たまには脳筋プレイも悪くない   作:カマンベールチーズ

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・ユザパる【ゆざぱる】
動詞。話の展開、特に戦闘シーンを省略する時に用いられる単語のこと。
類義語にはキンクリ【きんくり】などがある。


知力特化と二層攻略(完了!)

 

 

 

 

 

 

 

 昨日はイズによって捕獲、拘束されて二時間ほど根掘り葉掘りと尋問()を受けたキースでしたが今日も元気です。

 

 

 

「なーに辛気臭い顔してんのよ。ほらっ、これから二層攻略に行くんだからシャキッとしなさい!」

「サ、サリー、そんなに怒ったらダメだよ。なにがあったか知らないけど、キースくんも無理しないで大丈夫だからね!」

 

 

 

 全体的に青色を基調とした装備に身を包んだサリーが目を尖らせてキースを叱咤すれば、それをメイプルが宥めながら優しくキースを励ました。

 そんな二人に対してキースはと言えば、ぼんやりと虚空を眺めながらフラフラと歩いていた。

 年上の美人なお姉さんと二時間も対面で楽しくオハナシ(意味浅)したことは、全く意外でもないが思春期の少年にとってなかなかにハードな出来事だったらしい。

 とはいえ、既にダンジョン内部。いつまでもこうしてはいられないと気を取り直す。

 

 

 

「……っし! 二人共ごめん。もう大丈夫だから、先に進もう」

「ふーん、ならいいけど。初心者のメイプルならともかく、キースは集中してなかったからミスったなんて言わないでよ?」

「当たり前だろ。サリーの方こそ、うっかり被弾なんてしてくれるなよ? メイプルはいざという時よろしくな、頼りにしてる!」

「えへへ、任せてよ! どんな敵が相手でも、私の大盾で全部防いじゃうから! 二人は安心して攻撃してね!」

 

 

 

 サリーは普段より少しツンケンとした物言いだが、最後には挑発するように笑い、キースも同じように笑って煽り返す。

 メイプルは大盾を持たない方の腕を曲げて、むんっと力瘤を作って*1みせた。キースは和んだ。HPとMPと状態異常が全回復した。

 そうして雑談しつつ二層に行くためのダンジョンの攻略を順調に進めていた三人だったが、サリーが軽やかな身のこなしで熊のモンスターの攻撃を躱しざまにカウンターで斬り捨てた姿を見てキースが難しげに唸った。

 

 

 

「うーむ。いいなぁ、()()

「どうしたの? ……ああ! サリーの装備のこと?」

「そうそう。メイプルもそうだけど、サリーも昨日手に入れたんだろ? めっちゃ格好いいし、俺だけ持ってないのはなんだかなぁって」

「ふっふっふっ……あれれ〜? おっかしいなぁ〜? 私たちより先に《NWO》始めてたキースだけ()()持ってないのように見えるんだけど、なんでかなぁ〜? 不思議だなぁ〜? ぷくくっ」

「煽りよる……!」

 

 

 

 きゃっきゃと騒ぎながらでも攻略する速度は変わらない。

 モンスターが現れても、キースの魔法で消し飛ばされ、メイプルの盾に呑み込まれ、サリーに一方的に斬り刻まれる。

 このパーティーにとって、このダンジョンに脅威はない。ボスはともかくとして、ソロで攻略しようと思えば誰であっても楽勝だろう。明らかに格が違った。

 故に、この結果は当然だったのかもしれない。

 

 

 

「むっ、もうボスか。あっという間だったね」

「今のところノーダメージだよ! このままボスも倒しちゃおう!」

「よしきた! 一瞬で終わらせてやる!」

 

 

 

