頭の中にAI住んでる系輪廻転生TS病弱少女のガールズ&パンツァー 作:文月フツカ
1
生徒会室で生徒会メンバー、そして西住さんと俺で今後の作戦会議が行われていた。西住さんが改めて敵の予想戦力を紙に描いてくれたのだが。
何だこのクソマッチ。パンター10両にヤークトまで出てくるとか……他校から格安で払い下げとか買えないもんかね。
『搭乗員を強い戦車に移したとしても、練成時間が足りなさすぎる』
あーやっぱり乗り慣れた奴が一番動かしやすいからな。贅沢な悩みだが、4号時代のメンバーが居てくれたらなと切に思う。アイツらなら今の大洗にとって一線級の戦力としてカウント出来る。
『ティーガーⅠの時のは?』
あんな癖が強い奴らなんぞ絶対要らない。確かに促成栽培されたにしては良い所まで育っていたけど、腕に対して精神面とかが幼すぎる。操縦士は物品の扱いと周囲への態度を除けば使えたんだけどな。
『事後報告だけどね、4号のメンバーは終戦まで生き延びたよ。新編された連邦陸軍戦車隊の教導官だってさ』
へーまぁどうでもいいか。会えないものは会えないし、他の手を考えた方が有意義だな。
などと思っていたら、小山さんにP虎のレストアが完了したとの報告が入った。さてさてあのじゃじゃ馬はどこまで動いてくれるのか。
2
校庭にて。
案の定履帯とエンジンがダメになった。いや学生なのにコレ動かせるまで直した腕は凄まじいけど、この失敗作はどうしてもなぁ……。
『大学選抜チームって所はA41使ってるよ』
は????
ほぼほぼ主力戦車じゃねーか。1945年までの制約じゃなかったか?
『1945年までに設計/試作された物なら通るんだよ。Mk.Ⅰはアウト判定だけど、A41は試作車だからいいみたいだね』
「……会長、センチュリオン買いましょう」
「お金があれば購入リストに入ってた確率が高いねー」
流石に俺の貯金でも戦車は買えない。買える金額を持っていたら最初から買い揃えてる。こんな事ならもっと稼いでおくんだったな。
ぼーっとP虎を眺めていると、変な事思いだした。
戦車に限らず、ドイツって理論に対して技術が全く追いついていないんだよ。ジェット理論をライト兄弟に説明しても変な顔されるのと同じなんだぞ。
『頭おかしいんじゃねぇのって顔された当人が言うと説得力あるね』
おめーらが人類に翼与えた元凶なんだから理解を拒否してんじゃねーよ畜生って、当時の俺は口に出してキレてた。まぁ何が言いたいかというと、ちゃんと現行で実現可能かつ壊れにくい物を現場に回してねって事だよ。ちょび髭おじさんの前で火を噴いた時、あの人怒りで口の端ヒクヒクさせてた。俺は笑い堪える為ヒクヒクさせてた。
そうやって他のチームも戦車を探したり強化したりと動いている中で、西住さんの表情が暗いことに気が付いた。色々な目にあったみたいだし、様々な誹謗中傷を受けて来たんだろうな。正直、どんな言葉を掛けても無意味な気がするけど、落ち込んだままだと試合にも響く。武部さんの提案で、西住さんの部屋でご飯会なるものを催すそうなので、お邪魔しようと思ったのだが……なんかさっきから遠目に変な視線を感じるんだよなぁ。
『変に目立つ事するからだろ』
プラウダとの試合の事ならお互い様というか、7割お前がやらかした事だろ。
『これは異なことを。私の導き出した事象を、周囲に波風が立たないよう伝達出来なかった君の能力不足が原因じゃないか』
「ねぇ夕姫も一緒にご飯会どう?」
行きたい。行きたいけど変な不審者は連れて行きたくない。かといって一人になるとこの体だと碌に抵抗できないのも事実な訳で。
『危害は加えて来ないとは思うよ。あれ戦車道関係のっぽいし』
愛里寿に見つかったから、捜査でも入れられてるのか。そういえば三年で隠蔽工作とか終わっていいって契約だったな。あの時は戦車道やるなんて思ってなかったから……。
