艦これ Modern Record   作:箕理 田米李

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敵潜水艦隊に翻弄され追い詰められた重航空巡洋艦 ミンスク、僚艦の支援と救援に事なきを得たが既に死に体同然にされてしまい艦長 ヨハンは退艦を命じます。直後爆発に呑まれたミンスク、果たしてヨハン達の安否はいかに❓


記録21「気になる報告」

中国海軍空母機動部隊の救助を終えたQFOP 第1艦隊は佐世保基地から来た艦隊と合流し、救助した中国海軍の乗員達の引渡しと補給を行なっていた。

 

とわだ型補給艦 AOE-424 はまな

甲板上

空母「遼寧」艦長「この度は救助の手を差し伸べてもらった事を改めて感謝致します。」

提督「いえ、海軍軍人しいては船乗りとして当然の事をしたまでです。頭をお上げください。」

補給艦 はまなの艦上で沈んだ中国空母「遼寧」の艦長は深々とQFOP提督に頭を下げ感謝を述べる。見たところ30代後半と言ったところだろうか、若い艦長だ。しかも礼儀正しい事に提督は少し意外性を感じている。

「遼寧」艦長「いえ、今現在の私の国は国連に従わず貴方達と敵対している関係。さらにそちらからすれば作戦行動を妨害してきた存在、そんな我々を助ける義理などないはずでしょう。」

提督「国と関係性がどうであれ、同じ船乗りそして人間です。見て見ぬふりなどできなかっただけです。」

遼寧の艦長は提督の寛大な言葉と姿勢そして海軍軍人精神に感銘を受けたのか、ハッとしてしばらく言葉を失った。

「遼寧」艦長「なんと寛大なお言葉、貴方程の軍人が果たして今の我が中国にどれほどいるでしょうか...貴方とお会いできて良かった。機会があればまたお会いしましょう。今度は戦場ではなく、もっと静かな場所で...。」

そう言い敬礼をすると提督も敬礼を返す。

「遼寧」艦長「再見(ツァイツェン:中国語で「また会おう」という意)❗️」

QFOP 第1艦隊

総旗艦 装甲空母 大鳳

艦橋

先任妖精「提督入られます。」

提督は自身の座乗艦に戻り艦橋へと上がる。先任妖精に敬礼を送った後、ネイビーレッドを手に通話する大鳳の下に寄る。

大鳳「あ、提督。丁度よかったわ。」

提督「どうした❓浮かない顔だな。」

大鳳「第3艦隊の雲龍さんから...。」

提督「なにかあったのか❓」

大鳳「ミンスクが沈んだそうです。」

それを聞いた提督は表情を変えなかったが、内心は驚きとミンスク艦長 ヨハンを含む乗員達の安否の心配で一杯だった。

 

第3艦隊

第5ミサイル巡洋駆逐戦隊

旗艦(臨時)キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦

CGN-092 アドミラル・ウシャコフ

ヘリ格納庫

ヨハン「Dr.(ドク)、もっと良い治療はできないか❓」

ミンスク付きDr.「すみません今は氷で冷やすくらいしか、持ち出せた医療品は僅かでウシャコフからの分を合わせてもこの負傷者の数ではとても足りません。」

ウシャコフのヘリ格納庫は負傷し救助されたミンスクの乗員とそれの手当てに当たる手空き要員で一杯だった。その中にいる者の表情は艦と戦友の喪失による悲しみに支配されている。束の間の休息を得ている者、必死に手当てを行い負傷した戦友に声を掛け励ます者、手は尽くしたものの亡くなる者など様々だった。ヨハンはそんな中を乗員達に側に寄り添い部下を勇気元気付けている。艦と仲間を失った悲しみは皆と同じながら今はじっと耐え目の前の現状を乗り越えようとしている。

ヨハン「今他の艦からから運ばせてる。それまでの間は頼むよ。」

ミンスク付きDr.「最善を尽くします。」

装甲空母 大鳳

艦橋

アレクサンドラ(通信)「という感じで、今ヨハンは乗員達の側にいます提督。」

提督「今のヨハンにはその方が良いな。伝えてくれてありがとう"サーシャ"。」

アレクサンドラ(通信)「いえ、私が今の彼にできるのはこれくらいですから。」

提督「そうだろうね。ミンスクを失ったのは辛いよ、私も思い入れのある艦だからね。いや、今一番辛いのは彼と乗員達の方だな...。」

アレクサンドラ(通信)「そうですね...。」

提督「サーシャ、そういえば何か報告があるんだったよね❓」

アレクサンドラ(通信)「はい、私達が接敵した敵潜水艦隊の交戦記録です。気になるデータが取れましたので提督にも是非目を通していただきたく。」

そう言い、提督の座席のディスプレイにデータが送られてくる。それを見た提督は眉間にシワを寄せる。

提督「これは...確かに気になるデータだね。ありがとうこちらで今後の対応を検討する。この件はくれぐれも内密にな。」

アレクサンドラ(通信)「ダー。」

そう言い通信を終える2人。「ふーっ...」と息を吐いて体をシートにグタッと倒しすぐ起き上がると大鳳に言う。

提督「大鳳、多田部を呼んで一緒に士官室に来てくれ。」

大鳳「え❓わ、分かったわ。」

少し困惑した顔をして大鳳は艦内無線で多田部を呼び出した後、艦の指揮を副長に預け提督と共に艦橋を降りる。深刻な顔をして廊下を歩く提督に大鳳は質問する。

大鳳「提督、一体何を話すの❓」

提督「今後の私達の作戦に、いや世界に影響するかもしれない事案さ。」

そう答えた提督の発言の真意をまだ大鳳は理解できずにいたのだった。




沈められた中国空母"遼寧"の艦長を若く設定したのは「中国が国連に与せず独自に戦った結果、人材育成が追いつかず人員不足になったが故のもの」です。ここでは遼寧の艦長のみにスポットが当たっていますが、他の救助された艦の乗員達はさらに若いです。いくら人口の多い中国でも直ぐには一丁前の船乗りは生み出せないですからね。
オリキャラであるヨハンとサーシャ"アレクサンドラの愛称)の人間性を少し描きました。ミンスクを失って辛いヨハンはそれでも乗員達の側に寄り添い励まし、それに気を遣って代わりに提督に報告するサーシャと言った感じです。サーシャから送られたデータに提督の顔が代わり、大鳳と多田部を連れ次回から話がまた一歩前進します。

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