九校戦メンバー決定
季節は夏、7月半ばにさしかかった頃すでに気温は30℃を超えるのが当たり前になってきている。生徒たちは定期試験が終わったことで九校戦に向けての気迫が高まり、 学校内の空気はどこか浮ついているように感じた。ちなみに試験の成績は以下の通りだ。
総合順位
1位 真田和樹
2位 司波深雪
3位 工藤リーナ(僅差)
4位 光井ほのか
5位 北山雫
実技順位
1位 真田和樹
2位 工藤リーナ
3位 司波深雪
4位 北山雫(僅差)
5位 光井ほのか
理論順位
1位 司波達也
2位 真田和樹
3位 司波深雪
4位 吉田幹比古
5位 工藤リーナ
となっている。総合は大体俺の予想通りだった。実技はほのかが原作と違い森崎より順位が上だったことが嬉しかった(森崎は6位)。理論は達也には勝てないだろうとは思っていたのでそこまでショックではなかった。
ただ、一科の連中は理論の1位と4位が二科生だと知りどんな汚い手を使ったんだよとか不正だとか言っていた。
A組ではその時氷の女王が舞い降りたそうな…
この後は今一番の話題の九校戦についてである。
九校戦
正式名称全国魔法科高校親善魔法競技大会。
毎年全国にある9つの高校からそれぞれ選りすぐりの生徒たちが集い魔法鏡技を競う大会である。九校戦は毎年魔法関係者だけでなく一般企業や海外からも大勢の観客とスカウトが集まる大舞台だ。
当然全国の魔法科高校はこの競技に力をこめておりこの第一高校も例外ではない。
そんな大規模な行事に普通はテンションが上がるかもしれないが学校を仕切る立場である生徒会はそうも言ってられない。大会はあと半月以上もあるのにその仕事の多さは殺人的だ。 あの真由美が軽口を叩くこともなく黙々と仕事に取り組んでいるほどだ。
そんな中俺とリーナ、司波兄妹を含めた生徒会の面々と摩利は会議ようの机につき、向かいながら頭を悩ませていた。
「今年の九校戦はこのメンバーなら負けることはないでしょう。それだけの人材が揃っているわ」
「そうですね。今年の一年はもしかしたら私たちの年代以上かもしれませんし…」
七草会長と市原先輩がそんな事を言っていた。
「 女子はそうかもしれませんが男子ははっきり言ってボツですよ」
「 総合1位の和樹が言っても皮肉にしか聞こえないわよ」
「 俺以外の奴がだいたい足手まといなんだよな。」
実際今回の実技試験で10位以内に入った男子は俺と森崎と十三束の3人だけだった。その十三束が九校戦の競技とは相性が悪かった。
「ところで和樹君。あなたには二種目出場してもらう予定なんだけど何がいい。一つはモノリスコードなんだけど」
「却下します。態々足枷をつけては三校にいる将暉には勝てません」
「…将暉って一条君の事?え?もしかして知り合いなの?」
「そうですが…」
そう。将暉とは2年前偶然銀行の立て籠り事件に遭遇して知り合った。旅行に来てスターズとの戦闘に遭遇するわで最悪だと思った。だがそのおかげで将暉とリーナに知り会えたのだから安いものだ。そして、将暉と知り合い家に招待されたときリーナの事を話したお陰で九島家との連絡ができ親友とも言える友人になったのだ。
「本当は俺もリーナも三高に来ないかと誘われましたから」
「……そうだったの……」
「まぁとにかく勝てない面子でやって態々負ける気にはなりません」
「その言い方だと勝てる面子がいると言うことだな?」
渡辺先輩が俺にそう聞いてきた。
「…3人ほど思い当たりますがそれ以外とは組む気はありません」
「その3人とは?」
「1Bの十三束鋼、1Eの吉田幹比古と司波達也ですね」
俺の言葉に達也は酷く驚いた。無理もない。実技で二科生の中でも下にいる自分の名前が出てくるとは思えなかったのだろう。
「…どうしてその人選なの?」
七草会長が聞いてきた。達也だけでなくその場にいる誰もが思ったことだろう。さっきも言ったが十三束は九校戦の競技とは相性が悪い。モノリスコードも例外ではない。近接攻撃は反則なのだ。これでは十三束の本領を発揮できない。
「勿論実力ですよ」
「…その三人なら勝てると言うのだな?」
「どうでしょう…イレギュラーがなければ勝率は5割と言ったところでしょう」
その言葉に生徒会メンバーと渡辺先輩は絶句した。十師族の一条を相手に5割で勝てるというのだ。普通に考えれば無理だろう。
渡辺先輩は会長を見て頷くと
「分かったわ。その三人の内二人を出すから和樹君も出てくれる?」
「…分かりました。では、十三束と幹比古でお願いします」
「達也君じゃなくていいの?」
「達也にはエンジニアをやってもらった方が効率的ですから…」
俺の一言で七草会長はガバッと勢い良く身体を起こし、獲物を見つけたような視線を達也に向ける。そう、実はエンジニア不足で悩んでいたのだ。
「盲点だったわ!」
「そうか…私とした事がうっかりしていた」
達也は深いため息を吐いた。モノリスコードに出なくていいと思って安心した途端にこれだ。
「 1年生のエンジニアが加わるのは過去に前例がないのでは?」
「 何でも最初は初めてよ」
「 前例は覆すためにあるんだ」
