場所は川神学園、体育祭の数日後、
2-Fの教室には、だらけた雰囲気が漂っていた。
「何だ貴様等!その弛んだ態度は!」
担任の梅先生が、ビシっ!と鞭を振るって喝を入れるも、効果は今一つだ。
もともと2-Fは調和が取れていないクラスと言われていたが、今は輪をかけて酷い。
原因は、
「だって、マヨが~」
体育祭の川神戦役で負けて、甘粕真与が2-Sに引き抜かれてしまったからだ。
「宿題の提出率が酷いと、各教科の担当の先生方から苦情が来たぞ」
「いつも委員長が宿題忘れてないか、声かけてくれてたんだよな…」
甘粕真夜は2-Fの委員長だった。Sに行ったので今はもう委員長と呼ぶのはおかしいのだが、癖が抜けないのだ。
「教室の隅も汚れている」
「掃除の時間以外でも、委員長ちょくちょく掃除してたな…」
「花瓶の花も萎れている」
「委員長が水を変えてたから…」
「放課後窓の戸締りも出来ていない」
「委員長が…以下略」
「黒板も汚い」
「以下略…」
次々と出てくる甘粕の隠れた功績。
「貴様等は甘粕がいないと何も出来ないのか!!」
ビシっバシっとさらに鞭を振るって梅先生が喝を入れるも、やはり効果は今一つだ。
前までならこういう場合も、
「みんな、頑張りましょう!」
と、甘粕がクラスのみんなに向けて声をかけてたのだが、
「マヨ~…」
今はそれが無いことで寂しい気持ちになり、逆にやる気がでない。
「失って分かる、身近なモノのありがたみ…か」
クラスの状況を見てそう呟く大和。
「見た目は小さくても、甘粕さんは2-Fにとって大きい存在だったんだね」
「すまない。自分が負けたばかりに…」
体育祭以降元気がないクリス。川神戦役の負けの責任を感じてしまっているのだ。
「クリスの責任じゃないよ」
準との戦いでクリスが負けたことで、勝負が決したのは確かだが、それはただ最後がクリスだったと言うだけの話。
誰もクリスを責めたりなどしない。
「急にS組に編入して、委…甘粕さん大丈夫かな?」
「俺様もちょっと気になってたぜ」
SはFの生徒を見下していたので、心配するのも無理はない。
「いや、それが意外とうまくやってるらしい…」
大和も心配で情報を集めていた。その情報によると、
「初めは甘粕さんを侮辱にする生徒もいたようだが、井上準が駆逐したそうだ」
準が引き抜いたのだ、甘粕を侮辱にする者を許すはずがない。
「友達も出来ている、すぐに義経と仲良くなったらしい」
「ああ、なんか分かる。優しく真面目な性格で、気が合いそう」
「不死川とも、仲良くやってるようだ」
「委員長の懐の深さなら、あの我儘娘にも笑って相手してそうだな」
「九鬼英雄や葵冬馬にも一目置かれてるそうだ」
「成績は常に5番以内だもんね委員長」
「……つまり」
「何も心配する必要はないと言う事だな」
甘粕真夜という人物の凄さを改めて実感した大和達だった。
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