「そんな!?私のニブルヘイムが……」
深雪が自分の魔法がまるで効いていないことに驚愕している。無理もない。少なからず私も驚いた。『ニブルヘイム』は液体窒素さえ発生させる高位冷却魔法。
今までリーナは和樹と一緒に行動することが多いため、今回のようにいろんな妖怪を相手にしたことがあった。でも今までの相手なら十分凍らせることができる魔法だったからだ。でも、目の前の相手は、妖力を放出するだけで防いだ。明らかに今までの相手とは格が違うことが物語っている。
「貴様がアンジェリーナ・クドウ・シールズだな?」
「!?…どうやら自己紹介は必要なさそうね」
「アンジェリーナ・クドウ・シールズ?」
青龍が私を工藤リーナではなく、私の本名であるアンジェリーナ・クドウ・シールズと呼んできた。この名はスターズの追手から身を隠すために棄てた名だ。しかも日本にきてその名を知っているのは九島家の人間か和樹しか知らないはず。雫やほのかも知らない。その名を目の前の男は知っていることに多少驚いた。
深雪はその名を聞いて『何言ってんの?』みたいな顔をしている。
「おい、そこの女!」
「!?」
青龍は深雪に声をかけた。
「死にたくなければさっさと消えるんだな?」
「な!?」
「聞こえなかったのか?死にたくなかったらさっさと消えろと言ったんだ!!それともお前はただの自殺志願者だったのか?」
「っ!?」
青龍の言葉に深雪の何かがキレた。無理もない。私の隣にいて、先ほど『ニブルヘイム』を使って攻撃までしたのだ。寧ろ、なにもしていない私が無視されるのならともかく、目立つことをした深雪が無視されたのだ。『お前など眼中にない』…そう言われたかのようだ。
元々深雪は達也とは違い沸点が低い。挑発されれば簡単に乗ってくるような性格なのだ。
深雪は再びCADを弄り魔法を発動させた。
「深雪!!」
私は止めようと声をかけるが間に合わない。
深雪の魔法、精神凍結魔法『コキュートス』
沖縄で大亜連合が攻めてきたときシェルターに現れたテロリストを凍らせた肉体だけではなく精神をも凍らせる魔法だ。
だが青龍にはまるで効いてないのだ。
「!?………なん………で………?」
深雪はまたも驚愕した。コキュートスは相手の精神を凍らせる魔法。いくら肉体を鍛えても……いやそれ以前に液体窒素で凍らない体があるとは思えないが……とにかく、肉体を鍛えても精神を鍛えることなど不可能だ。なのに青龍はどこと凍らされていないのだ。
「…………せっかくこの俺が忠告してやったというのに無視するとは、覚悟は出来てるだろうな!!」
またも青龍は魔力を放出し、放出した魔力が私たちに当たろうとした時、私も魔力障壁を使って受け流した。
受け流された魔力は後方へいき、壁にぶつかり、壁が崩れ落ちた。これが続くとこの部屋もいずれ崩れるのではないか?
「……………………ぁ…………………」
深雪は酷く怯えているようね。無理もない。初めてみた妖怪がこんな化け物なんて…
「深雪!!呆けてる暇があるなら早くここから離れなさい!!このままだとアナタ確実に死ぬわよ!!」
「……でも……リーナは……?」
「アイツの狙いは私よ!さっきのアイツの会話で気づかなかったの!?」
アイツは出てきたとき深雪に死にたくなかったら消えろと言ってきた。つまり深雪は殺す対象ではないということだ。
「………でも……」
それでも深雪にとってリーナはクラスでいつも一緒にいて授業でも自分と対等に競り合うだけの力を持っている良きライバルだと思っている。和樹の場合、異性ということもあるうえ、実力差がありすぎるので近い実力のリーナに対して深雪は対抗意識を持っている。
そのため、リーナを置いて自分だけ逃げるという選択は深雪にはなかった。
「……私も残る!……一人で戦わせはしないわ!」
どうやら深雪の闘志に火がついてしまったらしい。
「!?深雪、あなた…」
「お喋りはその辺にしてもらおうか?」
「!?」
リーナは深雪に何か言おうとしたが、青龍に遮られてしまう。
「二人纏めて粉々にしてやる!」
すると青龍の右こぶしに冷気が集まっている。
その隙をついてリーナは魔法を放った。
放出系領域魔法『ムスペルスヘイム』
気体分子をプラズマに分解し高エネルギーの電磁場を作り出す領域魔法
さらに、深雪も魔法を放った。
中規模エリア用振動系魔法『氷炎地獄(インフェルノ)』
二分した対象エリアの一方の空間内全ての振動エネルギー運動エネルギーを検索し、その分をもう一方の空間を加熱するエネルギーへと変換する高難度魔法
