たまには脳筋プレイも悪くない   作:カマンベールチーズ

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────トンテンカン

「………ここはもうちょっと………」

────ギギギ……キュィィン!

「うーん、これは………どうしようかしら?」

────トンテンカン

「──よし!これで完成ね!」

「あら?結構時間が経ってるわね。VRゲームの生産ってリアルに近くて面白いから、つい時間を忘れて遊んじゃうのよねぇ………」

「ふふふ………それにしてもいい出来だわ。掲示板にも載ってないレア素材を使ったし、これは性能も期待できそうね!」

────ピッ………フォン

「これってっ──!スキル、ではないわよね。表記が違うわ」

「確かドロップするタイプの装備の中に似たような効果のものがあったわよね。『フォレストクインビーの指輪』とかに似ているわ」

「やっぱりレア素材を組み込んだからよね?これは『赤の宝珠』だから火属性の威力を強化すると考えれば、他にも属性ごとに対応した同一系統の素材があるはず────!!」

────ピピ、ピッ!………シュン

「ふふっ!そろそろログアウトしようと思ってたけど、こうなったら気になって眠れないから予定変更よ!」

「でも、今から採掘に行くにしても、護衛はどうしようかしら?流石に一人で行って死に戻り以外の方法で帰ってこれる自信はないし、絶対に生産職にも攻撃手段の一つや二つは用意してあると思うのよねぇ〜?」

「まあ、贅沢は言えないわね。トッププレイヤーのうち誰か一人でもフレンドになってくれないかしら?護衛は無理でも素材を売ってくれるだけでも相当に助かるのに………………」

────トコトコ………バタン







知力特化と【深淵の呼び声】①

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────なるほど。そういう話ならいいか」

「う、受けて下さるんですか! …………あ、ありがとうございます! なんとお礼を申したらいいか」

 

 

 

 一時は無理難題のクエストを受注してしまったかと絶望したキースだったが、詳しく話を聞いてみると厳しくはあるが不可能とはいえない内容だった。

 達成条件はNPCの少女を生き残らせたまま、特定のモンスターを討伐することである。簡単ではないが滅茶苦茶に難しいわけでもない。

 というか、受けて下さるんですかなんて驚いている割には既にしっかりとパーティーを組んでいる。順序が逆ではないだろうか。

 

 

 

 それはさておき、このクエストは護衛クエストも兼ねてはいるが、あとは指定されたモンスターを討伐して目的のアイテムを持ち帰るという特に珍しくもない王道的な類であった。

 まあキースの場合は護衛の部分が色々と厄介なのだが、本来は複数のプレイヤーで役割分担をしながらこなすクエストなのだろう。

 その予想は大当たりで、運営としては最低でも四人以上のパーティーかつ推奨レベル40以上で相応のPSも伴わなければ話にならないという、現状では最高難易度の鬼畜クエストになっている。

 

 

 

 キースはこの二週間でレベル28まで上がっているが推奨レベルには全く達しておらず、生憎とパーティーに誘える相手にも心当たりはない。

 正確にはイズともう一人のプレイヤー以外にはクエストの存在を隠しておきたいという悩みどころがあるので誘えないと言うべきか。この情報の秘匿がいつの日かPVPイベントでキースを優位に立たせてくれるかもしれないのだ。

 

 

 

 ただ機動力に乏しく防御力も申し訳程度にしかない紙耐久のキースは護衛クエストに不向きである。

【INT】極振りの超火力固定砲台とかいう浪漫を体現する為に他の全てを代償にしたので、脳筋プレイに徹して少女を守りきるしかないのだ。

 だから脳筋プレイと言っても実際には色々と頭を使う必要がある。NWOにパーティーへのフレンドリーファイアがないことがクエストクリアの突破口になってくるだろう。

 

 

 

 NPC少女の話では魔神の呪いを解くには砂漠にいる巨大な虫の怪物の棲家にあると伝えられる破邪の首飾りが必要なのだと言っていた。

 生憎とキースにはそんなモンスターに心当たりはなかったが、どうやら少女には場所がわかるようだ。

 案内すると言いつつ再び走り出そうとしたので呼び止めて彼是と説得することで取り敢えず歩いていくことになったが、事あるごとに飛び出そうとする少女にキースは嫌な予感がしていた。

 

 

 

「ああっ、くそっ…………! だから一人で突っ走るのはやめてくれ! ────【フレアアクセル】! 【インテリジェンスアタック】!」

「あ、ありがとうございます…………しかし、急がなければ仲間がっ…………!」

「はいはい…………全く、時間制限のあるクエストでもないのにどうしてこんな慌ただしいんだよ」

 

