たまには脳筋プレイも悪くない 作:カマンベールチーズ
「はぁ、はぁ、はぁ………結局護衛が見つからなくて一人で来たけど、やっぱりやめておくべきだったかしら?」
「まあ、私に戦闘は無理だということが改めてわかったから、なにも得るものがなかったわけじゃないわ。なんとか採掘ポイントまでは来れたもの!」
────カーン、カーン
「うーん………ここは素材集めには向かないのよね」
「でも、例のレア素材を手に入れたのは同様に人気のない火山地帯の採掘ポイントだったし、付与された特殊効果は火属性の強化だった」
「私の仮説が正しいなら属性は環境に影響する。火山では火属性だったから水属性なら鍾乳洞と思って来てみたけど………………」
────カーン、カーン………ガツン!
「あら?今の手応え、まさか………やったっ!名前は『青の宝珠』。完全に同系統のアイテムね!」
「ということは、このアイテムで作ったアイテムが水属性の強化だったら私の仮説が正しかったことになるわね」
「一つだけだと失敗した時が怖いし、もう何個か確保しておきましょう。ここで無理なら、もう少し頑張って近くの山の中腹にある横穴………あそこなら風属性の強化アイテムが取れるかしら?」
────カーン、カーン
「なにはともあれ、今は採掘を続けるとしましょうか」
「十個も採掘できればサンプルとして確保もできるし………ふふっ!これから忙しくなるわね!」
「────これは、間違いありません。この扉の向こうに伝承にあった巨大な虫の怪物がいるのでしょう。戦いは熾烈を極めるはずです。ここで少し休んでいきましょう。…………準備ができましたら私に声を掛けてください」
それからキース達は一時間半以上も休みなく探索を進めた辺りで漸くボス部屋と思われる場所に辿り着いていた。
高さ十メートル以上の重厚な扉があり、この奥にあるボス部屋はこれまでの狭い通路とは異なりかなりの大部屋であることは想像に難くない。
幸運なことにボス部屋の前はセーフティーエリアになっているらしく、ここにいればモンスターとエンカウントする心配はなさそうだった。
ここに来るまでの間にキースはレベル32まで上昇していた。
それ程までにモンスターの湧出率とエンカウント率が激しかったのだ。使用回数に制限のある【詠唱破棄】も三回使用してしまっていた。
【マジックフォートレス】がなければ詰んでいた場面もあり、現在のキースの【MP】はすっからかんである。
───────────────────────
キース
Lv32
HP 24/24〈+30〉
MP 35/35〈+85〉
【STR 0】
【VIT 0〈+21〉】
【AGI 0〈+15〉】
【DEX 0】
【INT 195〈+30〉】
装備
頭 【魔法の帽子】
体 【魔法のローブ】
右手 【炎爆】
左手 【炎爆】
足 【森狼のズボン】
靴 【青羽の靴】
装飾品 【ジャイアントオウルの耳飾り】
【空欄】
【空欄】
スキル
【スマッシュ】【ジャストスマッシュ】
【メディテート】【ブレス】【スペルバイブレイト】【マジックフォートレス】【インテリジェンスアタック】【リカバリー】【マジックブースト】
【ファイアボール】【ファイアウォール】【ファイアジャベリン】【ファイアホイール】【フレイムアクセル】【ファイアストーム】【フィジカルブースト・ファイア】【エンチャンテッド・ファイア】【ファイアエクスプロージョン】
【ウォーターボール】【ウォーターウォール】【アクアスラッシュ】【ワールプール】【ウォータージェット】【フラッシュフラッド】【フィジカルブースト・アクア】【エンチャンテッド・アクア】【メイルシュトローム】
【ウィンドカッター】【ウィンドウォール】【ストームウェーブ】【ダウンバースト】【フライ】【トルネード】【フィジカルブースト・ウィンド】【エンチャンテッド・ウィンド】【タイフーン】
【サンドカッター】【ストーンウォール】【グラベルブラスト】【ピットフォール】【トンネル】【ボールダートス】【フィジカルブースト・アース】【エンチャンテッド・アース】【クラックスマッシュ】
【ダークボール】【ノクトビジョン】【カーズドシャドウ】【ダークプリズン】【シャドウボディ】【ダークエクスプロージョン】【メンタルブースト・ダーク】【エンチャンテッド・ダーク】【ダークヴォルテックス】
