艦これ Modern Record   作:箕理 田米李

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怪しい臭いがプンプンする青島基地の潜入を命じられたオセロットは正体がバレそうになったものの、スパイ仲間のEVAに助けられ施設を案内される。そこで彼が目にしたものとは......❓


記録25「大胆不敵なスニーキング 後編」

中国 青島海軍基地(北海艦隊司令部)

地下施設

 

オセロット「こ、これは...❓」

オセロットは驚きのあまり体が固まった。眼前に広がっていたのは広大な地下空間だった。

EVA「ここは中国が海洋進出の野望を果たす為に生まれた闇。経済発展と深海棲艦との繋がりで生み出された"特異点"と言っても良い場所よ。」

しばらく歩いて辺りを見回す。自分が歩く橋の下には4〜5隻ほど建造中の艦艇がドックに腰を据えている。オセロットはここが艦艇建造ドックだという事を理解した。

オセロット「凄いな...見渡す限りどれもこれも最新鋭艦や新型ばかりだ。」

オセロットの目に止まったのはほぼ完成状態にある江凱Ⅱ型や旅洋Ⅲ型、そしてまだ形だけの状態の旅洋Ⅲ型を大型化させ空母 遼寧を発展させたであろう新型ミサイル巡洋艦と新型空母だった。

EVA「055型ミサイル駆逐艦と山東型航空母艦よ。」

オセロット「あのサイズで※"駆逐艦"か、性能はどうであれ大した艦だな。」

(※現代の艦種の基準はとても曖昧である為、その軍艦を所有する国が「駆逐艦」と言えばそうなってしまう。)

オセロットは驚きを隠せない表情で引き続きドックの光景を見渡していると前から2人組が歩いてくる。

EVA「私に合わせて喋ってちょうだい。」

オセロット「了解だ。」

2人組の前に立ち止まり敬礼を交わすEVAとオセロット。

EVA「チャン上将❗️」

そうEVAが挨拶したのはこの青島基地司令のチャン・ウェイ海軍上将だ。

チャン・ウェイ海軍上将「やぁハンナ君。調子はどうかね❓」

EVA「はっ❗️変わりなくであります。」

チャン「うむ、ところでそちらの将校は❓見ない顔だな。」

EVA「私の同期です。今日着任してきまして、基地を案内している所です。」

オセロット「ミカミ小校であります。」

チャン「ほぉ〜そうかそうか、どうだいこのドックは素晴らしかろう❓」

オセロット「は、常時驚きを隠せないであります。」

チャン「うむ、じっくり見物するといい。まだまだ驚くぞ。私はこれから客人と話があるからこれで失礼するよ。」

オセロットとEVAは再び敬礼を送るとチャンとその後ろにいたローブを被った人が過ぎて行った。殆ど顔は見えなかったが、オセロットは違和感を覚えた。「こいつもしかして...」と。人とは思えぬ白い肌、身に纏った人間ではない雰囲気を感じEVAに尋ねる。

オセロット「おいさっきのって。」

EVA「思ってる通り、"深海棲艦"よ。」

オセロット「なんてこった。提督達の疑念は本当か...❗️」

オセロットの感は正しかった。

EVA「チャン上将は中国海軍の現在のトップで「抗戦派」のリーダー的立ち位置にいる人物よ。」

オセロット「そんな大物と話をする深海棲艦もよほどの奴ってわけか❓」

EVA「恐らく、残念だけど私でもそこは探れなかったわ。「中国籍タンカー連続失踪事件」って覚えてる❓」

オセロット「あぁ、それと関係が❓」

EVA「そこで得た戦略資源はここに集められているの。島の占領の見返りとしてね。」

オセロット「その資源で新鋭艦をこんなに...。」

提督達の疑念は正しかった事が明らかになったが、事を聞いたオセロット本人としては気分は良くない。

オセロット「もし提督達が尖閣諸島を占領したらどうなる❓」

EVA「資源の供給が止まってここと立ち行かなくなると思う。最近シフトが倍になった所を見ると焦ってるように思うわ。」

オセロット「よし、そうと分かればいい。後はここの情報を取れるだけ取って退散するとしよう。」

EVA「いいわ、協力するわよ。」

そういうとポケットから補聴器の様な物を手渡されるオセロット。

オセロット「インカムか。」

EVA「あった方がいいでしょ❓じゃあまた後で。」

2人は自然な流れにサラッと分かれた。

オセロット「(さぁ〜てと、まずは片っ端からここを撮っていくとするかな。)」

オセロットは眼鏡の縁にあるスイッチを押す。すると外で待機していたトリィーのパソコンに映像が映し出される。

 

トリィー「お、映像が出た❗️心配したよ同志。」

 

オセロット「すまない、ヤバくなりかけたが今は平気だ。アディ、ドゥーそっちは変わりないか❓」

 

アディータ「大丈夫だよ同志。」

 

ドゥーヴァ「変化ないよ同志。」

 

オセロット「よし、今いるところの調査にまだしばらくかかる。アディとドゥーは監視を、トリィーは記録を続けてくれ。」

 

アディータ、ドゥーヴァ、トリィー「ダーッ❗️」

 

オセロットは眼鏡に仕込まれたカメラでドック内を録画をする。少し視線を外したその先にはチャン上将と先の深海棲艦が話している姿が目に映る。「後を会おう」と静かに遠くから尾行し始める。少し歩いてその内、2人は部屋に入った。「応接室」と中国語で書かれている。

オセロット「(何かヒソヒソ話する気だな❓)」

オセロットは応接室の前に立ち、ドアノブを捻ろうとしたその時だった。

警備兵「小校殿❓」

オセロットはドアノブを捻る手を止めた。警備兵に声を掛けられたのだ。ドアノブから手を離し警備兵の方へ顔を向かせる。「尾行がバレたか❓」と思うオセロット。しかし...

