【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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―幕間― ミラーミッションの怪異 (Side Other)

 ――――

 

 

 ミラーミッション、それは月に一度に開催される限定ミッションの事さ。

 

 

 せっかくだから僕は、幼馴染のミユと一緒にそれを受けてみたんだ。

 内容はほとんどバトルに関係ない、千本ノックや知恵の輪、あとアスレチックなんかと言ったミッションだったけど、僕としては面白かったな。 ミユもとっても楽しんでいたし来て良かったよ。

 アスレチックではミユは服の汚れなんて気にしないで、子供みたいに大はしゃぎ。まるで小さいころに公園で、一緒に遊んでた頃に戻ったような。

 ……だって幼馴染だからね。僕たち二人ともそんな感じで楽しんでいたんだ。

 

 

 

 そして、ようやく最終ミッション。今度はちゃんとガンプラバトルなんだ。

 僕たちのガンプラはどっちとも、機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズの量産機であるレギンレイズ。僕が青でミユが白の機体色で改造も少ししている。

 舞台は広い洞窟内のフィールド。今この場で戦っている相手は。

 

〈何だか手強いね、フウタ〉

 

  向こうではミユのレギンレイズが、近接武器であるパイルを片手に戦っていた。

 こっちもこっちでライフルで応戦しているところだ。

 

「まあね。でも、こんなに苦戦するなんてさ。だって相手は……」

 

 僕たちが戦っていた相手、それは自分自身のコピーだ。

 

 

 色は両方とも黒だけど、それでもその姿は僕とミユのレギンレイズで、戦闘スタイルや技量もそっくりそのまま。

 実はここまでバトルとは関係ないミッションでダイバーのデータを解析していて、この最終ミッションで戦う敵はその解析を元に生成された自分のコピー。だからミラーミッションと呼ばれているんだろうな。

 

「でもさ、大体はコツを掴んで来たんだ。自分の戦い方なんだから、それに上手く対応できれば」

 

 そう言いながら、僕は自分のガンプラのコピーにライフルを撃ち放つ。殆どは外したけど、一発だけコピーの右膝辺りに命中した。

 自分が相手だ。ある意味簡単には行かない相手だけど、時間をかければきっと。

 どうにか――いける気がする!

 

 

 

 ――――

 

「あはは……やっぱり、苦戦したな」

 

 バトルを終えて、僕とミユは二人で洞窟の中を散策していた。

 

「でもどうにか、クリア出来て良かったじゃない?」

 

「まあね。ギリギリの戦いだったけど、どうにかコピーに勝ったしさ。結果オーライだね」

 

 自分のコピーとの闘い。だってこんな経験なかったからさ、とても楽しめたよ。

 それにあともう一つ。

 

 

 

「フウタ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」

 

 隣で一緒に歩いていたミユは、何気ない感じで僕にたずねた。

 

「もちろん大丈夫さ。どうかした?」

 

「えっと、どうしてミッションが終わったのに、私たちってこうしてミラーミッションのエリアに留まっているの?

 もしかして何かフウタが気になっている物が、あったりするのかなって」

 

 

 

 彼女のこの質問。……ちょうど待ってたんだよね!

 僕は得意げにこう答える。

 

「ふふっ! 実はこのミラーミッション、最近ある噂があるんだ。

 せっかく来たんだからその噂を確かめたかったんだよね!」

 

「……噂?」

 

 やっぱりミユは知らない様子だった。そりゃそうだよね、僕だってついこの間GBNをやっていた別の友達から聞いたマイナーな噂なんだから。

 

 

 確かその噂は――こんな感じだったはず。

 

「そうそう。

 まずこのミラーミッション、名前の通りこれまでのミッションのデータを解析して、最終ミッションでガンプラのコピーが作られるって言うのは知っているよね」

 

「うん。正直あれでどうデータを取っているのか分からないけど……私たちのガンプラや、それに戦い方も上手くコピーされていたよね。

 さっきの戦いだって、私たちのそれとそっくりだったし」

 

「僕も詳しい原理は分からないけど、たぶんこのミラーミッション自体、色々細かい部分までデータをスキャン出来たりするんじゃないかな。

 そしてここからが本題なんだけど、そうしてダイバーのガンプラや戦闘データをコピー出来るミラーミッション。……けど、コピーするのはそれだけじゃないって話さ」

 

「というと?」

 

 彼女の不思議そうな様子、それに僕はこう話した。

 

「ガンプラや戦い方のコピーはもちろん。ほんのごく稀にだけど現れるみたいなんだ。

 自分そっくりの――――ダイバーのコピーが」

 

 

 

 

 ミラーミッションではガンプラのコピーが現れるけど、僕たちの……つまりダイバーそのもののコピーなんて普通なら現れるわけがない。

 

「ダイバーのコピー? そんなのってあり得るの?」

 

「うーん、ガンプラのデータと人間の精神のデータ体であるダイバー、どっちもデータだからもしかするとあり得るかもだけど、どうなんだろうな?

