たまには脳筋プレイも悪くない   作:カマンベールチーズ

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────ブィーン………ビシ、バシ、ガキン!

「むー、狙われてるなー?【マジックフォートレス】」

「ふっふっふー、そんな攻撃じゃ壊せないよー?私のMP量はかなりのものだからねー」

────ボボボボン!………ピュピュピュピュン!

「ほらほら、悠長にしてると反撃もしちゃうよー。【ファイアジャベリン】!【パルスレーザーバースト】!」

「ドーン!………建物に隠れても貫通性能の高い攻撃なら意味ないのになー」

「今度はもっと上手に隠れてね?うー、今のうちにMP回復しとこうかなー?【マジックファーニィス】【メディテート】」

────パァァァ………

「まだまだ魔力壁の耐久値に余裕はあるけど、ずっと攻撃されっぱなしっていうのはなんか嫌だなー」

「うー………あっ、もうMPは大丈夫そうだ。それじゃー、こっちからも反撃いくよー!さっきまではよくも好き勝手に攻撃してくれたなー!」

「よぉーし!【スペルバイブレイト】………からの【多重津波】──!!」

────ザババババーン!

「「「「「ギャアアアア──!?」」」」」

「どうだー!これが【多重詠唱】の力だー!」

「うーん、この辺りの廃墟は水路になっちゃったし、また空を飛んで向こう側の廃墟まで行こうかなー?」

「【フライ】!………あっちにペインとかドレッドがいたら嫌だなー。強いプレイヤーがいませんように!」

────フワフワ………ヒューン







知力特化と第一回イベント終了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、イベント開始から遂に三時間が経過して、専用エリアも観客席も関係なく、現在ログイン中の全てのプレイヤーに聞こえるようにゲーム内全域に大音量のアナウンスが鳴り響いた。

 

 

 

「終了! 結果、幾つかの順位変動がありました! 一位はペインさん、二位はキースさん、三位はメイプルさんで決まりました! ドレッドさんを撃破したキースさんには得点の三割が譲渡されました! それではこれから表彰式に移ります!」

 

 

 

 名前を呼ばれた三人の視界が白く染まり、気がつけば最初の広場に転移していた。

 一位から順に壇上に登るように言われたが、この時のキースはすぐ真横に同じように転移してきた漆黒の鎧に身を包む黒髪の少女に意識を奪われていた。

 身長にして一五〇センチもない小柄、かつ高校生にしては童顔の可愛らしい少女のことをキースはよく知っていた。

 

 

 

「えっ? インタビュー? …………私が三位なの!? ま、待って、どうしよう!?」

 

 

 

 というか、幼馴染の本条楓だった。

 いつのまにかNWOやってたんですね。もう驚きすぎて幼馴染(キース)がシャウトしそうになってますよ。ほら、気づいて。

 しかし、そこは必死で堪えたキース、流石に公の場で痴態を見せる程に羞恥心は死んでいないのだ。表情の薄さに感謝したのはこの時が初めてだろう。

 

 

 

 当人の楓というかメイプルはいつのまにか衆目の前に引っ張り出されてパニックになっている。

 すぐ隣にいる幼馴染の存在には残念ながら気づいておらず、ワタワタした後に頭から蒸気を吹き出して動かなくなった。

 司会者からは壇上には登っているので特になにも言われないし、現在の注目はこれからインタビューを受ける一位のペインに集まっている。

 

 

 

「それではペインさん! 一位になった感想はありますか?」

「ああ、勿論だ。初めてのイベントでこうして無事に一位になれたこと…………とても嬉しく思う。何一つとして楽な戦いはなかった。時には、俺では思いつかないスキルの使い方をしてくるプレイヤーもいて、非常に驚かされたのを覚えているよ。この次のイベントがいつになるかはわからないが、何であろうと俺は常に頂点を目指す気概で頑張って行く所存だ」

「二位のキースさんと共に三位以下に圧倒的なポイント差をつけて優勝したペインさんらしい、大変素晴らしいコメントをありがとうございます! 皆様、今一度大きな拍手をお願いします!」

 

 

 

 金髪碧眼、眉目秀麗、清廉潔白という三拍子揃った白銀の鎧に身を包んだ長身痩躯の男性。

 現実ならアイドルとかモデルとかやっていても不思議ではない程に整った容姿であり、NWOの中にもファンがいるのかインタビューを終えると女性プレイヤーの黄色い悲鳴が聞こえてくる。

