フルメタル・パニック! 鉄の女たち   作:砂岩改(やや復活)

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第3話

 

 

「見つけたわ」

 

「待ってたよ」

 

 AK-12からの報告に優弥は喜ぶ。

 

「1981年12月24日11時52分に生まれた女の子。まだ各国政府も認識していないウィスパードらしき人物をドイツで見つけたわ」

 

「ドイツね、なら私たちの出番かしら」

 

 AK-12の報告を聞いているとCICに籠っていたビスマルクが反応し顔を出す。半年間以上の調査の結果、見つけ出したのは未発見のウィスパード。想像以上の成果だった。

 

(俺の把握してるウィスパードは千鳥かなめしか居ないからな)

 

 優弥の知識ではフルメタル・パニック初期の知識しかない。この時期だとトゥアハー・デ・ダナンが動き出している。潜水艦と言う最大のアドバンテージは向こうの存在で薄れてくる。

 

「手早くウィスパードを保護しよう。AK-12、AN-94、あとビスマルクにグラーフ・ツェッペリン。俺も行く」

 

 纏められた資料を読みながら手早く人選をする。後方支援としてM4A1_MOD3、STAR-15_MOD3が支援にまわるように手配する。

 

「未発見のウィスパードならラムダドライバに関する知識を持ってるかもしれない。それに加えて敵対勢力も居るかもしれない」

 

「分かったわ、私たちもそれなりの武装をするわ」

 

「そうだな、手配しておこう」

 

 こうしてウィスパード捜索部隊が組まれたのだった。

 

ーーーー

 

「じゃあ、カリプソを頼む。長門」

 

「うむ、気を付けてな」

 

 ドイツに密入国した一同は無事に上陸する。スーツに身を包み、AK-12とAN-94は楽器ケースに偽装した防弾のライフルバックを後ろに担ぐ。

 対してビスマルクとグラーフ、そして優弥ははショルダーホルスターを使ってスーツの上着の下に銃を忍ばせる。

 

「どんぱちは好きじゃないからなぁ」

 

「安心しなさい、私たちが居るわ」

 

「頼む」

 

 装備を整えると目的の場所に向かう。

 場所はドイツの田舎にある孤児院だ、名前はアルマ。親に捨てられまともな教育を受けてこられずに現在まで過ごしてきたらしいが情報によると突然、謎の数式を部屋の壁一面に書き始めたらしい。

 

 孤児院は大学の教授に調査を依頼したそうだが全く道の数式らしくその正体は掴めていないと言う。

 

「言われてみれば正にと言う感じだな」

 

「ええ、政府はまだ感づいていないでしょうけど。裏の組織がどれ程の情報を得ているか…。」

 

「だからこのメンバーを選定した」

 

 優弥が取り出したのは名刺。そこには

 

「有識者支援団体?」

 

「架空の団体だよ。恵まれない子供たちの中でも才能ある子を金銭的な面で潰すのは惜しい。そんな子達を支援してる団体って感じ」

 

「確かに、必要よね。そういう肩書きは」

 

「そう言うこと、じゃあいきますか」

 

 目的地にたどり着いた一同はもう一度、身なりを整えてから孤児院に入るのだった。

 

ーー

 

「よく来てくれました。才能を開花させたのは良いんですけどなんの才能か分からない以上。どうしようもなかったので」

 

「そうですか、その調査のために我々が来ましたので」

 

 孤児院の施設長とある程度の会話をしていると昔から物静かな性格だったようで突然の才能の開花に気味悪がっているようだった。

 

「……」

 

「君がアルマか…それにこれが数式か」

 

「画像データは明石に送っておこう」

 

 確かに部屋一面に書かれているのは数式の数々。

 

「俺の名前は優弥。日本人だアルマ、君の事を保護しに来た」

 

「保護?研究じゃなくて?」

 

「うん、確かに君の能力を調べるのも目的だけど悪用されるのを防ぐために俺たちが来た」

 

