艦これ Modern Record   作:箕理 田米李

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特別記録(番外編)から間が空きましたが、第2章スタートです。


第2章「変わり始める世界編」記録35「それぞれの新たな一歩」

「トライデント作戦が成功に終わって数ヶ月が経って年が明けた2018年は中国にとったは大きな変革の年となった。

国連は傘下の平和維持海軍の作戦行動の妨害をしたとして中国を非難し、加盟各国は中国に対して厳しい経済制裁等を行った。作戦中にQFOPが収集した「中国海軍上層部と深海棲艦との繋がり」を示す証拠等は「混乱を招く」として公表される事はなかったが、密かに行われた政治交渉でこれを突きつけられた中国政府は驚愕したと同時に以前からあった国内の暴動と経済の破綻もありこれ以上中国が一国で戦うことができなくなった。深海棲艦をも利用し「アジアの王」たらんとしようとしていた中国の野望はここに潰えたのである。

さらに70年以上にも亘り中国を事実上一党独裁で支配していた共産党が崩壊し、中国は「中華人民共和国」改め「中華民主共和国」と民主制国家へと舵を切り共産党の指揮下というより事実上の私兵集団であった「人民解放軍」も解体、再編され純粋な国軍となることが決定した。

 

QFOP 鎮守府プラットフォーム

提督室

 

多田部「高野長官はお元気そうでした❓」

提督「あぁ、変わらない様子だったけど顔に少し疲れが出ていたな。先の我々の作戦で色々と権限を行使した事と"自衛隊の国防軍化"についてお忙しいのだろう。」

多田部「遂に始まるのですか、"国防軍化"が...。」

提督「お隣の"巨人"が今や"小人"同然になってしまったのだ。旧ソ連が崩壊した時の様にしばらくは立ち直れないよ。そんな中国にアジアのリーダーをやらせるなんて酷じゃないか❓最も、国連にも国民にもあんな態度を取り続けてきた国にその資格が最初からあったとは思えんがな。」

 

すごく辛辣(しんらつ)な事を言ってる風に聞こえるが、中国がこれまでしてきた事を考えればこんな風に言われても仕方がない。

「自衛隊の国防軍化」は以前から議論されていた事だが、野党や世論からの反対意見が多く今まで実現できなかった。しかし中国の失墜もあって「次のアジアのリーダーは日本しかない」と国連からの声もあり「自衛隊の国防軍化」の必要性が高まったのだ。

 

多田部「で我々はこれから何を❓」

提督「当面は東南アジア諸国への支援と周辺海域の哨戒が任務だ。しばらく大きな作戦行動は取らないつもりだ。その間に俺は欧州に向かう。お前はまずアメリカに渡ってそこで用事を済ませた後QFOP2と3の建造を視察してきてくれ。それとこの資料に目を通しておいて。色々と知っておいて欲しいことを纏めてある。」

 

一通り今後のやるべき事を話した提督は多田部にファイルに纏めた資料を手渡す。辞書ほどではないが、それなりの厚みのあるものだ。

 

多田部「アメリカですか、ま〜た色々と飛び回らんといかん訳ですか。」

提督「欧州各国にも日本の国防軍化についてやその他諸々のご理解とご協力を取り付けてくる。いわば外交の真似事だ。久々に欧州にいる知り合い達の顔も見てくるよ。そっちも気をつけてな。」

多田部「アイアイサーですよ提督。」

 

提督室から退出し提督から渡された資料をペラペラとめくって内容を吟味(ぎんみ)する。さすが"ながら読み"は危ないと思いテーブルとイスを見つけ着席する。

 

多田部「(こりゃまた凄い増強計画だな...。ん❓"人造艦娘"❓...なんなんだこれ❓)」

 

多田部が多くの文章の中から気になる一文を見つけさらに深く読もうとした時、自分に近づいてくる足音に気付く。ふと顔を上げるとそこにはキーロフ級アドミラル・ウシャコフ艦長 アレクサンドラと同級 アドミラル・ラーザリェフ艦長 アンジェリカのアレクセイ姉妹が横に並んで立っていた。多田部は資料をテーブルに置き立ち上がって敬礼する。

 