警備兵「そちらの応接室はただいま上将閣下が使用なさっております。」

オセロット「あぁ、そうだったのか。教えてくれてありがとう。」

警備兵「いえいえ。」

どうやら中に人がいると注意しただけでバレたわけではなかったようだ。そのまま立ち去るオセロット、だが部屋に入らなかった事を悔しがる表情はしていない。オセロットは眼鏡の蓋にあるスイッチを操作し、何かの機能を起動させる。

 

(音声)

[チャン「さぁて今日は何から話しましょうか❓」]

 

オセロット「(よし、上手く仕込めて聴こえてるな。)」

ドアノブに触れた時に指に小型の指向性集音マイクを仕込んでいたのだ。音量を上げてさらに聞き耳を立てる。深海棲艦の方も喋っているが未だに彼らの言語を解読できないでいる為、何を喋っているのかは分からない。

 

(音声)

[チャン「いえいえ、見返りは十分です。感謝しきれませんよ。海軍の発言力を高める為でしたら機動部隊の一つや二つ軽いものですよ。ハハハ...。、」]

 

オセロット「(クソッ❗️最初から沈めるつもりでやったってのか⁉️でも変だな、もうすぐ提督達が占領するかしないかって所まで来てるのにこの余裕はなんだ❓)」

尖閣諸島の奪還など最初から考えていなかったのを耳にし、オセロットは心中で怒りを露わにするのと同時に妙な余裕ぶりを見せるちゃんに疑問を抱く。

 

(音声)

[チャン「沈んだ艦は貴女方のお好きに、お陰で老朽艦の処分の手間が省けたというものです。互いの利益の為にこれからも協力を惜しみませんよ。」]

オセロット「(沈んだ艦をお好きにだと...❓一体どういうことだ❓」

意味深な発言を聞いたオセロットだが、考えを巡らせる前に耳につけたインカムから通信が入る。EVAからだ。

EVA(インカム通信)「聞こえる❓」

オセロット「あぁ、良い"盗み聞き"ができた。そっちは❓」

EVA(インカム通信)「深海棲艦とのやりとりを綴ったデータのコピーを取ったわ。渡したいから合流しましょう。」

オセロット「分かった、すぐ行く。」

用が済んだ2人は合流すべく最初に降りたエレベーターの前で落ち合う為歩みを進める。エレベーターに着き、中に入って上に階のボタンを押す。

EVA「どうだった❓

オセロット「お前の言った通りだったよ。ここも含め海軍部内は"真っ黒"だ。それと気になる事を聞いた。」

EVA「気になる事❓」

オセロット「チャンの奴は「沈めた艦の後はお好きに」と言った。これはあくまで推測だが、深海棲艦への技術供与かなにかなのか❓」

EVA「さぁ、上校の階級をもってしてもアクセスできる情報は限られててね。調べられなかったわ。」

オセロット「そうか、だがかなりの情報は取れた。提督達が尖閣を攻撃する時間も迫ってるし早くこの情報を届けないと。」

EVA「なら手伝ってあげるわ。」

そう言うとEVAは襟からリモコンを取り出してスイッチを押す。突如"ビーッ❗️ビーッ❗️ビーッ❗️"と警報が鳴り響き始めた。同時にエレベーターも目的の階に着き、オセロットとEVAは降りる。

オセロット「警報をいじったのか❓」

EVA「それだけじゃないわよ❓」

もう一度スイッチを押すと、外から"ボンッ❗️"という爆発音がして建物の明かりが消えた。

EVA「配電盤にも仕掛けをしておいたの。この暗さと混乱に紛れれば逃げれるわ。さぁ早く❗️」

オセロット「お前はどうするんだ❓」

EVA「まだ私はハンナ上校として振舞わなくちゃいけないの。あ、これ渡すわね。」

オセロットに放り投げたのはフラッシュメモリだ。

EVA「さっき言ってた中国海軍と深海棲艦との繋がりに関するデータよ。」

オセロット「助かる。」

EVA「礼ならまた会った時にね。じゃあ気をつけて。」

オセロット「お前もな。」

そう言って2人は互いに無事を言い合うと暗闇と右往左往する人々の中に溶け込み消えていった。EVAの読み通り基地の混乱ぶりを利用して脱出できたオセロットはサルダート三姉妹に撤収を命じる。「急に連絡がなくなったら基地が暗くなったりで大丈夫だった❓」と心配されたものの「事情は後で」と落ち着かせ、オセロット達は中国の街の中へと消えた。

後日、この青島基地の停電は「配電盤の漏電」という形で処理されたとニュースで報じられたのをオセロット達は後で知った。




青島基地の地下にあったのは巨大な艦艇建造ドックでした。モデルは「宇宙戦艦ヤマト2202/愛の戦士たち」の「時間断層」です。新型艦(055型と山東型)の建造、※チャン上将(BF4からの出演)と深海棲艦の密室外交、中国海軍と深海棲艦との繋がりとかなり黒いものが出てきましたね。
色んな情報を持ち帰る事ができたオセロットとサルダート三姉妹、果たしてこの情報が今後の物語の展開にどう影響を及ぼすのか❓次回をお楽しみに❗️

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