 銀髪の女子高校生、どこか暗い印象を受ける。

 

「話は着いたわ。こっちで引きとるようにした」

 

「ありがとう、ビスマルク」

 

 本当は利用しようと思っていたがこのような状態だと保護が優先だろう。

 

「ここじゃ、肩身が狭くないか?」

 

「説得は要らないわ、私を連れていくんでしょ?」

 

「まぁ、そうだな」

 

 思ったより取りつく島がない。

 

「ちょうどここに飽き飽きして居たところよ。私が自由に書ける場所をくれるのなら行くわ」

 

「それは保証する」

 

「なら良いわよ。行きましょ」

 

 アルマは元々、用意していたであろう荷物を担ぐと優弥と対面する。行動力があると言うより元々、ここからの脱出を計画していたのだろう。引き渡しの手続きがあまりにもスムーズなのもあるしここはよい場所ではなかったらしい。

 

「歓迎するよ。ようこそ、グリフィンへ」

 

ーー

 

「まずいわね」

 

「そうですね、見られています」

 

 孤児院の施設前に立っていたAK-12は開眼し周囲を見やる。同時にAN-94も顔を動かさずに警戒する。

 

「レーダースキャンスタート」

 

 監視が三人。向こうから仕掛けるつもりはないようだが敵意は感じる。

 

「これは面倒な事になりそうね…」

 

 そして同時刻、沿岸に待機していたカリプソ艦内も異常を探知していた。

 

「策敵ソナブイに反応アリ。これは潜水艦だぜ」

 

「厄介な、詳細は分かるか?」

 

 レーダーを見ていた天龍からの報告に思わず舌打ちをする長門。

 

「ちょっと待ってくれ、音源、振動ともに該当なし。新型の潜水艦か、それにしてもでかいな。もしかして優弥が言ってたトゥアハー・デ・ダナンってやつか?」

 

「さらに厄介だな。無線封鎖してステルスモードに移行する。陸奥、地上に待機しているM4A1_MOD3、STAR-15_MOD3に現状を通達後に封鎖だ」

 

「分かったわ」

 

「もしもの時は撃って出るぞ。総員配置につけ!」

 

 優弥の情報では敵の潜水艦は太平洋管轄であったはず。なぜここにいるのか…。

 

ーー

 

「先に人が来ていたなんて迂闊だったわ」

 

「そうですな、対象を無理矢理連れ去ろうと言う意思はないように思えます」

 

 トゥアハー・デ・ダナンは長距離における航行試験を兼ねてウィスパードの保護のために足を運んだのだがすでに他の組織に先手を取られており二の足を踏んでいた。

 

「えぇ、ですが向こうの意図が問題です」

 

 向こうは本当に才能ある子達として保護しようとしているのか。それともウィスパードど認識して利用のために保護したのかが分からない。

 

「ううん、全員美人だねぇ」

 

「こちらが保護した方がいいだろう」

 

「どうした宗介、急に?」

 

 有事の際に事前に上陸し情報部からの映像を見ていた相良は静かに判断した。

 

「この金髪の二人の女だが左肩がやや下がっている。これはショルダーホルスターを装着している兵士特有のものだ」

 

「つまり向こうは拳銃を所持していると言うことね」

 

 宗介の言葉通り画像を見ると二人の女性の左肩がやや下がっている印象を受ける。ならこの銀髪の二人組もあれは楽器ケースではなくライフルバックである可能性がある。

 

「穏やかじゃないわね」

 

「姉さん、どうする?」

 

「向こうの真意を確かめる必要があるわ。それに女性ばかり…もしかして」

 

 メリッサは一つの可能性にたどり着く。近年、大暴れしている傭兵部隊《グリフィン》奴等は女性のみと聞く。そのグリフィンの狙いがこちらと同じとなると。

 

(良い予感はしないわね)

 

ーー

 

「ミスリルだろうな」

 

