【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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第五章 鏡合わせの、知らない――『ワタシ』
ヒロトからの相談事(Side メイ)


 

 ――――

 

 市街地のバトルフィールドを、私の機体は高速で走り抜ける。

 

 ――ふっ、ガンプラバトル、やはり楽しいものだな――

 

 私が駆るのはいつものウォドムポッドではない。このバトルではそれよりも俊敏性の高いモビルドール――私の姿に近い、専用の女性型の機体――の方が良いからだ。

 

 

 

 

  

 左前方に並ぶ幾つものビル群。そのビルの間からきらりと、輝く閃光が垣間見える。

 

「!」

 

 瞬間、そこから高出力のビームが二筋、私に向けて放たれた。無論とっさに別方向に駆けて射程から離れさせてもらう。……が。

 

 ――簡単には行かないか――

 

 すると今度は薙ぎ払うかのように、迫りくるビームのエネルギー。ビルを次々と破壊しなぎ倒しながら私に向かい接近する。

 走って逃げるよりも早く迫る。このままではやられる……それならば!

 

 

 私のモビルドールは駆けていた車道を強く蹴り、上空に跳躍する。

 同時にさっきまでいた場所に追いついて来た強力なエネルギーが車道と、その向こうのビルも抉り消した。

 

 ――あのままいたら私は危なかったな――

 

 だが一安心する間もなく次は背後から現れる影。

 私はその背後へと、ビームサーベルを放ち一閃する。瞬間――

 

 

 ビームサーベルと鍔迫り合うのは、スピアの刃先。

 それを武器としていたのは青を基調にしたジンクスの改造機体だ。

 ガンダムООの量産機であるジンクス。背部には太陽炉と呼ばれる動力機関を備え、輝くGN粒子を辺りにまき散らす、四基のカメラアイを持つメカニカルなMS。

 太い手足と肩、重層化され近接特化された、鬼を思わせるガンプラ。相手はその手に握るスピアにぐっと力を籠める。

 

〈なーるほど、やっぱりさすがだな。ビルドダイバーズのメイ!〉

 

 画面に映るのはジンクスのパイロットである、ぽっちゃりした小生意気そうなダイバーの姿。

 

「……ドージか。私があの攻撃を避けるとともに奇襲とは、よくやる」

 

 彼はフォース『百鬼』に属するダイバー、ドージだ。そしてガンプラの名はドージ刃-X。元々は百鬼のリーダー、そしてドージの兄であるオーガのガンプラであるオーガ刃-Xを譲り受け、手を加えたものだそうだ。

 

〈このままパワーで押し切ってやるぜ!〉

 

 その強力なパワーで、ドージは圧し潰そうとする。だがやはり甘いな。

 

〈なあっ!〉

 

 私はスピアに込められた力を受け止めるのではなく機体ごと後方にいなし、下がり距離を離す。

 同時に両太股にマウントした二丁のビームハンドガンを抜きドージ刃-Xに放つ。

 

 

 小型のビームの弾丸はいくつも相手に命中し、ダメージを与えひるませる。

 

 ――こんなもの、か。……ん――

 

 今度は真正面から現れる別のガンプラ。

 

〈お前のその強さ……喰わせろっ!〉

 

 現れた巨体の両手には輝く二本のGNソードを構え、私に振りかざす。

 私は横にとび退き斬撃を避ける。

 

 

 襲来したのは、両肩の巨大なバインダーを備える重装甲で深紅のガンダムだ。

 バックパックにはビームバズーカを二つ装備し先ほどのビーム射撃はそれによるもの。そしてそのダイバーは……

 

 

 

〈悪いが――ここからは俺の番だ!〉

 

 次の瞬間、今度は反対側から別の赤いガンダムが、同じく二本の実体剣を手に現れた。

 

〈ぐっ……!〉

 

 相手はそれを受け止めるも、後方にぐらりとよろめく。

 

〈苦労をかけたなメイ。他との闘いで、手間取った〉

 

 画面に現れた姿は私と一緒に戦うヒロトだ。

 現れた赤いガンダムは彼のマーズフォーガンダム。コアガンダムⅡとマーズアーマーがドッキングし、近接戦闘に特化した機体だ。

 

〈くっ……他の百鬼のメンバーは、もうやられたか〉

 

 そして今戦っていた先ほどのがガンダムに乗るダイバー……それは百鬼のリーダーである、オーガ。

 筋骨隆々で鬼のような和風の恰好をした、鋭い目をしている彼はGBNでもトップクラスの実力者だ。

  