 まあ、インタビューそのものは嬉しいと言いながらピクリとも笑っていない上に生真面目で全く面白味もない返答だったが。

 

 

 

「お次は、キースさん! 二位になった感想をどうぞ!」

「えー、まあ…………NWOの初イベントですし、取り敢えず楽しめれば良いと思っていたところでの二位なので大変驚きました。個人的にはバトルロイヤルに向いているステータス構成だったこともあってやる気でしたが、自分の想像以上に全力でプレイできたので満足しています。──────あと、運営の方々にはその場のノリで環境破壊をしすぎたので謝りたいです」

「はははっ、謝らなくても結構ですよ。今回限りの専用エリアなのでデータを修復する必要もないですからね。気にしないでください…………はい! というわけで、ペインさんに続き素晴らしいコメントをありがとうございます!」

 

 

 

 無難に答えたキースも特に年上の女性には好かれる傾向にあるので、ペインの時に負けず劣らずの黄色い悲鳴が広場を沸かせる。

 最後に苦笑しながら付け加えた台詞のお陰で少しだけ笑いも起こったりと完全に場は温まった。

 

 

 

 そして、遂に本日のイベントに於けるダークホースとなったメイプルの番になる。

 まだゲーム開始から一ヶ月も経たず、無名でありながら初イベントで三位という快挙を果たしたメイプルはというと、未だに過剰な緊張の所為か目を回して呆然としていた。

 彼女をよく知るキースの見立てだと、メイプルの前にインタビューを受けたペインとキースの話は全く聞いていないはずである。

 

 

 

「次は、メイプルさん! 一言どうぞ!」

「えっあっえっ? えっと、その、一杯耐えれてよかったでしゅ」

「…………メイプルさん、ありがとうございました! 改めて皆様、表彰台の三人に向けて惜しみのない拍手をお願いします!」

 

 

 

 司会の精一杯のフォローによって広場は満場の拍手が鳴り響いた。

 しかし、メイプルは盛大に噛んでしまった所為で遂に限界を迎えてしまい俯いた姿勢から戻らなくなってしまう。

 まあ残念ながら羞恥に赤く染まった顔は俯いた程度では隠しきれず、キースを含めてバトルロイヤル後の微妙に張り詰めたままだった気分がほっこりするのであった。

 

 

 

 この後は運営から十位以内のプレイヤーに記念品として金のメダルが贈られた。

 表彰台にいた三人には司会者から直接贈呈されたが、尺の問題によって四位以降の入賞者には通知と一緒に贈られることになる。

 結局メイプルは最後までキースの存在に気づくことなく、そそくさと退散してしまった。

 

 

 

 それ以外にも、運営から既に第二回イベントに対する言及があった。

 まだ企画中の段階と言っていたが、第一回イベントが予想以上に盛況だった為に予定を前倒しにする可能性があるとか。

 今回は参加できなかったプレイヤーにも安心して参加できるようなイベントを考えているらしく、それこそ早ければ一ヶ月以内にイベントの告知をするかもしれないとのことである。

 

 

 

 表彰式は全体で十分くらいの短時間で終わってしまったが、メイプルと違って周囲を知り合いに囲まれたキースは即座に離脱はできない。

 ペインを筆頭として、不思議な程にトッププレイヤーばかりが話し掛けてくる。

 全て描写すると長くなりすぎる為、適当に一部を抜粋してみた。

 

 

 

「やあ、久し振りだな。次に対人戦のイベントが来た暁には、是非キースとも雌雄を決したいところだ」

「おー、キース、今回はしてやられたぜ。ぶっちゃけお前とは戦わないで済むのが一番だけどよ、負けっぱなしは癪だからな。────悪いが、その時は負けても恨まないでくれよ」

「むっ……? なんだ、キースではないか。────フッ、イベント二位おめでとう。私は四位だったよ。ポイント的にも僅差だったが、またより一層に励む必要があると理解した。いつか機会が合えば再びレベリングにでも行こうではないか」

「あー! キースだぁー! くっそー、キースに勝ってたら私も上位入賞できたはずなのにぃー!」

「よう、キース! さっきの表彰式見てたぜ。二位だってな、やったじゃねえか! 俺もなんとか十位以内には入れたし、これからイズも誘って打ち上げにでも行こうぜ!」

「あら? キースとクロムじゃない。二人揃って来るなんて珍しいわね、どうかしたの? …………ああ、そういえばイベント見てたわよ。随分と暴れたみたいね」

 