 ダンジョンに入ってから十回ほどの戦闘はあったが、最奥のボス部屋に着くのは本当にすぐのことだった。

 道中のモンスターが弱くて、少し退屈そうにしていたサリーが挑戦的に笑う。

 幼馴染の仲良し三人で一緒にダンジョン攻略ができて、ずっと楽しそうなメイプルが元気いっぱいに笑う。

 そんな二人に当てられたことで段々とテンションが上がり、普段のRP(ロールプレイ)が少しずつ顔を見せ始めたキースが不敵に笑う。

 そして、三人でアイコンタクトをして、同時に力を込めてボス部屋の大扉を押し開いた。

 

 

 

「【毒竜】! ……えっ??」

 

「多分、あの魔法陣だよ! 攻撃が通ってない。どこかにギミックがあるはず!」

 

「うへぇ……めんどくさー。【起動】【起動】【起動】」

 

「角の部分には攻撃が通るよ! ……あと、障壁はあの林檎が維持してるっぽい!」

 

「じゃあ、ギミックは俺が吹き飛ばすから、メイプルはトドメよろしく! ──オラッ、【ソーラーファーニィス】! …………あっ」

 

「あっ」

 

「あっ……」

 

 

 

 

 

 ◆□◆□◆□◆□◆

 

 

 

 

 

「あうぅ……」

「ぐぎぎぃ……!」

 

 

 

 ダンジョンを攻略して二層に進出した三人は、この町を新たな拠点として次なるイベントに向けて意気揚々と活動していたのだが……。

 しかし、現在キースとメイプルの二人は力なく項垂れて、呻き声を上げるだけの生物と化していた。

 何故こんなことになっているのかというと、今日行われていたメンテナンスが原因であり、ある意味では二人の自業自得とも言えた。

 

 

 

 メンテナンスの内容は一部スキルの効果や取得条件の修正とモンスターのAI強化で、これはまあ珍しいことではない。

 実際似たような大規模な修正パッチを当てられた例はメイプルとサリーが《NWO》を始める前に、キースが記憶している限りでは一度だけあったのだから。

 キースが落ち込んでいるのは主にこれのせいだ。前回に続けて再びのスキル弱体化を受けてしまった。

 

 

 

「うぐぐ……」

「まあ……目立ち……よくある……。本来の……強さを……てたし。でも……キース……マシじゃ……?」

「…………」

 

 

 

 メイプルに関しても、同じようにスキルの修正はされている。

 無制限に使用できた【悪食】に一日の使用制限が付けられたのなんて、まさしく直球でナーフされている。

 アレは実際本来の仕様とは異なる使い方だったので致し方ない部分はあるかもしれないが、ゲームに不慣れなメイプルとしては折角手に入れたスキルが弱くなればショックも受けるだろう。

 モンスターのAI強化もメイプルに関係のある内容だが、今となっては無視しても問題のない内容である。

 

 

 

「……貫通攻撃……あるスキル……、今まで……かな。……【串刺し……は例外……」

「あっ……キースくん……無敵……でもなか……だよね……。……んね、サリー。……かく回避……もらった……、……じゃあ無敵パー……ないや……」

「…………」

 

 

 

 メイプルにとって最も重要なこと。

 それは、防御貫通スキルの実装と、それに伴う痛みの軽減である。

 詳しく調べたところ、キースの場合は杖専用のスキルが三種、槍専用で五種増えているらしい。

 まあ、キースは【串刺し公】の効果によって()()()()()()()()()()()()()()()()()()上で、更に()()()()()()()()()()()()のだから正直なにも変わらない。

 だが、回避盾のサリーと一緒にノーダメ攻略を行うつもりだったメイプルにはこれ以上ない悲報だろう。

 

 

 

「……は仕方……よ。……絶対ノー……なくなっ……、他の人……た訳じゃない……丈夫だよ。……キースくら……? ……プルに勝てそ……ヤーって」

「……かな……? でも……サリーが……なのかも……」

「…………」

 

 

 

 そうして途轍もなくショックを受けているメイプルの隣で、同レベルで落ち込んでいるキースは前述したようにスキルが弱体化されてしまっている。

 とはいえ、その辺りはゲーマーたるもの慣れたものであり、ここまで沈むことなんて滅多にないのだが、非常に残念ながら今回のメンテナンスによる修正は()()()と表現される珍しい例だった。