【リフレッシュ】【ヒール】【パルスレーザーバースト】【ホーリープリズン】【イリュージョン】【ライトエクスプロージョン】
【HP強化小】【MP強化小】【MPカット小】【MP回復速度強化小】【知力強化小】【連唱強化小】【毒耐性小】
【杖の心得Ⅶ】【魔法の心得Ⅹ】
【詠唱破棄】【体術Ⅶ】【見切り】【挑発】【威圧】
【火魔法Ⅸ】【水魔法Ⅸ】【風魔法Ⅸ】
【土魔法Ⅸ】【闇魔法Ⅸ】【光魔法Ⅵ】
【気配遮断Ⅱ】【気配察知Ⅸ】【跳躍Ⅲ】
【一騎当千】【虐殺者】【大物喰らい】【駆除人】【剣の舞】
───────────────────────
一度に戦闘するモンスターの数が増えたことでNPC少女の被弾率も上がり、それに伴い【ヒール】を使用し続けた結果あっという間に【光魔法Ⅵ】まで成長してしまった。
【光魔法Ⅲ】で取得した【パルスレーザーバースト】は射程もそこそこのレーザーを放つ魔法であり、この狭い通路では大活躍だったことも急成長の理由だろう。
他にも幻影を生み出す【イリュージョン】なんかは使い勝手が良さそうである。
───────────────────────
【駆除人】
このスキルの所有者は虫系モンスターに与えるダメージが一.五倍になる。
取得条件
一時間以内に五百体の虫系モンスターのみ討伐すること。
───────────────────────
しかも、ボス部屋の直前でこんなスキルも取得していた。
正にこのクエストの為にあるようなスキルである。これで範囲攻撃魔法を連発するだけでもボスに勝てるのではないだろうか。
まあそんなに上手い話があるわけもなく、仮にもパーティー推奨のボスである以上は楽な戦いになるはずもない。
「…………さて、MPも回復したし…………NWO初のボス戦と行こうか」
【メディテーション】を連発してMPを全快させたキースは少女に話し掛けて、初めてのボス戦に心が昂ぶってくるのを感じていた。
これでもキースはゲーマーである。難易度の高いゲームであればある程に楽しくなってしまうのは、キースに限らずゲーマーの性質なのだから仕方のないことだろう。
如何にも重そうな巨大な扉を少女が押すと、軋むような音と共に少しずつ開いていく。
人が通れる程度に開いたところで少女が中に入っていったのでキースも後を追ってボス部屋に足を踏み入れた。
大扉の中はキースの予想通りに野球場程の巨大な円形の空間があった。
そして、広大な空間を埋め尽くさんばかりの夥しい数のモンスターがキース達を待ち構えていた。
入り口から近くにいた『ソルジャーアント』は敵意を示すように口を擦って不快な音を立てる。
それが侵入者を知らせる合図だったのか、無機質な敵意が一気に膨れ上がった。
「────ははは! NWOの運営はとんだ大馬鹿者の集まりのようだ! もしくは重度の廃ゲーマーか、だなっ!!」
キースは背後で扉の閉まる音を聞きながら、予想以上の光景を前に大声で笑い出した。その声に反応してモンスター達の注意が一斉に向いた。
しかし、それは近くにいたモンスターだけである。広間の最奥にいる王冠を頭に乗せた巨大な女王蟻とそれを警護するように周囲を飛んでいる羽蟻などは動く気配はなかった。
それでは駄目だ。この多勢に無勢な状況をひっくり返すには全てのモンスターの注意を奪わなければならないのだ。
「【挑発】! …………からの【威圧】っ!!」
キースの【挑発】によってボスの女王蟻『クイーンイービルアント』を含めて全てのモンスターの注意を奪い、自分に注意を向ける相手全てに効果を及ぼす【威圧】を発動した。
その瞬間────広間にいた『ソルジャーアント』の九割が気絶して崩れ落ちた。
更に女王を護るように周囲に侍っていた羽蟻『フライングナイトアント』も四割程が墜落したのが遠目にも見えたが、肝心の女王蟻は威嚇なのかギチギチと不快な擦過音を立てているだけなので効果はなかったようだ。
「一気に行くぞ! 【メンタルブースト・ダーク】! 【マジックブースト】!」
【マジックブースト】はこのクエスト中に取得した新しいスキルにして、キースの最大火力を発揮する為に必要な手札の一つである。
───────────────────────
【マジックブースト】
使用すると、スキルを発動した直後の魔法による攻撃の際に一度だけINTを二倍にして参照したダメージを与える。発動後、次の魔法の消費MPが一.五倍になる。十分後、再使用可。
