頭の中にAI住んでる系輪廻転生TS病弱少女のガールズ&パンツァー   作:文月フツカ

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有機物の矛盾点は、いずれ何らかの形で補正を入れます。
ご指摘ありがとうございます。


6話で決勝に備える5話

1

 

関ヶ原の戦いって後世では天下分け目の大決戦だとか言われているが、東西どっちでも参加した身からすれば、始まる前から分かりきっていた戦いだった。

西軍に居ると、小早川の動きだとか島津の動きとか露骨に怪しいし、吉川に至ってはもう軍議の時点で情報抜き取る動きしていたからなぁ。

 

今回の作戦は、やむなく西軍に付かされる事になった大名の一人、島津が行った撤退を参考にしたものだ。

九州とかは横と縦の繋がりが本州以上に強いから、末端の足軽に至るまで目に狂気が宿っている。

だからこそ一番守りが厚い本隊の目前まで走ってビビらせ、咄嗟に横をすり抜けるなんて頭おかしい行動が成功したのかもしれない。

 

『敵の中央をマジでぶち抜いて撤退とかは、そんなになかったね』

 

一部の世界線ではマジで突破した所もあるのだ。目の前で見たときマジで怖かった。兵士全員に悪鬼が乗り移っているって錯覚するほどの怒号と剣幕だった。

 

「それではこれから敵包囲網を突破する、ところてん作戦を開始します」

 

自分で提案した事とはいえ、改めて西住さんの口から開始の合図を聞くと思ってしまう。

あぁ……頭おかしいんじゃねぇの?

 

『そのセリフ、絶対君だけには言われたくないって誰もが口を揃えて言うよ』

「小山、行くぞ」

「はい!」

 

先陣を切るのは38t。うおお怖えええ……やりたくなーい!とか思ってる間に、勢いよく建物を飛び出した。

敵の砲が火を噴く度に、ハイエが即座に弾道計算に入る。直撃以外は無警告で良いと言った分、結果の精度は高くなるはずだ。なるよな? なってください。

 

「隊形変更、フラッグの四方を固めてください。小山さん、38tに直撃しそうな時だけ言いますので、いつでも動けるように。河嶋さんは砲弾の装填を2秒短縮してください。会長は砲撃に集中を」

「やっぱ37mmじゃ真面にやっても中々抜けないよねー」

「ですね。撃破に拘らず、延々と嫌がらせをしてやりましょうか。雪が味方なのはこちらも同じです」

「おーこえー」

『敵砲弾、真正面より直撃コース』

「右へ曲がってそのまま元の位置へ」

 

こんなくっそ雑な指示でも、咄嗟に実行できる小山さんってもしかして天才?

 

『天才というより、角谷さんや河嶋ちゃんに挟まれていれば自然と出来そうだよね』

 

こちらに構わず西住さんには作戦を展開してもらった。あれー普通ならこんな作戦やらないのに、やけに何度もやった感があるなー。

 

『うんやったんじゃない? 末期戦でよく見たよ』

 

クソが。

 

とにかく小山さんのへばりつくような操縦で翻弄しつつ、会長と河嶋さんのタッグで敵の履帯を潰していく。お、胴体と砲塔の間狙って2両撃破した。戦時ならコレ大戦果だぞ。焼け石に水だけど。

そうやって暴れまくって、もうそろそろ撤退しようかと思ったとき、遂にハイエから警告が来た。

 

『IS-2 直撃コース 3カウント』

「煙幕散布しながら緊急停車!」

 

直後、煙幕を吹き出しつつ車両が停車する。そして丁度目の前に着弾した。

 

「うっわー、至近弾でコレか……当たったらマジで怪我するねぇ」

「煙幕も辺り一帯を覆っていますが、この風では20秒も持たないでしょう。丁度良いので、そのクレーターに隠れてしまいましょう」

 

まぁ煙も相まって、一瞬見落としてくれるだろう。

 

「どのぐらい持つのかな?」

 

小山さんの心配も分かる。クレーターに全身を隠せていないし、敵もこっちが止まったのは見えていた筈だからな。普通ならここで詰むんだ……普通ならな。

 

 

4.kadotani

 

茂野ちゃんの指示で間一髪白旗を免れた訳だけど、風前の灯火なのは変わらない。クレーターに入ったとはいえ、煙幕が晴れたらそこが私たちの、この試合での終着点だろう。

 

「砲塔を右へ45度旋回……じゃなくて、私が止めるまで砲塔を右に回してください」

 

おおっと茂野ちゃんの追加の指示が入った。今度は何をやらかしてくれちゃうのかな?

