好きな小説の世界に転移したので勇者に不殺の道を歩ませる   作:九戸政景

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政実「どうも、使えるなら召喚術を使ってみたい片倉政実です」
凛世「どうも、尾張凛世です。召喚術かぁ……たしかに憧れるよね」
政実「うん。そして、召喚した誰かと一緒に強敵と戦う。すごく夢があるよね」
凛世「あはは、そうだね。さて、それじゃあそろそろ始めていこっか」
政実「うん」
政実・凛世「それでは、第5話をどうぞ」


第5話 異世界人の実力

 ……おおよそ、数の暴力に頼ればすぐにどうにか出来ると思ったんだろうけど、その考えは甘いんだよね。

 

 そう思った後、私はこの状況に良さそうなスキルを発動した。

 

「『霧消(フォッグ)』」

 

 しかし、私にもそいつらにも何も起こった様子はなく、ミスをしたかなと思った瞬間、飛び込んできた全員の体が私の体をするりと“すり抜けた”。

 

「なっ……!?」

 

 そして、そいつらが重なるようにして地面に勢いよく倒れ込んだ後、私はすり抜けた部分が少し細かい粒子みたいになってから、元に戻ったのを見て、『霧消』がどんなスキルかを理解した。

 

「……へえ、パッと見は何も変わってないけど、『霧消』は私の体を霧状にするんだね。これはかなり便利かな」

「て、てめぇ……一体何もんだ……!?」

「訊かれて答えると思った? 答えるわけないじゃん」

「何だと!?」

「さて、次の実験に移ろうかな。次は──うん、これにしよう」

 

 足元にいるそいつらを見ながら次に使うスキルを決めた後、私はそのスキルの名前を口にした。

 

「『操作(マリオネット)』」

 

 すると、私の両方の手から細い糸のような物が現れ、それは未だに私の足元に転がっているそいつらの背中へ伸びた。そして、そのまま体の中に入りこんだ後、私はふとある事を思いつき、それを頭の中に思い浮かべた。すると、全員が勢いよく立ち上がり、お互いに殴り合いを始めた。

 

「な……!?」

「なんだ……これ!?」

「体が……言う事を、聞かねぇ……!?」

「……あ、やっぱり。『操作』はその名前の通り、糸が繋がった相手を私の意思で動かせるんだね。もっとも、複数人を一度に動かすのは中々疲れるけど」

 

『操作』を使った感想を口にしていると、そいつらは殴り合いを続けながら私に声をかけてきた。

 

「ふ、ふざけんな……!」

「早く……元に戻し、やがれ……!」

「やだ。そんな事をしたら、また一斉に襲ってくるでしょ。まあ、『霧消』がある限り、魔法以外の攻撃は効かなそうだけどね」

「だったら、魔法で──」

「使えるなら使いなよ。もっとも、それをどうにか出来そうなスキルもあるみたいだけど」

 

 昨日『鑑定』で確認をしたスキルを幾つか頭の中に思い浮かべながら言うと、そいつらは心から驚いた様子を見せた。

 

「な、何だと……!?」

「こいつ……化け物か!?」

「化け物なんて心外だなぁ……私はただの『人間族』だよ。まあ、規格外なのはその通りだけど」

 

 さてと……このまま殴り合いを続けさせても意味はないし、次の実験に──。

 

 そう思いながら次のスキルを使おうとしたその時、突然酷い頭痛に襲われ、私は咄嗟にすべてのスキルを解除してしまった。

 

「っ……!」

「リセちゃん!」

 

 焦ったようなダイアナの声が聞こえる中、私が地面に膝をついていると、頭の上から怒りのこもった声が聞こえてきた。

 

「ふざけた真似をしやがって……」

「こうなったら、死ぬよりも辛い目に遭わせてやるぜ……!」

 

 死ぬよりも辛い目、か……あはは、それはやだなぁ……。

 

 そんな事を考えながら頭痛に耐えていたその時、こちらに向かって誰かが走ってくる音が聞こえた。

 

 あれ……誰だろう? ダイアナとエリアルかな……?

 

 そう思いながら音がした方に顔を向けると、綺麗な銀色の鎧を身に纏った短い金髪の人物がこちらに向かって走ってきていた。そして、その人物が私を守るようにして目の前に立つと、取り囲んでいた内の一人がその人に話しかけた。

 

「なんだ、てめぇは?」

「一人の女性を取り囲んで何かをしようとするような卑怯者達に名乗る名前はない!」

「卑怯者、だぁ?」

「この女がなめた真似をしやがったから、その罰を与えようとしてただけだよ!」

「そうか……なら、尚更退くつもりはないな」

「何だと?」

 

 金髪の人物の言葉に男達の内の一人がイラッとしたような声を上げる中、私は頭痛に耐えながらどうにかその場に立ち上がった。

 

「はあ、はあ……」

「君、そこで待っていたまえ。すぐにこの男達をどうにか──」

「……いえ、私がやった事なので、私がどうにかします……」

「しかし……」

「……大丈夫です。はあ……関係のないあなたに迷惑をかけられませんから」

「君……」

 

 金髪の男性が心配そうに言う中、私はズキズキと頭が痛むのを我慢しながらこの場に合いそうなスキルを使用した。

 

「……『降臨(アドベント)』」

 

 すると、私の横に大きな渦のようなモノが出現し、その中から金色の鎧を身に纏った短い黒髪の若い男性が姿を現した。

 

「はあ……はあ……あな、たは……?」

「我が名はジェラルド・アヴァロン。我が主、リセ・オワリよ。今よりあなたを守るためにこの暴漢達をねじ伏せてみせよう」

「ジェラルドさん……」

 