「 達也諦めろ。 お前が司波さんから逃げられるわけないだろう」
俺が達也に隣を促すと目をキラキラして期待している眼差しを向けている深雪がいた。それを見て達也はため息を吐き、逃げられないと見て了承した。
「それとさっきの二人だがお前の言う通り問題ないかテストさせてもらう。流石に実力が分からない者を九校戦のメンバーに出来んからな」
「…まぁいいでしょう。でも先ほど言った通り他の人とは組みませんよ」
「ああ、それでいい」
「ということで達也頼んだぞ」
「は?」
「俺が出て勝っても俺がいたから勝てたんだなんてバカなことを言う人がいないとも限らないからな。そうならないために達也が出た方がいいんだ」
「なぜ俺なんだ?」
「俺が推薦したからだ」
達也から睨み付けるような視線を感じる。余りに理不尽だからなぁ…
「…そうね。確かにその方がいいわ。達也君お願いできる?」
「分かりました」
「相手は俺と一緒に組む予定だった森崎達でどうですか?新人戦メンバーを決めるのに上級生を相手にするより同級生同士でやらせて勝った方がメンバー入りという分かりやすい方法の方が後々面倒がなくていいですから」
「分かったわ。それで和樹君、後もう一つは何がいい?」
「……そうですね……スピード以外ならどれでもいいですけど……やるならボードかピラーズですかね」
「スピード・シューティングはなぜ嫌なの?」
「ただ当てるだけなんてつまらないからですね」
「…でもその理由だとアイス・ピラーズ・ブレイクも同じじゃないか?」
「その競技には恐らく将暉が出ると思いますからやってみるのも悪くないと思いまして。クラウドだったらボードの方が楽しそうですからね」
「一条に勝てる自信はあるのか?」
「……一条家の爆裂はピラーズと相性がいいですからね。半々と言ったところでしょう」
「ならバトルボードだな。確実に優勝を狙える競技にするべきだ」
「分かりました」
それから2日が経ち、達也、十三束、幹比古は森崎たちとモノリスコード出場を賭けて戦うことになった。場所は森林ステージだ。今回達也はディフェンス、十三束はオフェンス、幹比古は遊撃を担当する。これは俺のポジションがディフェンスになることを想定し、他の二人の実力を知るテストでもあるからだ。
試合が始まると、十三束と幹比古は分散し各個撃破しに行った。
十三束はモノリスに向かう途中森崎と相対した。
森崎は得意のクイック・ドロウで十三束を倒そうとした。だが、十三束には通用しなかった。
この試合を観戦モニターで見ていた人達は一同に驚いていた。森崎の放った魔法が突然十三束の体に触れた途端消えたのだ。
「今のは!?」
渡辺先輩が思わず出た言葉だった。
「術式解体(グラム・デモリッション)。但し接触型のですけどね」
「接触型の?」
「真田は知ってたのか?」
「はい。あれがある限り十三束は余程の事がない限り負けません」
「だが、十三束は遠距離攻撃が苦手なはず。それでは相手を倒せないぞ」
「まぁ見ててください」
森崎は自分の魔法を消されたことで同様を隠せなかったがすぐに立て直し次の魔法、エア・ブリットを使った。そして、自己加速魔法を使い側面に移動しようとするが、十三束が先回りして待ち構えていた。
そこへ十三束が森崎の鳩尾に右こぶし叩きつけた。森崎はそのまま後ろの大木まで吹っ飛びそのまま気絶した。
「おい!今のは反則だぞ!」
「いえ、大丈夫です」
十三束が森崎を殴ったことで反則だと言った人がいたが俺がそれを否定した。
「何を言ってる!」
「直接攻撃は反則だぞ!」
俺の言葉尚意義を唱える先輩達がいたが俺は無視して
「市原先輩、今のシーンをスローで見せてください」
市原先輩がもう一つのモニターに今のシーンを見せてくれた。
十三束が森崎の懐へ飛び込み森崎の鳩尾に殴りにいったが、鳩尾には当たらず寸止めしていた。森崎はそのあと大木にまで吹っ飛んでいった。
「どういう事だ!何故森崎はあんなに飛ばされたんだ?」
「爆風ですよ」
「爆風?」
「はい。空気の塊を自分の拳の周りを固定し、拳に固定した空気塊で周りの空気を押し出しているのです」
「だが十三束は、 生まれつきサイオンが体に密着してしまうから体から離れた場所への魔法がうまく使えないんじゃなかったのか?」
俺の言葉に渡辺先輩が聞いてきた。
「渡辺先輩、空気はどこにあります?」
「どこって…大気中だ。空やオゾン層や勿論ここにも……!!」
渡辺先輩は自分の手を見ながら言うとハッと気がついた。
「…そう、そこにも空気はあるんですよ。手元にある気体に直接加速ベクトルを付与することで爆風を生み出す。それが十三束の魔法、ゼロ距離ブラスト」
俺が説明している間に十三束はモノリスを守っている相手を倒しモノリスを打ち込むことで試合が終了した。
ちなみに幹比古は『木霊迷路』を使い三半規管を狂わせることで方向感覚を失わせたことで相手を足止めさせていた。
達也は終始モノリスを守っていただけで何もしなかった。
これにより俺と十三束、そして幹比古が二科生ながら九校戦モノリスコードに出場することが決まった。