艦これ Modern Record   作:箕理 田米李

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トマホークと空母航空隊による対地攻撃で始まった尖閣諸島攻略戦。防御の硬い飛行場姫の攻略に苦戦したり停泊している筈の戦艦棲姫の姿が見えなかったりと順調のようで手間取る相手に悩まされています。
そんな中、島に接近し艦砲射撃を加えようとするヒマラヤや大和らの前に突如として消えていた戦艦棲姫が海中から出現し...。


記録27「尖閣諸島攻略戦 中編」

尖閣諸島攻略を開始したQFOP第1艦隊。トマホーク巡航ミサイルと空母航空隊の攻撃は成功したものの魚釣島の飛行場姫は健在、加えて戦艦棲姫のLOSTと不安要素が見られる展開となった。そして今、その戦艦棲姫が第1戦闘空母打撃群前方に水柱を高らかと上げ海中より姿を現したのだった。

 

QFOP 第1艦隊

第1戦闘空母打撃群

旗艦 戦闘空母 ヒマラヤ

CIC

レーダー手「戦艦棲姫です❗️海中より現れましたッ‼️」

倉田「なんてこった❗️CICより艦橋❗️戦艦棲姫、海中より出現‼️真正面です‼️」

 

艦橋

滝澤「なんですってッ⁉️」

提督「またまた派手かつ大胆で驚きなご登場だな。」

思わず声に出して驚く滝澤と冷静に状況を飲み込む提督。

 

CIC

レーダー手「戦艦棲姫、反応2ッ❗️」

レーダー手が続けて報告する。

レーダー手「後続に重巡ネ級1、軽巡ツ級1、駆逐ニ級2、戦艦棲姫の背後に浮上し続いています‼️」

 

艦橋

提督「(たぶん奴(やっこ)さん(戦艦棲姫)は前に大和、武蔵とやり合った艦だな。お供を引き連れてリベンジマッチと来たのか❓)」

提督の読みは恐らく正解だろう。戦艦棲姫は尖閣諸島に戻り態勢を立て直して今眼前に迫って来ている。

 

CIC

倉田「ッ❗️戦艦棲姫、発砲ッ‼️」

 

艦橋

滝澤「戦術❗️狙いはこっちッ⁉️」

 

CIC

倉田「いえ❗️本艦隊の頭上を超え、大和と武蔵の方に向かいます‼️」

狙いは大和と武蔵だった。明らかに彼女達への「復讐(リベンジ)という意思表示を込めた一撃だ。この砲撃は距離があった為か、至近弾で水柱を上げただけで大和、武蔵とも損害は皆無であった。

 

艦橋

提督「(深海棲艦が"復讐心"や"執念"の様な感情で動いている❓今までになかった事だな。)」

これまで深海棲艦が「情に動く」という所を初めて見た提督は思う。しかしあまり深く考えている余裕はない様だ。戦艦棲姫艦隊をどうにかしなければ魚釣島で未だ健在の飛行場姫を叩く事ができない。だが、戦艦棲姫に対抗できる火力を持っているのは大和と武蔵だけ。戦艦棲姫が彼女達への復讐(リベンジ)に燃えているのだとしたら、彼女達が囮となってもついてくるだろう。しかしその場合は飛行場姫に大打撃を与えられる46㎝の強力なハードパンチが無くなるという事だ。「大和と武蔵に戦艦棲姫を引き付けて貰う」か「戦艦棲姫艦隊を相手し航空隊と連携で損害を与えて振り切る」か「無視して強引に押し通る」かの三択が提督の脳裏に浮かぶ。

通信士「艦長❗️提督❗️大和から通信ッ‼️」

提督が決断をする前に大和からの通信があると通信士が伝える。滝澤は提督の方を見る。提督は頷くと滝澤は「繋いで」と言う。艦橋のパネルに大和の姿が映し出される。

大和(映像通信)「提督❗️敵の狙いは私と武蔵です。私達で引き受けます❗️」

提督が考えを出す前に大和は「自身が盾となる」と進言して来た。

武蔵(映像通信)「私からもお願いする。」

武蔵も画面を2分割して映像通信に割り込み提督に進言する。

提督「分かった、でも2隻だけでは行かせれない。第3巡洋駆逐戦隊から阿賀野、矢矧、磯風、浜風を連れて行け。」

大和、武蔵(映像通信)「はっ❗️」

そういって映像を切る2人。相手も6隻ならこちらも6隻ぶつける。戦力の分散は愚策であるが、敵が大和と武蔵を罠に嵌める為に艦隊から引き剥がそうとしたりさらなる増援を掛けてくる可能性もある為その保険も兼ねてだ。大和、武蔵そして軽巡 阿賀野 矢矧と駆逐艦 磯風、浜風が艦隊から離れていくのをパネルに投影されたレーダースクリーンで確認する提督と滝澤は皆の無事を祈る。その後に第1戦闘空母打撃群上空を轟音が突き抜ける。第1艦隊待機組みの航空隊第三及び四派とトマホーク第四から六派だ。「まもなく魚釣島近海❗️」とヒマラヤのCICにいるレーダー手が報告する。

