「お前が井ノ中ヨコヅナか」
「今日は宜しくお願いしますだ、源先輩」
島津寮に住んでおり由紀恵から相談を受けた先輩の一人、源忠勝。
養父が代行業を営んでおり、忠勝も仕事を手伝っている。
「急な頼みを聞いてもらって有難うございますだ」
由紀恵に相談した日の週末に仕事を貰えたヨコヅナ。
「こっちも丁度人が必要だったからだよ、礼を言われることじゃねえ」
無愛想な返事をする忠勝だが、通訳するなら「仕事で丁度人手が欲しかったところで、こっちが助かったぐらいだから礼は必要ないよ」と言う意味である。
「聞いてた通り良い体格しているな。見かけ倒しとかは止めてくれよ」
「精一杯頑張りますだ!」
「頑張るのはいいが、張り切り過ぎて怪我するなよ」
「分かりましただ」
現場に向かいながら、仕事の説明をする忠勝。
「倉庫の荷物を運ぶだけの単純作業だが、荷物は重く数も多い。リフトが壊れたらしくて使えない、絶対今日中に終わらせたいから、人手が必要になったそうだ」
「壊れやすい荷物とかはあるだか?」
「いや、そこまで注意が必要な荷物はないらしい」
そんなやり取りをしている内に現場に着く。
「給料は日給、予定以上に時間がかかっても残業代はでねぇからな」
「分かってますだ」
「それじゃ、さっそく始めるとするか」
「了解ですだ」
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「よいしょっと!」
荷物を指定の場所に置くヨコヅナ。
「ここの分はこれで終わりましただ。次はどれを運べばいいですだ?」
「………いや、もう全部終わりだ」
「終わりだべか?」
ヨコヅナが不思議そうにしているのは、一日仕事と聞いていたのにまだ、午後2時過ぎだからだ。
「ああ、もう運ぶものはない。依頼主と話をしてくるから、休んでいてくれ」
「分かりましただ」
今回の仕事の依頼人に業務完了の手続きをしてきた忠勝は、
「これ今日の給料な」
ヨコヅナに給料の入った封筒を渡す。
「ありがとうございますだ……」
渡された封筒の中身を確認するヨコヅナ。
「あれ、多くないだか?」
「井ノ中のおかげで早く終わったからな、色をつけておいた、依頼人も喜んでくれてたよ」
「悪いですだよこんなに…」
「勘違いするな、お前の為じゃねぇ」
多めに給料を渡しているのに、お前の為ではないと言う忠勝。
「ウチの代行業にこういった力仕事の依頼は多いからな。今後も井ノ中に頼みたいから繋ぎ代だよ」
「バイトをクビになったから、仕事を貰えるのはオラとしても助かりますだ」
「バイトをクビに……何かあったのか?」
「え、あ~、ちょっと色々、ありましただ」
「…そうか。じゃ帰るとするか」
ヨコヅナが言いたくないのをくみ取って、話を終わらしてくれる忠勝。
その後、忠勝と連絡先を交換してヨコヅナの代行業の仕事は終わりとなった。
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「ゲンさんお帰り、早かったね」
「源先輩、お、お帰りなさいです」
忠勝が島津寮に帰り、リビングへ行くと直江大和と黛由紀恵がいた。
「ああ、仕事が早く終わってな」
「あ、あの、どうでしたか?、その、今日のお仕事で……」
「仕事が早く終わったのは、黛が紹介してくれた井ノ中のおかげだ。これからも仕事を頼むことにしたよ、良い人材を紹介してくれてありがとな」
「いえいえいえいえっ、私の方こそ無理な相談を聞いて頂きありがとうございます」
「源兄貴の礼とか激レアだぜヤッホイ!」
珍しく素直なお礼を言う忠勝にテンションがあがる松風(由紀恵)。
「井ノ中って、まゆっちがこの前夕食の時に言ってたバイト探してる同級生だったっけ?」
「はい、そうです」
「ゲンさんが勧誘するなんて、よっぽど仕事出来る奴なんだ」
「力仕事はな……だが、その力が半端じゃなかった……」
「へぇ~、凄いマッチョ?」
「いや、あの体型はマッチョとは呼ばないな」
「井ノ中君は、名が体を表してますね」
「ふっ、まさにだな」
「何て名前なんだ?」
「YO!KO!ZU!NA!」
「井の中君の下の名前はヨコヅナです」
「あぁ」
ヨコヅナという名前を聞いて、どんな体型なのか想像するのは容易い。
「確かに力も強そうだ、ゲンさんがそこまで言うならガクトぐらいの力持ち?」
「いや、俺が見るにガクトより上だ。それどころか…」
忠勝は真剣な顔で、
「井ノ中ヨコヅナの力は、川神百代に匹敵するかもな…」
武神とまで呼ばれる相手を引き合いに出した。
小説投稿サイト『カクヨム』にて、
ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、
『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922126022
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