 

 

 キースにとって当たって欲しくない予感は的中し、少女は戦闘の度に先を急ごうとモンスターに突撃していくタイプのNPCだったのだ。

 これでは真面に護衛なんてやっていられない。移動系の魔法を持っていたから大事にこそ至っていないが、ボス戦でもこの調子だったら堪ったものではない。

 なんとかしたいところだが良案は思いつかず、毒を受けている少女に【光魔法Ⅰ】で覚えていた【リフレッシュ】の魔法で状態異常を解除する。

 

 

 

「いっそのこと身動きできないようにすれば…………いや待てよ。俺が背負って移動すれば解決じゃないか? 魔法だけなら問題なく使えるし…………よし、決めた!」

 

 

 

 それから何度か似たような遣り取りを繰り返し、いつのまにか【光魔法Ⅱ】になって【ヒール】の魔法を覚えたりしている間に漸くキースは改善案を思いついた。

 しかし、NPC少女に提案してみると一瞬フリーズした後に何故か走り出そうとしたので折角の案はボツになってしまった。

 まあこれまで全く上げる機会のなかった【光魔法】が成長したので悪いことばかりではないが。

 

 

 

 クエスト中の所為か普段よりもモンスターの湧き率も高い上に妙に強く、それが気の所為ではない証拠にキースもレベルが上がってレベル29になっている。

 この二週間で色々と変化したキースのステータスはこんな感じである。

 

 

 

 ───────────────────────

 

 

 

 キース

 Lv29

 HP 24/24〈+30〉

 MP 35/35〈+85〉

 

【STR 0】

【VIT 0〈+21〉】

【AGI 0〈+15〉】

【DEX 0】

【INT 180〈+30〉】

 

 装備

 頭 【魔法の帽子】

 体 【魔法のローブ】

 右手 【炎爆】

 左手 【炎爆】

 足 【森狼のズボン】

 靴 【青羽の靴】

 装飾品 【ジャイアントオウルの耳飾り】

【空欄】

【空欄】

 

 スキル

【スマッシュ】【ジャストスマッシュ】

【メディテート】【ブレス】【スペルバイブレイト】【マジックフォートレス】【インテリジェンスアタック】【リカバリー】

【ファイアボール】【ファイアウォール】【ファイアジャベリン】【ファイアホイール】【フレアアクセル】【ファイアストーム】【フィジカルブースト・ファイア】【エンチャンテッド・ファイア】

【ウォーターボール】【ウォーターウォール】【アクアスラッシュ】【ワールプール】【ウォータージェット】【フラッシュフラッド】【フィジカルブースト・アクア】【エンチャンテッド・アクア】

【ウィンドカッター】【ウィンドウォール】【ストームウェーブ】【ダウンバースト】【フライ】【トルネード】【フィジカルブースト・ウィンド】【エンチャンテッド・ウィンド】

【サンドカッター】【ストーンウォール】【グラベルブラスト】【ピットフォール】【トンネル】【ボールダートス】【フィジカルブースト・アース】【エンチャンテッド・アース】

【ダークボール】【ノクトビジョン】【カーズドシャドウ】【ダークプリズン】【シャドウボディ】【ダークエクスプロージョン】【メンタルブースト・ダーク】【エンチャンテッド・ダーク】

【リフレッシュ】【ヒール】

【HP強化小】【MP強化小】【MPカット小】【MP回復速度強化小】【知力強化小】【連唱強化小】【毒耐性小】

【杖の心得Ⅵ】【魔法の心得Ⅷ】

【詠唱破棄】【体術Ⅵ】【見切り】【挑発】【威圧】

【火魔法Ⅷ】【水魔法Ⅷ】【風魔法Ⅷ】

【土魔法Ⅷ】【闇魔法Ⅷ】【光魔法Ⅱ】

【気配遮断Ⅱ】【気配察知Ⅶ】【跳躍Ⅲ】

【一騎当千】【虐殺者】【大物喰らい】【剣の舞】

 

 

 

 ───────────────────────

 

 

 

 HPに関しては、HP+30。

 MPに関しては、MP+10。MP回復速度11%増加。消費MP13%カット。

 INTに関しては、INT5%増加。魔法連続使用時、威力上昇最大INT10%増加。

 序でに【毒耐性小】はこれだけでも雑魚モンスターの使う毒攻撃は防げるのでスキルショップで購入しておいた。

 

 

 

 ───────────────────────

 