 

 

 上記の台詞はペイン、ドレッド、ミィ、フレデリカ、クロム、イズの順番になっている。

 

 

 

 ミィというプレイヤーは掲示板などで炎帝という異名で呼ばれていて、今回のイベントでも優勝候補の一人に数えられる程のトッププレイヤーである。

 圧倒的なカリスマと強力なレアスキルを駆使する姿に憧れた沢山のプレイヤーによって女王の如く担ぎ上げられており、この先のアップデートでギルド要素が加わった時には最大派閥を築き上げるだろうと予想されている。

 実は奇妙な縁があってフレンドになっており、何度か一緒に遊ぶくらいには仲が良かったりする。

 

 

 

 他にも多数のプレイヤーから話し掛けられたが、流石にキースもトッププレイヤーとの連戦によって疲れていたので程々のところでログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆□◆□◆□◆□◆

 

 

 

 

 

 

 

 第一回イベントが行われた日の夜、キースこと桐島純義は幼馴染の一人である白峯理沙に電話を掛けていた。

 

 

 

『────もしもし? こんな時間にスミから電話なんて珍しいね。なにかあったの?』

「うん、まあ……理沙に聞いておきたいことがあってさ。今は大丈夫?」

『私に聞きたいこと? よくわからないけど、ちょうど休憩中だったから別にいいよ。気分転換にもなるしね』

 

 

 

 自他共に認めるゲーマーの純義に勝るとも劣らないゲーマーである理沙だったが、現在は事情があって勉強をする毎日を送っている。

 事情といっても複雑なものではなく、昔からゲームのやりすぎで成績が悪いことから、試験が終わった現在も勉強を続けて親にゲームを没収されまいと必死になっているのだ。

 どうやら今夜も勉強に励んでいたようだが、タイミングよく休憩をしていたらしい。

 

 

 

『それで、なにが聞きたいの?』

「実はNWOのことなんだけど…………理沙、俺になにか言い忘れてることってない?」

『えっ? NWO? うーん。ごめん、ちょっと思いつかないや。でも、スミがそうやって聞いてくるってことはなにかあったんだね?』

「いや、あったというか…………本当にわかってなさそうだな。それなら単刀直入に言うけど、楓はゲームに誘ったのか?」

『…………あっ!わ、忘れてたぁああ!!』

 

 

 

 顔を見ても惚けているような様子ではなかったので核心をついた純義だったが、案の定というか理沙にはなにかしら思い当たる節があったようだ。

 純義の言葉を聞いて理沙は十秒くらいフリーズしてから勢いよく立ち上がったのか、通話画面にはシンプルな青一色のパジャマに隠されたお腹部分しか映っていない。

 因みに、その後には通話越しに聞き覚えのある声から叱られている声が聞こえていた。

 

 

 

『うぅっ……今何時だと思ってるのって怒られた。スミの所為だからね!』

「へぇー、そういうこと言っちゃうか。そもそも理沙が言い忘れずに楓のことを伝えてくれていれば態々こんな時間に電話しなかったんだけど?」

『────はい仰る通りですぅ! なにもかも私が悪う御座いましたぁ〜っ!』

 

 

 

 完膚なきまでに純義に正論で返されて、逆ギレしながら小声のまま謝る理沙。

 というわけで、詳しく話を聞いてみたので簡単に纏めると話の流れでうっかり言い忘れたとのことだ。

 全く以って情状酌量の余地はないが、それはそれとして既に楓がゲームを始めているとは完全に情報をシャットアウトしていた理沙も知らなかったようで大層驚いていた。

 

 

 

『あの楓がもうゲームを始めてるなんて…………嘘とか冗談とかではないんだよね?』

「そんな嘘ついても意味ないだろ。今日のイベント────バトルロイヤルにも参加してたからな。アバターは弄ってないみたいだし、流石に顔見ればわかるよ」

『だよねぇ…………ちょっと待って! イベント!? それもバトルロイヤル!? それ本当に楓が参加してたの!?』

「だから本当だって! 気持ちはわかるけど。しかも…………いや、あとは楓本人に聞いてくれ」

『…………うん、そうする。これは思った以上に好感触かもしれないね。まだスミはゲームの中で会ってないんだよね?』

「まあ、会ってないというか…………取り敢えず楓の方は俺に気づいてないと思うぞ」

 

 

 

