たまには脳筋プレイも悪くない   作:カマンベールチーズ

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申し訳程度のサモナーさん要素。


知力特化と賢者の試練

 

 

 

 

 

 

 

 メイプルのスキル取得を手伝った数日後。

 つまり、第二回イベントまで一週間と少しというところで、キースも掲示板などで情報を集めて新たなスキルの獲得に動いていた。

 

 

 

「この辺りのはずだけど…………んん?」

 

 

 

 深い森の中を掻き分けて歩きながらマップを確認する。

 目的地を示す赤い光点は以前NPCのルルゥからもらった賢者の隠れ家を表示しており、実は魔法使い系のプレイヤーにとって非常に強力なスキルをくれる存在として掲示板で有名になっていたのだ。

 面白い偶然もあったものだが、賢者という呼び名を考えれば不思議でもないかもしれない。

 件のスキルは【呪文連結】と言い、事前にセットした二種類の魔法を一度で同時に発動することができるという代物。MPは固定で100消費、全部で五つまでセット可能。

 その際に組み合わせる魔法によって相乗効果で威力を増したり、逆に相殺しあって碌な結果にならなかったり、妙な化学反応を起こして大惨事な事態に陥ることもあったりと魔法使い系のプレイヤーとしては是が非でも取得したいスキルである。

 

 

 

 何度か遭遇したモンスターも一撃で倒せるものしか居ないので道中はサクサクと進んだ。

 そろそろ目的地が見えてきてもいい頃だと思った辺りで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。近くには池もあり、先の現象を含めて掲示板に載っていた情報通りだった。

 理屈は不明だが一定範囲まで近寄らないと目視不可能になっているらしく、実際キースも()()()()()()()()()()()()()ようにしか見えなかった。

 きっと事前情報がなければ多少は驚くなり、何かしらの反応はしていたことだろう。

 

 

 

 賢者の隠れ家は前述したように石塁によって囲まれており、その奥に見える屋根の一部は随分と古ぼけていた。

 煙突から漏れ出る僅かな煙だけが人の気配を感じさせるものであり、何もない森に突然出現したように見える演出もあってか、古ぼけた外観も相俟って若干のホラー味を感じなくもない。

 ぱっと見た限り門構えは地味だが、重厚な造りで見た目以上に堅牢な印象を受ける。

 侵入者を拒むように固く閉ざされた門から十メートルくらいの距離まで近づいたところで、何処からともなく声が聞こえてきた。

 

 

 

《何者かね?》

 

 

 

 頭の中にインフォのような老人の嗄れた声で響く、誰何の言葉にキースは思わず足を止めた。

 恐らく、テレパシー的な方法で話し掛けているのだろうと掲示板でも書かれていたが、直接脳内に声を届けられるような不思議な感覚を受けて僅かに戸惑う。

 ここで名乗って偶々立ち寄ったという風に答えれば【呪文連結】を覚えるためのクエストが始まる*1のだが、キースはもう一つのクエストが進行したことを確認して先にそれを済ませることに決めた。

 

 

 

「お孫さんのルルゥさんから地図と『鍵』を渡されたキースと言う者ですが……えっと、賢者様でよろしいでしょうか?」

 

《ふむ……? 『鍵』だけでなく地図まで渡すとは……実物を見えるように地面に置いてくれんか?》

 

 

 

 そう言われた通り、キースはいつか渡されたルルゥが『鍵』と呼んでいた銀色のカードのような物と、先日受け取ったばかりの地図を並べて地面に置いた。

 どのように確認しているかわからないため、邪魔にならないように二、三歩ほど背後に下がって反応を待つ。

 不意に視線を感じて見上げると、いつのまにか門扉の上の侵入者を阻むような幾つもある突起物の一つにフクロウが一羽佇んでいて、キースの方をジッと見つめていたのだ。

 まさかフクロウの視界を通してこちらを見てるのか、なんてあり得ないことを考えながら暫く経つと、再び声が聞こえてきた。

 