取得条件
【杖の心得Ⅶ】と【魔法の心得Ⅶ】を取得すること。
───────────────────────
要するに、次にキースが発動する予定の魔法のみINTを二倍にする効果が適用されるのだ。消費MPは増えるが、全く以って安いデメリットである。
現在のキースは装備の補正値も合わせて【INT 225】だが、既に【虐殺者】も最大まで上がっているので【INT 250】になり、いつも通り【一騎当千】と【大物喰らい】によって四倍して1000の大台に乗る。
更に【知力強化小】の効果によって5%増加。【メンタルブースト・ダーク】の効果によって25%増加。最後にトドメの一撃の【マジックブースト】の効果によって二倍になって一度限り【INT 2625】という馬鹿げた数値を参照した魔法を放つことができるのだ。
勿論この後に使用する魔法は『炎爆』を装備している時点で火属性以外はあり得ない。
更に言えば弱い魔法を使用する意味もないので自然と最も威力が高いと思われる魔法を使用することになる。
まだ取得したばかりで使用したこともない魔法だが名前で大体わかるし、なによりボス戦という大舞台で華々しくデビューさせてこそ極振りの浪漫を掲げて脳筋プレイを自称するキースに相応しい行いだろう。
「────ふはははははははっ!! 消し飛べ、有象無象の虫けら風情がっ! 爆発こそが真に浪漫を体現する魔法であるのだと、その身を以て知るがいいっ…………!!」
【威圧】の効果を跳ね除けてキースへと向かってくる勇敢なる羽蟻を筆頭とした敵に対して、嘗てない程にテンションがぶち上がったキースが宣言する。
そして、広間の中心に広がる極大の赤色の魔法陣。放たれるは【火魔法Ⅸ】で取得した、正に浪漫を語るに相応しい魔法である。
「【ファイアエクスプロージョン】ッッ────────!!!!!」
その魔法を唱えた瞬間────ほんの一瞬だけNWOの世界の時が止まっていたかもしれない。
敢えて言うとすれば同時刻、運営側の人間はとあるプレイヤーの引き起こした前代未聞の事態に大騒ぎになっていたとか。
巨大な魔法陣から解き放たれた爆発と業火が広間を埋め尽くす。正しくあっという間の出来事だった。
キースはあまりの光量と音量によって視覚も聴覚も意味をなさなくなり、不思議な達成感に包まれながら立っているのか倒れているのかもわからない状態に陥る。
それは十秒か二十秒か…………少なくとも一分には満たない短い時間だったが、キースの視界が正常に戻った頃には広間にいた夥しい数の蟻は跡形もなく消え去り、如何なる奇跡か女王蟻だけが満身創痍になりながらも生き残っていた。
『スキル【無慈悲ナル者】を取得しました』
『スキル【乾坤一擲】を取得しました』
女王蟻が浪漫砲を耐えきった要因は色々とあるが、まずはスタンしなかった五十体程の羽蟻が全て【カバー】を使用して女王蟻と浪漫砲の壁になって威力が減衰したことにあった。
『フライングナイトアント』はその名の通り騎士のように最も優先するのは女王蟻の命である。基本的に女王蟻への攻撃は全て【カバー】に入るようにAIが設定されていたのだ。
とはいえ、例え【カバー】でダメージを半減しても元々魔法が弱点の羽蟻には特に関係なく、一瞬で溶けて女王蟻までダメージが通ったわけだが。
それから実は女王蟻だけは魔法に耐性を持っていたことも要因に挙げられる。
他の蟻が全て魔法に弱い中で女王蟻は魔法によるダメージを25%減少するという、運営側の密かな嫌がらせであった。
しかし、仮にこの二つの要素だけであれば女王蟻も纏めて蒸発してしまう程の威力があった。HPゲージ残り一割という満身創痍でありながら生きているのは、このボスの特殊な仕様に助けられたからだった。
「ぐっ…………や、やはり手強いっ! でも、あともう少しで…………!」
「はっ? いや急にどうした? 特になにもしてないだろ。変なフラグ立てるのやめてくれる?」
勿論NPC少女も生きている。パーティーの味方にはフレンドリーファイアは適用されないのである。
だが、少女は突然崩れ落ちるようにして膝をついて荒い息を吐き始めた。キースが開幕ブッパしただけなのでダメージは全く受けていないし、その証拠に少女のHPゲージは満タンだ。
だとすれば、この少女の不自然なセリフはイベントが進行したことを表しているのだろう。要するに、まだ戦闘は終わってないということだ。