 

 

 私とヒロトは今、フォース『百鬼』とのバトルをしている最中。

 ちなみに他のメンバーはヒロトによって倒された。残るはドージとオーガの二人だけだ。

 ヒロトのマーズフォーガンダムとオーガのガンプラ……ガンダムGP‐羅刹天は、互いの剣で激しい近接戦闘を繰り広げる。

 

〈これもまた、食いごたえのあるバトルじゃないか。くくく!〉

 

〈百鬼のリーダーなだけある。やはり手ごわいが……俺も負けない!〉

 

 

 

 ――やはりヒロトもオーガも、良い戦いをする。

 なら私も――

 

 私はヒロトの援護に動こうとした。するとそこに、ドージのガンプラであるドージ刃-Xが立ちふさがる。

 

〈けどこっちも俺たち二人の二体二だ! 勝負はここからだぜ!

 あっちの邪魔はさせない。俺はお前と戦え!〉

 

 ……まぁ、どうもそうはいかないらしい。

 あっちはあっちに任せ、私は私の戦いに全力を注ぐとしよう。

 

 

 

 ――――

 

 

「さすがオーガだ。今回はあと一歩の所で俺たちの負けか」

 

「ああ。しかしそれは、次回勝てばいいことさ」

 

 バトルの後、私とヒロトは高層ビルの屋上で二人過ごしていた。

 周囲にはいくつも近未来的なビルが立ち並ぶこの大都市はGBNのセントラル・ディメンション。上空には他のディメンションへと向かうゲートと、飛行するガンプラの姿もある。

 

「悪い、メイ。こうして時間を作ってもらって。

 確か例の調査……まだ途中なんだろ」

 

「いいや、別に気にしないでいいとも。むしろ良い気分転換にもなった。あちらの進み具合は、お世辞にも良いとはいえないからな」

 

「そっか。大変だなメイも」

 

 私はああと、頷く。

 

 

 

 現在、私はGBNの運営にバグの調査を依頼されていた。

 ごく些細であるが、システムの何処かに異常があるらしい。ほんの……僅かなもので今まで気に留めるほどの物でない、異常。どうやら前々からあったみたいではあったがGBNに何らかの影響を与えるほどの異常ではないことと、またあまりに些細なものであるために発見が困難であるため、これまで放置されていた。

 

 

 

 ……しかし例え些細なものでも、いつまでも放置しておくわけにはいかない。今は小さいものだとしても今後何かの問題を引き起こす可能性もあるからだ。

 この前のエルドラの一件も事後処理が一段落した。だからこそ、放置されて来たバグの対応に重い腰を上げたのだろうな。

 

 ――最もそのためにまだバグどころか、それらしい物や手がかりすら見つかっていない。

 広大なGBNで些細な異常を探すなど……まるで砂漠の砂に落ちた梁を探すようなものだ。どうりでこれまで、放っておかれたわけだ――

 

「せめて手がかりか何かでも見つかれば助かるものの。

 一応私の他に何人も、同じ依頼を受けている人間はいるみたいだが……この調子だとまだまだかかりそうだよ」

 

「GBNのバグ、か。この前の事など運営も色々と対応したみたいだし、大変なんだろうな」

 

「そう言うことらしい。

 それで……こうして二人でGBNをしている訳だが、ヒロトは私に何の話があるんだ?

 用があるからこそ私は時間を作った。さっきのバトルはあくまでついでだ。だから、本題を聞かせて貰おうか」

 

 

 

「それは――」

 

 そう、私がこうしているのはヒロトに相談事をしたいと頼まれたからだ。

 さっきのバトルは、たまたまに過ぎなくて……本題はそれだ。

 

「私に相談とは一体何だ? 助けになればいいのだが」

 

 何て言うか……ヒロトにしては珍しい、妙な戸惑いを見せていた。

 

「ああ。相談と言うのは実は、ヒナタの事についてなんだ」

 

「ほう?」

 

 ヒナタと言うのはヒロトの幼馴染の名前だ。

 私達と違って現実世界の日常でもよく過ごす仲の良い少女で、エルドラでの出来事以降は私たちビルドダイバーズにも加わっている。

 しかし、彼女に関しての相談とは。

 

「この頃ヒナタがどうも俺に向ける意識と言うか、それが変わったみたいでさ。

 彼女とは幼馴染だから大体の事は分かっていたつもりだったんだけど、この頃は……その、妙に違うって感じで」

 