まぁ帰宅時間までに剥がれなかったら家に泊めてもらうとしようかな。
「ご迷惑でなければ、ご一緒させてもらいます」
「うん! 茂野さんとゆっくり話したことってあんまり無かったから、楽しみだなぁ」
そうやって夕食の材料を買うために最寄りのスーパーへと足を運ぶ流れとなった。
「どうせなら夕姫も何か作る?……というか、作れる?」
「この体は味覚が半壊してますから、味付けには期待しない方がいいですよ」
『レシピ通りに作れば食べれる物は出来る。問題は君がずぼらな行動をしなければいいだけだ』
食べれるだけいいだろ。そりゃ口に入れるなら美味しい料理に越したことはないが、胃袋に収まったら何も関係ない訳だ。
『弱火で3分煮込む工程で、時短の為に超過火力で1分煮込めば同じなんて持論、主婦や料理人が聞いたらぶん殴られるよ。そんな事だから完成品を口に入れたとき首を捻ることになるんだ』
「そっかー。まぁ作れても夕姫は食べきれないし」
「私は余った端材だけでも十分ですし、願掛けも兼ねて豚カツにしましょう」
「豚カツはいいけど……あーもう何か食べたいもの作ってあげるから言ってみ!?」
「わーい。ではグラブジャムンをお願いします」
「出た……いつか言ってくると思って材料も家に置いてるわよ」
マジで?
『マジだよ』
いきなり言って出来る訳無いとか思っていたら既に用意してあるとは。まさか武部さんもハイエみたいなのを飼ってるのか。
『本当にそう思う? ねぇそれ本当にそう思っての言葉かい?』
……さーて楽しみだなグラブジャムン。前に本場で食った時は材料の質とか最悪だったから、凄い楽しみだ。
3
西住さんの部屋にて。
豚カツを食べる皆の横で、黙々と
でも武部さんの作った物は安心して食べられるな。甘いけど。
「気になっていたんだけど、夕姫って未だに皆の事名前で呼ばないよね」
「そういえば呼んでいませんね。茂野さん、是非この機会に呼んでみては?」
名前か。せっかく皆の名前を憶えても、数回転生を繰り返したら、ハイエに聞かないと忘れている俺が名前を覚える意味とは。
『今こうやって慕ってくれている人達の願いを蹴るような悲観的な意見はやめたまえよ。永い旅路には休息も必要なのだよワトソンくん』
お前ってちょいちょい俺の言動にチクチクツッコミ入れるよなー。でもしょうがないだろ、永過ぎて人生の感覚が曖昧なんだからな。
『そんなパワーワード聞いてないよ』
分かった分かった。まぁ愛里寿だけ覚えて死ぬのも勿体無いのは事実だしな。
「ではお言葉に甘えて、みほさん、沙織さん、華さん、優花里さん、麻子さん……中々恥ずかしいですね」
「そんな事無いよ! いや~心のしこりがやっと取れたよ」
「で、では私も……夕姫殿! 改めてよろしくお願いします!」
「よろしくね夕姫さん」
「よろしくお願いします夕姫さん」
「よろしく」
改めてって言うと変に意識して恥ずかしいんだが。部下とかほぼ全員苗字か階級か役職で呼んでたからな。
結局、こちらを伺う視線は外れなかったので、西住さんの部屋に泊めて貰う事にした。いやー花の女子高生の部屋に泊まるとか、これはもう一線を越してしまうのではないか。
『世の中には百合原理主義者が居てね、女の子の間に挟まるのは須らく死ねって言われてるよ』
それって女の子しか登場しない原作なのに、二次創作で唐突に男が割って入るのはダメって事か。あー確かにそれはどことなくいけないとは思う。
『ハッ……鏡無いかな』
おいなんだその失笑は。
『いいから作戦の大詰めを考えている西住さんの手伝いをしなよ。私と話すために月眺めてるフリをしていても、誰も綺麗なんて言ってくれないぜ』
ならちょっと昔話をしておこうか。俺じゃなくて、この体の昔話を。
「西住さん、少し聞いて貰いたい事があるんです」
4.nishizumi
「私は、両親の顔を知らないのです」