 具体的に言えば、一個だけ修正されたメイプルに対して、キースの持つスキルは四個も修正されてしまっていたのだ。

 

 

 

「多分……。……ジが通る……った分、……感が強調……ない? ……なに攻撃し……ルは不敵に……王立ち! って……格好良く……?」

「おー……確か……かも……?」

「…………」

 

 

 

 一つ目は、またしても【召喚術】が対象になった。

 以前も修正されたこのスキルだが、再び弱体化されることになった。というか、仕様の見直しと表現するべきだろうか。

 これに関しては、むしろチート扱いされたくなかったキース本人から代替案も含めて運営にメッセージを送ったという経緯があり、概ね望んだ通りの性能になっているので文句はない。

 

 

 

 ───────────────────────

 

【召喚術】

 このスキルを使用してモンスターを召喚した時、所有者は(モンスターの数×100)のMPをコストとして消費する。これによって消費したMPは、召喚している限り回復することはない。

 召喚モンスターのHPは所有者の最大MPの1/4となる。その他のステータスは所有者のINT(装備やスキルの影響を受けない)を上限として、スキル発動時点のINTの1/2の値(装備やスキルの影響含む)を参照し、それを割り振るものとする。

 同時召喚可能なモンスターの数は六体。効果持続時間は(モンスターの数÷24)時間。使用回数は一日十二回。

 取得条件

 クエスト【深淵の呼び声】のボス『邪蟻女王』を討伐すること。それによっで得られる報酬の一つ。

 ───────────────────────

 

 

 

 今回修正を受けた結果、このようなスキルになった。

 キースにとっても余りにブッ壊れ(チート)だと逆に使いづらかったものだが、ステータスの上限を設定することによって使い勝手が圧倒的に上昇した。

 他のプレイヤーから顰蹙を買うほどに強くはなく、それでも現状のキースが使えばソロなのにパーティーを組んでいる時と大差ないだけの性能がある。しかも、今後もINTを上げ続けるだけで自然とスキルが強化されていくのだ。策士キースの爆誕である。

 後になれば運営もキースの思惑に気付くだろうが、既に二度も弄った上で更に調整する気にはならないだろう。このくらいが互いにとって良い落とし所なのではないかと思う。

 

 

 

「んー……でも、……とHPも上げ……けないか。……削られちゃ……いし…………痛いのは……?」

「まあ……しても無理、……かな? 現実よ……痛くな……しかも、……が軽減さ……だし」

「…………」

 

 

 

 二つ目は、【王者の威光】だった。

 これは純粋な弱体化で、効果範囲の減少と状態異常発生確率の低下。

 運営から送られた修正の詳細によると、効果範囲はスキルの使用者を中心に半径25メートルと変わり、状態異常の発生確率も最大で50%の最低が10%となったとのこと。

 かなり弱体化してしまったが、代わりに使用回数が一日十回、三十分後に再使用可能になったので使いやすくはなったかもしれない。

 

 

 

「装備品……の手伝って……! あとはスキ……のを探し……」

「い、……の?」

「…………」

 

 

 

 三つ目は、意外にも【錬金術】である。

 正確に言えば、『呪符』の所持枚数に新たな制限が加えられたのだ。

 元々は魔法ごとに枚数の上限が決まっていたが、今回のメンテナンス以降は基本的に種別ごとに制限されることになった。

 具体的には、例えば以前は『ファイアウォールの呪符』と『ウォーターウォールの呪符』をそれぞれ十個ずつ所持可能だったが、今回の修正で【ウォール】と名の付く『呪符』は種類を問わず十枚しか所持できないということだ。

 もっと雑に言えば【◯魔法Ⅰ】で取得した魔法は二十枚、【◯魔法Ⅱ】で取得した魔法は十枚、という感じで減らされた。

 

 

 

