艦これ Modern Record   作:箕理 田米李

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中国海軍新鋭空母機動部隊と戦闘に入ってしまうQFOP第1艦隊、空襲をなんとか凌いだが損害も出てしまう。そんな中、戦闘空母ヒマラヤの擬似艦娘が妙な事を言いだす。


記録32「Chinese Norman's Freet」

QFOP第1艦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

提督「君も洒落た言い回しができる様になったラヤ。なるほど、ではあの艦載機達はどうだ❓」

それは突然で奇妙な報せだった。戦闘空母 ヒマラヤの擬似艦娘であるヒマラヤが言った「あの(中国)艦隊の艦艇に意思が通っていない」と。AIシステムにしてはえらくハッキリしない言い分だ。その事を説明する様にヒマラヤは答える。

ヒマラヤ(擬似艦娘)「いえ、あの攻撃隊の航空機とその母艦である空母そして潜水艦には意志を感じます。しかし他は違います。」

提督「... ...一尉、同じ考えか❓」

多田部「えぇ提督、でも貴方の方がそう思ったのが早かったでしょう❓」

提督と多田部は既にヒマラヤの言葉の意味を理解していたようだが、大鳳はまだ答えが出ていないようだ。

大鳳「提督、一尉ごめんなさい。つまりどういう事なの❓」

今一度考えを巡らせてみたもののやっぱり答えが出てこない大鳳は提督と多田部に質問する。

提督「奴らの艦隊は空母と潜水艦以外は無人艦だってことさ。」

大鳳はハッとして驚いて開いた口を両手で覆う。「無人艦」はその言葉の通り人が乗っていない軍艦の事だ。この手の物はSFのそれこそ「宇宙戦艦ヤ○ト」や「エ○ァンゲリヲン」等の世界の話だと思う人もいるだろうが、実際は「正解であり不正解でもある」と言った感じだ。というのもアメリカ海軍では"シー・ハンター"と呼ばれる実験型の無人艇が開発されている。将来は対潜水艦及び機雷戦を担うとされているが、今はまだ巡視任務程度にしか使えない試作実験機に過ぎない。現状がこんな感じである為、艦艇の無人化は航空機や車輌ほどは進んでいない。それを中国がアメリカよりも早くしかも主力戦闘艦艇に行ったとすればその技術力には目を見張る物があると言わざるを得ない。

ヒマラヤ「敵艦隊の通信を解析した所、UAV(無人航空機)を操作する際に使用する周波数の電波を旗艦の空母から送信、護衛の艦艇が受信している事が分かりました。」

提督「さすが私の娘と言った所だ。良くやったぞ。」

提督に自身の解析を褒められ頬を赤くするヒマラヤ。

多田部「え〜っと、心配性の私から一つ提案。結論づける前にもう少し証拠集めした方が良いんじゃないかな❓と。」

多田部が言う事も最もだ。ヒマラヤの集めたデータでも充分確証がある物は揃ってはいるものの、やはり「これだ間違いない❗️」という決定的な証拠が欲しい。

ヒマラヤ「仰る通りです。確証が欲しい所です。」

大鳳「でもどうやって❓」

皆がどう相手を無人艦と証明するかどうか考えを巡らす為沈黙する。

多田部「... ...❗️提督、あれ使えないか❓ほらあのえ〜っと潜水艦に装備させた"特殊兵装"のやつ。」

提督「うん、良いアイデアだ一尉。大鳳、一番敵艦隊に近い潜水戦隊は❓」

大鳳「第3と第4です。」

提督「至急連絡をつけてくれ。」

 

中国新鋭空母機動部隊が航行中の海域

第3潜水戦隊

旗艦 シーウルフ級攻撃型原子力潜水艦 SSN-24 キング

発令所

副長「艦長、大鳳座乗の提督から。」

ノーマン・キング・ベイツ(艦長)「ふっ、さすが我らの提督だな副長。」

副長「は❓」

シーウルフ級原潜"キング"艦長のノーマン・キング・ベイツ大佐は副長から手渡された通信の内容を読み提督を称賛する。しかし内容を先に艦長に見せる為に読まなかった副長は艦長がなぜそう思ったのかは分からない。艦長は渡された電文を副長に返し読ませる。そして副長は先程の艦長の感想の意味を理解する。