聞いてほしいことがあると夕姫さんから言われ、相槌を打ったら、想像以上の話が出てきました。動揺して顔を上げた私が見たのは、月明かりに照らされた夕姫さんの後ろ姿でした。
「えと、事故……なんですか?」
大変失礼だとは思っても、普段の夕姫さんからは想像できない程の弱弱しい表情だったので、つい聞き返してしまいました。
「少し長くなります。両親は、生まれてすぐの私を置いて失踪しました。原因はギャンブルで膨れに膨れ上がった借金です。私は孤児院に入りましたが、そこの孤児院もあまり良い環境ではありませんでした。義務教育の間に自立できる技術と知識を、文字通りの死に物狂いで身につけなければ、待っているのは破滅でした」
小さいころ、お母さんやお姉ちゃんに連れられて遊びに行った記憶が蘇る。あの頃は朝早くから夜遅くまでお姉ちゃんと二人でいっぱい遊んで、お母さんもそれを見て微笑を浮かべていた。お父さんもお母さんの横で、私とお姉ちゃんを見守ってくれていた。私は、そんな時間がとても大好きで、これが普通の日常なんだと思っていた。
「体が、そんなに弱いのも……」
「幼少期にしっかりとした栄養補給が行われなかった為です。朝早く起きて孤児院の厳しい規則に従わなければ、罰と称して殴られもしましたし、その日の食事すらありませんでした。正直、いつ死んでもおかしくなかったです」
喉が、酷く乾いた。だというのに水を飲もうという気すら起きない。私より遥かに小柄な、小学生と見間違う夕姫さんの細い体。夕姫さんは小さい時から必死で苦労して、今やっと落ち着いた生活を自力で勝ち取ったんだ……。じゃあ……私は?
私は、何をしているんだろう。
「私は……わぁ!?」
ゆ、夕姫さんがいきなり両手で私の頬を優しく挟み込んだ。急な事だったから変な声出ちゃった……。
「みほさん。私は両親や兄弟の愛などは分かりません。想像のカケラも浮かんで来ないほどです。ですがそんな私にも一つ、友情は何となく分かります。周りの皆をもっともっと頼りましょう。今すぐにとは言いませんが、お姉さんやお母さんともいずれちゃんと向き合わないといけません。私のように、言ってやりたい事があっても言えなくなってしまいます」
……そう、だよね。私が何も言わなかったら、ダメだよね。
「……夕姫さん。明日の試合、勝とうね!」
「はい。みほさん達と勝てるよう、精一杯頑張りますね」
私は勢いのまま夕姫さんに抱き着いた。抱き着いてしまった。
お風呂に入ったばかりだというのに、甘い匂いが鼻孔を突き抜けてきた。急に恥ずかしくなって来ちゃった……。
「も、もう寝よう夕姫さん」
「そうですね。この体は気にならないので、抱き枕にでもしますか?」
「なななななに言ってるの!?」
夕姫さんは本当に皆の調子を狂わせる才能に富んでいると、私は今夜改めて確信した。その調子で黒森峰の隊列とか崩してくれるんだろうなという確信を持ちつつ、私は夕姫さんを抱き枕に……。
待って。
「どうしたのですか」
「こ、これだよ夕姫さん。ちょっとこの包帯を腕とか足とか頭に巻いてくれないかな!」
「んんぇ!?」
驚いている夕姫さんに包帯やらをグルグル巻いていくと、想像していた以上の完成度になったよ!?
「うわぁーーー! リアルボコだ!」
翌日、私は深夜テンションの為せる行動力と、それが冷めた時の反動の恐ろしさを身をもって知った。
あちこちを包帯でグルグルに巻かれ、私が寝ている間に付けてしまったであろう涎の跡……そして変な体勢で固められていたせいか、体の節々に痛みが走っている夕姫さん。余り寝れていないのか目の下に隈もある……。
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
「あぁ……はい。元気が出たようで、何よりです」
し、暫く真面に夕姫さんの顔見れない……!
決勝に備える要素どこですかね。