「違うとはどんな風にだ?」

 

 違うだけではどうも分からない。私が改めてそう聞くと、ヒロトは。

 

「簡単に言うと幼馴染よりも近い感じって、言えばいいか。これまでは幼馴染として仲良くしていたけど、まるでヒナタはそれよりも近づきたいってそんな様子で。

 この前なんて幼馴染とは違う感じで好きで、仲良くなりたい……絆を作りたいって。

 一体俺はどうすれば良いんだろうな」

 

 

 

「……」

 

 これには私も答えに困るな。

 

「それはまた妙な感じだな。ようは幼馴染とはまた違った感情を、向こうは持っていると」

 

「多分な」

 

「ふーむ。話は分かったが、難しい問題だな。

 ヒトの好きと一言で言うのも、実際はその感情も様々か。私にとっては猶更そこは分かりにくいものだよ。何しろ私は人間でなく電子生命体――ELダイバーだ。少し、聞く相手を間違えたな」

 

 

 

 私とヒロト達と違い、この仮想世界GBNで生を受けた電子生命体である。だからヒロトの言うような人間の感情は……ある程度は分かりはするが、こうも難しい違いについてとなれば私にはお手上げだ。

 しかし、強いて言えることがあるなら。

 

「だがそうした感情はとても、デリケートなものだ。ヒロトの言葉そして対応次第では相手を傷つけかねないような、な。

 ――ヒロトにとっても、そしてヒナタにとってもこれはきっと重要なことだ。私にはどう答えるべきかは言えないが、この事が自身でよく考え後悔のないように決めるべきだ」

 

 これが今私に言える、精一杯のアドバイスだろうか。 

 

「成程な。

 ヒナタの言う幼馴染とは違う好きや、絆。

 俺には一体彼女の求めているのが何か、まだ分からないんだ。……それでも少しだけは、俺もうっすら分かるような気がするんだ」

 

 

 ヒロトもヒロトで、まだ自分でも分かっていない事がいくつもあるらしい。

 しかし少しは分かっていることはあるらしい。……まぁヒロトはこうした事に鈍いと思うが幼馴染とは違う感情を、ああしてヒナタに直接言われて向けられたんだ。それは当然だろうな。 

 

 

 それに――。すると彼は話を続ける。

 

 

 

「……ただ、ああなったきっかけは多分、イヴの事を話したせいだと思う」

 

「ほう?」

 

 これには私も気になった。

 イヴ……それはかつてヒロトが大切に想っていた、私同様ELダイバーの少女だ。ともにGBNで過ごし、コアガンダムのプラネットシステムを作り……特別な思い出ばかりあるようだ。

 

 

 だが彼女は今はもういない。しかしそれでもそのデータの一部を、私は受け継ぎそしてヒロトの心の中にもイヴの思い出は生きている。

 だってヒトとはそういうものだろう?

 

「ヒロトにとってはイヴも、大切な存在だったな」

 ヒロトは頷く。

 

「イヴの事を聞いてからヒナタはああも変わった気がする。何かおかしいと言うか、対抗意識と……言えばいいのか。

 思い悩む感じも見えるし、俺が話したせいでこうなったと考えると……」

 

 そして少し項垂れた、彼。

 

「それにメイだって俺の大切な人だ。

 ヒナタの思い、少しは分かる。けど俺にはメイやそれに……イヴの事も、まだ」

 

 どちらもヒロトにとって大切な人と言うことだ。

 

 

 とりわけ――イヴ。彼女が彼にとってどれだけ大きな存在なのか私はよく分かっていた。

 二年間失った彼女を思い続けていたこと、そしてエルドラでの出来事も、イヴへの想いがあったからこそ成し遂げることが出来た。

 

 

 例えもういない相手であったとしても、今でもヒロトが一番に想っているのは、恐らくは……。

 

 

 私に対してもビルドダイバーズの仲間であるのもあるが、そんなイヴの一部分を受け継いだ事で、ヒロトが特別視している部分もあるはずだ。

 

 ――ヒナタがどこまで願っているのか。それは分からないが、ヒロトのイヴへの思いがそんな彼女にとっては、おそらく複雑だろう……な――

 

 いくら私でもそれくらい察しがつく。本当にヒトと言うのは、まだまだ難しいことだらけだ。

 

「ヒロトがイヴに対して、強く大切に想っているのはよく分かる。私の事も思ってくれるのも、もちろん嬉しい。

 しかしヒナタの事も、もっと考えてあげる事だ。彼女だってヒロトを大切に想っているはずだから」

 

