好きな小説の世界に転移したので勇者に不殺の道を歩ませる   作:九戸政景

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政実「どうも、勧善懲悪物が好きな片倉政実です」
凛世「どうも、尾張凛世です。勧善懲悪物かぁ……たしかに見たり読んだりしていてとっても気持ちの良いものだよね」
政実「そうだね。まあ、その悪サイドにも色々な理由やドラマがあったりするんだけどね」
凛世「ふふ、そうだね。さてと、それじゃあそろそろ始めていこっか」
政実「うん」
政実・凛世「それでは、第4話をどうぞ」


第4話 凛世の怒り

 翌日の朝、私はダイアナ達と一緒に朝食を食べながらこの先の展開について考えていた。

 

『勇者の戦記』のストーリー通りなら、今日『ユグド王国』から使いが来るはず。そして、その使いと一緒に『ユグド王国』に着いた後、私達は王様に謁見するわけだけど、問題は『ユグド王国』までの旅についていく手段だね。『勇者の戦記』でもエリアルは旅についていくためにその使いに挑み、その力を見事に示した。だから、私も同じように力試しをすれば良いんだけど、そもそもその使いは私の事を相手として認めてくれるのかな。認めてくれるなら、私は全力で戦うけど、もしも認めてくれなかったらどうしようかな……。

 

 そんな不安が私の中に募り出したその時、私の頬に何か尖った物が触れた。

 

「うん?」

 

 見てみると、隣に座っているダイアナが自分の人差し指で私の頬を軽く押していた。

 

「ダイアナ?」

「なんだかリセちゃんが難しい顔をしてるなと思ってね。それで、何を考えてたの?」

「ん……ちょっと旅の事をね」

「旅の事か……まあ、たしかに色々不安だよね。この先、どんな事があるかなとか誰か仲間に加わってくれるかなとか……」

「うん、そうだよね」

「でも、私はあまり心配してないかな」

「え、どうして?」

 

 その問いかけにダイアナはにこりと笑いながら答えた。

 

「だって、私にはリセちゃんとエリアルがいるもん。面と向かって言うのはちょっと恥ずかしいけど、リセちゃんとエリアルはお母さん達を除けば私が知ってる中で数少ない信頼出来る相手だと思ってるからね」

「ダイアナ……」

「そんな二人がいるんだもん。少しの不安くらいなら私はへっちゃらだよ」

「……そっか」

「うん♪」

 

 信頼出来る相手、か……まだこの『ルハラ』の人達とは話していないから、私自身は何とも言えないけど、ダイアナ自身はここの人達に対して何か感じるところがあったのかもしれないな。たしか、ディアドラさん達は元々ここの出身じゃなかったはずだから、その関係で何か他の子から嫌な思いをさせられた可能性は大いにあるし。

 

 ダイアナの言葉からそんな事を考えた後、私の頭の中は私の固有称号である『異世界人』の事に移った。

 

 そういえば、この『異世界人』を持ってる事で使えるスキルには色々な種類があったけど、まだ試してないのが幾つかあったなぁ。せっかくだし、ご飯を食べた後にダイアナ達に手伝ってもらって色々試してみようかな。

 

「ねえ、ダイアナ。後でスキルの研究に付き合ってもらって良い?」

「スキルの? もちろん、良いよ。私も色々気になってたからね」

「ありがとう。よし、それじゃあさっさと食べて研究に移ろうか」

「うんっ!」

 

 明るく答えてから急いで朝食を食べ進めていくダイアナの姿にクスリと笑った後、早めに研究をするために私も朝食をどんどん食べ進めていった。

 

 

 

 

「それじゃあ、行ってきまーす!」

「行ってきます」

 

 朝食後、各々の部屋で軽く準備をしてから私達は声を揃えてディアドラさん達に挨拶をした。そして、それに対して答えてもらった後、私達は昨日行った丘に向かって歩き始めた。すると、その途中でこっちに向かって歩いてくるエリアルの姿が目に入り、ダイアナはとても嬉しそうにエリアルに向かって手を振り始めた。

 

「おーい、エリアルー!」

「……ダイアナ、それにリセか。おはよう」

「うん、おはよう!」

「おはよう。もしかして、ダイアナを迎えに来たとか?」

「……そんなところだ。お前達の事だから、リセのスキルの研究をしに行くと思って、その見学をするためにまずはダイアナの家を訪ねようとしてたんだ」

「おお、大正解! 流石はエリアルだね!」

 

 そう嬉しそうに言いながらダイアナがエリアルに抱きつくと、エリアルは小さくため息をつきながらもどこか安心したように笑みを浮かべた。

 

 ふふ、エリアルもダイアナの事は好きだからね。やっぱり、ダイアナがいつも通りだと安心するのかな。

 

 そんな事を考えながら二人の様子を微笑ましげに見ていると、それに気づいたエリアルがハッとしたような表情を浮かべ、こほんと咳払いをした。

 