「私が誘っ……からメイプ……楽しむた……するよ? ……うか今から……ない?」

「ありが……!」

「…………」

 

 

 

 これには流石のキースも文句を言った。

 何故ならば、今日の時点でインベントリに入っていた『呪符』を全部整理して、そのまま保持する物を選別しなければいけなくなったからだ。

 率直に言って面倒くさいのだ。第一回イベントの時にどれだけの数を作ったと思っているのだろうか。

 当然だが、選別から外れた『呪符』は廃棄なんてことはなく、運営から『呪符』だけを収納できる道具箱のようなアイテムを貸し出されている。今日までの間に作成した『呪符』以外は入れられず、その中身がなくなれば自動的に消滅するらしい。ケチな運営だ。

 

 

 

「まぁ私も……欲しい……から……」

「うん! ……は頑張……!」

「…………」

 

 

 

 四つ目は、まさかと言うべきか、案の定と言うべきか【リバイヴ】が修正されていた。

 とはいえ、修正の内容としては復活時にHPとMPと状態異常が完全回復するという仕様から、MPが回復対象ではなくなっただけである。

 確かに弱体化ではあるが、それでもHPと状態異常が完全回復した上で一分間は被ダメージが半減するだけでも充分すぎるというか、ぶっちゃけチート具合はたいして変わっていないだろう。

 そもそも蘇生スキル自体が現状では唯一無二だし、キースとしてはまあ仕方ないかなという気分だった。

 

 

 

「それ……ずはHP……キルを取……。それが……事だしね。……つか知って……、……からだね。……トも近い……ごう!」

「おー!」

「…………」

 

 

 

 そんなわけで、一つ一つはそこまで落ち込むほどの理由ではなかったが、明らかに狙い撃たれたような状況にショックを受けていたということである。

 これにはキースも運営宛にお気持ちメールを送らざるを得ない。幾らなんでも弄りすぎだろコラ、という言葉をオブラートに包みまくって読むのも面倒な長文のスパムメール風にする嫌がらせも忘れない。

 そうしている間にキース同様に落ち込んでいたメイプルはなんやかんやとサリーに励まされて元気を取り戻していた。

 

 

 

「……ってことだけど。さっきから黙ってるキースはどうする? というか、話は聞いてた?」

「あっ……。えっと、私は出来ればキースくんも一緒に来て欲しいなぁー、なんて…………ダメ、かな?」

「──ちゃんと聞いてるが? それじゃあ行こうかメイプル……目指せ無敵の要塞化!」

「ほんとかなぁ……? 嘘っぽい……」

「そ、そんなことない、と思うよ……? そうだよねっ、キースくん!」

「アッ…………ごめんなさい。殆ど聞いてませんでした。嘘つきました許してください……」

「えぇ──っ!?」

「やっぱり聞いてないじゃない! 無意味な嘘つくんじゃないわよ!」

 

 

 

 つい先程まで落ち込んでいたのが嘘のように、元気よく三人はフィールドに飛び出して行った。

 第二回イベントまで残すところ二週間しかない。新しいスキルの獲得やPSの上達など、幼馴染が全員揃ってから初めてのイベントのためにもやるべきことは多い。

 目指すは好成績。共通の目標を掲げて、仲良し三人組は今日も楽しそうに《NWO》をプレイしていた。

 

 

 

 

 

 

 

*1
ぷにぷになので力瘤なんてない。







日間ランキングの効果ってしゅごい……(小並感)

恐らくランキングに載ったであろう水曜日の十五時から土曜日の十五時までの三日間で、お気に入り登録者数が約1.5倍に増えてるってヤバい……ヤバくない?
お陰様でモチベ上がりまくりだけど、仕事もあるから流石に毎日更新は無理でした……。
このまま二、三日に一話くらいのペースを維持して頑張りたいですね。

それでは今後もよろしくお願いします!
高評価、お気に入り登録、感想お待ちしています!(承認欲求モンスター!って言っておけば許されると風の噂に聞きましたが本当ですか?)
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