好きな小説の世界に転移したので勇者に不殺の道を歩ませる 作:九戸政景
凛世「どうも、尾張凛世です。そういうスキルを使うと、相手の弱点がわかったりして戦いが有利になるから、たしかに使いたくはなるよね」
政実「うん。それに、図鑑のデータ埋めがあるゲームも中にはあるから、結構使う人は多そうだよね」
凛世「たしかに。さてと、それじゃあそろそろ始めていこっか」
政実「うん」
政実・凛世「それでは、第3話をどうぞ」
「エリアル……どうしてここに?」
「ダイアナと何か話そうと思って家に行こうとしたら、お前がそこの奴と一緒にここへ向かって歩いていくのが見えてついてきたんだ」
「そうだったんだ……」
「……それで、こいつは何なんだ?」
エリアルが私の事を胡散臭そうに見る中、私はにこりと笑いながらエリアルに自己紹介をした。
「始めまして。私はリセ・オワリ。昨日からダイアナの家にお世話になってるの」
「……俺はエリアル・ロイス。この『ルハラ』の出身で、ダイアナの幼馴染みだ。これでも『
「『中級鑑定士』……」
「ああ。それで、お前は何の称号持ちなんだ?」
「私の称号……」
そういえば……まだ確認してなかったけど、私の称号って何だろう? せっかくだし、確認してみようかな。
そう思い、私は『勇者の戦記』で登場人物達がやっていたように頭の中にRPGの装備画面のような物を思い浮かべた。すると、頭の中に浮かんできたのは、『
『異世界人』……まあ、異世界から来た私らしい称号ではあるけど、一体何が出来るんだろう……?
そんな疑問が浮かんだけれど、いつまでも答えないわけにはいかなかったので、私はそれについては後で考える事にしてエリアルからの問いかけに答えた。
「『異世界人』だよ」
「『異世界人』……? なんだ、その称号は?」
「うーん、それが私にもよくわからないんだよね。正直な事を言えば、ちょうど今この称号の事を知ったし……」
「……わけがわからないな」
「あはは……だよね。あ、そうだ……ねえ、よければ私の事を『
「はあ? 何故、俺がそんな事をしないといけないんだ?」
「んー……やっぱり、気になるから? ねえ、ダイアナ。ダイアナも気になるよね?」
「……え? う、うん……気になる……かも?」
ダイアナがそう言うと、エリアルは小さくため息をついた。
「……わかった。仕方ないから視てみてやる」
「ふふ、ありがとう」
「礼なんて良い。さて……」
エリアルが私の事をじっと見つめると、エリアルの目の色はゆっくりと薄くなっていった。けれど、エリアルの顔が驚きの色に染まると同時にそれは元に戻り、その様子にダイアナは少し心配そうな顔をした。
「エリアル……どうしたの?」
「……こいつ、本当に異世界から来たのか……!?」
「うん、そうだよ。それもこことは違って魔法なんて無い世界からね」
「それなら、この魔力量は何なんだ!? それに、聞いた事がない魔法まで会得しているぞ!?」
「え? リセちゃん、何か魔法が使えるの?」
「いやいや、使えないよ。あ、でも……何が使えるかちょっと気になるかも。ねえ、何個か名前上げてみて?」
「あ、ああ……」
そして、エリアルから何個か名前を上げてもらった後、私はその中の一つの名前を口にした。
「……『
すると、私の中に何かが入ってきたような感覚を覚え、私は一瞬だけ気持ち悪さを覚えた。
「う……!」
「リセちゃん!」
「だ、大丈夫……一瞬だけ気持ち悪くなっただけだから」
「それなら……良いけど……」
「……ふう、それにしても、さっきの何かが入ってきたような感覚は一体──」
その時、頭の中でファンファーレが鳴り響き、それに対して驚いていると、頭の中で女の人の声が聞こえてきた。
『おめでとうございます、尾張凛世様。あなたはこの度、『中級鑑定士』の称号とそれに付随する能力を入手しました』
「……え?」
「リセちゃん、どうしたの?」
「……今、頭の中で『中級鑑定士』の称号とそれに付随する能力を入手しましたって、誰かの声で言われたんだけど……」
「え、本当!?」
「……そんなわけあるか。『鑑定士』の称号を得る前に『中級鑑定士』の称号を手に入れるなんてあるはずがない」
「私もそう思うんだけど……実際にあるんだよね、これが……」
「なんだと!?」
エリアルが驚く中、私がそれを証明するため、『異世界人』の称号を外して『中級鑑定士』の称号を装備しようとしたその時、何故か『異世界人』が外れないまま『中級鑑定士』の称号が装備された。
