【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
――――
「……わぁ。地平線がグルって上がって、空の向こうにも地上があるね。
これがスペースコロニーの中なんだ」
スペースコロニー、それは宇宙空間に作られた、人か暮らすための施設。
円柱状の本体、その内側側面に地球と同じような地上があるの。重力は円柱をぐるぐる回して作って、それに太陽の光は側面の一部分に開いている透明な窓から日の光を反射させて、取り入れているんだって。
だから上や辺りを見回すと大地はぐるりと一回転していて、巨大な窓からは宇宙空間が見えるの。
「不思議な景色。だって現実ではこんなの、まだまだあり得ないんだもんね」
スペースコロニーは思いっきりSFなものなんだ。
人が宇宙に進出してそこで生活しているなんて、今の科学では無理だけど、ガンダムの世界ならそれは実現しているの。
だからGBNでもこうして再現されている感じ。……うん、SFだね。
「ああ。この景色、初代ガンダムを彷彿させるな。
ガンダムで最初の舞台になったのが、こうしたスペースコロニー。ここで初めてアムロがガンダムに乗って、そしてザクと戦ったんだ。
舞台になったスペースコロニーとは違うけど、それでもこうした場所で、すべて始まったのかもしれないな」
ヒロトはそう感慨深いように話している。
ガンダム、か。私はヒロトみたいにまだまだ知らない。けどどんな世界なんだろう……っていうのは、GBNを始めてから何だか分かった気がするんだ。
宇宙や、ロボット、現実とはまた違う世界で繰り広げられる物語。
……それにガンダムは戦争ものだから、そこは複雑かも。だけどその世界やモビルスーツって言うロボット、それにどうしてヒロトが好きになったのは、段々と分かっていくような感じがしているの。
さっきのヒロトの言葉に、私はうんと頷く。
「ヒロトに教えてもらったから、私もガンダムや、その楽しいところをたくさん知れたの。
そしてそれがGBNにどれだけあるかって、言うのも」
「それがGBNさ。ここには俺と同じ、ガンダムやガンプラが好きな人たちが集まっている。
ガンプラバトルや、ガンダム作品の世界、その再現だけじゃない。ここはそうした人たちがいるからこそ、楽しくて素敵な、かけがえのない場所だ」
ヒロトはそう言うと、ふとこんな事を続ける。
「だからこそ、イヴもGBNが好きだったんだ。
俺もこうしてただGBNを巡るのは、好きだ。イヴとの記憶だってよく思い出せるから」
イヴ……。またヒロトの口から彼女の話が。
「……ねぇ」
「え? どうしたんだ?」
「やっぱりヒロトは、今でもイヴさんのことが大切なんだね」
私はそんな事を彼に聞いた。すると。
「ああ。イヴの事は今も俺にとってはとても大切さ。
彼女と一緒にGBNで過ごした思い出は、どれも楽しくてかけがえのないくらいに綺麗で、何よりも大事な……そんな」
「……」
「……ヒナタ?」
見ると、ヒロトは心配そうに私を見ている。
「どうしたんだその顔。その……悲しくて辛いような、そんな表情をして」
「えっ?」
私、そんな顔……していたんだ。
やっぱりイヴさんのこと気にしているのかな、だけど。
ヒロトは少し考え込むようにして、こんなことも続ける。
「少し前からヒナタは何だか、変って言うか。
まるで俺の事を気にしているみたいで」
こんなヒロトは珍しい気がする。
「変? そう、かな? 私……」
でも私はそんな様子なんて見たくなかった。だってもう、二年もヒロトは辛い思いをしていんだ。だからこれ以上は。
私はこう言って胡麻化すけど、ヒロトはまだ……。
迷っているかのような躊躇いを見せて、彼は私に言う。
「もしかして……俺がイヴの事を、話したからか」
――!!――
「エルドラであの話をしてから、ヒナタの様子が変わった気がするんだ。
あそこでイヴについて話したのが原因なのか? だとしたら――」
「ううん! 本当に、何でもないんだから!」
ヒロトにその事を聞かれて、どうすればいいのか分からない。ただ今それに向き合うのは私に、出来なかった。
だから……。
「それでも、俺はヒナタが心配で……」
「……ごめんねヒロト! 私……ちょっと一人で、この辺りを見て回りたいの。
話はまた今度にしよう」
「あっ――」
私はヒロトを置いたまま、その場から逃げるように走り去った。
――なんて言えば、どうすれば良かったんだろう。私はそれが分からなかったから。
――――
ヒロトから離れた私は、どこか別の場所に来ていた。
スペースコロニーの中にある街。その街中にある広場に私はいた。
真ん中には大きな丸っこくて可愛いロボット、ハロの彫刻があって、それが目立つ広場なんだ。
私は広場にあるベンチに座って彫刻をふと見上げる。
……そう言えば現実世界で私とヒロトが暮らす街にも、こうしてハロの彫刻があった気がするな。
――私ってば、なんでこんな事しちゃったんだろ――
今さらになって、ヒロトを置いて逃げたことを私は後悔していた。
どうしたら良いのか分からなくて、だからあんな事しちゃったけど、きっとヒロトは今……。
――心配しているだろうな。ごめん……ヒロト――
心の中で私は謝った。
……でも。
やっぱりヒロトからイヴさんの話を出されると、何だか変に心がざわつく感じがするの。
何よりも大切な――そう、彼は言っていた。
イブさんとの思い出はきっとかけがえのない思い出なんだ。なら……私との思い出は。
――私とイヴさん、どうしても比べちゃうよ。それに比べたって――
きっと、イヴさんには敵わないから――。頭によぎったのはそんな考えだった。
ヒロトとは幼馴染で、もちろん仲良くしてくれるけど、その絆はイヴさんやそれにメイさんに比べたら。
――どうして私は二人と、違うんだろう。だけど――
ヒロトとの幼馴染の関係、今まではそれで満足していた……はずなんだ。
私はヒロトが幸せならそれで良かったのに。
――でも、もしかすると私はずっと前からヒロトの事が。そして彼と――
ずっと、小さい頃から一緒にいたヒロト。私は彼といるととっても満足するんだ。
だから幼馴染だけじゃなくて。もっとヒロトの事が知りたくて……絆だって。
そう言えば。私は前にカフェの店長さんが、言っていた言葉を思い出した。
――幼馴染のままか、それ以上になりたいのか……か。
やっぱり私、本当はヒロトと関係を深めたいのかも。けどそんなのを言ったら――
彼は何て思うんだろう?
多分、ヒロトは私とは幼馴染くらいにしか、思っていないのかもしれない。それに……イヴさんやメイさんの事だって。
もし言ったら彼を困らせるかも。今の幼馴染の関係だって、そうなったら崩れてしまうって考えると。
――でも、私はそれでも――
まだはっきりとは言えない。けどだからって、諦め切ることは出来ないでいる。
――やっぱり店長さんに、相談してみようかな。
良い答えを教えてくれるかもしれないから――
店長さんは、私のこの悩みに親身になってくれるかもって、そう思ったから。
けど……。
「あの、良ければお隣よろしいですか?」