 用意した車に乗り込み合流地点を目指している矢先。AK-12の報告を聞くと優弥は即決した。長門たちと連絡がとれない、おそらく無線封鎖を行っているのだろう。つまり潜水艦が近くにいる。

 

「ごめんなさい、優弥。私がもう少し早く見つけていれば」

 

「いや、むしろ先にアルマを保護できたのは僥倖だ。向こうから奪うより守る方がやり易い」

 

 後部座席でグラーフと共に大人しく座っているアルマに視線を移しつつ思考を巡らせる。

 

「とにかく、他の二人と合流しよう」

 

 たどり着いたのは田舎の廃村。ここが二人との合流地点となっているが。襲われるのにおあつらえ向きと言える。

 

「さてと…」

 

「動くな!」

 

 鋭い警告に思わず身を固くする、予想以上に早かった。

 

「銃を捨てろ、まずはその女を連れ出した理由を聞かせてもらおうか」

 

 男の声、聞いたことのある声だ。背後にいる相手を刺激しないようにゆっくりと銃を下ろす。

 

「指揮官!」

 

 飛び出そうとするAK-12の足元が破ぜる。狙撃されたことに気づいた彼女は開眼し辺りを見渡す。

 

(射程外か)

 

「悪いね、お嬢さん。こっちも仕事なんだ」

 

 狙撃ポイントからAK-12を眺めるクルツは軽口を叩きながら照準し直す。ダナンに来てからの初任務、きっちり決めさせてもらおう。

 

「抵抗は無意味だ。こちらにはASもある」

 

「これはこれは」

 

 目の前に出現したM9に言葉を漏らす優弥。光学迷彩による待ち伏せだったがここまで早く展開されるとは。

 

「どうしたの?」

 

「敵だな…」

 

 突然の状況に驚くアルマの横でグラーフとビスマルクは拳銃を構える。

 

「敵?」

 

「心配するな、アルマ。我々はその為に来たのだから」

 

 グラーフは彼女の頭を撫でてやると周囲を観察する。

 

(あいつらも黙ってみている性格ではないだろうしな)

 

「目的か…保護だよ」

 

「ただの保護目的で武装した人間が来るものか。その真意を聞かせてもらおう、時間はたっぷりある」

 

 とにかく目の前の男を拘束する、そうしようとした瞬間。

 

「姉さん、あぶねぇ!」

 

「っ!?」

 

 高速で接近してきたASに体当たりされメリッサのM9が吹き飛ばされる。サベージに似ているが原型がないほどカスタムされている。もはや新型と言っても良いだろう。

 

「ASだと!」

 

「今だ、アルマ耳を塞いでいろ!」

 

 AN-94とグラーフの一斉射撃、宗介は身を翻して物陰に隠れる。

 

「くそっ、宗介!っ!?」

 

「……」

 

 援護に回ろうとするクルツだったがその場を慌てて離れる。彼の後ろにはいつの間にか銃を二丁構えた少女が立ち。銃撃を加えていた。

 

「マジかよ!」

 

「指揮官、今度こそ私が役に立って見せよう!」

 

「美人だけど。やばそうな、女だな」

 

ーー

 

「指揮官の邪魔はさせない!」

 

 漆黒のランドマンロディはハンマーチョッパーでM9を切り刻もうと試みるが向こうも単分子カッターで応戦する。

 

「すまん、M4A1_MOD3!」

 

「くそっ!」

 

 宗介の銃撃をかわしながら接近、AK-12は彼の拳銃を蹴り上げるとそのまま接近戦に移行する。彼女のナイフ捌きも見事なものだ。

 宗介とAK-12は激しい接近戦を繰り広げる中、脇で抱えてきたアルマをヘリに乗せるとビスマルクはエンジンを起動させる。

 

「まぁ、こうなるのよね。アルマ、大丈夫?」

 

「はい」

 

 TV局に偽装してあるため武装はないが足としては優秀だ。

 

