ヨコヅナが再起不能にした、兄弟子は周りから「実力はあるが人としてのクズ」と言われるような男だった。
ある日ヨコヅナは偶然、その兄弟子が女性に乱暴してる場面を目撃し止めに入った。
その時は、少し揉めただけで済んだ…が次の日の稽古で、ヨコヅナと一番を取ったその兄弟子は再起不能の大怪我を負う。
これだけを聞けは事件性を考えるが、当時ヨコヅナはまだ角界に入ってすらおらず、兄弟子は番付が十両の実力ある力士。
その一番は誰がどう見ても反則などない相撲であり、その結果で格上の兄弟子が怪我をした。
だからこの件は事故として処理され、皆も事故だと言う。
ヨコヅナを除いて…
「オラは殺すぐらいの気概で相撲をとっただ、だからあれは故意だべ」
正直言えばヨコヅナは兄弟子を再起不能にしたことを大して気に病んでいない。「ちょっとやり過ぎただべかな」ぐらいは思っているが、同じことがあれば間違いなく同じようにする。
「プロを目指す格闘家、それも格上相手との試合であれば……まぁ今ので最後と言ったからな、相撲を辞めた話はこれで終わりだ」
「そもそも、この話し合いの目的は何なんだべ?」
まずは、と言う感じでヨコヅナの相撲を辞めた時の話をしていたが、根本となる話し合いの目的を聞いてない。
とは言え、ヨコヅナでも一応予想ぐらいはしていた。
将来店を持ちたいヨコヅナ + スカウトが趣味の九鬼紋白 + 料理を美味しいと褒めてもらった + 後日の話し合い = その心は
「将来ちゃんこ鍋屋と開きたいという、お前の夢を援助しても良いかと思ってな」
「じゃあ!資金を援助してくれるってことだべか?」
予想が合っていて嬉しそうなヨコヅナ。
「資金もだが……店を持つ為に経営などの勉強もしておるか?」
「え、あ~、勉強しようとは思っているんだべが…何から始めたら良いか分からなくて…」
つまりやってないという事である。
「苦手な勉強は後回しにしているということか」
「そのままズルズル勉強せず三年が過ぎ、碌に経営の知識もないまま行き当たりばったりで店を開いて、潰れて多大な借金を背負う、そんな赤子の未来が容易に想像できるな」
「……嫌な想像だべな」
ヒュームは言うのであれば、もはや未来予知の域にある想像だ。
「そうならぬよう。知識面でも援助してやろうと思っておる」
「おぉ!それはほんと助かるだ!……でもそんなことまでしてもらって良いんだべか?」
「無論タダではないし、援助の話も確定ではない」
紋白はまだ、援助をしても良いかと
「お前には九鬼に雇われてもらう、言わば査定じゃな」
今日の話の本題と言うのであればこれになる。
「……オラがほんとに援助するに値するか雇って確かめるわけだべか」
「もちろん給金は払う。生活費の心配はしなくてよいぞ」
ヨコヅナの経済状況を分かっている紋白、九鬼で雇う以上そんな心配をさせる気はない。
「俺からも言っておくが、仕事の内容は赤子の得意分野ばかりだと思うなよ。九鬼家に雇われる以上、どんな業務であろうとやってもらう」
「だがそれもお前の為だ。店主つまり経営者として成功するには様々な経験をしておくべきだ。時間の無駄になるような仕事はない」
そう言って紋白はヨコヅナに手を差し伸ばす。
「さぁどうする井ノ中ヨコヅナ! 将来の夢の為、九鬼に雇われるか?」
➡ 『九鬼に雇われる』
『お断りする』
選択肢のようなものが出ているが、断る理由を探す方が難しい。
強いて言えば、まだ正式な契約書があるわけではないと言う部分だが、逆に言えば正式な契約の時に嫌なら断れると言う事だ。。
ヨコヅナは迷うこともなく、紋白の手を取る。
「宜しくお願いしますだ、紋様」
「うむ。これから宜しくな、ヨコ」
小説投稿サイト『カクヨム』にて、
ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、
『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922126022
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