【マジックフォートレス】

 使用すると、スキルを発動したプレイヤーを中心に半径三メートルの球体状の壁を出現させる。

 また壁の耐久値はスキルを発動したプレイヤーの【MP】と【INT】を足して二分の一にした値が壁の耐久値になる。効果持続時間は一分間。消費MPなし。三分後再使用可能。

 取得条件

【杖の心得Ⅳ】と【魔法の心得Ⅳ】を取得すること。

 ───────────────────────

 ───────────────────────

 

【インテリジェンスアタック】

 使用すると、スキルを発動した直後の武器による攻撃の際に一度だけ【STR】ではなく【INT】を参照した物理ダメージを与える。消費MPなし。三分後再使用可能。

 取得条件

【杖の心得Ⅴ】と【魔法の心得Ⅴ】を取得すること。

 ───────────────────────

 ───────────────────────

 

【リカバリー】

 使用すると、パーティーの味方全員の状態異常を解除する。消費MPなし。十分後、再使用可。

 取得条件

【杖の心得Ⅵ】と【魔法の心得Ⅵ】を取得すること。

 ───────────────────────

 

 

 

 新しく取得した【マジックフォートレス】と【インテリジェンスアタック】はかなり有用なスキルだった。

 特に【インテリジェンスアタック】は【INT】極振りのキースにとっては同条件の【STR】極振りの一撃と変わらないことになる。再使用に三分掛かるのでPVPではいざという切り札の一つになるだろう。

 

 

 

【リカバリー】にしてもパーティーを組めばその有用性は計り知れない。

 同じく状態異常の解除ができる【光魔法】の【リフレッシュ】では指定した対象一人にしか効果がないので、一度のスキル発動でパーティー全員に効果があるというのは非常に頼もしい。

 

 

 

 なにより【杖の心得】と【魔法の心得】の組み合わせで自動的に取得しているスキルは全て消費MP0なのが最高である。

 常に消費MPを気にしながら戦わなければならないキースとしては願ってもないスキルだった。

【マジックフォートレス】で敵の攻撃を防いでいる間に【メディテート】でMP回復、【スペルバイブレイト】や【インテリジェンスアタック】で牽制してと、これだけで継戦能力が向上した。

 

 

 

 INT極振りでは使う機会のない【スマッシュ】と【ジャストスマッシュ】を購入したのも【インテリジェンスアタック】を取得したからだ。

 レベル25に上がった頃までノーダメージだったことで取得した【剣の舞】は回避することで最大STR100%増加という性能だが、【STR】の補正値がないと意味のないスキルだ。

 とはいえ、折角なのでたまに【STR】の補正値が高い杖で気分転換に遊ぶ時に使用感を試している。

 

 

 

 他にも先程の戦闘で使用した【フレアアクセル】や【ウォータージェット】はスキル発動後、毎秒MP1を消費する代わりに移動速度を上げる貴重な魔法だし、【風魔法Ⅴ】で覚えた【フライ】で短時間ならば空中を移動することも可能になった。

【トンネル】で地面を掘って緊急回避も可能だし、【シャドウボディ】と【気配遮断Ⅱ】を使用すれば奇襲も容易いとかなり便利な魔法を色々と取得している。

 

 

 

 更に【闇魔法Ⅶ】で取得した【メンタルブースト・ダーク】に至ってはスキル発動後一分間INT25%増加という凶悪な代物である。

【フィジカルブースト・ウィンド】と【フィジカルブースト・アース】も同条件でそれぞれAGIやVIT25%増加なので有ると無いとでは大きく違うのは言うまでもないだろう。

 物理攻撃に属性を付与する【エンチャンテッド・ファイア】のような魔法も忘れてはならない。ゴミ同然の【STR】でも各属性によるダメージで確実に削り取ることができる。

 

 

 

 攻撃魔法は最初に取得したもので間に合っているとしても、【ウォール】系魔法に【バインド】系魔法も新たに取得して選択肢が広がった。

 どちらもスキルを発動したプレイヤーの【INT】の値に依存するので並大抵の攻撃では魔法の壁を壊すことは不可能だし、一度捕まれば拘束から抜け出すのも容易ではない。

 魔法の威力や規模が上がれば消費MPの問題も自然と解決するので、やはりキースはこのまま極振りの脳筋プレイで突き進むのだろう。

 

 

 

「…………っ! この辺りです! 文献には捩くれた歪な塔のような形をした岩の近くに巣穴があると記されていたのですが…………一体どこに…………?」

 

 

 

