好きな小説の世界に転移したので勇者に不殺の道を歩ませる   作:九戸政景

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政実「初めましての方は初めまして、他作品を読んで頂いている方はいつもありがとうございます。作者の片倉政実です。今回からこちらの作品を投稿させて頂きます。今作品も読者の皆さんに楽しんで読んで頂けるように頑張って参ります。よろしくお願いします」
凛世「どうも、この作品の主人公の尾張凛世です。ねえ、この作品は自作小説の世界に転移したから別ルートから魔王討伐を阻止するの別視点にあたるわけだけど、向こうといつかは合流したりはするの?」
政実「いつかそうするつもりだよ」
凛世「ふーん、そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていこうか」
政実「うん」
政実・凛世「それでは、第1話をどうぞ」


第1話 リューオンへの転移

「んー……! 最終回も面白かったぁ……!」

 

 携帯を片手に自分の部屋のベッドに寝転がりながら私はそう声を上げた。私が声を上げた理由、それは私が携帯で読んでいたある作品だ。その名は『勇者の戦記』、お気に入りの小説投稿サイトに投稿されている私の大好きなファンタジー物だ。それを投稿しているのは、ファーストさんという人で、『勇者の戦記』を知るまではこのファーストさんという人を私はまったく知らなかった。けれど、この『勇者の戦記』を偶然見つけ、読み進めていった後、私はこのファーストさんの作品にどんどんハマっていき、今では作品が投稿されるのを楽しみに待つようになっていた。

 

「それにしても……『勇者の戦記』も終わっちゃったなぁ。魔王を倒した勇者がみんなから称賛を浴びる中で本当に魔王を倒すべきだったのかについて苦悩して、その結論が出た後に新しい目標に向かって旅立ったわけだけど、出来るなら魔王と勇者がわかりあうようなラストも読んでみたかったなぁ」

 

 なんて、そんな事を考えてもしょうがないよね。

 

 そう思い、苦笑いを浮かべていた時、私の口から思わず欠伸が漏れた。

 

「ふわぁ……せっかくだし、一眠りしようかな。そして起きたら、最終回の感想を書い……て──」

 

 そして、その内に私の意識はスーッと遠退いていった。

 

 

 

 

「……え、いじょ……」

「ん……?」

 

 突然聞こえてきた声で目を覚まし、私はゆっくりと目を開けた。するとそこには、心配そうな表情で私を見る短い黒髪の女の子がいた。

 

「ねえ、大丈夫……?」

「大丈夫って……大丈夫は大丈夫だけど……?」

「……良かった。この近くの森で倒れてたから、心配だったの」

「森……で?」

 

 そんなわけがない。だって、私は自分の家で寝てたはずだ。というか、まずここはどこなんだろう……?

 

「あ……ねえ、ここってどこなのかな……?」

「ここは『ルハラ』にある私の家だよ」

「そっか、『ルハラ』──って、『ルハラ』!?」

「う、うん……!」

 

 私の大声に女の子はとても驚いた様子を見せたが、私は女の子が教えてくれた場所の名前にとても驚いていた。『ルハラ』、それはさっきまで読んでいた『勇者の戦記』に出てくる村の名前で、主人公である勇者の女の子、ダイアナ・スノーの出身地でもあるからだ。

 

 もしかして……私、異世界転移って奴をしたの……? それも、私が大好きな『勇者の戦記』の世界に……。

 

 その事に私が衝撃を受けていると、女の子は「そういえば……」と何かを思い出したように声を上げ、にこりと笑いながら私に話し掛けてきた。

 

「自己紹介がまだだったよね。私はダイアナ・スノー、あなたは?」

「わ、私は尾張凛世(おわりりせ)、凛世の方が名前だよ」

「リセちゃん……ふふ、可愛い名前だね」

「そ、そうかな。あ、あはは……」

 

 この子がダイアナで、雰囲気的に旅を終えた様子ではない……という事は、今は『勇者の戦記』の物語が始まる前で、魔王が生きてる頃か。

 

 そんな事を考えていると、ダイアナは不思議そうに首を傾げた。

 

「それで、リセちゃんはどこから来たの? 何だか変わった服装をしてるけど、もしかして旅人さん?」

「私は……」

 

 どうしよう……ここはある人が作った創作物の世界で、私はここに転移してきた異世界人ですなんて言っても信じてもらえないだろうし……。

 

 どう答えるべきかしばらく考えた後、私は一つの結論を出し、それをダイアナに伝えた。

 

「……ねえ、ダイアナ。異世界に転移する魔法とかって聞き覚えはある?」

「異世界に転移する魔法……うーん、私は聞いた事がないけど、それがどうしたの?」

「……たぶん、私はその魔法の影響であそこにいたのかもしれない」

「その魔法の影響でって……まさか、リセちゃんは異世界から来たの!?」

「うん……少なくとも、私のいた世界に『ルハラ』っていう場所は無いし、そもそも魔法なんて無いもん」

 

 私が出した結論。それは一部を除いて正直に話す事だ。ここがファーストさんの書いた『勇者の戦記』という作品の世界だとは流石に言えないけど、私が異世界から来たという事くらいは話しても問題は無いだろうし、もしかしたら解決策がすぐに見つかるかもという希望を抱いたからだ。

 

 まあ……この様子だと異世界に転移する魔法っていうのは、無さそうだけどね。

 

 ダイアナの話からそう察し、少し残念に思っていると、ダイアナはとても驚いた様子で私に話し掛けてきた。

 