 

「まぁ出来ることないし良いよー」

 

茂野ちゃんの指示で言われた通り砲塔を動かしていく。この煙幕で何も見えない中何をするのか。

 

「2秒後発砲」

 

……はい?

私が少し戸惑っていると、茂野ちゃんが私の手を握って、そのまま発射トリガーを押し込んだ。

 

カチっという音と共に発射された砲弾は、煙幕の一部を切り裂いて飛んで行った。

 

晴れた煙幕の隙間から砲弾を目で追うと、敵車両の砲塔と車両の繋ぎ目に吸い込まれるように入って行き――――――敵車両が白旗を上げた。

 

茂野ちゃん、今……何したの?

 

「次弾装填、こちらがやられる前に後1両は潰しますよ」

 

河嶋が少しもたつきながら装填する間、私は再び言われた通り砲塔を動かした。そして再度茂野ちゃんから発砲指示があった。

今度は躊躇わずに砲弾を発射した私は……またもとんでもないモノを目にした。

 

「はい撃破です。IS-2も頑張りましょう」

 

放った砲弾はまた敵の車両に当たり、白旗を上げた。

 

まるで敵がどんな動きをしているのか全て分かってるようだ。砲弾が当たる警告にしても、さっきの砲撃にしても、まるで未来が見えているみたいだ。まさか本当に超能力でも持っているのかな?

 

「はぁ……はぁ……きっつい」

 

息を荒げながら練乳を吸うこの子に、先程から何度も助けられている。まさか、その頭脳は未来の演算でもしているのかな。

 

「茂野さん。どうやって分かったの?」

 

小山の質問に、茂野ちゃんは笑みを浮かべながら答えた。

 

「敵の位置ですか? 戦車は動くとき、必ずと言っていいほどエンジンが響きますし、地面も揺れる。私は耳を澄まして大方の位置を探った後、煙幕を張った段階から敵戦車がどの程度の距離を移動したのかを計算しただけです。車両の性能、積雪量、エンジンの音量、地面が揺れた時間……その他諸々全部利用して、敵の位置を脳内シミュレートしたにすぎません」

 

私は耳も良いのでという最後のセリフを付け加えると、ハッチから顔を出して辺りを伺い始めた。

その身体的な超感覚と、類い稀なる頭脳から導き出された予想は、コンピューターに匹敵するという事なのかな。この子がウチの学校以外で戦車道をやっていたとしたら、そう考えると、私は一気に背筋が冷たくなった……いやぁ、茂野ちゃん相変わらず怖いねぇ。

もしこれが本物の戦争だったら、この車長は必ず自分たちに勝利を与えてくれるって盲信とかも生まれるんだろうなぁ。

 

「で、次は?」

「……あーすいません。後は時間稼ぎが限界のようです」

 

茂野ちゃんがぱっと車内に戻ってきた直後、IS-2の砲弾が再び至近に落ちた。

 

「だが敵の戦車は4両も撃破したぞ!」

 

そーなんだよねー。38tで4両もって軽く伝説作っちゃったからなぁ~……敵が逃がしてくれるかな。

 

「撃破はほぼ無理ですが、時間を稼ぐだけなら出来ますよ。会長、砲手を代わってください」

 

まぁじでえー? 私は抑えられなくなって、遂に笑ってしまった。この子は何をやらかしてくれるのか、やり遂げてしまうのか。

 

「んー、一番特等席で見せてもらおうかな」

 

私は茂野ちゃんを砲手席に座らせた後、膝の上にお邪魔した。

 

「んんぇ!? あの……」

「いいから早くやりな~。何やるか見せて貰うよ~」

「えぇ……では失礼してっと」

 

そういうと茂野ちゃんは背中越しに照準を覗き始めた。甘い物ばっかり食べてるからか、女の私でも甘ったるいと感じる匂いだ。ちょっと頭くらくらするよ茂野ちゃん。

彼女はそんな事を気にせず、細かく砲塔を調整している。数秒操作し終えると、ピタッと砲塔を止めて、発射態勢に入った。

 

「3、2、1、今」

 

発射されたこちらの砲弾は、敵戦車に向かわなかった。僅かに上にそれた砲弾はあらぬ方向へ飛んでいく前に――――――突如爆散した。

ん、え……砲弾が誤作動を起こしたのかな。戦車道連盟の厳しい基準をクリアした砲弾なのに?