「ギチギチッ! …………ギジギジギジィッ!!」
瀕死だったはずの女王蟻が一際激しく擦過音を立てると、背中が歪に盛り上がって虫の羽とは別に悪魔を思わせる異形の羽が生えてきた。
頭部からも触角の代わりに捻れ曲がった二本の角が突き出し、全身に闇色のオーラを纏い出す。
更に広間全体に巨大な漆黒の魔法陣が浮かび上がり、禍々しい見た目になった蟻と羽蟻が次々と出現してくる。
嘗て魔神の加護を受けた邪悪なる蟻の女王は遂にその正体を露わにしたのだ。
「はいはい…………第二形態乙」
そう、即ち女王蟻が先程の浪漫砲から生き残ったのは偏にこのギミックの為である。
だからといって無敵状態になるというクソ仕様だったわけではなく、あくまでもHP五割以下になると全てのダメージを半減するというだけだ。
結局のところ羽蟻の自己犠牲がなければ、あのまま女王蟻が第二形態になることもなく蒸発していたことは確かだったのだ。今度こそNPC少女が完全にフリーズしていたかもしれない。
「そ、そんな…………なんて禍々しいのっ! どうしてこんな…………もう少しだったのにっ…………!」
そう言って絶望したようにへたり込んでしまった少女を無視して、キースは第二形態に変身している時間を利用してさりげなく取得していた新しいスキルを確認していた。
そして、二つのスキルの効果を見て不適な笑みを浮かべる。どちらも破格の効果だったのだ。
───────────────────────
【無慈悲ナル者】
無防備な相手を魔法で倒す度に【INT +1】
ただし効果はスキル発動から一日の間。
上限は【INT +100】
取得条件
ノンアクティブ状態のモンスターを一度の攻撃で百体以上討伐すること。かつ、それまでに一度もデスペナルティを受けていないこと。
───────────────────────
───────────────────────
【乾坤一擲】
スキルを発動した直後の攻撃の際に一度だけ全てのステータスを五倍にして防御貫通ダメージを与える。
代償として、HPは残り1まで減少してMPを全て消費する。また十秒間スタン状態になる。使用回数は一日一回。
取得条件
一度の攻撃で千体以上のモンスターを討伐すること。また最低一つのステータスが1000を超えていること。
───────────────────────
【無慈悲ナル者】は明らかに【虐殺者】の上位互換の性能になっているが、ステータスを見ても【虐殺者】は残っているので二つの効果は重複するようだ。
これだけでも合わせてINT+125になるので基本的にINT+500が加算されるものと考えて問題ないだろう。
もう一つの【乾坤一擲】はデメリットも激しいので使いどころは難しいが、その効果自体は凄まじいものがある。
単純計算でも先程の攻撃の五倍の威力を叩き出せるのだから、これでまた至高の浪漫砲の道は近づいたと言っても過言ではない。既に頭のイカれた威力であることは脳筋には関係ないことなのだ。
流石に護衛クエスト中に使用するわけにはいかないが、いつか必ず使う機会が来るはずである。
「さっきより威力は低いけど…………【タイフーン】!!」
そして、こうしている間にも【メンタルブースト・ダーク】の効果時間が終了しそうだったので高速でメニューをタップして『炎爆』から『嵐流』に杖を持ち替えると最も強力な魔法を放った。
緑色の魔法陣が広間の中心に浮かび上がり、そこから発生した旋風は見る間に巨大化していくと周囲の蟻を吸い込み巻き上げながら瞬く間に暴風を吹き散らす竜巻へと成長して広間を蹂躙した。
「これで…………うん? おかしい…………どうしてボスのHPが減ってないんだ!?」
先程の光景の焼き直しのように女王蟻を除いた蟻は今の魔法で全て倒せたが、何故か肝心の女王蟻にはダメージが全く通っていないようだった。
仮に羽蟻が【カバー】をしていたとしても攻撃自体は間違いなく女王蟻に届いていた。
まさかと思いながらもキースは女王蟻に向かって【ウィンドカッター】を放ってみると、直撃した瞬間に風刃が闇のオーラに弾かれたのがはっきりと目に映った。
「こいつギミックボスだったのかよ!? 無敵状態とかふざけんなっ!」
この手のボスはギミックを解除しない限りはどれだけ手を尽くしてもダメージが入らなくなる。