副長「あの装備を使うのでありますか❓」

ノーマン・キング「あぁ、使う機会が果たして来るのかどうか分からないと少々疑問にも思っていた代物だ。」

副長「確かQFOPの研究開発班が作った物でしたな。」

ノーマン・キング「提督やオオタベの独創力や独立部隊であるQFOPでなければ出来なかっただろう。あの2人はとてもユニークだ。

よし、1番〜4番に"マルチ・スキャニング魚雷"装填。僚艦にも同魚雷装填を下令。」

副長「1番〜4番に"マルチ・スキャニング魚雷"装填及び僚艦への攻撃準備の通達了解。」

攻撃型原潜"キング"の魚雷発射管室では艦長の命により"マルチ・スキャニング魚雷"の発射準備が整え始める。魚雷がラマー(魚雷を発射管に押し出して装填する装置。いわゆる自動装填装置)に押し出され、発射管に装填され蓋を閉め注水し発射管扉が開く。

水雷長「発射準備及び解析値よし❗️」

ノーマン・キング「発射(ファイア)❗️」

艦長の号令の元、先に"キング"が放ち後から同戦隊の僚艦も次々と魚雷を放っていく。

 

中国新鋭空母機動部隊

旗艦 空母 山東

CDC(戦闘指揮センター)

ソナー手「ッ❗️ソーナー探知❗️敵魚雷数16、接近中❗️」

副長「なにっ⁉️無人艦と潜水艦は何をしていたっ⁉️」

艦隊の近くまで敵潜水艦の跳梁を許した事に憤慨する副長。無人艦が鈍いのと潜水艦の怠慢であるに違いないと思う。

リォウ「落ち着け副長。無人艦隊は本来なら実戦に出すのも早すぎなのだ。潜水艦の方も我が空母と同じく乗員達もまだ日も浅く練度は高くない連中だ。対処は可能だ、大目に見てやれ。」

警戒が甘かった事を強く咎めず、むしろ「まだ実証実験と訓練がいるがこの実戦が良いデータ収集と訓練になるから」と大目に見るよう冷静に副長を宥めるリォウ艦長だった。

リォウ「一番近いフリゲート艦607号と610号が対処させろ。」

艦隊前方で警戒に当たっている江凱II型フリゲート艦(無人艦仕様)の607号と610号が陣形を崩して前進し、魚雷に対し迎撃行動に移ろうとする。魚雷に対し舷側を向け87式対潜ロケット発射機(旧ソ連のRBU-1200対潜迫撃砲のコピー)から対魚雷散弾が発射される。海中に着水した対魚雷散弾は海中で弾けてパァーッと散弾を撒き散らし魚雷に当たってボコボコにしたあと爆発する。それとほぼ同時進行的に中国新鋭空母打撃群前衛の海中に潜むこちらも最新鋭原子力潜水艦"商型"の長征13と14の2隻が攻撃してきたQFOP潜水艦隊に向け魚雷を放つ。

 

攻撃型原潜"キング"

発令所

ソナー手「魚雷に迎撃されました。敵潜から魚雷来ます。雷数8、距離6500❗️」

副長「艦長、回避を❗️」

ノーマン・キング「慌てるな副長。」

すかさず回避行動を命じようとする副長にノーマン・キング艦長は「落ち着け」と諭す。それを他所(よそ)にソナー手から「敵魚雷迎撃、成功❗️」と言う。

副長「え...❓いつの間に...❓」

ソナー手「マスカー起動を確認、なんと素早い手際...。」

ノーマン・キング「さすがは私の"弟"だ。」

それは第4潜水戦隊による鮮やかな対魚雷迎撃行動であった。副長が回避行動を命じる前に片付けてしまった。

 

