たまには脳筋プレイも悪くない 作:カマンベールチーズ
────フォン……シュシュ、ピッ!
「──ふぅ……まさか初日からあんなに大変なことになるなんて…………一晩眠ったけど、まだ疲れが残ってる気がするよ」
「でも、まあ……目的のスキルは取得できたからいいかな?あの人とは少し違うかもしれないけど」
────スッ……シュン
「掲示板にも書いてあったけど、あの人は火球だけじゃなくて水球も風刃も土刃も闇球も全部大きくて凄い威力だった…………どんなスキルだったんだろう?」
「私の方が火球は大きいし威力は……ちょっとわからないや。でも、格好いいから充分だよね?────【炎帝】」
────ゴォウ!
「ふふふ……左右に火球を従えて立つ私……格好いいよ!アバターの赤い髪の毛にも映えるし、かつてない程にキマってるかも!」
「あっ、でも……まだ初心者装備のままだった。昨日たくさん倒したし、あの強いモンスターの素材でなにか格好いい装備が作れたらいいなぁ」
────ヒラヒラ……ファサッ
「かっ……格好いいっ!なにこれ!?すっごい格好いいよ!これ本当に私なのかなっ!?」
「アバターに合わせて赤色をメインにしてもらったけど、びっくりするくらいマッチしてる…………どうしよう、格好いいしか言えない!」
「せ、折角だからキャラとか作ってみるのもいいかな?例えばこんな感じで──────」
「『ついて来い!【炎帝】で薙ぎ払ってやろう』…………ふわぁぁあああっ!す、すっごく格好いいかもっ……!」
────ポクポクポク……チーン!
「……ちょ、ちょっと興奮しすぎた。時間も勿体無いし、まだスキルも全部確認したわけじゃないからね」
「よし!レベル上げも兼ねて今日も楽しむぞー!」
NWOのリリース開始初日。
初日から激闘を終えたキースがログアウトしてから三十分程後のこと。
NWOの中から閲覧できる公式掲示板にてキースと思われる人物のことが噂されていた。
───────────────────────
【NWO】森にいたのは熊ではなく、やばい魔法使いでした【初日】
1名前:名無しの弓使い
やばい
2名前:名無しの魔法使い
どうしたの
3名前:名無しの双剣使い
kwsk
4名前:名無しの弓使い
おう、聞いてくれ
まず私はリリース開始に合わせてスタートダッシュを決めて森でモンスターを狩っていた
一時間くらい経った頃かな
急に森の奥から爆発音みたいな音が連続して聞こえてきたんだ
5名前:名無しの槍使い
なんか面白そうな話の予感
6名前:名無しの大剣使い
確か森に爆発テントウってモンスターいたよな
あれの爆発音が聞こえただけとか
7名前:名無しの大盾使い
アイツ嫌い
大盾で受けると爆発して体勢崩される
大して強くないから倒せるけど経験値まずいからβテストでも嫌われてたよ
8名前:名無しの弓使い
私も最初は爆発テントウだと思ってた
でもいつまで経っても一定の間隔で聞こえてくるから不安になってな
音の聞こえてくる方に近づいて【遠見】のスキルで確認できないか試してみたんだ
そしたら一人の魔法使いのプレイヤーが直径五十センチくらいの巨大な火球を放ってモンスターごと周囲の森を文字通りに薙ぎ倒してたんだよ
9名前:名無しの双剣使い
は?
10名前:名無しの大剣使い
なにそれこわい
11名前:名無しの槌使い
どうしてそうなった
12名前:名無しの魔法使い
ちょっと待って
えっと火球ってことは【ファイアボール】の魔法でしょ?
あれは直径十センチもない拳大のサイズだったと記憶しているけど…………なにかのレアスキル?
13名前:名無しの弓使い
多分レアスキルではない…………と思う
火球だけじゃなくて水球も風刃も土刃も闇球も全部同じような規模だった
スキルの回転率も通常の魔法と変わらないように見えたからINTが高いんだろう
爆発音が鳴り止まなかったのは大きな音を出した所為でモンスターがリンクして押し寄せてきたからっぽいな
AGIは低いのか歩く速度は遅くて件のプレイヤーの周囲は草も生えない荒地みたいな状態になってたのには草しか生えなかったけど
14名前:名無しの魔法使い
ですよねー
まあリリース開始してから一時間で見つかるスキルがレアスキルの訳ないか
てか最後ややこしい言い方すんなwww
15名前:名無しの大盾使い
一応聞いておくがチートではないんだよな?
16名前:名無しの弓使い
それは運営に聞いてみたから大丈夫
外部ツールは確認されていないとのことだ
むしろモンスターのリンクの方に問題があったらしいな
さっきメールが届いて深夜に調整するって言ってるから今後はあんなにワラワラと集られることはないと思う
私が見始めた頃からでも軽く百体以上はリンクしてきてたから確かに異常だった
17名前:名無しの槍使い
なにそのクソゲー
百体以上とか絶対無理だろwwwww
18名前:名無しの大剣使い
でも弓使いが掲示板に態々上げたってことはその魔法使いの人は死に戻りしてないわけだな?
19名前:名無しの双剣使い
あっ確かに…………
そこのところはどうなんだ?
20名前:名無しの弓使い
勿論魔法使いの人は生き残ってた
流石に疲れたのかそれから何度か森を更地にした後はすぐにログアウトしたみたいだけど
しかし魔法の異常さばかりに目を奪われてたけど今考えればPSもかなりやばかったかも
私が見た限りでは一度も攻撃を喰らってなかった
21名前:名無しの大剣使い
百体相手にノーダメージはやばすぎwww
22名前:名無しの大盾使い
これは掲示板に報告するのも分かる
きっと俺が発見してもそうする
初日でこれとかもうわけわかんないよな
23名前:名無しの魔法使い
結局レアスキルでもなくてチートでもないってことでいい?