 ただ本当に人間一つコピーするなんてなったら人格や記憶も丸々だから、ガンプラよりずっと情報量とかが多いから難しいだろうね。それに……倫理的にだって不味いだろ? だからGBNがそんな事をするのかって聞かれたら、それはあり得ないさ」

 

 あくまでミラーミッションにダイバーのコピーが現れると言うのは、噂にすぎない。だから実際にあるかってなるとそりゃ……あり得ないでしょ。

 

「まぁ、突拍子のない話だもんね。人間を丸々コピーしちゃうなんて」

 

「でも、このミラーミッションで自分そっくりの人影を見たって話はいくつかあるみたいだよ。 ガンプラに乗ってると、ふと自分に似た影が目に入ったとかさ。

 あとあと……」

 

 ここでちょっと彼女を怖がらせてみようかな。

 僕はこの噂話に関するある小話を、ミユにしてみることにした。

 

「ドッペルゲンガーも知ってるかな? 自分と全く同じ姿の何者か、それを見ると死んでしまうって言うやつさ。……ここでもそれと似た話があるんだよ。

 ――ある時コピーダイバーの噂を聞いて、一人のダイバーがミラーミッションにやって来たんだ。ちょうど僕たちと同じように。

 友達に噂を確かめて来るって話して一人でGBNにログイン。ミッションを受けて、そしてここまでたどり着いたんだ。

 自分のガンプラのコピーを倒してエリアを散策。そしたらすぐに、岩場の陰に自分そっくりの姿を見つけたわけさ。それで興味本位で近づいた、その瞬間」

 

「ううっ……何だか怖いよ」

 

 見るとミユは怖がっていた。彼女を怖がらせるのは気が引けるけど、そうしているミユもやっぱり可愛い。

 それにここからが面白い所だ。僕は話を続ける。

 

「すぐ目の前にあったのは、自分と全く同じ姿そして顔。唯一違うのはダイバーの服や髪の色なんかが、真っ黒であった事だ。

 瓜二つの姿に驚くダイバー。そしてその姿を模した何かはニタッと気味の悪い笑みを浮かべたかと思うと、一気に彼を――!」

 

「きゃああっ!」

 

 僕はぐわっと襲い掛かるような真似をして、ミユを驚かせてみせた。

 

「……そしてその後ダイバーの友達は、現実世界でGBNからログアウトした彼を見つけた。だけどその様子は友達に対しても他人のような態度で、中身も前の彼ではなかった。

 そう、ダイバーはコピーに乗っ取られたんだ。何しろGBNでは人間の心はデータとなっているから、それを上書きされたら……」

 

「やめてよフウタ! そんな話されると、私」

 

 

 話を聞いて怯えるミユに、安心させるように微笑んでみせる。

 

「ミユは怖がりだな。でもまさかこんな話でそうなるなんて、やりすぎてしまったな。ごめん」

 

「ひどいよ、もう」

 

「でも……安心してよ。さっきの話はあくまでただの噂。ううん、って言うか怪しい都市伝説だね。

 大体、自分そっくりのコピー? そんなのさっき話したドッペルゲンガーの話の二番煎じにすぎないぜ。

 GBNのミラーミッションがガンプラのコピーを生成するからダイバーもって……子供でも思いつく幼稚な考えだ。こんな噂誰が考えたのか知らないけど、よくもまぁ――」

 

 

 

 ――――

 

 すると僕は話の途中である違和感を感じた。

 

「……あれ?」

 

 違和感の正体、それは。

 さっきまで横にいたはずのミユ。彼女の姿が今見ると、いつの間にかいなくなっていた。

 

 ――えっと、どのタイミングではぐれたんだ?――

 

 僕はミユの名前を何度か呼んでみる。……けど、全く返事がない。

 

 ――反応なしか。参ったな、もう――

 

 ここは暗い洞窟の中、そんな所に一人だけ。いくら何でもこれは余りにも寂しい。

 

 ――ううっ、いくら仮想世界だったとしても、これは辛い。

 それに――

 

 

 

 孤独感に苛まれるこの感じ。

 しかも……そうしていると、さっき自分が話していた事をつい思い出してしまう。

 

 ――自分のコピーだって。そんなのただの噂、作り話、いるわけがないじゃないか――

 

 こう思っていてもどうしても不安が拭えない。もしかするとって考えると、やっぱり。

 すると、その時僕の目の前に……。

 

 

 

「えっ?」

 

 暗くてよく見えないけど、今目の前に見えるのは誰かの人影だ。

 ミユのとはまた違う、自分と同じくらいの背丈の影。まさかあれって。

 

 ――冗談だろ。本当に現れるなんて、そんなばかな――

 

 相手は身動き一つ、微動だにしない。

 だから試しに、勇気を出して僕はゆっくりと近づいてみる。

 自分そっくりの影の正体は。

 

 

 

 ――何だ、ただの岩じゃないか――

 

 相手はただの、人型に近いただの岩だった。

 これには僕もホッとした。と言うか、むしろ呆れてしまった。

 

「は、ははははっ。なーんだ」

 

 ――噂なんて結局、そんなものだよ。あーあ、バカバカしい。こんなのに怯えてたなんて――

 

 噂の正体は、ただ人に近い岩を自分そっくりと見誤っただけ。その事はもう分かった、後はミユを探すだけだ。

 