 今私が言えるのはこれくらいだ。ヒロトにとっても、ヒナタにとっても助けになれる事と言ったらな。

 そこから先は二人の問題だ。

 

 

 ヒロトは僅かに考える様子。

 だがすぐに、彼は小さく私に微笑むと……。

 

「もちろん俺だってよく分かっている。

 ちゃんとヒナタの事だって、考えて……いるさ

 

 最後の言葉には、ほんの少し迷いが見えたような気がした。

 だが私に出来る事、伝えることはちゃんと伝えたつもりだ。

 

 

 

 ――――

 

 ヒロトとの話はとりあえずここまでだ。

 

「ありがとうメイ。おかげで俺の悩みも、幾らかはスッキリした気がする」

 

「……あまり助けになれず、悪いな。もう少し良いアドバイスが出来れば良かったが」

 

 相談と言っても今回私に出来たことはあまりなかった。結局、問題はそのままヒロトに任せる形になってしまったな。

 

 

 それでも彼は満足したような様子だった。

 

「そんな事はない。実際俺は相談にのってくれて助かったんだから。後、これは俺の問題だ。残りは自分でちゃんと考える事にする」

 

「そっか。……なら、私はこれで失礼するよ」

 

 また調査も残っているからな。私はヒロトに背を向け、去ろうとする。

 

「どうか、ヒロトの悩みも解消されればいいな」

 

「ああ。メイの方も調査が無事、進むことを願うよ」

 

「ありがとう、ヒロト。――それじゃあさよならだ」

 

 

 最後にそう言って、私はヒロトと別れた。

 やはり……少し心配だな。時間があればまた話でも聞こうか。

 

 

 

 

 

 ――――

 

 それから私は一度GBNのロビーに戻った。

 

 ――さて、今回も聞き込みから始めるとしようか――

 

 バグなら見える形で現れる事も十分にある。だからそれについて人に聞くのが一番だと、そう考えている。

 

 ――最も、それを続けてもまだ見つからないのだけどな。ま、一人でエリアを捜索して行くのもまた、限界があるからな――

 

 だが一方で人の話など……どこまであてになるものか。やはり自分の足で探索した方が、まだいいのかもしれない。

 

 ――どうしたものか、さて――

 

 私はそう悩んでいると、こんな声が耳に入った。

 

 

 

 

「だーかーらー! 本当の話なんだって!」

 

「そんなバカバカしい事、信じられるわけないだろ」

 

 声は右側の少し離れたロビーの隅からだ。

 そこには少年と青年、二人で何かの話をしている所。これが気になった私は少しだけ聞き耳を立てる。

 

「大体、ミラーミッションで自分のコピーだなんて、そんな馬鹿馬鹿しい話を信じるなんて。

 あれってただのしょうもない噂じゃないか」

 

 少年に対し、諭すように言う青年。

 しかし少年はムキになって言い返す。 

 

「けど僕は見たんだ! あの洞窟でガンプラのコピーと戦った後にミユとそこを散策して、はぐれて。

 その時に、何かノイズか画像乱れみたいな化け物が出てきて……僕の姿になったんだ!」 

 

「はははっ! ホラーの作り話にしては随分と陳腐だな? 

 どうせ何かの見間違いじゃないか?」

 

「噂なんてただの見間違いかって、最初は思ったよ! けど本当に僕はあの時……」

 

「分かった、分かったよ。

 それより――これから連戦ミッションに行くんじゃないのか? 話の続きはまた後にしようぜ」

 

「……むうっ、本当なのに。

 けど今は後でいいか。そう言うなら……行こうか、ジン」

 

 

 

 あっちの会話はそんな感じだった。

 

 ――ミラーミッションで、ダイバーのコピー、か――

 

 ほんの少し興味深い話題であった。それに話ではそうした噂は他でも、出回ってもいるらしい。

 

 ――もしかすると調べる必要が、あるかもしれない。だが――

 

 そんな話、さっきの青年の言う通り、あまりにも馬鹿馬鹿しくてしょうもない。

 気にはなるが、それについては別に後回しにしても問題ない。

 今はもっと別の事を調べた方が、まだ効率がいいだろう。と、私は考えた。

 

 ――やはり自分で探索してみるか。聞き込みをしたところで、さっきのような話をされては困りものだ――

 

 

 結局私は聞き込みでなく、自力での探索を選んだ。

 さて、今回はどこを調べてみようか。

 

   

 

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