 

 

《…………間違いなさそうじゃな》

 

「では、お会いして頂けますか? 伝言も預かっているので直接話したいのですが……」

 

《まあええじゃろ。しかし、まずはお主が『鍵』の持ち主に相応しいか試させてもらうとしようかの?》

 

 

 

 その言葉を皮切りに、問い返そうとしたキースに対して鋭く、無機質な殺気が突き刺さった。

 反射的にバックステップで距離を取って杖を構えると、それを合図にしたかのように門扉の左右の石塁が、いや()()()()()()()()()()()が動き出した。

 

 

 

 それは言うなれば、ストーンゴーレムとでも呼ぶべきモンスターだった。

 重厚かつ堅牢な印象をそのままに岩石のみで構成された体はキースの知るどのゴーレムよりも頑丈そうで、折り畳んでいた胴体を起こすと優に三メートル近い全長であることがわかる。

 これが【召喚術】によって生み出されたゴーレムだとすれば、キースとの違いはなんだろうか。

 疑問を感じつつも、どちらにせよキースは自分なら苦戦はしないと判断し、折角なので検証も兼ねて【召喚術】で対抗してみることにした。

 

 

 

「【サモン・モンスター:ゴーレム】!」

 

 

 

 ───────────────────────

 

 クレイゴーレム

 HP 158/158 MP 0/0

 STR 260 VIT 260 AGI 95

 DEX 95 INT 0

 ───────────────────────

 

 

 

 キースの両脇に展開された魔法陣から二体のクレイゴーレムが現れる。

 全長は二メートルを超えているが、岩石ではなく土塊で構成された体はストーンゴーレムと比較すると脆そうに見えてしまう。

 だが、ここはゲームの世界。女の子らしい柔らかそうな身体のメイプルが異次元の防御力を持っているように、見た目の差なんてものはステータスに何の影響も及ぼさない。

 何よりキースはINT極振り。相手が賢者と呼ばれるNPCだとしても、自分の土俵で負ける訳にはいかないのだ。

 

 

 

《安心せい、殺しはせぬ。お主がどれほど戦えるのか確認するだけじゃ。気楽にやればよい》

 

「お言葉に甘えて……やれっ、ゴーレム!」

「「──!!」」

 

 

 

 主の号令に従い、クレイゴーレムが()()

 その速度は鈍重そうな見た目を裏切るものであり、まるで風の如く駆け抜けて瞬く間にストーンゴーレムに肉薄した。

 調整を受けた結果として、以前にはなかった身軽さを手に入れたゴーレム。どちらの方が強かったと問われると難しいが、少なくとも極端に弱くなったということはない。

 そして、勢いそのままに体当たりを敢行して────激しい衝突音と何かの砕けるような音が響いた。

 

 

 

「「──!?」」

 

 

 

 ストーンゴーレムから声なき悲鳴にも似た驚愕が漏れる。

 流石は賢者の召喚したモンスターというべきか、突撃したクレイゴーレムに反応して受け止めようとしたまでは良かった。

 しかし、そこで体格に優るストーンゴーレムが押し負けた。それどころか受け止めきれずに体当たりが直撃した胴体の一部が砕け、または罅割れが生じるほどのダメージを受ける始末。

 HPバーが一割近く削れる。即座に戦闘不能に陥るほどではないが、到底無視はできない威力。無防備に何度も受ければ遠からず瓦礫の山と化すだろう。

 

 

 

 当然ながらストーンゴーレムもやられるばかりではない。

 クレイゴーレムもダメージこそ与えたが体当たりの勢いはなくなり、けれど衝撃によって僅かな硬直が発生する。

 そんな隙を見逃すような甘い相手ではなく、巨大な手でクレイゴーレムを鷲掴んで力任せに持ち上げると、背筋が寒くなるような迫力で地面へと強かに叩きつけた。

 

 

 

「「──!?」」

 