 

 僕は人型の岩に近づいて、ポンポンと叩く。

 

 ――にしてもこんなの紛らわしすぎる。これがあるからバカバカしい噂だって――

 

 こんな風に思いながら改めて岩を見た。と、その岩の裏……よく見ると何か、蠢いているのが見える。

 その蠢いていた、何かは――

 

 

 

「ひいっ!!」

 

 突然そこから何かをぐっと伸びて来た。

 それはまるで人の腕……だけど、腕は画像の乱れのような、ノイズや砂嵐のようなもので構成された得体の知れないもの。

 しかもそれは動いている。僕は混乱しながらも後ずさって、距離をとった。

 

 

 岩の裏からは画像乱れのパッチワークのような腕が。しかも腕だけじゃなく、ゆっくりと身体全体を僕に見せる。

 

 ――何これ――

 

 現れた身体も、腕と同じような感じ。それはまるでGBNという仮想空間のテクスチャが人型に切り取られ、そこだけ別の異常空間が生じているようだ。

 怖くて逃げたい。けどあまりの異常さにこれ以上、動けなかった。

 固まる僕の前で、その何かはノイズみたいな身体を動かしてこっちに迫る。

 

 

 しかも、近づくにつれてその身体は段々と、人間に近づいてゆく。

 小柄で、猫の耳と尻尾を生やした少年の姿。それはまさに、自分と同じ姿のそれになっていた。ただ僕の青い髪と瞳は真っ黒。これじゃまるで……。

 

 ――あの噂は、まさか本当なのか。こんなのって――

 

 自分と同じ姿をしたそれは僕に向けてにやりと笑った。しかし、相手の表情はすぐに驚きの顔へと変わる。

 ……たしかに、僕の姿を真似はした。だけどそれはすぐにボロボロと崩壊しはじめていた。崩れて元の画像乱れ、ノイズの状態へと逆戻りに。

 

 

 身体も、顔までもも半分は崩れながら、なおも僕に迫る。目の前に崩壊しつつある自分自身の姿。

 それはあまりにも異質で、気味の悪いもので、そして怖くて。

 

 

 ボロボロの手はもうすぐそこに。

 とうとう、耐えきれずに僕は――。

 

 

 

 

 ――――

 

「フウタ! ねぇフウタってば!」

 

「……あ」

 

 正気に戻ると、心配そうに僕を見つめるミユの顔がすぐ目の前にあった。

 

「あれ? 僕は……」

 

「大丈夫? さっき凄い叫び声がして、急いで向かったらフウタはばったり倒れていたのを見つけたんだよ。GBNでも気絶ってするんだね。

 ねぇ何かあったの?」

 

 

 背中には岩肌の感覚。いつの間にか、気絶していたみたいだ。

 僕は起き上がって辺りを見回した。

 洞窟の壁とさっき見た人型の岩は。けどあの謎の存在はもう、どこにもなかった。

 

 ――あれに僕は何もされなかったのか? 僕はあのコピーに乗っ取られたわけじゃ、ないよね――

 

 でも感覚では、確かに僕は僕自身だ。それは間違いない。だけどあの後の記憶は、情けないけどショックで頭から抜けていた。

 

 ――もしかしてあの事自体、ただの幻なのか――

 

 これにはついそんな事も考える。

 

「ねぇ、何か考えているみたいだけど、どうかした?」

 

 ミユに言われて、僕は思考を中断した。

 

「ううん、何でも……ないよ。ちょっと変なものを見た気がして、びっくりしただけ。

 それも結局ただの気のせいみたいだし」

 

 あんなわけわかんないこと、変に話すわけにはいかない。

 さっきのあれは気のせいか幻覚にすぎない。そう僕は結論づけた。

 

「さて、と! そんな事より、用事も済んだしこれでログアウトしようか。

 やっぱり現実世界で一緒に過ごしたほうが、いいしね」

 

 僕の言葉に、ミユはまだ心配そうではあったけど……。

 

「まだちょっと心配だけど、フウタがそう言うなら。

 でも、もし良かったら後ででもいいから聞かせてね」

 

 これに僕はもちろんと答えた。

 

「なら良し! それじゃフウタの気分転換も兼ねて、ログアウトしたら駅前のカフェに行ってみない? 

 一緒に過ごすって言ったら、やっぱりこうしてデートじゃないかなって」

 

 ……それはいいね。だってミユとは幼馴染だけど、同時に誰より一番大切な恋人でもあるんだ。

 さっきの事は正直、今でも訳が分からない。けどやっぱりさっさと忘れた方がいい。

 

「あはは。こんな時はミユといるのが一番だしね! 

 嫌なことだって、綺麗さっぱり忘れられるしさ」

 

「そう来なくっちゃ。じゃあ早速、行こうかフウタ」

 

 そうと決まったら、さっさとログアウトしないとな。

 気持ちを切り替えて、僕はいつものミユとの日常へと戻ろうとログアウトしようとした。

 

 

 

 ……その時、視線の端にちらりと、動くノイズのような物体が見えた気がした。

 きっとこれも、気のせいだよね。

 

 

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