「……とりあえず、早く丘に行くぞ」

「うんっ! そういえば、リセちゃんの『入手』のスキルを受けてから、何か称号に変化はあった?」

「変化か……特には無いが、強いて言えば少しだけ熟練度の上がり具合が良くなった気はするな」

「熟練度の上がり具合?」

「ああ。あの後も『上位鑑定士(トップアペタイザー)』を目指して色々な物を『鑑定』していたんだが、『鑑定』をした後の熟練度の上がり具合がいつもよりも良かった気はする」

「なるほど……という事は、『入手』は使った側だけじゃなく、使われた側にも好影響を与えるわけだね」

 

 エリアルの言葉を聞いて、私が『入手』についての新しい知識を取り入れていると、ダイアナは何かを思い付いたような表情を浮かべた。

 

「あ、それじゃあ……私の『剣士』や『魔法使い』もリセちゃんが『入手』で手に入れれば……!」

「たぶん、早めにランクアップするだろうね。私もその辺の称号は持っていて損は無いと思ってるし、丘に着いたら『入手』で手に入れてみようかな」

「うん、そうしようそうしよう! それにしても……リセちゃんのスキルって不思議な物が多いんだね」

「そうだな。今わかっているだけでも、一度に二つの称号を装備出来る『双顔』に相手の装備している称号を取り入れ、相手の称号の熟練度を上げやすくする『入手』と中々不思議な物ばかりだからな」

「あはは、そうだね。そして、他のスキルもたぶん不思議な物ばかりだろうし、色々試してみたいな」

「そうだね。よし……それじゃあそろそろ行こっか、二人とも」

「うん」

「ああ」

 

 ダイアナの言葉に返事した後、私達は件の丘に向かって再び歩き始めた。そして、丘まであともう少しというところまで来たその時、丘のところに誰かがいるのに気付き、ダイアナは少し嫌そうな顔をした。

 

「……あれって……」

「……ああ、アイツらだな」

「アイツらって……もしかしてダイアナ達の知り合い?」

「そんなところだ。まあ、知り合いと言っても仲が良いわけではないけどな」

「うん……昔から私達にちょっかいばかりかけてくる嫌な奴らだからね」

「ちょっかい、ねえ……」

 

 そのちょっかいのレベルが気になるけど、その辺は置いておいて、とりあえず退いてもらえるように言わないとだね。そうじゃないと、私のスキルの研究にならないし。

 

 そんな事を思いながら進んでいき、その人達に近付いていくと、その人達は私達に気付き、ダイアナとエリアルを見ながらにやにやと笑い始めた。

 

「なんだお前達か」

「今日も夫婦で仲良くピクニックか?」

「ふ、夫婦じゃないから! エリアルはただの幼馴染みで、仲の良い友達だよ!」

「そうだな。だから、その言葉は不適格だ」

「へっ、そうかい。ところで……なんだか新しい奴を連れてるみたいじゃないか」

 

 その内の一人が見ていて気分の悪くなる顔で私を見ると、ダイアナは少し怒った様子を見せた。

 

「……それが何?」

「もし、こいつに手を出すつもりなら、容赦はしない。こいつは俺達の仲間だからな」

「容赦はしない、だぁ?」

「はっはっは! 全然初級の段階からランクアップしてないこいつとサポートくらいしか出来ないお前に何が出来るんだよ?」

「おい、そこのお前。こいつらとつるむのを止めて、俺達の女になるって言うなら、少しは可愛がってやっても良いぜ?」

「ははは! そりゃあ良いな!」

 

 その言葉と笑い声を聞いた瞬間、私の中で何かがプツンと切れたような気がした。

 

 ……どの世界にもこういう奴はいるんだね。なら、仕方ない。少しだけ“玩具”になってもらおうかな。

 

「リセちゃん、下がっ──」

「ううん、ダイアナ達こそ少し下がってて」

「リセ……?」

「安心して? こいつらを私のスキルの実験台にするだけで、流石に命までは取らないから」

「リセちゃん……もしかしなくても本気で怒ってる……?」

「……そうだね。こんな男の風上にも置けない汚物がここにいるだけでも不愉快なのに、大切な仲間にあんな事を言うような奴らにそんな目で見られてるなんて怒らないわけないでしょ?」

 

 静かに怒りながら私がダイアナに対してにこりと笑っていると、それを聞いていたそいつらは少しイラッとした様子を見せた。

 

「てめぇ……女だからといって調子にのってんじゃねぇぞ!」

「お前みたいな女、俺達が本気を出せばどうにでも出来んだぞ!?」

「そんな言葉しか吐けないなんて……脳みそが本当に小さいんだね。可哀想に」

「何だと!?」

「本当に倒せるって言うなら、全員でかかってきなよ。もし、本当に私の事を倒せたら、私の事を好きにして良いからさ」

「リセちゃん!?」

「……言ったな? よし、お前ら。この女をさっさと倒して色々楽しませてもらおうぜ!」

『おー!』

 

 そしてそいつらは、見ているだけで寒気のする顔をしながら、一斉に私に向かって飛び込んできた。




政実「第4話、いかがでしたでしょうか」
凛世「次回は私vs村の若者回かぁ……そういえば、次回は+αな展開はあるの?」
政実「一応、そのつもりだよ」
凛世「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いしまーす!」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
凛世「うんっ!」
政実・凛世「それでは、また次回」
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