っているの…」
「!?」
壬生先輩言葉にリーナは怒りを滲ませながら言ってきた。
「言っておくけど、 和樹は6年前までまともに魔法が使えなかったのよ。それこそ魔法科高校に間違いなく入れないくらいに」
「え!?」
壬生先輩は驚いたようだ。当然だ。 今年の本当の入試主席は深雪ではなく俺なのだ。そんな俺が六年前までまともに魔法が使えなかったなど誰が想像できるだろうか。
「和樹はそれこそ六年前から寝る間も惜しんで魔法が使えるように毎日魔法の鍛練を欠かさなかった。その年頃の子供なら友人と遊んだりするのが普通でしょう。でも和樹は私に会うまで友人を作らず魔法の鍛練を毎日未だに欠かしたことはないわ。あなたの言う才能何て言うのも確かに必要なのかもしれない。でも一番大事なのは努力。それを私は和樹に教えてもらったわ。お陰で和樹と出会う前より格段に強くなったっていう自信もつけた。二科生だから何て言う劣等感に蝕んでいる貴女には一生かかってもたどりつくことはできないわ」
「……」
「何より貴女をちゃんと見てくれている人を二年の一科生に一人だけいることを私は知っている」
「!?」
「入学したばかりの私が気づいているのに何故貴女はきづいていないのですか?それは一番劣等生と…ウィードと蔑んでいるのは貴女自身だからです」
「……」
「壬生!アンティナイトの指輪を使え!!」
壬生先輩はアンティナイトを使い魔法を使えなくされた。
「撤退だ!!」
テロリストたちが煙幕で姿を眩まし逃げようとするが俺とリーナはテロリスト二人を拘束した。
「壬生先輩は逃がしてよかったの?」
「大丈夫だ。おそらくそろそろ達也達もこっちに来る頃だ。おそらく鉢合わせになる。逃げることなんて出来ないさ」
俺がそう言った後携帯をとりだしある人に電話をした。
「誰にかけたの?」
「ほのかだよ。ちょっと気になることがあってね」
その会話を最後に俺達は鎮圧したテロリスト達を縛っていると達也と深雪がやって来た。
「和樹」
「達也か、壬生先輩は?」
「エリカに任せてきた」
「そうか、じゃあこっちも手伝ってくれ。」
俺がそう言うと達也も縛るのを手伝ってくれて、一通り終わり俺達が外に出ようとすると、階段を下りたところで壬生先輩が倒れていた。どうやらエリカが勝ったようだ。
俺達は壬生先輩から話を聞くため保健室に集まった。保健室にいるのは、俺、リーナ、達也、深雪、レオ、エリカ、七草会長、渡辺先輩、十文字会頭それと俺が呼び出したほのかと雫だ。窓の外にも聞き耳をたてている人がいる。
「 入学してすぐ司先輩に声をかけられたんです。 もうその時には剣道部には先輩の同調者が何人かいました。」
「そんなに前から?」
「はい、 魔法訓練サークルの中でも思想教育が行われていて… それが魔法差別撤廃の有志同盟という形で結束し、 その背後には反魔法団体のブランシュがいたんです。」
「予想通りですね、お兄様」
「本命すぎて面白くないけどな」
「 なぜこんな事に手を貸してしまったのか、今にして思えばあたしは『剣道小町』 なんて呼ばれていい気になってたんだと思います。 だから技術部の騒動の時に渡辺先輩の見事な魔法剣技を見て手合わせのお願いをすげなく断られたのがショックで…あたしが二科生だから 相手にしてもらえないんだと思ったらやらせなくなってそれで…」
「それは違う。 あの時私はこう言ったんだ『 すまないが私の腕では到底お前の相手は勤まらない。 お前の腕に見合う相手と稽古してくれ』と、 純粋に剣の道を収めたお前の剣技に敵うわけがない。 そりゃあ魔法を絡めれば私の方が上かもしれないが…」
「え……っじゃあ……あたしの誤解だったんですか……? なんだ私バカみたい… 勝手に先輩のことを誤解して恨んで… 逆恨みで1年間を無駄にして……」
渡辺先輩が当時言っていたことを壬生先輩に改めて言うと壬生先輩は涙を流しながら今までやって来たことに酷く後悔していた。
「……少し変じゃない?」
「何が変なんだ?クドウ」
渡辺先輩がリーナに聞いてきた。
「 いくら思い込みが強いと言ってもここまでの認識の違いが起きるものなのかしら」
「その通りだ。ほのか、頼む」
「はい、和樹さん」
俺の言葉にほのかが返事をした。ほのかには俺が前もって説明したことから何をするのかをちゃんと分かってくれていた。
「真田、彼女に何を…」
「まぁ見ていてください」
俺がそう言いその場の全員がほのかに注目した。
「壬生先輩少しジッとしていて下さい」
ほのかがそう言うと壬生先輩の顔を掴み額をくっ付けあった。少しするとほのかは離れた。
「どうだった。」
「間違いありません。壬生先輩は記憶をすり替えられてます」
『『なっ!?』』