「(コキュートスやニブルヘイムが効かない以上、冷却魔法は効かない。ならばその逆ならどう?)」
魔法発動はリーナ達の方が速かった為青龍はマトモに受けた。だが…
「フッフッフっ、この程度の熱では俺にとって暖かいと感じる程度だな」
「!?そんな!?」
「この化け物!?」
深雪は驚愕し、リーナは冷や汗を流しながら悪態をついている。
「死ねぇ!魔闘凍霊拳!!」
「深雪!!」
リーナは深雪を抱きしめながらなんとかかわしたが、かわした後が完全に凍りついている。
「フン、うまく避けたな。貴様らには見えなかっただろうが絶対零度に近い拳を瞬間的に100発叩き込んだ」
100発!?つまり音速の拳。それも絶対零度に近い冷気で繰り出すなんて…
「今回はうまく避けたが、紛れがいつまで続くかな?」
確かに音速で飛んでくる冷気をかわし続けるなんて絶対に不可能だわ。
「死ねぇ!」
またも青龍が同じ技を撃ってきた。
「!!」
考え事をして反応が遅れた私は抱き抱えていた深雪を突き飛ばし深雪とは逆の方向へ飛んだ。だが、そのとき両足を凍らされてしまった。
「リーナ!!」
深雪は悲痛の叫びを木霊した。
「フッフッフ、どうだ?最早観念したか?」
「くっ!」
「だがもう遅い!いくら泣き喚いても、お前の運命は代えられない!暫くそこで見ているのだな?先にこっちの小娘を先に殺してやる」
「っ!?」
青龍が深雪に視線を移し、深雪は一歩後方へ退いた。
「フッフッフ、どうだ?自分を庇ったせいで犠牲になった者を見るのは?奴の命も後数分の命だ。動けなくなった体で自分が守ろうとした者が死ぬところを見るのはどんな気分であろうな?」
「っ!!」
深雪はかなり頭に血が登り辺り一帯が魔法が暴走し、凍りついていく。だが青龍にとって氷は力の源。辺りが凍れば凍るほど力を増していく。
「深雪!!」
リーナは深雪に声をかけるが聞こえてないようだ。
深雪は魔法を発動させた。リーナの凍らされている足を溶かそうとしているのだ。だが、絶対零度に近い冷気で凍らされた氷を溶かすことは出来なかった。
「フッフッフ、無駄だ!絶対零度に近い冷気を溶かすことなどできるものか!?さてすぐに殺すのもつまらん。ジワジワと名振り殺しにしてくれる!死ねぇ!」
またも青龍は魔闘凍霊拳を放った。
リーナと違い深雪は体術を得意としない典型的な魔法師。避けることも防ぐことなどできるはずもなくマトモに受けた。だが、受けたのは両手両足のみ。
「これで逃げられまい。さて、どうやって殺すか……ん?どうやら玄武と白虎は殺られたようだな?」
「「?」」
青龍はいきなり訳の分からない独り言を話し始めた。
「ちっ、全く役にもたたん愚か者共だ。まぁいい、所詮あの二人は前座。俺と朱雀様が入れば済む話だ」
「アナタ!まだ仲間が!?」
リーナが青龍に聞くと
「俺の他に朱雀様がいる。今頃はこの先に入った奴らを根絶やしにしている頃だろう」
「お兄様が負けるはずありません!!」
「フッフッフ、確か司波達也とかいったな?確かにこの世界の魔法師で奴に勝てる者は片手で数える程度しかいまい。流石はこの国の最強の魔法師集団十師族といったところか?」
「!?」
「……十師族……?……達也が……?ということは……深雪……?アナタも……?」
「…っ!?」
「だが奴の魔法は我らには通用しない。そういう体でできているのだからな!」
「!?…そ、そんなはずありません!」
「フン、信じなければそれでいい。どうせお前たちはここで死ぬのだから。すぐにお前の大好きなお兄様とやらに会わせてやる」
深雪は恐怖に震えていた。確かに身動きがとれなくなり魔法も効かない以上勝ち目はない。
「本当ならもう少し生き長らせようと思っていたが、他の二人が殺られてしまった以上俺が行くしかあるまい。それにしても少しはやるようだな?お前の仲間の北山雫と光井ほのかという小娘は」
「「!?」」
「貴様ら殺した後その二人を殺しに行く。真田和樹は朱雀様が入れば問題あるまい。」
「何で雫とほのかを!?それに和樹さんまで!!」
深雪は叫ぶように青龍に言った。
「奴らがこの世界の異物だからだ。そこにいる女も含めてな」
青龍は深雪にリーナに視線を向けてそう答えた。
「さて、お喋りはここまでだ。そろそろ「やっぱりこのままで無理のようね…」…?何を言っている?」
青龍の言葉を遮るようにリーナが突然そんなことを言ってきた。
「リーナ?」
深雪も困惑していた。どう見ても絶体絶命なのにリーナにはまだ余裕があるのだろうか?
