「あーもう痛ってぇ、ヒュームのクソジジイ。しこたまシゴキやかって」
ヒュームによって鬼畜どころか悪鬼羅刹の所業とも言えるシゴキを受けたステイシーはズタボロだ。
「自業自得ですよ、仮とは言え紋様の専属であるヨコヅナに新人イジメみたいな真似をして」
「全くだ、アタイのいない所で問題起こしやがって、序列1位ってだけで寝耳に水でも老人共からグチグチ言われんだぞ」
ヨコヅナと喧嘩した話を聞いた、李とあずみは労わるどころ反省が足りないと言った口ぶりだ。
「傭兵時代とは違うなんて、今さら言わせんなよステイシー」
「でもよ、日本の一般企業でも尻を叩くとかするんだろ」
「それは直に尻を叩くわけじゃねぇよ」
「しかも叩くどころか銃で撃ってますからねステイシーは」
「威力の弱い特殊な銃で弾もゴム弾だぜ」
「それをケツに30発も撃たれて、腫れてデカケツになってんだろ」
ステイシーはうつ伏せになってお尻に氷嚢を乗せている。
「マジで30発撃つとか、あのクソジジイ本当に頭ん中ポンコツなんじゃねぇか…」
「そんなこと言ってるから、拷問のような指導を受けたのでしょ」
「しかも一回で終わりじゃないらしいからな」
「うげぇ~」
ステイシーは今後も続く拷問のようなヒュームの指導を思い浮かべて悲痛な表情になる。
「ちゃんこ出来ただよ」
出来立てアツアツのちゃんこ鍋をテーブルに置くヨコヅナ。
「こんな真夏になんで鍋なんだよ」
「いきなり押しかけてきて、文句言わないでほしいだな」
実はあずみ、ステイシー、李がいるのはヨコヅナの部屋だ。
ヨコヅナの部屋を訪れた理由はちゃんとある。
「そうですよ、それにステイシー」
「文句の前に言う事があんだろステイシー」
あずみと李の言葉に少し恥ずかしそうに頬をかきながら、
「…銃で撃って悪かった、二度としねぇよ。それと庇ってくれてありがとな」
訪れた理由はヨコヅナに謝罪の感謝を伝える為だ。
「お互い様ですだ。オラも張ったり投げたりして、すみませんでしただ」
ステイシーの暴力に抵抗しただけではあるが、女性に暴力を振るってしまったのでヨコヅナも謝罪する。
「ヨコヅナは良い子ですね」
「次からステイシーにパワハラされたら遠慮なくアタイに相談しろ」
「分かりましただ」
「もうしねぇつってんだろ」
「それが信用出来たら苦労しねぇよ」
謝罪が終わり4人でちゃんこ鍋を食べる。
「お!美味いな」
「本当ですね、紋様が認めただけあります」
「うめぇうめぇ、夏に鍋ってのもいけんな」
ヨコヅナのちゃんこ鍋に舌鼓を打つお姉さま方三人。
「そう言っても貰えてうれしいだよ。……そう言えば忍足さんはオラに話があったんじゃなかったですだか?」
ステイシーがヨコヅナの部屋を訪れているのは謝罪の為で、李はその付き添いのようなもの。
あずみも上司として付き添ったのは確かだが、ヨコヅナは今朝、まだステイシーと喧嘩する前にあずみに仕事が終わってから話があると言われていた。
「あ~まぁ、九鬼での仕事はどうだ?やっていけそうか?的な話をするつもりだったんだがな……」
そこでステイシーを睨むあずみ、
「先輩のパワハラが酷いってことは分かった」
「何だよそれはもう済んだ話だろ」
「お互いに和解しても、事実は無くならねぇんだよ。ステイシーの件は抜きとして、どうだ?」
「やっていけそうかはまだ何とも言えないだが、辞めたいとは全然も思ってないですだ。業務の半分以上はオラの将来に役立つことで、ありがたいと思ってますだ」
「ヨコヅナは期間限定の専属でかなり特殊なタイプだからな」
九鬼帝が「何かを育てるのは子どもの情操教育のよい影響を与える」とか言って、食事の時に決まったのだから、ヨコヅナは特殊中の特殊だ。
「ただ、執事らしい事は何もしていないべから、これで良いんだべかな?、とは少し不安に思いますだ」
「ヨコヅナに執事スキルは求められていませんよ」
「それに紋様を肩に乗せて移動したりと専属従者としての仕事はしてんじゃねぇか」