 真横でインタビュー受けてたけど、と純義は内心で付け加える。

 純義としては、きっと楓は自分の口からイベント上位になったことを伝えたがっているだろうと思い、敢えて暈すような言い方をしていた。

 普段なら確信は持てなくても違和感くらいは覚えそうなところだが、驚愕の真実を受け入れるのに必死な理沙は気が動転していて細やかな言い回しには気付かない。

 

 

 

 それは理沙の心情を慮れば致し方のないことだとわかることだが。

 今までに様々なゲームを楓に勧めてきたが、どれも長続きはしなくて結局は理沙と純義の二人だけが残される。

 別に理沙にとって二人でゲームをすることに不満があるのではない。それはそれで独り占めできて……ゴホンゴホン。ただ楓も一緒ならもっと楽しいし、自分の好きなゲームに興味を持って欲しいと思っているだけなのだ。

 

 

 

 だからこそ純義から伝えられた話には本当に驚愕していたが──────それ以上に心の底から歓喜が溢れ出してしまいそうだった。

 もしかしたら前評判の良いNWOなら楓にも楽しめるのではないかと先行してプレイしていた純義からも色々と話を聞いて、理沙自身でも公式サイトや掲示板から情報を集めて微かな期待を寄せていたのである。

 結局は理沙が面白そうだと思っても楓が楽しめなければ意味がないと、初心者向けとは言わずともゲームの経験が少ない人でも長く続けられるようなものを探していた。

 

 

 

 ただ三人で一緒にゲームをしたいという…………そんな細やかな想いが遂に結実したのだ。

 あのゲームに興味の薄い楓がバトルロイヤルなんていうイベントに参加するくらいにゲームを楽しんでいると聞いて喜ばないわけがない。

 いつまで楓の興味が続くかはわからないけど、今は楽しんでくれている。だったら自分もこうしてはいられないと俄然やる気を出して、興奮気味に純義へと捲し立てる。

 

 

 

『────よしっ! 決めたよ! 私も明後日からゲームを解禁してもらえるように直談判してみる! 楓とも話して時間を決めるから、その時にスミもNWOで合流しよう! …………いいよね?』

 

 

 

 既に件の試験は終わっており、結果も悪いものではなかったので理沙としても近いうちに親を説得するつもりだった。

 しかし、最早そんな悠長なことは言っていられない状況にある。

 本音を言えば今すぐに始めたいとさえ思っているくらいだが、NWOで念願叶うとすれば後に禍根を残すような真似は避けなければならないと直談判する決意を固めたのだ。

 

 

 

 絶対に説得してみせるという気迫が画面越しにも伝わってくる姿に苦笑を零しながらも、純義にとっても三人で合流するのに否やはない。

 まだ理沙も説得が成功していない上に楓の予定も聞かないといけないので時間は決められないが、それも週末明けの月曜日に学校で確認すればいいだけだ。

 というわけで、少し不安げな理沙からの提案に純義は笑顔で快諾してみせた。

 

 

 

「勿論! …………これで漸く三人揃うのか、なんだかんだと長かったな」

「──! うん、そうだね。本当に長かった。やっと三人で始められる。昔みたいに、また三人で遊べるね」

 

 

 

 二人して感慨深げに、懐かしむように呟いてから顔を見合わせて同時に吹き出した。

 普段ならあり得ないようなしんみりとした雰囲気と互いのこれまた珍しい表情に不思議と腹の底から笑いが込み上げてしまったのだ。

 先程までの妙にノスタルジックな気分を吹き飛ばすように共に笑い転げる。

 

 

 

「あはははっ! あ〜もう、笑いすぎてお腹痛い! なんかスッゴイ恥ずかしいし!」

「ぷっ……ダメだ思い出すと笑いが止まらなくなる! というか、今から始めて俺たちに追いつけるの?」

「ふっふーん! それは実に甘い考えだよ、スミ! 流石に私を舐めすぎではないかな? 確かにちょっと出遅れたけど、ゲームに関して負けるつもりはないよ! 直ぐに追いつくから覚悟しておくよーにっ!」

「へぇー、まあ威勢だけはいいね、威勢だけは! あまりに開いた差に間抜け面を晒す時が愉しみだよ」

 

 

 

 そのままの勢いで言い合いに発展して画面越しに睨み合いが勃発するが、そんな他愛のない掛け合いでさえ楽しくて仕方がなかった。

 暫くして二人は通話を終えて、明後日にNWOの中で合流することを改めて約束する。

 翌日の夕方頃、純義の携帯に理沙からの電話が届いた際に、歓喜のあまりに大きな声を出しすぎて純義の耳をキーンとさせたのは完全な余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆□◆□◆□◆□◆