 

「次弾装填」

 

たったそれだけ。その言葉は河嶋をいつもの2倍は早く動かした。

 

「装填完了!」

「敵の再装填まで10秒……修正、左1.5度。カウントスタート。5、4、3、2、1、今」

 

発射された砲弾は、再びあらぬ方向へ行き、爆散した。

 

「茂野ちゃん……まさか、まさかだよね」

 

信じられないという気持ちが半分、いやこの子ならやりかねないという気持ち半分。今、会場にいる観客全員は口を開けて驚いているだろうね……。

次も、次も、次もその次も。合計で6発同じ現象が起こった。

 

「次弾装填。こちらの弾も次が最後の一発ですので、来る衝撃に備えておいてください」

 

この子、敵砲弾を、こちらの砲弾に当てて迎撃している。

 

「はは……あー、えぇ~、はい。茂野ちゃん、お疲れ様」

 

とりあえず褒めよう。十分に時間は稼いだだろうし、これなら西住ちゃんも上手くやってくれる筈だ。

 

そうしていると遂にIS-2が痺れを切らして、こちらの目と鼻の先までやってきた。怖いなー……どんな衝撃が来るんだろうね。そう思っていると、茂野ちゃんがぎゅっと私を抱きしめてきた。

私の方が少し体が大きいから中々妙な感じではあるけど、まぁ怖さは薄れたかな。

 

そうやって私たちは、この試合の終着点に辿り着いた。

 

 

 

5

 

 

はい。予想通り衝撃で気絶したな! 会長に抱き着いたら助かるかなと思ったけどダメだった。目が覚めたら試合も終わってるし。

 

『位置を変えずに打ち込んできてくれたのって文字通りの奇跡だね。彼女がもっと攻撃的だったら2発目でもう計算が間に合わなかった』

 

ウィークポイントだけを狙って撃破してきた人は、ああいう場合は普段通りの行動をしてくる。ましてや38tなんて全身弱点のようなモノだから、一番確実に当たるど真ん中を狙ってくるのだ。

 

『それが分かっていればアレぐらいなら出来るよねー』

 

戦時中も何度かやって危機を救われた俺とハイエの戦車での奥の手だ。まぁこんな技使う状況に陥っている時点でダメなんだが。真の完勝は戦う前に終わらせる事だ。

俺が足止めしたノンナさんの戦車は、その後大急ぎで後を追ったが、撃破できたのは風紀委員のカモさんチームだけだったという。俺は一両も撃破させる気は無かったのだが……砲弾が切れるとはなぁ。

 

「茂野さん。IS-2の砲弾って私たちの砲で何とかなるものなの?」

 

お、小山さんが疑問を口に出してきた。

 

「戦車道の砲弾は炸薬の量、というより実弾より軽いのであんな事が出来るだけですよ。まぁそれでもとてつもなく重いので運も大きいですよ」

 

確かに質量の差などで押し負けるであろうが、ハイエのミラクルスナイプアシスト通りに撃った俺は、正直理由も分からん。

 

俺が反省点を洗い出しながら、動かなくなった38tの応急修理をしていると、西住さんと話し終えたカチューシャさん達がやってきた。

 

「貴女もなかなか凄かったわね! まさか38tで4両も落とした挙句、ノンナの手まで煩わせるなんてね」

「私一人では何も出来ませんでした。頼れる仲間がいるから、安心して任せられるんです」

 

あ、腰痛い。衝撃でぶつけた所がまだ痛んできやがる。

 

「私は偉大だから、労いも忘れないわ。ノンナ!」

「はいカチューシャ。茂野さん、これをどうぞ」

 

そうやってノンナさんから手渡されたのは、湿布だった。

 

『患部はここだよ~。ほれほれ』

 

「あっッりがとうごっざいますノンナさん……クソAIが

「次は、あんな事させる間もなく倒します」

「砲弾迎撃ですか? んー……お互い頑張りましょうね」

 

ノンナさんと握手を交わした後、会長に湿布を張って貰った。手が届かないんだ……。

 

 

6

 

西暦1945年 ラインラント

 

案の定合流予定の司令部は崩壊していた。瓦礫と残骸と肉片が散乱している司令部跡にて、俺は戦車から降りて辺りを散策していた。

何度かドイツが勝つ事は出来ないかとこれまで幾度か足掻いてみたが、足掻くほど取り返しの付かない事態になる事が殆どだった。史実は変えられないという事だ。

頑張って勝利を重ねた結果、アメリカの恐怖心を最高潮にしてしまったドイツは、日本共々核爆弾を落とされた……そんな転生もあった。かの合衆国が敗北するというのは、どうあがいても許容できないらしい。