提督「いよいよだな。艦長、艦隊陣形変更。単縦陣に移行、艦砲射撃用意を下令。」

滝澤「了解しました。ヒマラヤより全艦、陣形を単縦陣に移行。艦砲射撃用意❗️繰り返す陣形を単縦陣に、艦砲射撃用意❗️」

艦長の号令に一斉に艦が単縦陣への移行へと動き出す。各艦の砲塔という砲塔の砲身という砲身の砲門という砲門が魚釣島に向く。「各艦、射撃用意よし❗️」がヒマラヤのCICにいる戦術士官 倉田が艦橋に報告する。

提督「艦砲射撃始めッ❗️」

滝澤「撃ちー方始めッ❗️」

先頭のヒマラヤを皮切りに後続の艦の砲門が火を噴く。放たれた砲弾は大きく弧を描き飛行場姫の分厚い障壁に当たり信管が作動、爆発する。

ヒマラヤ CIC レーダー手「命中しました。」

倉田「間髪入れるな❗️"ヴォルカノ"続けて撃てッ‼️」

次々と放たれる砲弾の正体は衛星測位システムによる誘導で目標に向かい、最終的にGPS信号を受信しつつ着弾する射程延伸誘導砲弾。それが「ヴォルカノ」だ。ある軍事関係者は「これはもはや砲弾ではない、ミサイルだ。」と評している。通常の艦砲射撃なら風や重力等の影響を受け大きく誤差が出てしまうのだが、この"ヴォルカノ"はその誤差が少ないのでほぼピンポイントで目標に着弾する為に無駄が出ない。第三者が見ていたら気持ちいいくらいに全弾が飛行場姫に着弾していく。しかし......。

滝澤「ラヤ、飛行場姫の障壁は❓」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「過去のデータから採算して47%消耗させたと思わせます。」

「厳しい数字だ」と提督と滝澤は思う。大和と武蔵が抜けた今現在、46㎝の次に大きい口径の砲は20.3㎝連装砲でそれを搭載しているのは戦闘空母 ヒマラヤと航巡 最上と三隈だけだ。トマホークを絶えず発射し続けて47%の消耗、陸上型深海棲艦の耐久力の高さの表れである。

滝澤「やはり大和と武蔵が抜けた穴が大きいですね。」

提督「あぁ、見事奴等の作戦通りになってしまっているな。敵ながら見事だよ...。」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「お父様、敵を褒めるのは何か意味がある事なのでしょうか❓」

「敵対してる相手を褒める」言動に対し、なぜその様な事を言うのかを疑問に思い質問するヒマラヤ。

提督「"意味"というと難しいな...私だって敵がやり手なら尊敬の念だって抱く、いや抱いてしまう...といえば良いのかな❓ラヤもその内分かるようになるさ。」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「......❓了解しました。データログに記録します。」

小首を傾げつつヒマラヤは「敵ながら見事」を記録する。人工知能の彼女はまだ意味を理解できない。しかしいずれ理解したいからと記録したと提督と滝澤は思った。

 

ヒマラヤ CIC

20.3㎝連装砲担当砲手「クソッ❗️なんて堅物だ‼️」

ヒマラヤのCICにいる20.3㎝連装砲の砲手が飛行場姫の耐久性の高さにイラつき毒づく。

倉田「落ち着け、ダメージは与えてる。」

それを宥める様に言う倉田。こう言っているが倉田本人もイラつくというか焦っている。弾薬には限りがある為、長引くと厄介だからだ。

倉田「さらに近づいたら通常弾に切り替えろ。ヴォルカノは高価だからな。」

20.3連装砲担当砲手「了、新三式弾切り替え用意します。」

無誘導の通常弾と違い、誘導装置の入った「ヴォルカノ」はミサイルと同じくらい高価な兵器だ。搭載数も少ないので多くは撃てないし、補給するのも大変だからだ。

 

艦橋

ヒマラヤ(擬似艦娘)「...❓」

滝澤「ラヤ、どうかした❓」

擬似艦娘 ヒマラヤの顔に疑問の表情が浮かんだのを察知し尋ねる滝澤。

ヒマラヤ「海中に音...生き物じゃ...ない。」

 

CIC

ソナー手「左舷前方より高速推進音ッ❗️魚雷ですッ‼️」

倉田「何だってッ⁉️」

ヒマラヤが海中に異音を探知したのと同時にソナー手が魚雷の反応を捉え叫ぶ。

ソナー手「包囲2-8-7、直撃コース❗️回避不能ッ‼️」

倉田「CICより艦橋ッ❗️敵魚雷接...。」

魚雷接近の報を伝えようとする倉田だったが、その声は着弾音と衝撃に飲み込まれ掻き消された。




海中より現れた戦艦棲姫の対処に大和、武蔵と他が駆り出され対地火力が低くなってしまった艦砲射撃組。上手いこと敵の策に乗せられてしまったようです。「深海棲艦にも執念があるのか❓」という疑問も出てきましたね。未だ謎が多い深海棲艦、時と物語が経てば見えてくるのでしょうか❓
艦砲射撃で出てきた射程延伸弾「ヴォルカノ」は「空母いぶき」にも出てきましたね。解説の所はオマージュです。ピンポイントに命中してはいるもののやはり大和と武蔵が抜けた穴がデカく大打撃にはなってないようです。
ヒマラヤが海中の異音を察知しているのは、彼女が艦の全てのシステムを管理しているAIだからできる事です。人が操作してはいるもののバックアップも兼ねてヒマラヤも耳を澄ましたりなんなりしています。

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