多田部「これはこれは大佐殿のお二人で。」

アレクサンドラ「よしてよターベ。そんな堅苦しい。」

アンジェリカ「年下の私達にそんな、それに私達の仲じゃないですか。」

多田部「あぁ、そうだったな。つい厳しかった帝国海軍時代の習慣が出ちゃうんだわさ。」

 

アレクセイ姉妹はQFOP創設時からのメンバーで提督や多田部とは長い付き合いだ。その為か関係性は厳しくビチッとはしておらずその仲はとてもフランクだ。

 

アレクサンドラ「そこ座って良いかしら❓」

多田部「どうぞお二人さん。」

 

アレクセイ姉妹は多田部の向かい側の空いてるイスに座る。

 

アレクサンドラ「その資料は❓」

多田部「あぁこれ❓提督閣下から渡された重要書類の数々が纏められたものだ。いくら長い付き合いのお二人でも見せれないんだわごめんね。」

アンジェリカ「それは仕方ないですね。」

アレクサンドラ「良いわね〜そういうの。一介の艦長じゃそういうのないもの。」

多田部「そういや2人のお父さんはロシア海軍のお偉いさんだったよね。そういう経験あるんじゃないのか❓」

アレクサンドラ「いいえ、お父様は家族に言えない事は胸の内に閉まって見せれない物はすぐ自分の部屋に入れてたから。」

アンジェリカ「でもよく海軍や自分の艦の事を話してくれました。だからでしょうね、私達が海軍を目指したのは。」

多田部「家族とは❓」

アレクサンドラ「ここに来てからしばらく会ってないわね。たまに映像通信で話すくらいよ。」

アンジェリカ「でもお父様もお母様も変わりないようでした。」

多田部「そっか、しばらくは大きな作戦はないって提督が言ってたから休暇を取って会いに戻っても良いかもしれないよ。」

アレクサンドラ「ほんと⁉️」

アンジェリカ「じゃあ申請書出さなくちゃね、お姉ちゃん。」

 

久々に故郷に帰れるかもしれないという期待に思わず喜びを声に出す2人。

 

多田部「そういえばさっきから気になってたんだけどその紙袋なんぞや❓」

 

多田部はアレクサンドラとアンジェリカそれぞれの足元にある2つずつある紙袋に目線を向ける。いや2人に話しかけられた時から気になってしょうがなかった。

 

アレクサンドラ「あぁこれ❓メイド服よ。」

多田部「メイド服❓なんでまたコスプレ大会でもあるの❓」

アレクサンドラ「私達が着るんじゃないわ。ヨハンに着せるのよ。」

多田部「えっ⁉️」

アレクサンドラ「ほら日本のアニメ文化に"男の娘"ってのがあるじゃない❓ヨハンは中性的な顔立ちだから似合うと思って。」

アンジェリカ「お姉ちゃんったら張り切ってるの(苦笑い)。」

多田部「そうかそうか。」

 

「ウシャコフの女帝」なんて大層な異名で呼ばれる彼女だが、実は「日本のオタク文化にどっぷり浸かった親日家」という側面もあり、異名とは裏腹にその趣味のお陰か親しみやすい人柄をしている。それは父から日本のよく聞かされてことやQFOP配属以降は提督や多田部からのオタク教育もあってのことだそうな。そんな姉に振り回されるこちらも「ラーザリェフの天使」の異名を持つ妹のアンジェリカだが、彼女も姉や提督、多田部の影響を受け今やすっかりオタクの仲間入りをしている。そんな彼女なりの艦と多くの乗員を失ったヨハンに対する励まし方なのだろうと多田部は思うのだった。

その後、アレクサンドラは「ヨハンを見かけたら声掛けてね。」と良いアンジェリカと共に退席していった。多田部も少ししてから退席しふと外を見るとヨハンの姿を「英雄の碑」に見かけた。それは深海棲艦との戦いで散っていった者達を慰霊・顕彰する為の記念碑だ。ヨハンは花束を持ってその碑の前に立ち膝をついて花を手向(たむ)けると敬礼する。

 

※ここからは宇宙戦艦ヤマトのBGM「英雄の丘」を脳内再生しながらお読みください。

 