「ビスマルクさん」

 

「なに?」

 

「私のせいでこんなことになってるんですか?」

 

「…そうね。嘘はつかないわ、貴方の才能はそれだけの価値があるのよ」

 

「そうですか…」

 

 胸を押さえて苦しそうにするアルマ。だがその表情はほんの少しだけ笑っていた。

 

ーー

 

「指揮官、私を見てくれ…この私を!」

 

「くそっ、グリフィンってのは宗教団体か何かかよ」

 

 ただの狂信者であるならどれ程よかっただろう。クルツは岩陰に隠れながら二丁持ちの少女を見やる。発される言葉はうわ言のようだが全く隙がない。

 

「厄介だな…」

 

ーー

 

「よし、優弥たちを援護する。プリンツ、魚雷発射菅一番、二番装填。優弥たちを回収の際に浮上すると同時に敵の潜水艦に向けて攻撃だ」

 

「了解です!魚雷発射菅一番、二番装填。目標、敵不明艦!」

 

 カリプソでも優弥たちが交戦中であろことは予想がついていたこの状態では彼らを回収できないと判断した長門は攻撃準備を進める。

 

「全員撤収!」

 

 優弥の言葉と共に全員が交戦から撤退に行動を移す。M4A1MOD3はランドマンロディのスモークディスチャージャーを使用。辺り一帯の視界を塞ぐ。

 

「M4、お前は合流地点に」

 

「はい」

 

「全員乗ったな」

 

「出すわよ!」

 

「逃がすか!」

 

 飛び立つヘリを狙撃しようとライフルを向ける宗介だがAK-12とAN-94の的確な攻撃のせいで反撃できない。

 

「カリプソに緊急信号を打電しろ」

 

「分かった」

 

ーー

 

「長門、優弥から緊急信号を受信したぜ。あと30分でこっちにつく」

 

「よし、浮上と同時に魚雷発射だ。これよりわが艦は戦闘行動を開始する!」

 

 艦内に響き渡るサイレン。カリプソの初戦闘、自然と一同は緊張する。

 

「メインタンクブロー。一番、二番魚雷発射!」

 

「了解、一番、二番魚雷発射!」

 

 カリプソの艦主魚雷発射菅から射出される魚雷、それはトゥアハー・デ・ダナンも探知していた。

 

「後方、七時の方向に反応。これは潜水艦です、同時に魚雷を2つ確認!」

 

「なんだと、策敵は何をしていた!」

 

 突然の攻撃に声を上げるマデューカス。これほど近くに潜水艦が潜んでいたとは。

 

「緊急ブロー!カウンターメジャー射出!」

 

「アイマム、緊急ブロー、カウンターメジャー射出!」

 

 テスタロッサの素早い判断により動き出すトゥアハー・デ・ダナン。緊急ブローの結果、海上に飛び出す結果となったがそれはカリプソも同じ。

 両者は海上で睨み合う結果となってしまった。

 

「なんて馬鹿げた大きさなの…」

 

 トゥアハー・デ・ダナンの倍の全長の持つカリプソを見て思わずテスタロッサは呟く。

 

「VLS発射用意しろ」

 

「艦長、どうされますか?」

 

「今は静観よ…ここで戦いを始めれば只では済まないわ。」

 

 完全ににらみ合いと化した現状。お互いに冷や汗をかきながら静観する。テスタロッサの言う通り、ここで戦闘を始めれば周囲にとんでもない規模の被害が予想される。

 

 カリプソの飛行甲板に降り立つランドマンロディ。それとともにヘリが到着し艦内に収容される。

 

「全員収容完了」

 

「よし、潜航開始だ」

 

 終始にらみ合いを続けていた両者だったがカリプソが先に立ち去ることでその場を事なき得たのだった。

 

「……グリフィン」

 

 テスタロッサは立ち去るカリプソを見つめながら静かに呟くのだった。

 

 

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