「おそらく光波振動系魔法『邪眼(イビル・アイ)』。 催眠効果を持つ光信号を相手の網膜に投射する魔法です。 映像機器でも再現可能な単なる催眠術です」
「……真田は気づいていたのか?」
「 壬生先輩の記憶違いが不自然なほど 激しい。 聞き間違いの直後は動揺しているからあんな極端な思い込みをすることもあるだろうけど、普通は時間経過とともに冷静になっていくものだ。 催眠の強い支配下に置かれていた結果だろう。ほのかも得意な魔法ですからもしかしたらと…」
「そ、そんな……」
壬生先輩はさらにショックで落ち込んでしまった。周りも壬生先輩に同情して静かになった。
「さて、そろそろ行くか」
「ええ」
「?ちょっと待て、何処に行くつもりだ!」
「もちろん潰しに行くんですよ。ブランシュを…」
渡辺先輩の言葉に俺がそう返答すると
「!?危険だ! 学生の分を超えている!」
「私も反対よ!警察に任せるべきだわ!」
「 そして壬生先輩を強盗未遂で家裁送りにするんですか?」
「でも壬生先輩は!」
「洗脳されたことと、テロ片棒を担いだことは別問題と捉えるでしょう。警察は。少なくとも逮捕歴はできてしまう。」
「 確かに警察の介入は好ましくない。しかし相手はテロリストだ。 当校の生徒に我々は命をかけろとは言えん」
「当然です。俺とリーナだけで充分です」
「悪いが真田、俺も行かせてもらう」
「達也?」
「お兄様、私もお供します」
「あたしも行くわ」
「俺もだ」
「真田君、あたしのためだったらやめて。あたしは平気よ。 罰を受けるだけのことをしたんだから」
「壬生先輩のためではありません。 自分の生活空間がテロの標的になったんです。 俺はもう当事者ですよ。リーナや雫、ほのかまで被害に遭ったんだ。奴らを許すという選択肢は俺には存在しない。 俺の日常を壊そうとするやつは全て排除する。 撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」
『『『………』』』
「 しかしどうやってブランシュの拠点を突き止めればいいのでしょうか?」
「 分からないなら知っている人に聞けばいい」
俺は達也に相槌を討ちそれに気付いた達也はドアの方に歩きだし一気にドアを開けた。するとそこにはカウンセラーの小野先生がいた。
「小野先生!?」
「…九重先生の弟子から隠れとおせようなんてやっぱり甘かったか」
「 隠れているつもりもなかったでしょう。 あんまり嘘ばっかりついているとそのうち自分の本心さえもわからなくなりますよ」
「 気をつけておくわ」
そして、小野先生はブランシュのアジトを教えてくれた。
「 ここはバイオ燃料の廃工場だな」
「 車で移動の方がいいだろう」
「 ならば車は俺が用意する」
「えっ?十文字君も行くの?」
「十師族に名を連ねる十文字家の者として当然だ」
「なら私も…」
「七草、お前はダメだ」
「真由美、 この状況で生徒会長が不在になるのはまずい」
「…了解よ。 でもそれだったら摩利もダメよ。 残党がまだ校内に隠れているかもしれないもの。 風紀委員長に抜けられたら困るわ」
「 真田すぐ行くのか? このままでは夜間戦闘になりかねないが」
「 そんなに時間はかけません。日が沈む前に終わらせます。 それと外で聞いている桐原先輩。先輩も行くんでしょう?」
俺は窓を開けそこにいた桐原先輩に問う。
「ああ、行かせてもらう」
「何故ですか?」
「 一高生としてこんなこと見過ごせないからだ」
「理由はそんなことではないでしょう。 命をかけるには軽すぎます。 もう一度聞きます。何故ですか?」
「……」
桐原先輩はチラッと壬生先輩を見た。
「先輩、 男を見せる時ですよ」
「… 俺は中学時代の壬生の剣が好きだった。 人を斬るための剣ではなく、 純粋に技を競い合う壬生の剣は綺麗だった。 でもあいつの剣は人を斬る剣に変わってしまった。」
「 それが剣道部の演武に乱入した理由ですね」
「… 俺は変わったあいつが許せなかった。 剣道部にあいつの剣を変えちまった奴がいるはずだ。 そしてその背後で壬生を利用した奴が俺は許せない!」
俺は辺りを見回すと達也以外皆顔を少し赤く染め(ほのかは真っ赤っか)微笑ましい顔をしていた。
「(…クドウさんの言う通りだった。私を見てくれている人がこんなに身近にいたなんて…それなのに私は…)」
壬生先輩は桐原先輩の言葉に感銘を受けた。その事にまたも後悔の念が強くなった。
「いいだろう。 男をかけるには十分な理由だ」
俺が何かを言う前に十文字会頭が許可を出した。
こうして俺、リーナ、達也、深雪、レオ、エリカ、十文字会頭、桐原先輩はブランシュのアジトがある廃工場へ向かった。