第4潜水戦隊

旗艦 シーウルフ級攻撃型原子力潜水艦 SSN-25 アレキサンダー

発令所

副長「敵魚雷迎撃成功、マスカー始動。敵潜から姿を隠せました艦長。」

ジョン・アレキサンダー・ベイツ大佐(艦長)「皆良くやった。迎撃タイム、久々のレコード更新だぞ。」

シーウルフ級攻撃型原潜"アレキサンダー"艦長"、ジョン・アレキサンダー・ベイツ大佐。ノーマン・キング・ベイツ大佐とは"兄弟"であるが、兄のキングが白い肌の欧米系に対し、弟のアレキサンダーは褐色肌を持つ南米系だ。そう、アレキサンダー艦長は政界の名門として名高いベイツ家に養子縁組で入ったベネズエラ人でキングは"義兄"に当たる。自分を受け入れてくれたベイツ家並びに義兄のキングには多大な感謝と信頼を寄せており、例え血が繋がっていなくてもその連携プレーは米海軍潜水艦部隊の中でもトップクラスだ。そして個艦プレーに於いてもそれは例外ではないという事を先の魚雷迎撃戦にて見せつけた。

アレキサンダー・ベイツ艦長「ウッズ、敵水上艦と潜水艦の動きは❓」

ウッズ(アレキサンダー・ソナー手)「マスカーで探知不能に陥ったのでしょう。追撃してくる様子は見られません。」

副長「どうします艦長❓」

アレキサンダー・ベイツ艦長「目的は果たした。マスカーにこのまま紛れて離脱する。180°回頭、面舵一杯。敵機動部隊と距離を取れ❗️」

任務を終えた第3及び第4潜水戦隊は針路を変え中国空母打撃群から離れていった。

 

中国新鋭空母機動部隊

CDC

副長「ソナー、敵潜はどうなった❓」

ソナー手「マスカーで音を掻き消されました。目標ロスト、味方潜水艦も同じと思われます。」

副長「クソッ、向かってきた事を後悔させてやろうと思ったのだが...❗️」

リォウ「こちらに被害は無かったのだ。無人艦を当初の護衛位置に戻し警戒を継続させよ。」

副長「はっ❗️」

リォウ「(先程の雷撃、なんの為の攻撃だ❓我々を足止めする事か❓いやそれならばすぐに違う方向から雷撃を敢行してきてとおかしくない。16本の魚雷を撃っただけで煙のように去っていった、狙いはなんだ❓)」

「迎撃できたから良し」と副長に言ったリォウ艦長であったが、敵潜の攻撃の意図は何か❓に考えを巡らせていたが「これだ❗️」という答えは出ずモヤモヤするだけだった。しかしその敵の真意は既に敵魚雷が放たれ迎撃された瞬間から始まっていた。話を少し戻そう。無人フリゲート艦2隻の対魚雷弾により破壊されたQFOP潜水艦の魚雷はただ爆散しただけではない。QFOP潜水艦側が発射した魚雷の弾頭には炸薬がない。つまり撃沈を狙ったものではないのだ。魚雷の中には小型の円盤状の物体が無数に搭載されている。これが対魚雷弾により迎撃され魚雷自体が爆散したのと同じくこれが海中に無数にバラ撒かれ海流に乗って中国新鋭空母機動部隊に向かっていく。そして水上艦の艦底部に潜水艦の船体各所にピタッと引っ付く。山東や潜水艦のソナー手は引っ付く際の微弱な音を聞き取りはしたもののノイズと捉えて特に報告する必要性もないと思いそのまま任務を続けてしまった。それが後に仇となることも知らずに...。

 

第3潜水戦隊

旗艦 攻撃型原潜 キング

発令所

ソナー手「艦長、データ来ました。」

少し離れた所から聞き耳を立てていた攻撃型原潜 キングのソナー手がマルチ・スキャニング魚雷の中身の円盤上の物体が貼り付いた敵艦のデータが来たことを艦長に伝える。

キング「よし、深度100につけ通信ブイを上げろ。」

 