 

 

 誇張ではなく大地が揺れるほどの衝撃。

 クレイゴーレムという大質量を叩きつけられた地面にはすり鉢状のクレーターが生まれ、その威力を物語っていた。

 HPバーが二割弱削れる。防御体勢を取っていなかったとはいえ、このままではジリ貧である。プロレスのように打って打たれての応酬では敗北する可能性の方が高い。

 恐らく、STRとVITの値はクレイゴーレムの方が高いと思われるが、召喚モンスターのHPは召喚者のMPに準拠する。故に、賢者の膨大なMPから成るストーンゴーレムのHPは優に四桁の大台を超える数値になっているのだ。

 

 

 

「「「「────!!」」」」

 

 

 

 速さに力、頑丈さに優れるクレイゴーレムが僅かに、しかし明確に多い手数でダメージを重ねる。

 タフさで優るストーンゴーレムが受けて返すというプロレスのような方法で堅実にダメージを稼ぐ。

 戦況は一進一退。ダメージレースではストーンゴーレムが先行し、少しずつクレイゴーレムが追い上げるような展開で進んでいたが、HPバーを五割削ったところで賢者が動いた。

 

 

 

《やりおるのう……! ならば、これはどうするかね?》

 

 

 

 その声と同時に二体のストーンゴーレムを────それからフクロウの全身を何処か見覚えのある五色のエフェクトが覆った。

 一瞬の間を置いてキースが状況を察して、反射的に舌打ちをしてしまう。

 あのエフェクトに見覚えがあって当然だろう。

 何故ならアレは()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()、要するに賢者は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということなる。

 

 

 

「「──!!」」

「「──!?」」

 

 

 

 今のキースでは絶対に不可能な芸当に悔しく思う気持ちと、謎のスキルに対する好奇心が胸中で蟠り、咄嗟の判断が遅れてしまったことで一気に戦況が確定した。

 ただでさえ拮抗に近い劣勢だった状況で敵が強化されてしまえばどうなるのか、敢えて言葉にするまでもないだろう。

 殴りつけられ、叩きつけられ、先程までは振り解けた拘束からも逃れられなくなり、一方的に攻撃される。たった二回の攻撃で一割を切って瀕死になってしまった。

 あっという間にHPが尽きそうになったが、ギリギリのところでキースが片方を【ヒール】で全回復、もう片方は『ポーション』を投げつけて八割前後まで回復させて、続けてブースト系の魔法で援護しようとする。

 

 

 

「ホーウ!!」

「なっ……!? 召喚モンスターが魔法を!?」

 

 

 

 しかし、クレイゴーレムを回復させたことで敵対心を集めたのか、唯一動いていなかったフクロウから雷の槍が射出されてきたのだ。

 まさかの召喚モンスターと思われるフクロウによる遠距離攻撃、それも【ケラウノスジャベリン】に酷似した魔法が飛んできたのだからキースの驚愕は一入だった。

 何とか躱すが絶え間なく魔法は飛んできた。炎槍(ファイアジャベリン)氷槍(アイスジャベリン)竜巻(トルネード)など立て続けに襲いくる攻撃を【ウィンドウォール】一つで防ぎ切る。

 キース自身としては戦闘をするつもりはなかったのだが、こうまで好き勝手にやられて黙っている性格ではないし、残念ながら補助のない状態ではクレイゴーレムに勝ち目がないことも確認できたのだから目的は既に達したと言える。

 

 

 

「【ケラウノスジャベリン】」

「ホーッ!?」

「残念、射程範囲内だ……【ダウンバースト】!」

「──ッ!?」

 

 

 

 意趣返しのように、先程やられたことをやり返す。

 実に十倍以上のINTから放たれる雷槍はあまりに太く、(ジャベリン)というよりは(ピラー)のような有様だった。

 猛禽類だけあってAGIは高いのか、足場にしていた突起物を一部消し飛ばされながらもフクロウ自体は空を飛ぶことで避けることには成功した。

 だが、続く魔法の効果で発生した急激な下降気流に呑まれ、揉まれ、煽られ、凄まじい速度で地面に墜落すると同時に巻き起こった局所的な暴風によって一瞬にして爆散した。

 