 そんなこんなで再びイベントが進行したらしい。

 確かに目の前には少女が言った通りの歪な形をした塔に見えなくもない岩の塊がある。

 しかし、岩の周辺を見渡しても少女の言うような虫の巣穴らしきものは見つからない。取り敢えずキースがペタペタと岩を触っていると、不意に触れた部分がスイッチのように沈み込んだ。

 

 

 

「うわっ! …………これ魔法陣か!?」

「いっ、一体なにがおきているんですか!?」

 

 

 

 その瞬間、キースと少女の足下に眩く発光する魔法陣が出現した。

 キースは直感に従って急いで少女を連れて魔法陣の外に出ようとしたが、魔法陣の外縁に沿って不可視の壁があり出ることは叶わなかった。

 今更ながらクエストの難易度が高そうなことに内心で嘆くも、事ここに至ればもうクリアするしかないだろう。

 

 

 

 この魔法陣はクエスト進行に於ける強制イベントのようなので脱出は諦める。

 恐らく別のフィールドやダンジョンのような場所に転移するのだろう。キースは意識を戦闘モードに切り替えてイベントの進行を待つことにした。

 そして、目を開けていられない程に魔法陣が輝いた後に独特の浮遊感がキースと少女を襲った。

 

 

 

「うぅっ! …………ここは…………?」

 

 

 

 ふと呻くような掠れた声が隣から聞こえてきて、瞬時に意識を浮上させたキースは素早く立ち上がって臨戦態勢を取る。

 どうやら転移と同時に意識を失っていたらしく、気がついたキースと隣でボンヤリとしたまま体を起こしている少女の二人は薄暗い洞窟のような場所にいるようだ。

 

 

 

「【ノクトビジョン】」

 

 

 

【気配察知】に反応がないので近くにモンスターはいないのだろう。

 しかし、視界を制限されたままなのは精神的なキツイのでキースは自分に続けて少女にも【ノクトビジョン】────要するに暗視の効果を付与して暗闇の中での視界を確保する。効果持続時間は三十分なので使い勝手はなかなか悪くない。

 キョロキョロと周囲を見回した少女はここが目的の巣穴だと断言する。なにを根拠に言っているのかは不明だが、NPCなんてこんなものである。

 

 

 

「この巣穴は見た目以上に広いので気をつけてください! 分かれ道も多く入り組んでいて道幅も狭く、背後から襲われる危険もあります。慎重に進んでいきましょう!」

「あっはい。…………なんか釈然としない」

 

 

 

 急に最もなことを言い出した猪突猛進娘に微妙な気分になりながらも、先程のセリフにあった背後からの強襲が怖いので盾持ちの少女を先頭にしてキースが後に続く形になった。

 今更だがマップによるとここはイベント専用エリアで『試練の蟻塚』というらしい。

 名前からしてなんかもうキナ臭かった。誰から誰への試練なのかという部分が気になるところだ。魔神ではないと思いたいキースだった。

 

 

 

「…………漸くお出ましか」

 

 

 

 暫く歩くと通路の奥から一体だけモンスターの気配が近寄ってきたことを察知した。

 キースは魔法で即撃破するのではなく、敢えて武器を『炎爆』から【STR】の補正値が高い『アタックロッド』に変更する。

 ただの脳筋プレイでは詰みそうなのでモンスターの弱点や特性などの傾向を図るつもりなのだ。

 

 

 

「ギチギチッ…………」

「で、出ました! 文献にあった巨大な虫の怪物の眷属です!」

「やっぱり蟻のモンスター…………名前は『ソルジャーアント』か。ならまずは────【エンチャンテッド・ファイア】」

 

 

 

 このイベント専用エリアが『試練の蟻塚』だった時点でわかっていたことだが、キース達の前に姿を現したのは蟻のモンスターだった。

 全長一メートル程の蟻という時点で既に生理的に受け付けないプレイヤーもいそうだが、キースも口を擦り合わせる際に発する擦過音に不快そうに眉を顰めながら魔法を発動した。

 

 

 

 火魔法の魔法を発動する時の赤色の魔法陣がキースの足下に発生してすぐに消滅する。

 代わりにキースの体から淡い赤色の光が火の粉のようにパラパラと落ちていく。これで物理攻撃の後に火属性の追加攻撃が発生するようになる。

 少女が蟻の突進を盾で防いだタイミングで斜め後ろから杖を突き入れると、打撃音と共に当たった部分が僅かに焦げるようなエフェクトが発生する。

 

 

 

「…………うん? なんか感触が…………【スマッシュ】!」

 

 

 