もしかしてINTに極振りしてたりして…………それでも異常だけど
やっぱりレアスキルも持ってそう
24名前:名無しの槌使い
INT極振りでノーダメは無理でしょ
当たらなければどうということはないしAGIには多少振ってるんじゃない?
23名前:名無しの弓使い
いや私も極振りだと思う
レアスキルに関しては分からんとしか言えない
魔法使いならSTRは必要ないしこれは0として
PSが高いのか攻撃は全て紙一重で躱すか杖で殴るか足で蹴飛ばすか魔法で迎撃してたから実際のところは分からないけど多分VITは0だな
AGIは動きが鈍い割に杖装備にローブなしで店売りの靴装備になってたから装備の補正値だけと考えれば元は0だろう
DEXは見ただけで判断できないがあの魔法の威力と規模なら必要ないと思うし0かな
結論:INT極振りでPSにも極振りのやばいやつ
24名前:名無しの槍使い
結論がただのやばいやつで草wwwww
25名前:名無しの双剣使い
草に草を生やすなとあれほど…………!
26名前:名無しの大盾使い
でも実際そうとしか言えないだろう
PVPのイベントがあったら絶対に戦いたくないぞ
大盾の上からでも余裕で溶ける自信がある
27名前:名無しの魔法使い
そういえばまだ聞いてなかった
どんなプレイヤーだったか覚えてる?
28名前:名無しの弓使い
あっ忘れてた…………
今からちょっと纏めるから待って
29名前:名無しの大剣使い
おk
30名前:名無しの双剣使い
待ってる
31名前:名無しの弓使い
出来た
確かこんな感じ
黒髪黒目で少し中性的っぽい雰囲気
イケメン←ここ重要ぶっちゃけタイプだった
身長は一七〇センチ以上で高校生くらい?
頭・体・足装備はつけてない青い羽のついた靴は店売りの装備のはずだけど名前は知らん
杖は初期装備のまま…………あとアクセサリーでイヤリングをしてたかも遠くてよく見えなかった
32名前:名無しの魔法使い
よっしゃイケメンきたー!
しかも中性的でまだ高校生とか最っ高ー!!
33名前:名無しの槍使い
けっ…………若くて男でイケメンかよ
34名前:名無しの大剣使い
急に態度変わりすぎだろwww
テンションが露骨すぎるぞお前ら! www
35名前:名無しの大盾使い
てか弓使いと魔法使いの人は女性だったのか
36名前:名無しの槌使い
おおっ美少年だったのか!
どの程度かはわからないけどイケメンは見るだけでも眼福だから一度は見てみたいところ!
37名前:名無しの双剣使い
槌使いも女の人かよ!
NWOって意外と女性率高いんだな
38名前:名無しの弓使い
中性的なイケメンに反応しない女はいない!
ぶっちゃけ男が庇護欲をそそるタイプの美少女に弱いのと同じだと思うの
まあそんなわけで報告は以上
イケメンなのもそうだけど純粋にプレイヤーとしても注目度の高い人物だと思う
私はこれからも見掛けたら情報を上げるつもりだから良ければ他の人も協力してくれると嬉しい
どうせ戦闘が派手だからすぐに有名になるとは思うけど一応頼んだ!
39名前:名無しの魔法使い
合点承知!
40名前:名無しの槌使い
合点承知!
41名前:名無しの大剣使い
合点承知!
42名前:名無しの大盾使い
まあ見掛けた時だけならいいか…………
合点承知!
43名前:名無しの双剣使い
だな
合点承知!
44名前:名無しの槍使い
イケメンなのがアレだけど…………なんか面白そうだからよし!
合点承知!
───────────────────────
こうして初日からキースの噂は目撃したプレイヤーによって密かに広がり出した。
NWOの正式版リリース開始から一週間が経つ頃になると目撃情報も増えて、βテスターの時から有名だったプレイヤー達と並べて話題にされる程に周知されることになる。
他のトッププレイヤーと同様に対策掲示板なんかも新たに作られたりとキースの動向には既に多くのプレイヤーが注目していた。
しかし、当の本人であるキースはそんな噂をされていることなんて知るわけがない。
故に理沙と楓以外とはパーティーを組む意味を見出せなかった為にソロプレイを続けており、有名なのにキースの名前そのものは知られていないという不思議な状態に陥っていた。
キースの名前が知れ渡るのはまだ少し先の話。
とあるクエストで初日の激闘を超える大激闘を繰り広げた後のことであった。
作者のイメージ
防振りってそういう描写がない所為か、凄い民度の高いプレイヤーが集まっているような印象があります
ゲーマーの嫉妬は怖いとかよく言いますけど、実感したことがないので表現のしようもないと言いますか…………どうしたもんですかね
作者自身にMMOの経験が殆どないし、◯チャンネルとかも閲覧していないので掲示板の書き方も疎く、特に最初の書き出しの辺りとか原作みたいな雰囲気に近くなってしまったような気がします
ご不快な思いをされる方もいるかもしれませんが、寛大な心で見逃していただけると助かります
次の投稿は恐らく今週末くらいになると思います
何度もしつこいかもしれませんが、ただの息抜きとして書いているのでクオリティ、また定期的な更新に対する過度な期待はしないでくださいね
まあ、そもそも拙作を読みたがってくれる人がどれだけいるかも現時点ではわからないですけど