好きな小説の世界に転移したので勇者に不殺の道を歩ませる   作:九戸政景

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政実「どうも、主要キャラが何かを苦悩するシーンが好きな片倉政実です」
凛世「どうも、尾張凛世です。キャラクターは誰しも何か悩みを抱えていたり、何か重要な事に直面したりするから、そういうシーンも良くあるよね」
政実「そうだね。そして、それを乗り越えてまた一つ成長をする。それってやっぱり良いよね」
凛世「ふふ、そうだね。さてと、それじゃあそろそろ始めていこっか」
政実「うん」
政実・凛世「それでは、第2話をどうぞ」


第2話 勇者の紋章

「……ん」

 

 背中に何か柔らかい感触を覚えながら目を覚ました後、私はそれを確かめるために後ろを見た。すると、別の部屋で寝ていたはずのダイアナが私に抱きつきながらすやすやと寝息を立てていた。

 

「え、えーと……どうしてダイアナがここに……?」

 

 ……もしかして、起こしに来てくれたは良いけど、また眠くなって布団の中に入ってきて、そのまま寝ちゃった……とか?

 

「あはは……まさか、ね。流石にダイアナでもそんな事は──」

 

 ダイアナの気持ち良さそうな寝顔を見ながら苦笑いを浮かべていたその時、私は『勇者の戦記』のでのダイアナの設定を思い出した。

 

「……そうだった。ダイアナは寝ようと思えばどんな体勢でもどんな環境でも眠れるし、冒険の中でも仲間達が気付いた時に眠ってるシーンがあったっけ……」

 

 という事は、私の予想はたぶん合っているんだろうなぁ……。

 

 未だにすやすやと寝息を立てるダイアナを見ながら小さくため息をついていたその時、部屋のドアをコンコンとノックされ、私はどうぞと声をかけた。すると、ダイアナのお母さんであるディアドラさんが部屋に入ってきた。そして、私の隣で眠るダイアナを見ると、小さくため息をついてから私に話し掛けてきた。

 

「ごめんなさいね、リセちゃん。この子にはリセちゃんを起こしに来てくれるように頼んだのに……」

「あはは、良いんですよ。それにしても……」

 

 私はダイアナの寝顔を見ながらクスリと笑った。

 

「こんなにも幸せそうな寝顔して……どんな夢を見ているんでしょうね?」

「……さあね。でも、私が思うに夢の中にはリセちゃんがいると思うわ」

「え……どうしてですか?」

「この子、昔からあまり周りの子と接するのが苦手で、幼馴染みのエリアル君くらいしか話す相手もいなかったのよ。でも、あなたとは初対面でも笑って話しているし、こうして抱きついて眠るほど懐いている。たぶん、リセちゃんの事を信頼出来る子だと思ってるのよ」

「私の事を……」

「……ふふ、まあ、本当のところはこの子に訊かないとわからないけどね。さて、そろそろ起こしましょうか」

 

 そう言うと、ディアドラさんはダイアナの腕を私から離してから、その体を優しく揺さぶった。

 

「ほーら、早く起きなさい」

「うーん……後5分……」

「後5分、じゃないでしょ。リセちゃんはもう起きたわよ」

「……ふえ?」

 

 眠そうな声を上げながらダイアナは目を覚まし、可愛らしい欠伸をしてから私を見ると、すぐにハッとした様子で慌てて頭を下げ始めた。

 

「ご、ごめんね……! 私、リセちゃんを起こしにきたのに……」

「ううん、良いよ。それにしても、すごく良い寝顔で寝てたけど、どんな夢を見てたの?」

「えっとね、リセちゃんとお花畑でお話ししてる夢だよ」

「あ、そうなんだ」

「うん! ああ……すごく楽しかったなぁ」

 

 ダイアナが心から楽しそうな顔で言う中、私はダイアナの右手の甲に浮かんでいる剣と盾が重なった形をしたアザのような物に気付いた。

 

「ねえ、ダイアナ。その右手のって……」

「……うん? あれ……何だろう、これ……?」

「……嘘でしょう……?」

「お母さん……どうかしたの……?」

 

 ダイアナが声を震わせながら訊くと、ディアドラさんは信じられないといった様子で答えた。

 

「それは……勇者の紋章。ダイアナ、あなたは勇者に選ばれたのよ……!」

「私が……勇者? あははっ、そんなわけないよ。だって、私はただの村娘だよ?」

「……伝説の勇者も元々は田舎の村に住んでいたと聞くわ」

「…………」

 

 ダイアナが真剣な顔をしながら黙り混む中、ディアドラさんも同じように真剣な顔をしながら話を続けた。

 

「……伝説では勇者の紋章が出た日の夜、夢の中に女神様が現れ、祝福を与えてくださるらしいわ」

「祝福……そして私は、魔王を倒すための旅に出ないといけない……んだったよね」

「……そうよ。でも、あなた。魔王を倒す旅に出る勇気はある?」

「それは……」

 

 ダイアナが答えに(きゅう)する中、ディアドラさんはダイアナの手を取った。

 

「……とりあえず、お父さんにもお話ししましょう。そして、手を怪我したという事にして、手には包帯を巻いておくわ。良いわね、ダイアナ」

「う、うん……」

「リセちゃんもそういう事にしてもらっても良いかしら?」

「は、はい……でも、勇者を探しに誰かが来たらどうするんですか?」

「その時は何があっても隠し通すわ。そうじゃないと、ダイアナが無理やりにでも連れていかれそうだから」

「……わかりました」

 