 

「車長、もう終わりなんじゃないですか」

 

装填手の言葉に俺は何も返せない。だって本当の事だからな……この状況が好転するなど絶対に有り得ない事なのだ。

俺はポケットの中から煙草を取り出すと、火を付けつつ煙を吸い込んだ。その時、少し離れた場所から大爆発が起き、遠目に見えていた橋が、崩れ落ちた。

 

「は、橋が! 私たちの退路はどうなるんですか!?」

「黙れ! 司令部より次の命令を受領して戦い抜くのだ!」

 

砲撃手と通信手がうるさい。正直言ってもう動かせる燃料も無く、砲弾も2発しかない。機銃弾は20発近くあるが、これだけではなぁ。

 

『いやぁ、今回もダメだったね。まー後は亡命でもしてみるかい』

 

出来るならしてるんだよなぁ。もうアメリカは俺個人に暗殺指令出しているし、この体の寿命も後2年も無いんだぜ。

 

「全員黙れ」

 

俺の号令で、言い争っていた3人はこちらに向く。どうやらベルリンもあと数か月が限界らしい。いつも通り負けて、いつも通りチョビ髭おじさんが死んだり死ななかったりするだけだ。

 

「すぐに通信手段を復旧致します! そののち総司令部へと―――」

「しなくていい」

「……は?」

「復旧はしなくていい」

 

諦めろ通信手。千年王国の夢は醒めたんだ。

 

「何を、仰られているのですか」

「現時刻を以って諸君らの軍務を解く。逃げるなり降伏するなり好きにせよ」

 

そう言って俺は偶然落ちていて、かつまだ使えるダイナマイトに火をつけ、ティーガーⅠの中に放り込んだ。

 

「おやめください! まだ我等は負けておりません! 英知の結晶たる作戦本部が今に素晴らしい作戦を実行させる筈です!」

「いいやここまでだ。あの橋は味方によって落とされた。我々はもう見捨てられたのだ」

「団結こそ力ではなかったのですか! ドイツを信じよと仰ったのは貴方ではありませんか!」

 

あー、刷り込み教育の成果様様だな。何もわからず、ただ教えられた事だけを忠実に守り抜く戦争機械の成れの果てがコレだ。まぁそんな教育を施したのは、少なくともこの少女より年を重ねた俺や大人だがな。

無責任な話かもしれないが、俺はそこまで責任なんて持てない。元々ドイツ人じゃないし、アウシュビッツを直に見てると、余計にナチスドイツに嫌気がさす。

 

「……車長殿は敵の狂気に飲まれてしまわれたようですね」

 

ん、通信手が不気味な笑いを浮かべだした。こいつ……。

 

「お前ら全員逃げろ!」

 

その言葉と同時、全員が動き出した。装填手は全力で妹を引っ張り込んで物陰に、操縦士は戦車を盾にした。

だが運悪く、俺は盾に出来るものが無かったので、一か八か戦車に向かって走り出したのだが……。

 

 

あー血が止まらない。流石に銃弾を避けるなんて無理だ。

 

『はいお疲れ様。歴戦の英雄の最期は味方に後ろから撃たれたとは、中々いい話だ』

 

いいけどさあ別に。俺一人殺してこの後どうするのかねアイツ。というか他の奴らは?

 

『君の命令通り全員逃げたよ。3人とも最後は君を見て泣いていたね』

 

ふーん。

 

『当の本人がコレだもんなぁ。表面は他人に労わっていても、内面はこんな面白おかしいんだもん』

 

「あ、あぁ……車長殿。敵にやられてしまったのですね……ご安心ください、敵はかナらずとッテまイります」

 

……心が完全に壊れたか。信じていた国と教えが根本的に崩壊したんだもんな。

 

『尊敬していた上官の言動も原因だよ』

 

ひとしきり笑った後、通信手はそこら辺にあった装備を拾って、敵のいる方向へ走って行った。

なぁハイエ、あの状態でどれだけ戦えるかな。

 

『タガが外れたからね。もう死ぬまで止まらないだろうね』

 

まぁそれもアイツの人生だし、悔いはあれど満足して死ぬだろうよ。最期ぐらい月でも見たかったんだがな……。

 

お前の残りの人生に幸あることを願っているよ。あーあー戦争とか大っ嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




砲弾迎撃についてコメントでご指摘いただいたので、それっぽい事を文中に追加しました。
戦車道って事でここは何卒。

それでもご納得頂けないようでしたら、有機物が責任取ります。
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