 やけに軽い手応えとは裏腹に蟻はまるで大きなダメージを負ったように仰け反った。

 その隙を見逃さず少女も剣で攻撃しているがガキンという明らかに弾かれているような音からしてダメージが通っているようには思えない。

 確認の為に今度は通常攻撃ではなく【スマッシュ】を使用してみると、再び蟻は大きく怯むモーションを見せた。

 

 

 

「こいつ…………まさか火属性が弱点なのか?」

 

 

 

 二度も見ればキースも確信を得られた。

『ソルジャーアント』はキースの杖で攻撃された時に一拍遅れてダメージを受けたモーションをする。

 そのタイミングは火属性の追加攻撃が入った瞬間に重なっているのだ。逆にキースや少女の物理ダメージは全く効いた様子がなく、三度目の攻撃で蟻はポリゴンとなって消滅した。

 

 

 

「いや、まだ他の属性も試してみないとな」

 

 

 

 それから何度か『ソルジャーアント』との戦闘になったが、なんと水属性も風属性も土属性も闇属性も変わらず三回攻撃すれば倒せたのだ。

 結果わかったことは蟻は物理攻撃に大きな耐性を持っている反面、魔法攻撃に弱いことが判明したのだ。

 それこそ属性付与した程度の微小な魔法ダメージでも、たった三回の攻撃で倒れる程である。感覚的に物理ダメージ半減の魔法ダメージ二倍と言ったところだろう。

 

 

 

 そのキースの分析は少しだけ間違っており、実際には物理半減の魔法一.五倍である。

 比べる相手がいないので気がついていないが、属性付与による微小な魔法ダメージに関してもスキルを発動したプレイヤーの【INT】で計算される。

 つまり、確かに普通に魔法を使用する時と比べれば微小も微小だが、キースの場合は他のプレイヤーが【エンチャンテッド・ファイア】などを使用した時より遥かに追加ダメージが大きいのだ。

 

 

 

 具体的には【INT 10】につき1の追加ダメージが発生する計算になっているので、キースの場合は追加ダメージだけで80以上のダメージが発生することになる。

 更に魔法が弱点なので一.五倍で120以上のダメージとなり、高防御力の代わりに【HP】が低めに設定されている『ソルジャーアント』では二回しか耐えられないのだ。

 

 

 

「これ意外と余裕なのでは…………?」

 

 

 

 パーティー推奨のクエストとはいえ、魔法に弱いモンスターが対象ならば【INT】極振りのキースの独壇場である。

 護衛対象の少女が死なないようにだけ気をつけていれば問題ないだろうと少し安心したのも束の間、奥に進むにつれて一度に会敵するモンスターの数とエンカウントの間隔が狭くなってきた。

 

 

 

 確かにこの【深淵の呼び声】というクエストは魔法使いが一人いるだけで安定した火力を確保できるが、同時に盾役が最低一人、可能ならば二人いなければキツイ仕様になっている。

 というのも、この蟻のモンスターは異常に数が多いのだ。現実の蟻のように巣穴には大量の『ソルジャーアント』が潜んでいる。

 だからこそ理想の構成としては盾役二人以上と魔法使い二人以上のパーティーだろう。蟻の攻撃力は高くないが遠距離から蟻酸を放つ毒攻撃もあるので前後で挟まれると結構キツイことになってしまう。

 

 

 

 しかし、キースは普通の魔法使いではない。INT極振りの超火力固定砲台なのだ。

 魔法の威力や規模が【INT】の値で変化することは既に周知の事実であり、キースの場合は本来単体攻撃魔法の【ファイアボール】が範囲攻撃魔法になる程に圧倒的な火力である。

『試練の蟻塚』は道幅が狭く囲まれるから危険だとNPC少女が最初に警告していたが、それはキースに限り優位に働く要素でもあった。

 

 

 

「これは、挟まれたか? それなら────【ファイアウォール】!」

 

 

 

【気配察知】によって挟まれたことを悟ったキースの行動は早かった。

 即座に【ファイアウォール】を発動すると、通路を完全に塞いでしまう程の巨大な火壁が発生したのだ。縦横五メートル以上の正方形である。

 壁の向こう側で火壁を無視して突っ切ろうとした蟻が一瞬で溶ける気配を感じながら、キースは前方の敵を余裕を持って倒すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







作者のイメージ
NWOってかなり設定に曖昧なところが多いですよね。
原作購入して読んでますけど、全く効果の説明がないスキルとか沢山ありますし、肝心の取得方法もわからないので帳尻合わせが難しいです。
今後はスキルの名前や効果が被ってしまっているというミスがあるかもしれませんが、簡単に修正できそうなら修正しますが無理そうなら独自設定ということで流してください。


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