 

 

 

 

 

 

 

「────だぁ〜っもう! 仕事が終わらねー!?」

 

 

 

 NWOの記念すべき第一回イベントは無事に終了したが、その後も運営管理室はてんてこ舞いの有様だった。

 特にバグもなくスムーズに進行したように見えていたのは万全の監視体制を整えていた運営管理室の成果であり、結果的に大きな問題もなくイベントは大成功に終わったと言っていい。

 では、現在も運営に途切れることなく舞い込んでくる仕事とはなんなのか?

 

 

 

「……ふひひ! なんだ、なんだよ、なんですかァ!? 誰も彼も似たようなことばっかり聞いてきやがるっ! もう掲示板に載ってるんだから問い合わせじゃなくてそっち見ろよてか見てくださいこんなんマジで頭おかしくなるから本当に勘弁してぇええっ!!」

「おのれぇっ! トップランカーたちは化け物かっ!? お前らなんで全員揃いも揃って『俺たちの悪ふざけシリーズ』をクリアしてるんだよ! お陰様でランキング上位陣との差がエグいことになってるんですけど? ……ああもう、NWOをご愛用してくださってありがとうございます今後とも何卒よろしくお願いしまーす!」

 

 

 

 そう、ユーザーからの相次ぐ問い合わせがいつまで経っても途切れなかったのだ。

 運営管理室は時間加速によって通常よりも仕事の効率はいいが、単純に加速を上回る速度で仕事が舞い込めば追いつかなくなる。

 今回のイベントでランキング十位以内に入った面々を筆頭としたプレイヤーによって、強力なスキルが幾つも表沙汰になったことが一連の騒動の原因である。

 

 

 

 こうして運営管理室は山の如く溢れる問い合わせの返信作業に追われることになり、次第に奇妙な声で笑いながら発狂したり、虚ろな目をして手元だけは高速で動かすようになったりした。

 まあ『俺たちの悪ふざけシリーズ』なんてものを用意したことを鑑みれば、運営の自業自得と言うのが正しい状況かもしれないのだが。

 

 

 

「あっ、もうダメですね。よぉーし、発狂した奴も出てきたことだし、今日のところは終わりにすっかー。まだ無事な奴は残っていってくれよー、残業代は奮発するからなー」

「ひゅー! 室長サイコー太っ腹ー! やってやろうじゃねぇか残業代は俺の総取りだ! オラッ、てめえら纏めて返信してやるぜ、ヒャッハー!」

「おう、やる気満々だな頑張ってくれ。あと一時間したら俺も帰るからよろしくな」

「えっ? いやいや、なに言ってるんですか。室長は帰れませんよ。今回のイベントについて上に報告しないといけないっていってたじゃないですか」

「えっ? ………………俺、帰れないの?」

 

 

 

 そんなこんなでNWOの運営は日夜ユーザーの為に身も心も削って仕事に励んでいる。

 これから何度もトッププレイヤーたちの所為で発狂することになるが、君たち運営の犠牲によってNWOの平和は保たれるのだ。

 だけど、運営管理室は絶対に屈したりしない。愛と勇気を胸に、今日も明日も明後日も──────頑張れ運営! 負けるな運営! 

 

 

 

「やだやだやだー! もう何日も帰ってないし、これ以上は家族に愛想つかされちゃうのー!」

「アンタここの責任者でしょうがっ! 俺たちだって帰りたいの我慢してるんだから子供みたいな我儘言わないでくださいよ!」

 

 

 

 その日は結局、運営管理室を担当するスタッフたちは誰一人として家に帰れなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







作者のイメージ
これにて一つ目の山場となる第一回イベントの話は終了です。
主人公の強さは勿論として、フレデリカとドレッドという対決した原作キャラの魅力もちゃんと表現できていれば嬉しいです。
二次創作で他作品とのクロスオーバーをしているので、原作では使用されない魔法を原作キャラが使っていることに違和感を覚えるかもしれませんが、その辺りに関してはご容赦ください。
第一回イベント以降の話については全く書いていない状況なので、取り敢えず月曜日の深夜零時までに執筆途中の第一回イベント関連の掲示板の話が書き終われば、そこから本格的に不定期更新に切り替わります。


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