たまには脳筋プレイも悪くない 作:カマンベールチーズ
────ガヤガヤ
「………まだ屋台を出してから三十分も経ってないのに売れたわ」
「あの気前の良さを思うにトッププレイヤーだと思うけど、キースって名前には心当たりがないのよね」
「後で掲示板でも探してみようかしら?………そういえば初日に魔法使いのプレイヤーで随分と騒がれてた人がいたわよね」
────ピピ、ピピピ
「──入力完了っと!これで金額設定はいいとして、恐らくトッププレイヤーだと思われるキースの反応を考えれば販売相手は厳選した方が良さそうね」
「まあ、彼の場合はコレクターっぽい雰囲気がしたから多少は過剰反応だったとしても、お眼鏡に叶ったのは確かだわ」
「あの感じだと装備にゴールドを使うことは厭わないでしょうし、要するに低く見積もっても現状に於ける相場を上回る価値があったということよね」
────トコトコ
「ねぇ、さっきの見てたんだけどさ〜。あの魔法使いの人に売ったのと同じような杖はまだあるかな〜?」
「あら?貴女は………ふふっ!勿論あるけど、一つで十五万ゴールドになるわよ?」
「う〜?まぁ、そのくらいならいいかな〜。………ただその前に性能を確認してもいいよね〜?」
「ええ、ちょっと待ってね。………はい。この二つよ」
────ピピ………ポン
「お〜!これは確かにいいものだ〜!」
「ふふっ、ありがとう。そっちの青色が水属性で、黄色が土属性よ。どうするかしら?」
「むむっ、折角だし両方買ってやる〜!ギリギリだけど幸い待ち合わせはあるもんね〜」
「ふんふ〜ん………まさかドラグを待ってる間にこんな掘り出し物に会えるとは思わなかったな〜。うん、我ながら運の良い自分が憎いよ〜!」
────ランラランララ〜
「毎度ありー、また来て頂戴ね」
「それにしても、彼女の目にも溜まるならもう間違いないわね!」
「キースには悪いけど………優秀な商売人はゴールドを持っていそうな人に目敏いものなのよ。価値あるものは小出しにして末永く、ってね?」
────フフフ………
キースが運営側にとっても予想外だったクエスト【深淵の呼び声】を単独攻略した日のこと。
その深夜帯に急遽臨時メンテナンスが行われることになり、それが終わった頃には明け方近くになっていたにも関わらず、いつものようにNWOは賑わっていた。
そして、またしてもキースはとある公式掲示板に於いて注目を浴びることになっていた。
───────────────────────
【力こそ】謎の魔法使いを見守る会【パワー!】
346名前:名無しの槍使い
ただいまー!
臨時メンテやっと終わったー
それより運営からの通知見てなかった所為でドロップ拾い損ねたんだけどどうしてくれる
347名前:名無しの大剣使い
おかえりー
どんまいwww
バグでもあったのかねー?
348名前:名無しの大盾使い
おかえりー
ちゃんと確認しとけよー
夕方くらいに一瞬フリーズしたような気がしたけどアレとか怪しいな
349名前:名無しの弓使い
おかえりー
あっやっぱりフリーズしたよな?
パーティーメンバーに聞いても半々くらいで反応が分かれて気になってたんだよ
アレなんだったんだろうな
350名前:名無しの魔法使い
ああっ、キース様…………素敵…………!
351名前:名無しの双剣使い
おかえりー
お前らまだログインしてたのか
ゲームは程々にしてちゃんと寝るんだぞー
352名前:名無しの弓使い
>350
急にトリップしてどうした
というかキースって誰だ浮気か、浮気なのか?
353名前:名無しの大剣使い
いや浮気って…………言いたいことはわかるけど
でも実際なにがあればこうなるんだよ
なんでもいいから情報プリーズ!
354名前:名無しの魔法使い
>352
ちょっとやめて人聞きの悪い!
てかそれどころじゃない!
今日は特大スクープを仕入れてきたわよ
なんと遂に彼の名前が判明したわ!
355名前:名無しの槍使い
マジで!?
356名前:名無しの大盾使い
これは確かにスクープ
話の流れから察するにさっき言ってたキースってのが名前か?
357名前:名無しの魔法使い
その通り
本人が言ってたから間違いなし!
358名前:名無しの双剣使い
はっ?
まさか本人と遭遇したのか!?
359名前:名無しの弓使い
ギルティ
どうしてそうなる!?
