一高入学
国立魔法大学付属第一高等学校。 毎年 国立魔法大学に最も多くの卒業生を出している エリート校である。 一学年の定員は200人。 そのうちの魔法力の高い100人は1科生として 残りの100人を2科生とする。
今日から俺とリーナ、そして、雫とほのかも第一高校の一科生として入学することになる。
「お~い!リーナ、まだか!」
「…………」
「リーナ!」
「…………」
「開けるぞ!」
「…………」
何度呼びかけても返事がないので俺はリーナの部屋に入った。するとリーナは鏡を見ながら身だしなみチェックしている。それだけならいいが、自分の制服姿を見てポーズを決めているところを見て俺は軽く引いていた。
「……何やってるの?」
「はっ!!何でもありません!!」
「フフっ、やっぱりそういうところが俺は好きなんだよな、リーナは…」
「なななな何を言ってるの!?」
「 完璧そうに見えて実はポンコツなところが可愛い。」
「……なんか誉められてる気がしないんだけど……」
リーナは頬を赤らめながら頬を膨らませてきた。うん。可愛い。
「じゃあ行くか。」
「ええ。」
二人は手を繋ぎながら家を出た。
リーナと出会って約二年が過ぎた。俺とリーナは付き合っている。最初は俺とリーナの関係は主従関係だったのだが、接しているうちにドジばっかりやるのに、完璧にこなそうとしてするリーナの姿を見て可愛いと思えてきた。
リーナは頑張って強くなるために努力して、実際この世界の誰も和樹に勝てないんじゃないのか思えるくらい強くなった。そして、スターズの追っ手から自分を守ってくれて、いつか守ってもらうんじゃなくて、和樹の隣に立てるような女になりたい、そう思ったら自分が和樹を好きになっていたことに気づいた。
俺とリーナは仲良く一高の門をくぐり入学式の会場に向かった。
「入学式の会場ってどっち?」
「情報端末でわかるだろ?こっちだ。」
リーナが会場の場所がわからないと言ってきたので俺がリーナの手を引いて誘導する。
「新入生ですね? 会場に向かった方がいいですよ。」
上級生と思われる少女が立っていた。
「はい、今行きます。」
「 ありがとうございます。」
そう言った後俺は彼女を見ると知ってる顔だった。
「失礼ですけど、もしかして七草先輩ですか?」
「ええ、私のこと知ってるの?」
「友人達と九校戦を観に行ったとき印象に残ってましたから。」
それもあるが原作を見ていた俺が七草真由美を知らないはずがない。
「そう。何だか照れるわね。」
「エルフィンスナイパーとか妖精姫って言われているんですよね。」
「……出来ればその名前を言うのは止めてほしいんだけどね」
「そうですか?可愛い七草先輩には合ってると思うんですが。」
「ちょっ、可愛いって!」
「?変なこと言いました?」
「ううん、何でもないよ!!(まさか、 無意識で言ったの?)」
「…………」
七草先輩は目の前で両手を広げ横に振りながら頬を赤らめていた。リーナは横で眼を細めながら俺をみているが、いつもの事なので俺は気にしなかった。
「申し遅れました。自分は真田和樹といいます。」
「私は工藤リーナです。」
「え!?あなた達が真田くんと工藤さん!?」
七草先輩が驚いた。まぁ無理もないか。理由は…
「魔法実技歴代一位二位。それも魔法速度、魔法強度どちらも歴代一位二位真田君と工藤さん。そして、魔法理論も真田君は平均95点で二位。工藤さんは四位。歴代総合一位で入学してきた真田君!?」
「…ええ、まぁ…」
「え!?」
俺が答えるがリーナは何か驚いているようだ。そんなことを気にせず七草先輩は語り続けた。
「でもなんで総代を断っちゃったの?」
「……人前で話すの苦手なんで……」
「……そう……。工藤さんも同率二位で今日の答辞は二人でする予定だったのを断られたって聞いたけどどうして?」
「和樹に負けたからです。」
リーナは負けず嫌いなので俺に負けておきながら総代をやるのはリーナのプライドが許せなかったのだ。
「…そう…」
「先輩、そろそろ。」
「そうね。また今度話しましょう。」
そう言って先輩は去った。
「俺たちも行くか。」
「ええ。」
講堂についた俺達はどの席に座るか見ていると前席一科生、後席二科生と綺麗に別れていた。
「実に下らない。」
「和樹、どうする?」
「 入学早々目立ってバカを相手にしたくない。 前の席に座る。」
俺がそう言い俺達は前の四人座れる席に座った。
暫くすると俺が待っていた二人が来た。
「…あの…お隣空いてますか。」
「空いてるからいいよ。ほのか。」
「和樹さん!?」
「おはよう、和樹。」
「おはよう、雫。」
俺が二つ席を取っといていたのは この二人を待っていたのだ。