多田部「ヨハン。」

ヨハン「あ、多田部一尉。」

多田部「献花に来たのか。」

ヨハン「はい。僕は自分のミスで艦を失っただけでなく多くの乗員を死なせてしまいました。今自分ができることはこうして碑に花を手向けたり、傷ついた仲間を励ますことくらいしかないんです。そう思うと...悔しくて...。」

 

ヨハンの表情には哀しさしかなかった。失ったものが大きく多いのだから仕方がない。

 

多田部「... ...ヨハン、ちょっと来てくれ。」 

ヨハン「え❓」

多田部「見せたい物があるんだ。」

 

そう言う多田部に連れられてヨハンの足が向かった先はQFOPの工廠プラットフォームだった。

 

多田部「明石、ご苦労様。」

明石「あ、ターベさん。お疲れ様です。」

多田部「今入れるかな❓」

明石「え、構いませんけど...ここから先はヨハンさんは...。」

多田部「大丈夫、提督の許可は貰ってるよ。」

 

多田部は明石にスマホの画面を向け、明石はその内容を読むとちゃんと許可を得ている事を確認して中に通した。

締められた扉の前に立つ多田部とヨハン、ここからは声紋認証の様だ。

 

多田部「ドックに入りたい。」

音声案内「ヨハン大佐はこのドックへの入出許可は出ていません。」

多田部「提督と特務一尉権限だ。多田部 拓海。」

音声案内「確認しました。」

 

提督と自信の階級と名を言っただけでパスできるとは、「一尉って何者だ❓」と思うヨハン。

多田部「我らQFOPの秘密ドックにようこそだ。」

ヨハン「こ、これは⁉️」

 

多田部の権限云々に驚く間もなく次の驚きがヨハンの眼前にあった。数十隻にも及ぶ就役間近の新型艦がズラッと並んでいた。

 

多田部「QFOPもさらに先を行かなくてはならないとの提督の考えとお達しがこの新鋭艦達ってわけだ。スゴイでしょ❓」

 

多田部に案内され歩きながら首を左右に振り新型艦を見やるヨハン。多田部がピタッ足を止めたのを見てヨハンもピタリと止まる。目の前には一隻の空母があった。戦闘空母打撃群の旗艦を務めるヒマラヤ級の一隻だ。

 

多田部「ヒマラヤ級 CVB-865 ウラルだ。君の艦だよヨハン。」

ヨハン「えっ⁉️」

 

ヨハンは驚き思わず多田部の方へ顔を向ける。「このヒマラヤ級姉妹の一隻を自分に任せる」と言われた事に。だが...。

 

ヨハン「お言葉ですが一尉、僕にはこの艦を頂く権利はありません。自分の艦を沈め、多くの乗員を死なせてしまった自分になんか...」

多田部「言っとくけどこれは決定事項なんだよヨハン。なんせ提督からの命令だからね。」

ヨハン「同志提督から...ですか❓」

 

「一度艦を沈めてしまった自分には相応しくない」と拒否しようとするヨハンに多田部は「提督の命令なんだ」と反論を制止させる。

 

多田部「提督は君の事を高く評価してるんだよ。もちろん俺もだし他の皆もさ。簡単な事じゃないけど君には乗り越えて欲しいんだよ。その一歩がこの艦を君にという事さ。」

ヨハン「多田部一尉...。」

多田部「ま、そのうち正式に拝命されると思うからよろしくね。

あ、それとアーシャとアンジェが君を探してたよ。でも注意した方が良いかもね。じゃあまた。」

 

ヨハンは親友2人の件に関して頭に「❓」を浮かべたものの、眼前のウラルに再びを顔と視線を向け「今後こそ前みたいにいかない」「提督達の期待に応える為にも沈めてたまるか」と決意を胸に抱くのだった。




前章からほんの少し経った時間軸から始まりました第2章です。「中国の事実上崩壊と新国家体制」「自衛隊の国防軍化」「提督は欧州、多田部はアメリカへ」「人造艦娘」「秘密ドックの新型艦」など今後の物語に関わる事柄がいきなりわんさかご登場となっております。これらが物語に今後どういう展開をして絡んでいくのかお楽しみください。それと本章は前章に比べ日常パートを多めに入れていき戦闘パートが多めだった前と違って世界観をより深く掘り下げていきますのでそのつもりでお願いします。
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