「あれ……『異世界人』が外れないまま『中級鑑定士』が装備出来ちゃった」
「え、それってすごいんじゃ……」
「すごいなんて物じゃない……本来、称号は一度に二つなんて装備出来ないんだぞ? それなのに、装備出来ているなんて……お前、本当に何者なんだ?」
「うーん……強いて言うなら、規格外な異世界人……かな? さてと、エリアル。もう一回『鑑定』してみて?」
「……わかった」
そして、再びエリアルが私の事を鑑定すると、エリアルはまた驚いた様子を見せた。
「……本当に『中級鑑定士』とその能力を持っている……」
「じゃあ、リセちゃんは本当にエリアルの称号と能力を手に入れちゃったんだ……」
「そうみたい……だね。それにしても……この『入手』ってすごいなぁ。使った後は何故か気持ち悪くなっちゃうみたいだけど」
「恐らく、条件を無視して手に入れている分、体が一時的に拒否反応を示しているんだろうな」
「なるほどね……」
あ、そういえば……『鑑定士』の『鑑定』って自分にも使えるはずだし、ちょっと使ってみようかな。えーと、やり方はたしか自分に手を翳して『鑑定』を使うんだったよね。
「『鑑定』」
そして、自分を『鑑定』すると、頭の中にRPGのステータス画面のような物が浮かび、次々と私に関する情報が入ってきた。
「ふむふむ……なるほど。私が称号を二つ装備出来たのは、『
「スキル……って、何?」
「えっと……たぶん、魔法や能力とも違った物で、『異世界人』を持つ私しか使えない物なんだと思う」
「そっかぁ……」
「因みに、『異世界人』は固定みたいで、もう一つの称号は付け替えが出来るみたいだよ」
「なるほどな……」
「……まあ、他にも色々なスキルがあって、中には攻撃系のスキルもあるみたいだし、これならいざという時にはダイアナの事を守ってあげられるね」
私がにこりと笑いながら言うと、ダイアナはハッとしたような表情を浮かべ、エリアルは不思議そうな様子でダイアナに話しかけた。
「ダイアナ、守るっていうのはどういう事だ?」
「あ……え、えっと……」
「……ダイアナ。あの事、エリアルには言っちゃった方が良いよ」
「で、でも……」
「ダイアナが言わないなら私が言っちゃうよ?」
「う、うぅ……」
ダイアナは心から言いたくなさそうな様子を見せていたけれど、「……わかった」と言うと、右手の包帯を静かに取り、手の甲に浮かんだ勇者の紋章を見せながら話を始めた。そして話が終わると、エリアルは心配そうな顔をしながら「そういう事か……」と呟き、私はそんなエリアルを見ながら声をかけた。
「エリアル。エリアルもやっぱりダイアナが魔王を倒すための旅に出るのは無理だと思う?」
「……正直な事を言えばな」
「…………」
「だが、こうして勇者の紋章が出た以上、いつかは旅立たないといけないだろうな。ダイアナの両親がいくら勇者の紋章の事を隠そうともそれはいつかバレるだろうからな。そして、そんな事をしている内にこの『ルハラ』にも魔王の魔の手が迫り、ダイアナが命を落とす可能性はある。それならば、勇者として旅立ち、その旅の中で修行を重ねながら仲間を増やし、魔王を倒す方が明らかに良いと俺は思う」
「エリアル……」
「まあ、一番大切なのはダイアナ自身の気持ちだが……ダイアナ、お前はどうしたい?」
「私は……」
ダイアナはそう言いながら俯き、しばらく黙りこんだ。そして、静かに顔を上げると、覚悟を決めたような表情を浮かべながら口を開いた。
「……魔王を倒してこの世界を平和にしたい。こんな私に出来るかはわからないけど、それが私の使命なら私は頑張りたい」
「……そうか」
「うん……」
「……それなら、俺もその旅についていこう。これでも初級魔法くらいなら使えるから、足手まといにはならないはずだ」
「エリアル……うん、ありがとう!」
「どういたしまして。それで……リセ、だったか。お前もついてくるつもりなんだろう?」
「それはもちろん。私がこの世界に来たのは、たぶん、ダイアナのサポートをするためだからね」
「リセちゃん……」
「でも、ちょっとだけ提案があるんだけど……良いかな?」
「提案?」
ダイアナが不思議そうに首を傾げる中、私は昨晩に考えていた事を二人に話した。すると、二人は一瞬だけ困惑したような表情を浮かべたけれど、すぐに笑みを浮かべながら静かに頷いた。