「魔法が無い世界……リセちゃんはすごいところから来たんだね」

「まあ、そっちからしたらそうなんだろうけど──って、私の話を信じるの? 自分で言うのもあれだけど、今の話は中々現実味が無い話だよ?」

「うーん、たとえそうだとしても、私はリセちゃんの話を信じるかな。だって、初めて会ったリセちゃんが私に嘘をつく理由なんて無いし、この『リューオン』には転移魔法(テレポル)があるから、もしかしたら異世界に転移する魔法くらいあるかもしれないし」

「それは、たしかに……」

 

 言われてみればそうだ。『勇者の戦記』の中では異世界に転移する魔法の存在が仄めかされた事は無いけど、異界にいる召喚獣を呼び出す召喚士の称号は存在する。つまり、それらをうまく応用して異世界転移の魔法を作り上げた人くらいいないとも限らないんだ。

 

 そう考えていたその時、ダイアナは突然私の手を握り出した。

 

「ダ、ダイアナ……?」

「ねえ、リセちゃん。リセちゃんさえよければ、ここに住まない?」

「ここにって……どうして?」

「異世界から来たなら、今のところ住むところはないんだよね? だったら、しばらくここに住んで、帰るための手段を探したらどうかなと思って」

「それはありがたいけど……でも、ご両親は良いっていうのかな?」

 

 そう、ダイアナが良くてもダイアナの両親が首を縦に振らないといけない。ましてや私は異世界から来た人間だ。そんなえたいも知れない人間を簡単に置いてくれるだろうか。

 

「私がたくさんお願いしてみる。まあ、お父さん達はとっても優しいから、ダメだっていう事は無いと思うけどね」

「そ、そっか」

「うん! とりあえず、お父さん達にリセちゃんが起きた事を伝えてくるね」

「あ、うん」

 

 返事をすると、ダイアナは嬉しそうな笑顔を浮かべながら部屋を出ていった。そして、それを見送った後、私は小さくため息をついた。

 

「はあ……それにしても、どうして私がこの世界に飛ばされたんだろう? まあ、大好きな小説の世界に飛ばされて嬉しくないわけはないんだけど、せっかくなら事前にそうだって伝えてもらいたかったよ……」

 

 よくある異世界転移物は、神様的な存在と事前に会い、事情を知らされた上で転移しているけど、私の場合はそうじゃなかった。という事は、そういう物を省かないといけない程、この世界は切羽詰まっている事になるのかもしれない。

 

「……もしかして、この世界は『勇者の戦記』の舞台になっている『リューオン』に似た別の世界だったりするのかな……」

 

 そんな事を考えていると、部屋のドアがコンコンと叩かれ、「はい」と答えると、ダイアナが嬉しそうな笑顔を浮かべたままで入ってきた。

 

「おかえり、ダイアナ。どうだった?」

「うんっ! お父さん達も大歓迎だって言ってたよ!」

「そっか……」

「それでね、リセちゃんと少し話したいから連れてきて欲しいんだって」

「……まあ、そうだよね」

 

 さてさて、どんな事を訊かれるのかな……?

 

 ダイアナの両親との話について考えながら身体を起こし、そのままベッドから出た後、私はベッドの傍に置かれていた靴を履いてからダイアナに手を差し出した。

 

「さあ、行こう、ダイアナ」

「うん!」

 

 そして、ダイアナと手を繋いだ後、私はダイアナの両親と話すために一緒に部屋を出た。

 

 

 

 

「ふわぁ……それにしても、ダイアナの両親が優しい人達で本当に良かったなぁ」

 

 その日の夜、私は自分が寝かされていた部屋のベッドに入った後、欠伸をしながらそんな事を独り言ち、ダイアナの両親との会話を想起した。ダイアナと一緒にダイアナの両親のところに行くと、ダイアナの両親は笑顔で迎えてくれた後、自分達の自己紹介をし、自分の世界に帰れる方法が見つかるまでいくらでもいて良いと言ってくれた。

 

「ほんと、ダイアナとダイアナのご両親には感謝してもしきれないよ。こうなったら、この世界にいる間は、私がダイアナをサポートしないと。何と言っても、ダイアナは近い将来魔王を倒す勇者になるわけだし」

 

 今のところ、ダイアナが勇者だと知っている人は私しかいない。それはそうだ。何故なら、ダイアナが勇者になるのは、ダイアナの右手の甲に紋章が現れ、その日の夜に女神様からの祝福を受けてからだから。

 

「そして、ある王国から来た使いに連れられて、改めて魔王の討伐を頼まれるわけだけど、ダイアナは平和主義だし、しばらくはモンスターを倒すのも戸惑う程だったはず。となると、私が目指すべきなのは、その旅についていき、ダイアナの代わりにモンスターを倒す──いや、出来るならモンスターを倒すのも避けたいな。この世界のモンスター達にも上下間や家族間の絆はあったはずだから……」

 

 そして、しばらく考えた後、私は一つの結論を出した。

 

「……決めた。ダイアナにはモンスターだけじゃなく、人間も殺さない不殺(ころさず)の道を歩ませよう。そして、出来るなら私もそれを守り、この先仲間になる人達にもそれを頼もう」

 

 そのためには、私も強くならないといけないし、まずは武器の扱いに慣れて、魔力があるかを調べないと……!

 

 そう思っていた時、不意に口から欠伸が漏れ、それと同時に強い眠気が襲ってきた。

 

「ふあ……でも、まずは寝ないとね。それじゃあ、おやすみなさい……」

 

 そして、魔力で動いている照明の明かりを消した後、私は静かに目を閉じ、そのまま眠りについた。




政実「第1話、いかがでしたでしょうか」
凛世「今回は私が転移して、ダイアナと出会った回だったね。次回からは他の登場人物もどんどん出てくる感じなのかな?」
政実「うん、そうなるかな」
凛世「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いしまーす」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
凛世「うん」
政実・凛世「それでは、また次回」
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