「あれは専属従者の仕事に含まれるんだべか?」
「アタイが英雄様を人力車に乗せて移動するのと同じようなもんだから、専属の仕事と言えなくはないな」
「そうだべか」
一応従者の仕事をしていたことに少し安心するヨコヅナ。
「……他に紋様とは、何かあるか?」
「何か……紋様からパワハラとかってことだべか?そういうのはないだよ」
「そうじゃなくてだな」
言いよどむあずみ。それを見て李が、
「あずみはヨコヅナと紋様の男女としての進展具合を知りたいのですよ」
「な!?李、テメェなんで?」
「それぐらい察せれます」
「バレバレだっての。ヨコヅナ、あずみはお前に「紋様とヤったんか?」って聞きてぇんだよ」
「そこまでは聞く気ねぇよ!……いや、まぁ、話せるなら聞くが…」
パワハラではなく今度はセクハラみたいな質問ではあるが、
「つまり、紋様と恋愛関係にあるのか?と聞いてるだべか……そういうのはないべ」
「そうか…」
「なんだよ面白くねぇな、一緒に風呂入るとか、添い寝するとかしてねぇのかよ」
「あ、それならしましただ」
「してんのかよ!?」
ヨコヅナはいかがわしい事は一切していないが、紋白とお風呂に入ったり昼寝ではあるが一緒に寝たりもした。
「なんか、関取は付き人に背中を流してもらうものだ、と聞いたらしくて、「風呂で我の背中を流せ、フハハ」と命じられましただ」
「さすが紋様豪胆でロックだな~」
「紋様って新しく知った情報に影響受けやすいですからね」
「添い寝は昼寝の時ですだが、紋様が‘となりのトトラ‘のように大きなお腹で寝てみたいと言って、お腹に乗られましただ。でも「思ったより寝にくい」と言ってすぐ降りたべが」
「あははは、そりゃ~いくらヨコヅナの腹が立派とは言え、トトラみたいに寝るのは無理あるわな」
「…そうか。仲の良い兄妹レベルって感じかぁ」
「兄妹っつうより、ペットと飼い主に思えるけどな」
「卑猥な感じがしないのは確かですね」
男女で風呂に入ってたり、一緒に寝ていると聞いてもヨコヅナと紋白だと卑猥な印象を受けないし、事実何もない。
「ペット扱いは嫌だよな~。……でも、一緒に風呂入ったり寝たりしてんのか…」
「羨ましいんだろう~あずみ」
「英雄様はペット扱いはないですが、どこまでも主従ですからね」
「うるせぇ。アタイは……」
「何だよ?はっきり言えよ~。ヨコヅナ酒だせ、あずみに黒糖焼酎で私はバーボンだ」
「無いだよ」
「ああん?じゃビールで良いよ」
「だから酒が無いだよ。あっても料理酒だべ」
「何でねぇんだよ?ちゃんこ鍋屋だろ!」
「オラが未成年で、ここはちゃんこ鍋屋じゃないからだべ」
すでに酔ってるのではないかというようなステイシーのボケにツッコむヨコヅナ。
「では私が取ってきますよ」
「本当にここで飲む気だべか?」
「ええ、美味しい料理もありますので」
そう言って李は酒を取りに部屋を出ていく。
「じゃあヨコヅナはつまみ作れ、フライドポテトな」
「アタイは出し巻玉子」
「……これもパワハラじゃないだか?」
「将来ちゃんこ鍋屋を開いたら、酔っ払いに絡まれることもあるだろ、その予行練習だよ」
「……はぁ~分かっただよ」
溜息をつきながらもキッチンへ向かい、指定のつまみを作くったヨコヅナ。
「お、ポテト良い感じにサクサクだぜ!」
「この出し巻も美味いな。味も焼き加減も」
「ヨコヅナはちゃんこ鍋以外の料理も上手なのですね」
以降ヨコヅナの部屋では、週一ぐらいで酔っ払い対応の予行練習が行われるようになるのだった。
小説投稿サイト『カクヨム』にて、
ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、
『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922126022
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