「そうだね。リセちゃんに言われて改めて思ったけど、モンスターだって私達と同じで生きてるんだもん。それなら、むやみやたらに命を奪うのは良くないよ」
「だが、それを守れない時がある事だけはわかってくれ。相手の命ばかりを重んじて自分の命を失っては意味が無いからな」
「うん、それはわかってる。だから、私もそうするつもりだよ。でも、基本的にはモンスターの命は奪わない方向でお願いね」
「うん!」
「わかった」
「二人ともありがとう。よし……それじゃあ勇者パーティ、これよりしど──」
その時、私はある事を思い付いた。
「あ、そうだ……せっかくだから、パーティ名が欲しくない?」
「パーティ名……そういえば、パーティを組んでる冒険者の人達は、自分達なりの名前をつけてるんだよね」
「そうだな。だが、どんな名前にするんだ?」
「そうだね……」
うーん……せっかくだから、何か勇者であるダイアナのパーティらしい名前が良いよね。でも、勇者としてみんなの希望になれるような名前が良いから……。
持ってる知識を総動員してあれこれと考えていたその時、私はある名前を思い出した。
……そういえば、これにはそういう意味があったっけ。名前もダイアナのパーティらしいし、これが良いかな。
そう思った後、私はその名前を口にした。
「ねえ、スノードロップっていうのはどうかな?」
「スノードロップ……なんだか可愛い名前だけど、どうしてそれにしようと思ったの?」
「えっとね。スノードロップっていうのは、私のいた世界にある花の名前で、『希望』っていう花言葉があるの」
「希望……」
「うん。言ってみれば、勇者はこの世界の希望でしょ? だったら、その意味を持つ物の名前が良いなと思ったの」
「なるほどな」
「それに、スノードロップは別名マツユキソウって言われてて、春を告げる花だとも言われてるの」
「春を告げる花……」
私の言葉をダイアナが繰り返す中、私は説明を続けた。
「今は魔王軍の侵略のせいで冬の寒さのように厳しい状態かもしれない。でも、私達が魔王をどうにかする事で平和を、この世界の春を告げたいと思ってる。それが私達の使命だからね」
「……そうだな」
「それと……ダイアナのフルネームはダイアナ・スノーでしょ? だから、同じスノーって付く名前を付ける事でダイアナのパーティなんだっていう事を印象付けたいと思ってね」
「あはは……そう言われると、少し緊張しちゃうけど、私はこの名前は好きだよ。エリアルはどう?」
「俺もそれで良いと思う」
「わかった。それじゃあ改めて……スノードロップ、始動するよ!」
「うん!」
「ああ」
丘にダイアナ達の声が響いた後、私はダイアナ達に頼もしさを感じながら魔王を倒す旅に向けてのやる気を高めていった。
「……ふう、これで『勇者の戦記』のストーリー通りにダイアナは旅に出られるね」
その日の夜、私は自分の部屋のベッドに寝転がりながら安心感を覚えていた。
「ダイアナの説得で、ディアドラさん達もダイアナが魔王を倒すための旅に出る事を許してくれたし、これでとりあえず一安心だけど、本当に安心するのはまだ早いよね。それに……やっぱり、『異世界人』の称号の事も気になるかな……」
私のみが持っている謎の称号である『異世界人』。これを持っている事で使えるスキルはとても便利だけど、謎が多い分、不安なところもある。
「……まあでも、旅をしていく中でたぶん色々とわかるよね」
『異世界人』の称号についてそう結論付けていたその時、私の口から欠伸が漏れた。
「ふあ……さて、そろそろ寝ようかな。ストーリー通りなら、明日は『ユグド王国』からの使いがここを訪れるはずだし、寝不足じゃあ良くないもんね」
そう独り言ちた後、私は部屋の明かりを消し、ベッドのなかに入って、「おやすみなさい」と言ってから静かに目を閉じた。
政実「第3話、いかがでしたでしょうか」
凛世「私だけの称号やスキルの存在、後は謎の声の登場と色々な事があったけど、この先のストーリーにも関わってくるのかな?」
政実「そのつもりだよ」
凛世「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします!」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
凛世「うん!」
政実・凛世「それでは、また次回」