 あれ、この名前……どこかで聞いた事があるような……。

 

 そう思っていたその時、私を除いた全員がとても驚いた様子を見せた。

 

「ジェラルド・アヴァロン……だと!?」

「伝説の勇者と共に魔王を討ち果たしたとされる伝説の騎士団長の名前じゃないか!」

「な、何でそんな奴がここに……!?」

「いや、そんな奴を呼び出せたこの女こそ一番の謎じゃないか!?」

 

 そして、男達が恐怖に怯えた様子で後退りをする中、ジェラルドさんはするりと剣を抜き、その切っ先を男達へ向けた。

 

「さて……やるか? 小僧達」

「く……に、逃げるぞ、お前達!」

「あ、ああ!」

 

 ジェラルドさんの気迫に気圧されたらしい男達が丘から逃げていくと、ジェラルドさんはふうと息をつきながら剣を鞘へとしまった。そして、汗が滝のように流れている私の方へ顔を向けると、優しい笑みを浮かべながら話しかけてきた。

 

「我が主よ、お加減はいかがですか?」

「は、はい……まだ頭痛がしますけど、なんとか大丈夫です……」

「そうですか。それは良かった」

「あの……ジェラルドさん、本当にありがとうございました。それと……そちらの方も……」

 

 私がジェラルドさんと金髪の人物に対してお礼を言うと、金髪の人物はハッとしたような表情を浮かべてから慌ててにこりと笑った。

 

「いや、礼には及ばないよ。しかし、伝説の騎士団長殿を呼び出せるとは……君は一体何者なんだ?」

「私は──」

 

 私が名乗ろうとしたその時、背中から勢いよく誰かが抱きついてくる感触があり、私が後ろを振り返ると、そこには今にも泣き出しそうなダイアナの顔があった。

 

「ダイアナ……」

「良かった……リセちゃんが無事で……!」

「……心配かけてごめんね、ダイアナ」

「ううん……リセちゃんが無事ならそれで良いよ……」

「うん、ありがとう……」

 

 抱きつかれながらダイアナの頭を優しく撫でていると、ゆっくりと近付いてきていたエリアルがジェラルドさんを見ながら驚いた様子で呟いた。

 

「……まさか、伝説の騎士団長を全盛期の姿で呼び出せるとはな……」

「うん……たぶん、『降臨』は伝説と呼ばれた人なんかを次元の彼方から全盛期の姿で呼び出せるスキルなんだと思う。ジェラルドさん、そうですよね?」

「その通りです、我が主よ。しかし、我らが味方を出来る時間にも制限があります。その点についてはお気をつけください」

「わかりました。ジェラルドさん、本当にありがとうございました」

「礼には及びませぬ。それが我らの成すべき使命ですので」

 

 ジェラルドさんが優しい笑みを浮かべながら答えていた時、ジェラルドさんの背後にまた大きな渦が現れた。

 

「……どうやら時間のようですな。では、また何かあれば我らをお呼びください。我が主の命とあれば、すぐにでも馳せ参じますので」

「はい、ありがとうございます」

 

 それに対して頷いて答えた後、ジェラルドさんは次元の渦の中へと入っていき、そのまま次元の渦と一緒に姿を消した。

 

 ふう……まさか、伝説の騎士団長さんを呼び出せるなんて思ってなかったなぁ。でも、いざという時には助っ人を呼び出せる事がわかったのは本当に助かるかな。

 

 そんな事を考えた後、私は金髪の人物の方へ顔を向け、静かに頭を下げた。

 

「改めて助けて頂きありがとうございました。私はリセ・オワリ。『異世界人』の称号を持つ者です」

「リセさんか……私はエリオット・バスカヴィル。『ユグド王国』から今代の勇者様をお迎えに来た使いの騎士だ」

「エリオットさんですね。でも、どうしてこの丘に?」

「勇者殿がこちらにいらっしゃると、ご両親から伺ったんだ。勇者殿がこの『ルハラ』にいらっしゃるのは、我が『ユグド王国』の巫女の力でわかっていたからな。それで、お迎えに上がったんだが……リセさん、一体何があったんだ?」

「実は──」

 

 事の次第や『異世界人』の称号について話すと、エリオットさんは納得顔で頷いた。

 

「そういう事か……」

「あはは……情けないですよね。ダイアナ達を守ろうとしたのに、結局他の人に守ってもらう事になってしまうなんて……」

「いや、そんな事はない。誰かを守ろうとする気持ちは大切だからな。まあ、使いこなしきれていない力でどうにかしようとするのは感心しないが」

「う、反省してます……」

「何にせよ、怪我が無いようで良かった。さて、それでは早速ダイアナさんには『ユグド王国』まで共に来て頂きたいところだが……リセさんとエリアル君もついてくると言うのだろう?」

「もちろんです」

「断ると言うのなら、ついていけるだけの力を示して見せますが?」

「……いや、大丈夫だ。本当ならそうしたいところだが、君達からはしっかりとした意志を感じる。それならば、問題はないだろう」

「ありがとうございます、エリオットさん」

「礼は不要だ。さて……それでは、詳しい話をするためにはダイアナさんのご両親も交えてお話をしないといけないから、まずはダイアナさんのお家へ戻ろう。リセさんも少し休まないといけないからな」

 

 その言葉に揃って頷いた後、私達は家に帰るために丘を後にした。




政実「第5話、いかがでしたでしょうか」
凛世「今回三つのスキルが出てきたけど、降臨のスキルはこれからも要所要所で出てきそうだね」
政実「まあ、それはこれからのお楽しみということで」
凛世「はーい。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします!」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
凛世「うんっ!」
政実・凛世「それでは、また次回」
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