 

 

 当然ながら暴風の影響は門の付近で戦闘を続けていたゴーレム組にも及ぶものであり、見るからに重そうなストーンゴーレムが吹き飛ばされて木々へと衝突する。

 それだけでは流石に倒せなかったので、火球(ファイアボール)闇球(ダークボール)*2を投げて残ったHPを消し飛ばした。

 因みに、同じように暴風圏の爆心地に居たはずのクレイゴーレムたちも一緒に吹き飛んで木っ端微塵に爆散していた*3が、俗に言うコラテラルダメージというものなので致し方ない。成仏してクレメンス。

 

 

 

《ううむ、なんとまあ。ワシの召喚モンスターをこうも容易く倒してしまうとは……彼奴も随分な者を寄越してきたもんだわい》

 

「あの、これで試練は合格したものと思ってもいいですか?」

 

《む? ああ、まあ文句なしの合格じゃな。門を開けるから中に入って来るがいい》

 

 

 

 どうやら抜き打ちテストには無事合格したらしいと、漸くキースも気を抜くことができた。

 しかも、先の戦闘は非常に得ることが多かったので、突然のことだったがキースとしては文句どころか感謝の言葉を伝えたいくらいに濃密な時間だった。

 現状の召喚モンスターの強さの確認や改めてMPが足りないことを認識して、更に明らかに上位個体と思われるゴーレムや魔法を使うフクロウに新たな【召喚術】の可能性を見て、何より複数種類の魔法の同時使用と単体指定の魔法を三つの対象に並行使用するなど、貴重な情報が次から次へと出てきていた。

 

 

 

 どのようなスキルなのか、プレイヤーも取得可能なものなのか。

 一気に情報をたくさん出されて微妙に混乱しながら、賢者から言われるがままにいつのまにか開いていた門を潜って中に入る。

 当初の目的を忘れないようにと自分に言い聞かせつつ、際限なく溢れ出てくる好奇心に必死に蓋をして、無理に堪えようとして不気味な含み笑いを漏らしていたが、辛うじて理性を制御することに成功したキースは遂に賢者と邂逅することになった。

 

 

 

 

 

 

 

*1
【INT 70】以上がクエスト発生条件。

*2
とてもでかい。

*3
召喚モンスターはパーティーに含まれないため、FF(フレンドリーファイア)が適応される。







賢者の正体は皆様もご存知のあの人……かも?

アンケートの回答ありがとうございます!
まさかこんなに多くの人が投票してくれるとは思わず、興奮と驚愕が入り混じって、なんというかヤバかったです(語彙力)
お陰様でブースト掛かって速攻で最新話が仕上がり、昨日に引き続いての連続更新になりました。
いやあ〜、意外とやればできるもんですねぇ〜。

アンケートの回答は19日(金)の12時で締め切る予定なので、それまでに沢山の投票をお待ちしています!
高評価、お気に入り登録、感想お待ちしています!(評価&お気に入り&感想乞食)

書籍版リスペクトで第二回イベントの前に一話だけ幕間を入れたいと思います。幾つか候補を挙げるのでどれが読みたいか選んでください(投票数の多い上位三つから採用します)

  • メイプル 無自覚にイチャつくだけの話
  • サリー 中二で厨二なお年頃の話
  • メイ&サリ 喫茶店での話
  • イズ 不用品の買取で破産寸前の話
  • クロム 見守り隊との話
  • ミィ 勘違いの勘違いの話
  • ペイン スーパーエリート廃人の話
  • フレデリカ 初めて出会った時の話
  • 運営 クエスト【嘗ての栄華】の裏話
  • 掲示板 ある日の雑談掲示板の話
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