事と場合によっては訴訟も辞さないぞ
一から十まで全部流れを説明するんだ、あくするんだよオラァンッ
360名前:名無しの大剣使い
ちょっと接触しただけでこれよwww
イケメンも美少女も即吊るし上げとか周りの反応は似たようなもんなんだな
361名前:名無しの魔法使い
勿論その為に掲示板に来たのだから
実は今日PKに襲われてるところを助けてもらって少しだけ話ができたのよね
レア装備をドロップしたところを見られてたみたいで急に囲まれて絶体絶命の時に颯爽と現れて一瞬でPK達を倒してしまったの
何故か魔法使いから陰陽師にジョブチェンジしてたけど
362名前:名無しの槍使い
あーなるほど…………んっ?
ちょっと待って最後の方だけ意味がわからないんだけど草生えるwww
なにがあれば魔法使いから陰陽師にってかNWOでジョブチェンジなんて初めて聞いたわwwwww
363名前:名無しの大盾使い
だから草に草を生やすなと…………いやそれどころじゃねえわ!
マジでどういうことなの!?
陰陽師ってそんなスキルあったっけもうなにがなんだかわからん頭パニック
364名前:名無しの弓使い
ふむ…………陰陽師か、余裕で有りだな
本当にジョブチェンジしたとして服装も合わせてるのかそこが重要だ
365名前:名無しの双剣使い
kwsk
366名前:名無しの魔法使い
改めて説明するわよ?
ちょっと長くなるからよろしく
それは今日の二十三時頃のことだったわ
私は拙いながらキース様の真似をしようとソロで森に来ていたのだけど大梟を倒すことに成功した上に運良くレアの耳飾りがドロップしたの
キース様が同じ耳飾りをしていることの情報は既に裏付けも取れていたことだし私はこれでお揃いだと周囲の警戒も怠って狂喜乱舞したわ
この時の様子がどうやらPK達に見られていたんでしょうね
でもって注意散漫になっていた私はあっという間にPK達に囲まれてしまったわ
最近はMPとINTにしかステ振りしてなかったからAGIも低くて逃げられないしソロで撃退できる程のPSもないしで本当に絶体絶命だったのよ
そうしてPK達が徐々に包囲網を狭めてくる中でキース様は突然現れたの!
前触れもなく背後の森から極太の光線が飛び出してきて一瞬にしてPKの一人を消し飛ばしたのには本当に驚いたわ
当然私も含めて呆然としたけどキース様はまるで自分の存在を誇示するように堂々と姿を現してから「検証にはちょうどいい相手だな」って傲岸不遜に言い放っていたのには惚れ直したわね
ここからが肝心の部分でキース様がいつのまにか手に持っていた御札のようなものを掲げて「起動」って言った瞬間に魔法陣もなく【ウィンドカッター】のような不可視の風刃がPKを襲ったのよ!
手に持っていた御札はポリゴンになって消えてしまったけどすぐに新しい御札を取り出して同じように掲げてから「起動」と言ったら今度は【ファイアボール】のような火球が出てきたわ。
御札を使用した時の魔法は普通の魔法使いのものと威力や規模も変わらなかったから使用者のINTは関係ないのでしょうね
その後はもう何度か御札を使用して検証が終わったのかキース様の自前の魔法であっさりと残ったPK達は吹き飛ばされたわ
キース様はPK達がドロップしたアイテムや装備品だけを拾ってなにも言わずに去ってしまいそうだったけれど咄嗟に気を取り直した私が話し掛けた時に名前とかは教えてもらったのよ
流石に助けてもらった身でステータス構成やらスキルの詳細やら御札みたいなアイテムについて聞くのは憚られたからわからないわね
ただ目の前で見たキース様の魔法はやっぱり噂に聞いていた通り次元が違うとしか言えない程に圧巻の威力だったわ
これが私の身に起こったキース様とのロマンティックな出会いの全てよ
367名前:名無しの弓使い
はいギルティ極刑だオラッ(・Д・)
なぁーにがロマンティックな出会いだ脳内お花畑の
貴様は喪女の分際でやりすぎたぶっちゃけ妬ましい羨ましい死罪すら生温いっ!!
368名前:名無しの大剣使い
草
369名前:名無しの槍使い
マジで長くてワロタwwwww
てか女同士の風当たり強すぎだろ怖っ!
370名前:名無しの大盾使い
全然話が入ってこなかったけど要するにアイテムってことだよな?