どこかにヒントはないかと広間を見回すキースだが、当然ながらボスはそんな悠長とも取れる行動を許してはくれるはずもない。
虫の羽と悪魔の羽で二対四枚となった羽で空中を凄まじい速さで飛翔し、真紅のエフェクトを纏いながらキースに突進してきたのだ。あの巨体でぶつかられては一溜まりもないだろう。
「【詠唱破棄】! 【ウォーターウォール】!」
女王蟻の突進の勢いに嫌な予感を覚えたキースは咄嗟に【詠唱破棄】のスキルを発動させた。
即座に巨大な水の壁がキースと女王蟻との間を隔てるが大した抵抗もなく破られる。
「【ウィンドウォール】!」
続けて、巨大な風の壁が隔てるも女王蟻の飛翔を僅かに乱すだけで止めるには至らない。
「【ファイアウォール】!」
更に、巨大な火の壁が迫り上がるが一瞬の抵抗の後に虚しくも突破されてしまう。
「【ストーンウォール】!」
今度こそと思いつつ、巨大な石の壁が女王の進行を妨げようとするが止めるには一歩及ばず。
「【マジックフォートレス】!」
最後に球体状の魔法の壁が立ち塞がり、漸く女王蟻の進撃を止めることができた。
キースはすぐに次の行動を開始する。このまま攻撃されて仕舞えば【マジックフォートレス】は瞬く間に破壊されることだろう。
「【ダークプリズン】! 【ホーリープリズン】!」
突進の反動によるものか動きを止めていた女王蟻を闇と光で作られた檻が動きを封じる。
先程の様子を見る限りではこの拘束も長くは保たないだろう。予想以上に反動が大きいのか女王蟻にまだ動く気配はないが油断はできない。
しかし、この一連の攻防でキースの【MP】はなくなる寸前だった。
「【メディテート】!」
気持ちに余裕のないまま【メディテート】を発動して少しでも早く【MP】を回復しようと努める。
その間にギミックについて思考を巡らせるも答えは出てこない。NPC少女が鍵かとも思ったが色々と声を掛けても反応しないので違うだろう。
もう一度あの突進を受け止めるには【MP】が足りないので、このままでは詰んでしまう。
キースの思考が完全に焦りに支配されようとした時、突進から一分程が経過して漸く動き出した女王蟻の姿に目が止まった。
何故か女王蟻の全身に纏っていた闇色のオーラが最初とは見る影もない程に弱々しくなっていたのだ。
つまり、このボスのギミックの攻略法は単純な時間経過によるものだったのである。
先程の突進にしても真正面から受け止めようとせずに回避したり、または逸らそうと試みればもっと簡単に凌げる行動だった。
ただその場合は硬直時間が発生しないので連続して突進を行ってくる為、どちらの行動が正解とは一概には言えないかもしれない。
女王蟻は闇色のオーラによってステータスが大幅に強化されていたらしく、オーラが弱まってきた今のステータスでは檻を破れないようだ。
激しく檻の中で藻搔いているが二つの檻はビクともせず、しっかりと女王蟻を閉じ込めている。
その光景を見て漸くキースも正念場は過ぎたことを感じ取った。あとは闇色のオーラが完全に消えるまで待つだけである。
それから程なくして、女王蟻こと『クイーンイービルアント』は討伐された。
最後の最後で途轍もない反撃を受けそうにこそなったが、結果的にいえばキースの圧勝だったと言えるだろう。
こうしてクエスト【深淵の呼び声】のボスとの大激闘は終わりを告げた。
作者のイメージ
実際のところ、原作のNWOでステータスの項目の一つが四桁を超えるのは別にメイプルだけのことじゃないと思うんですよ。
レベル差とか考えればペインやミィのようなトッププレイヤーの一部は、バフを盛りまくれば一時的に四桁の大台に乗ることくらいはできるんじゃないでしょうか?
そうでもなければ原作でギルド対抗戦の時にペインが可能な限りのバフを盛った上で貫通攻撃だったとはいえ、既に【VIT】にして五桁が見えて来ていたと言っているメイプルを一撃で瀕死にするとか無理だと思います。
結論、キースの火力がおかしなことになってますが、これはNWOの仕様(独自設定でもOK)だから深く気にしないでくださいということですね、ハイ。
あと次の投稿は前回と同じで今週末というか、基本的に現在溜まっているストックが切れるまでは毎週末三連続投稿という形でやっていきます。
ストックが切れるのは増産しない限りは来月くらいになりそうなので、それまではお楽しみください。