QFOP 第1艦隊

旗艦 大鳳

CDC

通信妖精「データきました❗️」

通信妖精より攻撃型原潜"キング"よりマルチ・スキャニング魚雷のデータが来たと報告を受けると、提督は「パネルデスクに回してくれ」と言う。各艦艇の断面図が映し出される。そこには「心音センサー」「サーモグラフィー」等の生命反応の表示が出ている。これがマルチ・スキャニング魚雷の正体だ。円盤状の物体がこれら生命反応を検出する為の機能が組み込まれた装置であり、艦の中にいる生命体すなわち「人間」の様子を探れるという代物なのだ。

多田部「これは...。」

提督「ラヤの予測通りか...。」

しかし旗艦の空母 山東と潜水艦を除く水上艦の生命反応表示は全て「0」を指し示していた。つまり正真正銘の無人の「無人艦」である事、ヒマラヤの予測が的中した事を意味した。

多田部「後でベタとはいかないが褒めてあげないとですね提督❓」

提督「ふっ、そうするとしよう。」

自身の「娘」とも言える擬似艦娘 ヒマラヤ、「父親」として「娘」の仕事ぶりを褒めてあげなければと、提督は微笑んでそう思った。

大鳳「けど提督。相手の殆どが無人艦だと分かったのは良いけど、そこから先これ以上動けない事に変わりはないわ。」

大鳳の言う通りだった。中国艦隊の大半が無人艦だと証明できたは良いが、攻撃/撃沈すれば問題になってしまう。

提督「通信、今のデータとこれまで集めた情報は太平洋艦隊司令部に送ったな❓」

通信妖精「はっ、送信済みであります。」

提督「司令部でも話の通じる人に送った。すぐ返事がくる筈だ大鳳。」

いくら提督が顔が広いからと言ってそんなに早く事を起こしてくれる人がいるのかどうかと大鳳は小首を傾げたが、その答えはすぐにやってきた。

通信妖精「返信来ました。太平洋方面艦隊司令部からです。」

「え、早っ⁉️」と大鳳は口に出さずでも思ったくらいに早かった。通信妖精は通信版を提督の側まで寄って手渡し提督は読む。

提督「攻撃許可が出た。」

大鳳「本当なの⁉️」

提督「ただし、「攻撃対象は無人艦のみとする」との条件付きだ。」

多田部「それなら向こうも人が死ななくて済むますな。」

提督「よぉし、そうと決まれば戦闘配置だ❗️航空隊もスタンバらせろ‼️」

大鳳「了解よ❗️

多田部「アイサ〜アドミラ〜ル♪」

司令部の早急なる対応に感謝しつつ提督は皆に戦闘配置を命じた。




中国艦隊の大半がまさかの無人艦ということが判明❗️タイトルにある「Noman'sFreet」は「無人(地帯)」と「艦隊」を組み合わせた造語です。本編にも書きましたが、現実にはまだ軍艦の無人化は哨戒艇規模の艦艇の試験運用のみで実戦向きの艦艇無人化はまだまだ先の話ですが「経済及び技術力の発展著しい中国がアメリカやロシアよりも先に開発にこぎつけた」って事にしています。リアルにこうなったら恐ろしい事この上ないですね。しかしリォウ艦長曰く「実戦に出るのは早い」みたいでまだAI(人工知能)も未熟でラジコンの様に遠隔操作による制御をしています。
敵が無人艦化どうか探る作戦でかわぐちかいじ先生の作品「沈黙の艦隊」からアレキサンダー兄弟とシーウルフ級2隻が登場です。元々大西洋方面艦隊の所属だった2人ですが、QFOP提督にスカウトされる形でQFOP所属となっています。シーウルフ級2隻(キングとアレキサンダー)はそれぞれ架空の3、4番艦としています(現実のシーウルフ級は3隻のみ)。
マルチ・スキャニング魚雷の機能はゲーム「コールオブデューティ」シリーズの「アドバンスド・ウォーフェア」に登場したスレットグレネードや高調波パルスを元ネタにしています。QFOPは太平洋方面艦隊に属しているとはいえ独立部隊である為この様な特殊な武器/兵器の開発が行われています。
司令部の許可を得て、次回中国新鋭空母機動部隊への反撃にでます❗️

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