 私が頷きながら答えると、ディアドラさんは勇者の紋章の事を伝えるため、ダイアナを連れてダイアナのお父さんであるアルバートさんのところへ先に向かった。そして、部屋に残された私はこの先の展開について考え始めた。

 

「……勇者の紋章の事がバレた場所以外は『勇者の戦記』通り。そして、この後はダイアナのお気に入りの丘で幼馴染みのエリアルが旅について行くと言い、それで安心したダイアナが旅に行く勇気を出して、ディアドラさん達を説得する流れにはなるんだろうけど、そこに私がどう介入していけば良いかな。いっそ、私がエリアルの代わりになっても良いけど、それじゃあエリアルが旅に出ないという流れになっちゃいそうだし……」

 

 あれこれと考えていたその時、私のお腹からグーと音が鳴った。

 

「……でも、まずは腹拵えからかな。まあ、今は正直そんな雰囲気じゃないんだろうけど、お腹を空かせたままだと何も良い事は無いからね」

 

 そして私は、ベッドからゆっくりと出た後、スノー一家の待つリビングに向けて静かに歩き始めた。

 

 

 

 

「……ふう、やっぱり雰囲気はそんなに良くなかったなぁ」

 

 朝食後、私は考え事をするために宛がわれている部屋へと戻ってきていた。私が予想していた通り、食事中はとても暗い空気で、ディアドラさんとアルバートさんは真剣な顔をしながら話し合い、ダイアナは包帯を巻かれた右手をとても気にしており、昨晩のような楽しい雰囲気はどこにも無かった。

 

「まあ、こればかりは仕方ないよね。さてと、そろそろダイアナは例の丘に行きそうだし、私もダイアナの後を追って丘まで行ってみようかな」

 

 そう思い、部屋を出ようとしたその時、部屋のドアをコンコンとノックされ、私はどうぞと声をかけた。すると、とても思い詰めた様子のダイアナが中へ入ってきた。

 

「ダイアナ、どうしたの?」

「……ねえ、ちょっとついてきてもらいたいところがあるんだけど、良い……かな?」

「別に良いけど……それってどこなの?」

「私のお気に入りの丘。何か落ち込む事があっても、そこに行けばすぐにどうにかなるから」

「……わかった。それじゃあ行こっか」

「うん……」

 

 そして、ダイアナと一緒に部屋を出た後、私はダイアナの後に続いて件の丘に向かって歩き始めた。丘に向かって歩く間、私達は一言も会話を交わさなかったけれど、丘に着いた瞬間、ダイアナはとても落ち着いた様子で小さく息をついた。

 

「はあ……やっぱりここは落ち着くなぁ……」

「ここがダイアナのお気に入りの場所……うん、自然も豊かで景色も良いし、ダイアナがお気に入りって言うのも納得かも」

「ふふ、そう言ってもらえて良かった」

 

 ダイアナはとても嬉しそうな顔をしたけれど、すぐに暗い顔をしながら丘から見える景色に目を向けた。そして、私はその隣に立った後、ダイアナに話しかけた。

 

「ダイアナ。ダイアナはやっぱり勇者として旅立つのは不安?」

「……うん。勇者に選ばれた以上、旅立たないといけないのはわかるよ。でも、今日まで一切戦闘をしてこなかった私が魔王を倒すための旅に出るなんてやっぱり不安だし、怖いんだよ……」

「でも、何か称号は持ってるよね? この世界では10歳になったら『鑑定士(アプレイザー)』に自分にとって適性のある物を鑑定してもらって、それを極めていくのが普通なんでしょ?」

「……よく知ってるね。リセちゃんの言う通り。そして私は、一応色々な適性があったから、『剣士(ブレイダー)』と『魔法使い(マジシャン)』、『僧侶(モンク)』の称号は手にいれたよ」

「……そうなんだ」

「それに加えて、今は『勇者(ブレイブ)』の称号もあるから、みんなから期待はされると思う。でも、不安でいっぱいなのと怖いのは変わらない。そして、それはお母さん達も同じなんだと思う」

「そうだろうね。娘がいきなり勇者に選ばれて、その上、魔王を倒すための旅に出してやらないといけないってなったら、とっても不安だろうし、旅の中で命を落とすかもって思ったら怖いと思う」

 

 私がいた世界には、勇者や魔王なんていう存在はいない。でも、昔から国家間の戦争はあり、そのために戦いに行く人やその人達の家族が抱える不安や恐怖は絶対にあっただろう。そして今、ダイアナとディアドラさん達はそれを体感しているのだ。

 

 ……だからこそ、私が言うべき言葉は決まってる。

 

「あの、ダイア──」

「ダイアナ!」

 

 その声に驚きながら私達が声がした方を見ると、そこにいたのはどこか心配そうな顔をしながらこちらを見るメガネをかけた短い黒髪の少年だった。




政実「第2話、いかがでしたでしょうか」
凛世「なんだか今回は気になるところで終わったけど、次回になったら色々解決しそうだね」
政実「そうだね。そして、次回は凛世についても色々明らかになっていくよ」
凛世「りょーかい! そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします!」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
凛世「うんっ」
政実・凛世「それでは、また次回」
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