歴史の傍観者 作:芹沢鴨と明智光秀と柴田勝家実装して
私は傲慢だった。
己の力を過信し、歴史を変えれると息巻いていたのは傲慢だったと思い知った。
私は未来の知識を朧気に覚えているだけの凡人という事実を自覚すべきだったのだ。
☆☆☆
享禄2年(西暦1529年)*1、尾張守護代の織田大和守家の当主織田達勝に仕える織田信秀の長男として私、織田信広は産まれた。私は長男ではあったが、私の母*2は側室であり私には家督を相続する権利はなかった。
当時正室は主君織田達勝の娘であり、彼女の息子が後を継ぐと考えられていたからだ。まあ、織田達勝の娘は子を産む前に死に、継室として土田御前の息子が後を継ぐことになったが。その土田御前の息子こそがあの、戦国の覇王織田信長である。
正直、私は家督を継がなくて良いことに安心した。己の母が側室であることに感謝した。私の父である織田信秀は智勇に優れ、守護ですらない守護代の家臣でありながら尾張一国を手に入れて支配し後継者の織田信長が天下統一に手を伸ばす土台を作った傑物だ。現に今の居城である勝幡城の近辺の港と牛頭天王社の門前町の商業都市である津島を支配して飛躍の基礎を作っている。織田家が飛躍できたのはこうした繁栄している商業都市から得た銭の力のおかげでもあるのだ。
しかし、織田信秀が幾ら有能で基盤をしっかり築いたとしても私が家督を相続したらそこで終わりだろう。私には織田家を信長のように成長させることはできないのだ。はっきり言って現領域の維持すらできるかどうか怪しい。才のない私が当主になってしまえば、"東海道一の弓取り"今川義元か"美濃の蝮"斎藤道三あたりに潰されるオチが目に見えているからだ。
私がかつて生きていた現代には未来からマイナー大名や潰れかけの室町幕府の将軍に転生して天下統一するような小説や、料理人としてタイムスリップして活躍するマンガのような過去にタイムスリップ/転生して歴史を変えるような創作物があるが、私にはそのようなことができる才覚などないことは明白だ。あれらの偉業は創作でなおかつ加えて転生した彼らが有能であるからできることであって、私が今転生した世界は現実なのだから。
それ故に戦で勝つことは諦めた。しかし、私は織田信秀の息子、しかも長男である。当主でなくとも、才覚がなくとも戦に出なければならない。だから私は私自身の武を高めることにした。自分自身が生き残れるようにという意味もあるが───父織田信秀の死後、私の主君になる予定の男はあの織田信長だ。残虐にして冷酷無比、あまりにも合理的な魔王*3。何か役に立てる要素がなければ殺されるに違いないという恐怖もそこにはあった。
そして月日が過ぎるのは早いもので、私が産まれてから5年後の天文3年(西暦1534年)。土田御前が身篭ったことで遂に戦国の覇王が誕生する時が来たと戦々恐々としていたが──産まれてきた
………は???? 妹?