鮮やかな夕日が沈み、太平洋は静寂の闇夜に包まれた。ここ南太平洋のソロモン諸島海域も同じだ。そこを航行するQFOP 第3艦隊はオーストラリア海軍と共同作戦を図るべく暗闇を進んでいたが...。
南太平洋 ソロモン諸島海域
QFOP 第3艦隊 第4護衛駆逐戦隊
陽炎型駆逐艦 陽炎
CIC
ソナー妖精「敵魚雷、10時の方向❗️向かってくる‼️」
艦橋
陽炎(艦娘)「了解❗️対雷撃爆雷を食わせなさいッ‼️」
CICからの一報を受け、駆逐艦 陽炎は艦後方にあるRBU-6000(ロシア(旧ソ連)製の対潜迫撃砲)から対魚雷の防御用爆雷を発射する。航行する魚雷の前に散布された爆雷が雨あられと広がり爆発、水柱を上げる。迎撃成功だ。
ソナー妖精「命中❗️迎撃成功です‼️」
陽炎「ヘッドフォン外さないでソナー手❗️陽炎より不知火へ、敵潜を捉えたッ⁉️」
同戦隊所属 同型駆逐艦 不知火
艦橋
不知火「いえ、こっちのソナーにはかからなかったです。」
陽炎「黒潮、そっちは❓」
同戦隊所属 同型駆逐艦 黒潮
艦橋
黒潮「ダメや、こんだけ撃ってきてるのに捕まえられへん。」
第3艦隊は深海棲艦潜水艦の※群狼戦術に遭っていた。(※第二次大戦中にドイツ海軍のカール・デーニッツ元帥によって考案された複数の潜水艦による多方向攻撃戦術。)しかもその相手はソナーに引っかからないと来ている。
黒潮「アクティブ打ったらどうや❓」
陽炎「ダメよ、私達どころか艦隊全艦の位置を晒すわ。」
黒潮は自ら音を発して敵潜を探知するアクティブ・ソナーの使用を具申するも却下される。既に攻撃を受けているこの状況なら使ってもいい筈だが、艦隊全艦が標的になったりされても困るしなにより今戦っている相手だけでなく他の敵潜まで呼び寄せかねない。
同艦隊 第3空母戦隊
総旗艦兼戦隊旗艦 雲龍型航空母艦 雲龍
CDC(戦闘指揮センター)
通信妖精「艦長、第4護駆(ごく)戦隊旗艦 陽炎より入電、"我、敵潜ノ攻撃ヲ受ケ迎撃スルモ探知デキズ。"です。」
雲龍(艦娘)「陽炎さん達でも探知できない敵...厄介ね。」
雲龍型姉妹と長女で「雲のように掴み所がない」ことで知られている雲龍もこの状況をおかしいと感じていた。※前世において潜水艦に沈められている彼女だから尚更だ。
(※雲龍は1944年 12月19日に"人間爆弾"として知られている特攻機の"桜花"の輸送中にバラオ級潜水艦 SS-395 レッドフィッシュの雷撃を受け撃沈された。)
雲龍「通信、前衛を航行する第5ミサイル巡洋駆逐戦隊 旗艦ミンスクに伝えてください。「敵潜未ダ探知セズ、ソシテ迎撃デキズ。注意サレタシ。」と。」
第5ミサイル巡洋駆逐戦隊
旗艦 キエフ級重航空巡洋艦(軽空母) CVL-117 ミンスク
艦橋
通信士「了解。艦長、総旗艦から敵潜は未だ捉えられずだと。」
艦長 ヨハン・バローン・マーリニキィ大佐「厄介だね、歴戦の彼女達でも捉えられない相手なんてね...。」
小柄で愛くるしい童顔が目を引き、家が元貴族のヨハン大佐はかつてのソビエト連邦海軍の威信を見せ、近代化され今尚その威容を示しているキエフ級重航空巡洋艦 2番艦 ミンスクの艦長で別名"ミンスクの小貴族"と呼ばれている。雲龍からの通信を聞き困った表情を見せるが、その童顔さとは裏腹にその表情はキリッとしている。
ヨハン「(陽炎さん達の前に出てきたのだけじゃない筈...相手は"群狼"、海の狼の群れだ。こんな美味しそうな獲物の前で舌なめずりをしない訳がなければ逃すつもりもないだろうから次はさらに一斉に掛かってくるはず...。)」
ヨハンは考えを巡らせる。深海棲艦がこんな大艦隊を野放しにする筈はないと。
CIC(戦闘情報センター)
ソナー手「ッ❗️ソナーに感ッ❗️方位-0-0-2に潜水艦ッ❗️感1ッ‼️」
CICのソナー手が潜水艦を捕らえた。パラメーターは深海棲艦の物と一致した。数は1隻、ほぼ真正面の位置だ。直ぐに戦術行動士官が艦橋にいる艦長に伝える。「他にはいないか❓」と聞かれたのとほぼ同時に方位2-7-3と0-8-7にも潜水艦が現れた。ヨハンの予感通り敵潜はいた、しかも3隻が真正面と左右にそれぞれ一隻ずつ陣取ってる。「頭を押さえる気だ」と艦長が確信した時、左右の敵潜が同時に魚雷の発射管を開けて雷撃してきた。「雷撃ッ❗️魚雷左右から2本ずつ計4発‼️」と叫ぶソナー手、戦術士官は直ちに艦長に「戦闘配置」を告げると了承して直ぐに迎撃を行う。両舷にあるRBU-6000が対雷撃爆雷を撒き同時に三連装短魚雷から対潜魚雷を放たれる。
ソナー手「敵魚雷迎撃成功❗️本艦の短魚雷、真っ直ぐ航行中...あぁッ❗️真正面の敵潜から雷撃ッ‼️」
艦橋
ヨハン「しまった❗️左右の雷撃は囮だッ‼️」
ヨハンの言う通りだった。こちらの対潜兵装を使わせて装填している隙を狙ったの雷撃だった。
CIC
戦術行動士官「対潜迫撃砲の装填はッ⁉️」
対潜兵装発射担当官「ダメですッ❗️間に合いませんッ‼️」
ソナー手「正面魚雷❗️直撃コース❗️命中まであと5秒ッ‼️」
戦術行動士官「艦長ッ❗️迎撃できませんッ‼️」
艦橋
ヨハン「総員衝撃に備えてッ‼️」
艦長が皆にそう叫んだ直後、ミンスク乗員の悲鳴や呻きが掻き消される程の衝撃が走った。
今回のお話で「トライデント作戦」に参加する全ての艦隊の話が出てきました。三方向作戦の一番下、ソロモン海方面を侵攻する第3艦隊は総旗艦を空母 雲龍が努めます。雲龍は史実だと実戦未経験ですが、転載してQFOP提督の下で戦ったお陰で現在では練度もそれなりに持ち艦隊の指揮も執れるくらいにまでなっています。
ミンスクは現実では中国でテーマパークとなった後、現在は空母展示公演となる予定で別の場所に係留されていますが、ここでは提督がなんらかの方法を使って入手し補修、近代化した後にQFOPに配備された事になっています。艦長のヨハンはオリキャラで、次回でも第5ミサイル巡洋駆逐戦隊の他の艦艇のオリキャラも出てくるのでお楽しみに。