「和樹がわざわざ二つ席用意してくれたのよ。」
「そうなんですか?ありがとうございます、和樹さん!」
「ありがとう、和樹。」
「 二人で来るって予想はついてたからな。 どうせなら四人で座った方がいいだろ。」
「そういう気配りが出来るところが和樹はいいわよね。」
「そうか?」
「そうです。」
「うん。」
リーナの言葉に二人は肯定した。 そんな会話をしていたら入学式が始まった。
入学式は無事終わり、 新入生全員にして一昔前の学生証と同じ ID カードを交付される。
新入生はこの段階で自分がどのクラスに入るのかはっきりする。 自分と親しい人と同じクラスになれるのか いつの時代も気になるのだ。俺達はIDカードをもらい自分達のクラスを確認した。
「和樹さんは何組ですか?」
「俺はB組だな。三人は?」
「 私もB組よ。」
「私はA組。」
「私はA組です。」
俺とリーナはB組、雫とほのかはA組だった。二人は少し落ち込んでいた。
「 クラスが違っても 休み時間や放課後一緒にいられるだろ。」
「そうですね!」
「 休み時間の度に会いに行く。」
大袈裟なとは思ったが口には出さない。いつものことだから。それに俺も二人が 休み時間の度に会いに来てくれたら嬉しいからだ。
断っておくがこれは浮気ではない。 実は俺はリーナだけではなくほのかと雫とも付き合っているのだ。 でもこれはいけないというわけではない。 この世界において魔法師は貴重な存在のため魔法師は一夫多妻なのだ。
「それでこれからどうする?」
「勿論、今から家でトレーニングだ。」
「………和樹………それしかないの………」
「………和樹さん………たまには息抜きとかしませんか……?」
「………和樹………脳筋………」
なんか3人に冷めた目で見られてしまった。無理も無い。前世の俺だったらそんな人間を見たら軽く引いてしまう。 これの世界に来てから毎日鍛練を積み、これは日課というより趣味だ。
そんなこんなで俺達はいつも通り俺の家に帰宅し、地下室の訓練場で鍛練に励んでいた。
翌日俺とリーナは一高に行こうとしたが外で雫とほのかが待っていた。どうやら一緒に車で行こうとしてくれていたらしい。
俺達は雫の車で学校に行き雫とほのかはA組に俺とリーナはB組の教室に入っていった。
俺は教室に入り自分の席に座ったら、自分の受講登録をするため自分の端末にIDをセットし、インフォメーションのチェックを始めた。規則、イベント、案内、一学期のカリキュラムまで、 キーボードオンリーで受講登録を 一気に打ち込んだ。リーナはそれを見てやっぱりスゴいなぁと思った。リーナ以外から視線を感じたのでそちらに目を向けると一人の男子生徒と目が合った
「あっ!?ゴメンね。 キーボードオンリーで入力する人なんて初めて見たからちょっと見入っちゃってた。」
「 慣れればこっちの方が早いんだ。」
「そうなんだ。あっ、十三束鋼。鋼って呼んで。」
「俺は真田和樹。和樹でいいよ。」
「私は工藤リーナ。リーナでいいわ。」
「よろしく。和樹、工藤さん。」
「それにしても射程距離(レンジ)ゼロと 一緒のクラスになるとは思わなかったよ。」
「 遠距離はあまり得意じゃないんだよ。」
鋼は目を附せながら言ってきた。
「 自分の欠点と言える部分を最大限に活かし自分の武器に変えた。 その努力は誇るべきであって謙遜するべきじゃない。」
「 そうね。普通なら諦めるところをアナタは無し遂げたのよ。 胸を張っていいと思うわ。」
二人にそんなことを言われた綱は…
「ありがとう、 そこまで言われると少しくすぐったいね。」
「オリエンテーションも終わったし、二人はどこ行くの?」
「俺は工房に行こうかと。」
「和樹が行くなら私も。」
「へえ、 僕も工房に行く予定だから一緒に行かない?」
「 別に構わないが闘技場じゃなくていいのか?」
「 そっちも後で行くよ。」
そんな会話をしていたら後ろから話しかけられた。
「ねえ、 私も一緒に行っていい?」
3人が振り向くとそこには小柄で赤毛の少女がこっちを見ていた。
「いいよ。 ところで君は?」
「私は明智英美。エイミィって呼んで。」
彼女は笑顔でそう言ってきた。
「俺は真田和樹。和樹でいいよ、エイミィ。」
「私は工藤リーナ。リーナでいいわ、エイミィ。」
「僕は十三束鋼。よろしく、明智さん。」
「エイミィ」
「え?」
「エイミィって呼んでって言ったじゃん。」
「 明智さんじゃダメかな?」
「エイミィ」
「えっと…」
鋼が俺を見てきた。
「エイミィ。慣れるまでは明智さんでいいんじゃないかな。リーナも工藤さんって言われてるし、とりあえずってことで…」
「む~わかった。 でもいつか必ず呼んでもらうから。」
その後俺達は工房へ向かった。