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場所は神川学園一年C組。
登校してきた黛 由紀恵は教室の扉を開けて、皆に挨拶する。
「お、おおは、おは、おはようございます!」
緊張で表情が引きつって怖い顔になりながらも挨拶が言えた由紀恵に、
「やったぜ!まゆっち。今日は元気に挨拶出来だぜっ!!」
常に一緒にいる親友、松風(馬形のストラップ)が賞賛の声を上げる。
「おはよう!まゆっち」
1-Cの他の生徒は関わろうとしない由紀恵と松風の腹話術会話を、気にせず挨拶を返してくれたのは大和田伊予。
「伊予ちゃん、おはようございます!」
「松風もおはよう」
「Good morning!」
「あははっ!今日も面白いね」
伊代は同じ一年で初めての由紀恵の友達だ。
「昨日のベイスターズ対タイガース戦見た?」
因みに野球観戦が趣味で、七浜ベイスターズのファンだ。
席について伊予と野球の話をしていると、隣の席の生徒が登校してきた。
「あ、おはよう井ノ中くん」
「お、おおはようごございます」
「おはようだべ」
訛りのある言葉で挨拶を返してくれた井ノ中と呼ばれた男子生徒は席に着くなり、バイト雑誌を開いて熱心に読んでいた。
「あれ、井ノ中くん、バイト探してるの?」
「……ちょっと事情があって、急遽お金が必要になっただよ」
井ノ中は普段は温和でのんびりした雰囲気の生徒なのだが、今日は少し暗く切羽詰まった雰囲気が感じ取れる。
「まゆっち、チャンスだぜ!」
「こら!松風、チャンスなんて不謹慎ですよ」
「……黛さんどうしただ?」
席が隣なだけあって井ノ中は、由紀恵の馬形ストラップと会話するという奇妙な行動に慣れてきていた。
「え、えとその、……私と同じ寮の先輩にバイトに詳しく人や代行業をしている人がいますので、希望に合う仕事を紹介してもらえるかもと……」
「本当だべか?……聞いて貰えると助かるだよ」
「あ、はい。喜んで!」
頼られて嬉しい由紀恵。
「どんなお仕事をお探しですか?」
「給料日払いで力仕事系だと嬉しいだよ、あ!でもオラ狭い場所だと働けないから…」
「あははっ、井ノ中君大きいもんね」
井ノ中は身長190㎝程あり体重は130㎏超えの逞しい体格をしている。
「分かりました。今から聞いてきます!」
「ちょっと待って!もうすぐ授業始まるよまゆっち」
「今じゃなくて良いだよ!」
今すぐ聞きに行こうと教室を出ようとする由紀恵を、慌てて止める伊予と井ノ中。
「そ、そうですか……」
恥ずかしそうに席に戻る由紀恵。
実は由紀恵は前々から井ノ中という生徒を狙っていた。
狙っていたと言っても恋愛的意味ではない、友達になってくれそうな相手としてだ。
井ノ中は体格が大きいのに温和でのんびりした雰囲気でクラスメイトに怖がられるような事はなく(由紀恵と違って)、ニコニコと優しい笑顔でクラスメイトから気軽に声を掛けられることが多い(由紀恵と違って)
他にも幾つが理由があって、由紀恵は井ノ中と友達になりたいと思っていたのだ。
なので仕事を見つけてあげて友達になるチャンスだと思ったのである。
「もう一つの雑誌は料理屋のバイト雑誌?」
井ノ中の机にはもう一つの雑誌が置かれており、その表紙には大きく鍋料理が載っていた。
「これは普通にグルメ雑誌だべ、ちゃんこ鍋屋の特集だからついで買っただよ。バイトも募集してるかもと思ったのは確かだベが…」
「ちゃんこ鍋ですか……そういえば、井ノ中君の下の名前って…」
ちゃんこ鍋と聞いて、あることに気づく由紀恵。
「オラの名前は ヨコヅナ だべ」
小説投稿サイト『カクヨム』にて、
ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、
『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922126022
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