使い捨てっぽいけど便利そうだな俺も欲しいどこで買えるんだ
マジな話大盾だとDPSが低すぎるからアイテムで補うのは有りかもしれないな
371名前:名無しの双剣使い
ところで今の話どこからどこまでが本当なの?
372名前:名無しの魔法使い
全部事実だっての!
私の主観はマジでこんな感じだから!
そういえば爆弾みたいなのも使ってたかも?
ちょっと御札のインパクトが強すぎたからはっきりとは覚えてないけど
アイテムの購入場所くらいは聞いておくべきだったかなぁ〜
373名前:名無しの大盾使い
まあ件の魔法使いの人の名前が判明したのと新アイテムらしき情報がわかっただけでも一度の接触で得られた収穫としては充分だろ
374名前:名無しの大剣使い
というか今更だけどキース様ってなんだよwww
375名前:名無しの弓使い
キース様はキース様だろ
いい機会だから私もこれからはキース様と呼ぼう
376名前:名無しの槍使い
いや意味不www
キース様呼びは流石に草しか生えない
俺だったら恥ずかしくて絶対に呼ばれたくないな
377名前:名無しの双剣使い
>376
安心しろ
お前が女性に様付けで呼ばれることはない
───────────────────────
「な、なにこれ…………キースって、あのキースのことよね? 本当にトッププレイヤーだったのね。というか御札と爆弾ってなにっ!?」
青色のパネルを凝視する青髪の女性プレイヤー、生産職のイズが愕然とそう呟いた。
生産活動の途中でほんの休憩ついでに掲示板で夕方頃に知り合ったキースについて調べてみたところでこの情報を発見したのだ。
そもそも深夜過ぎてもゲームを続けていたのはキースから大量に買い取った素材による生産活動が捗りすぎたからであり、あと少ししたらログアウトするつもりだったのだが…………。
「き、気になるっ…………気になるけど、対価もなしに直接聞いても教えてもらえないわよね。どうすればいいかしら…………そうだわっ!」
イズは一つの生産スキルに拘らず幾つものスキルを同時並行で育てており、ゲーマーらしく未知の生産スキルの存在には目がなかった。
それに掲示板ではキースは【INT】極振りだと推測されているので購入したアイテムだと思われているようだが、少しだけ彼の内面的な部分に触れたイズの考えは違った。
掲示板で調べる限りキースは戦闘をアイテムに頼る必要はない。
極振りによる恵まれた火力と類稀なPSが合わさってゲーム開始当初でさえ百体を超えるモンスターを相手に大立ち回りを繰り広げる程なのだ。
それ故にキースが言っていたという検証という言葉は生産職のイズからしてみれば馴染みのあるものである。何故なら新しく作ったアイテムの効果をまず自分で確かめてみるのは生産系プレイヤーの間では常識なのだから。
どうにかキースから正体不明の生産スキルについて聞けないかと悩んだ末に、なにかを思いついたのかイズは大急ぎでメニューウィンドウに指を滑らした。
フレンド欄からキースの名前をタップしてメッセージを綴っていき、文章を精査した後に微かに震える指で送信する。
「ふぅ…………あとはキースの返事次第ね。………………今日はもうログアウトしましょう。明日の為にも………ふふっ!」
一仕事やり終えた後の達成感を滲ませたイズはまだ続ける予定だった生産活動を切り上げて、NWOの世界からログアウトしてしまった。
イズからキースに宛てられたメッセージには、このようなことが書かれていた。
『夜分遅くにごめんなさいね。早速で悪いのだけど、実は明日の夜に少し護衛をお願いしたいのよ。もし時間が合わないなら無理にとは言わないけれど、どちらにしても一応返事をもらえれば私としても助かるわ────by.イズ』
こうしてキースはNWO全体に名前が知れ渡るようになり、更に数少ないフレンドによって彼の周囲は俄かに騒がしくなっていく。
有名になれば他のトッププレイヤーの目に留まるのも必然であり、この二週間はずっとソロプレイで通してきたキースも少しずつプレイヤー間での交流が増えていく要因になった。
作者のイメージ
実際のところNWOってPKとかいるんでしょうか?
基本的にメイプルとその仲間たちの視点だから常にほのぼのとしていて殺伐はないけど、初期の頃にレアドロップを手に入れたメイプルが他のプレイヤーに見つからないように隠してたんですよね。
ゲーマーの嫉妬は怖いってことを理沙から聞いてたみたいですし、PKによって奪われたりする危険性があるってことだと解釈しました。
PKに奪われる心配のないユニーク装備に関しては全く隠す素振りは見られませんしね!