するとリーナは突然リストバンドを外した。するとリーナのサイオンが爆発的に上がった。
ゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーーーーー!!!!!
バチッ バチッ バチッ バチッ バチッ
「「!?」」
リーナの周りから物凄い雷が出てきたのだ。青龍と深雪は突然の出来事に驚いた。すると先ほどまで凍っていたリーナの両足が元に戻っていた。
そう、リーナがつけていたリストバンドには『呪霊錠』と同じ効果が施されていたのだ。
「何だ!この霊気(サイオン)は!?俺の凍気を一瞬で溶かすなど、そんなことがあってたまるか!!」
青龍はまたも妖気を放出し、今度は青龍の周辺が凍っていた。
リーナは自分が放出した雷を体内に取り込み、全身が黄色くなった。
「あ、熱い…」
深雪とリーナの距離は何十メートルも離れている。それなのにの体の熱がここまで届いている。その熱のせいで深雪の両手両足や、深雪の『ニブルヘイム』で凍らされていたブランシュのテロリスト達の氷はすっかり溶けていて全員その場で倒れていた。
二人の間にいる青龍はもっと熱いのだろうが汗一つかいていない。だが、さっきまでの余裕がなくなり、リーナに対して強い警戒心をもっている。
「良かろう。遊びは終わりだ。これで今度こそ止めをさしてやる」
「此方も本気で行くわよ!!」
お互い魔力を全力で放出した。リーナ右手に雷が集まってくると同時に、リーナの体が黄色から元の色へ戻っていった。次で全てが決まる。深雪はそう感じていた。深雪は二人から離れリーナの勝利を願うだけだった。
「死ねぇ!!」
青龍は今までとは違い全力の凍気を放った。
「はああああぁぁぁぁ!!」
リーナも全力の雷を放った。
最初は両者ともいい勝負をしていたが、すぐ均衡が崩れた。青龍の凍気が徐々に溶けてきていたのだ。
「ぬぁ?バカな!!」
青龍はリーナの放った雷に呑み込まれ全身が雷で焼け上がった。
その後は青龍の体はピクリとも動かなくなり死んだということがわかった。
「フーッ、なんとか勝てたわね。」
リーナは外したリストバンドをつけた。
「これがなかったら今頃死んでたわね。和樹に感謝しないとね」
深雪は呆気にとられていた。先ほどまでどんな魔法を繰り出しても何も効かなかった相手を一撃で殺してしまったのだ
そんな深雪の心情を知りつつも
「深雪、私も聞きたいことがあるけど今は後回しよ。アイツの仲間が和樹達の所にいるらしいから先を進むわよ」
リーナの言葉に我を取り戻した。
そうだ。さっき青龍は朱雀という者がお兄様達のところに行っている言っていた。しかも様呼びをしていたということは上司。実力が青龍より上の可能性がある。
「そうね。速く行きましょう!」
深雪はその事を察し、リーナと一緒に急いで和樹達の元へ行こうとしたとき…
ピシャァァァァーーーーーーーンンンンンンン!!!!
ドオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーンンンンンンン!!!!
「「!?」」
突然雨も降っていないのに雷がこの先の建物の中に降ってきたのだ。
本当は何度か起きていたのだが、青龍との戦い集中していた二人は気づかなかったのだ。
「お兄様!」
深雪は慌てて達也が通った通路に走っていった。
「深雪!」
リーナも和樹のことが心配なため深雪に続くように走っていった。
リーナは青龍を倒したことで経験値が上がります。
ステータス
工藤リーナ(アンジェリーナ・クドウ・シールズ)
レベル 43
体力 250/250
サイオン 311(384)
力 82(98)
敏捷 144(173)
頑強 72(87)
器用 140(168)
魔法力 150(190)
魔法技能 190(228)
魔法ポイント
加速 70
加重 50
移動 80
振動 50
収束 55
発散 45
吸収 55
放出 100
無 60
系統外 80
知覚 45
魔法
自己加速術式 ベクトル反転術式 仮想行列(パレード) ダンシング・ブレイズ 分子ディバイダー ムスベルスヘイム 対物障壁 ???
戦略級魔法
ヘビィ・メタル・バースト
深雪は今回の戦闘で特に成長を得るような戦いを見せなかったので経験値を得ることができずステータスを上げることはしませんでした